2012ヴィーナスカップ優勝は日本プロ麻雀協会所属、板倉浩一プロの連覇!
 

5月にしてはやや汗ばむ陽気の中、今年のスプリントカップ第2戦、ヴィーナスカップが行われた。

この日は一発裏のないBルールのため、点棒が足りなくなって呼ばれる回数はいつもより少なかった。

それでも5万点以上の大きなトップは頻発し、上位はどんどんプラスを重ねていって、縦長の展開に。

予選を終わった段階で、唯一4連勝の前回マーキュリーカップ覇者の板倉と、2戦目から大きなトップを3つ並べた石川は当確。残り2つの決勝のイスを争うのかと思っていたが、準決勝で少しもつれる。

板倉は、予選で3着に沈めた北岡の猛攻を受け、前大会からの連勝が8でストップ。しかし、準決勝開始時点で北岡と100p以上差のあった板倉は冷静に我慢し、2着を拾う。

もう一方の石川は仲川の猛攻を受ける。こちらも約70p差があったはずが、トップラスの並びができ、褶曲間際にはわずかながら逆転というところまで来ていた。時間切れ最終局、石川は大物手を狙う下位2名を尻目に着順を2つ上げるアガリを取って再逆転して事なきを得たが、他2人もメンゼンで大物手のテンパイやイーシャンテンまできており、危ないところではあった。

結局、この2人に前述の仲川、さらに別卓で山下との競りに勝った木村までが決勝進出、北岡は次点にとどまった。

決勝を始めるにあたり、ここまでのポイントを半分にした数字は、
板倉:+74.0、石川:+60.4、仲川:+48.6、木村:+47.4

板倉は石川とは3,500点まで余裕があり、石川がトップでなければ2着でも逃げ切れそう。
石川にも2着で優勝の目がなくはないが、実質は板倉に2着順か3,600点差をつけてのトップ条件。他の2人は大きなトップか並びが必要といったところである。

起家から木村、仲川、板倉、石川の順に決まり、条件を確認して決勝戦がスタート。

東1局、さっそく手がぶつかる。石川が9巡目に

ドラ

ドラと1枚切れののシャンポン待ちで先制リーチ。これに仲川が2巡後

ドラ

高目満貫の3メンチャンで追いかける。さらに親の木村が

ドラ

一手で親満以上に切り替わる3,900テンパイを入れ、通っていないを押してダマに構えての3人テンパイ。

仲川以外の2人は待ちが山に1枚しか残っていなかったのだが、石川が力強くラス牌のをツモりあげて2,000-4,000。

東3局、放銃で親を流された仲川に最初のテンパイが入る。

ツモ ドラ

河には早くもが2枚並べられ、表示牌と合わせて3枚見えているが、迷わずを切ってリーチ。タンヤオがあり、点数が欲しいとはいえ一目微妙なリーチだが、実は残り1枚のどころか、ドラのも全部山でまさかの4枚生き。

これをアガれればまだ戦える位置に戻れると思っていたところ、を4巡目にツモ切っていた板倉が追いかける

ツモ ドラ

実は4巡目の時点でダブが暗刻、両面2つのイーシャンテンになっており、満を持しての切り追っかけ。このを仲川が一発でつかんで(一発役はないが)7,700。

次局も先制リーチのはずが、高目三色のピンフドラ1でとっくにテンパイしていた石川にツモ切りで追いかけられ、安目で3,900放銃。この後も仲川は攻め続けるが大きな失点は取り返せず。

仲川の6度目のスプリント決勝は実質東場で終わってしまい、悲願の初優勝はまたもお預けとなった。

木村は点棒を大きく減らさず、南場の親で1,300オールをツモるなどして35,000を超えるところまで持ってきたが、そこで親が流されてしまう。

それでもまだトップ目の石川でも4万点を超えた程度で、この並びのまま粘ってトップが取れれば優勝の可能性はあったのだが、焦りからか南2局、南3局と連続放銃で仲川と900点差にまで落ちてしまう。

オーラス、優勝争いに目を転じると、この半荘のトップ目は石川だが、板倉と2,300点差しかなく、まだ1,300点足りない(同点なら追いついた石川の勝ち)。またラス親のため、かわした瞬間には終わらない。

他の2人は役満以外には板倉からの三倍満しか優勝条件がない。

一見すると板倉が圧倒的に有利なのだが、板倉が1つだけ気を付けないといけないのは他の2人の存在である。

優勝以外が等価値の場合、優勝の目のほとんどない人が、アガりに向かって手を進めないことは往々にしてある。

しかし、このスプリントカップは年度末に行われるファイナルへのトライアルも兼ねており、3位と4位とでは1ポイント違ってくるため、ここまで差が開くと下位2人は3位狙いのアガリをしてくることは容易に想像できる。

つまり、3位争いのどちらかの手に飛び込んだ場合、それが1,000点でなかったら逆転されてしまうのだ、

はたして結果は、木村の4巡目ポンテンの3メンチャンの1,000点に仲川が飛び込んで終了。結果的には板倉が放銃していてもわずかに残っていたことになる。

終わった瞬間に板倉がついた大きなため息には、その安堵感も混ざっていたのだろうか。

(決勝戦結果)石川:+24.0、板倉:+11.7、木村:▲11.4、仲川:▲24.3
(総合成績)板倉:+85.7、石川:+84.4、木村:+36.0、仲川:+23.1
(注)総合成績は、(5回戦までのスコアの半分)+(決勝戦のスコア)

板倉プロコメント

「最初の半荘で多井さんと対戦した。実はこういった場で多井さんと打つのは数年前の某タイトル戦の本戦以来で、その時はボコボコにされた記憶しかなかったけど、今回はトップラスを決めることができた。
いいスタートを切れたことにより、今大会も集中したいい状態で打つことができ、その後の計4連勝、前回から通算すると8連勝といういい結果につながっただけでなく、内容的にもいい麻雀を打てた要因だと思う。また、準決勝はややきつい展開の中2着を拾うことができ、決勝は石川さんに先行されたけど焦ることなく、この半荘の間に追いつけばいいと、落ち着いて思えたことにもつながったと思う」

こうして、2012ヴィーナスカップは、マーキュリーカップに続いて板倉の連覇という形で幕を閉じた。

スプリントカップが始まって6年目、34戦目にして初の連覇である。

また、調べてみたところ、RMUの大会で8連続トップというのも新記録(非会員なので成績管理ツールには残らないが)のようである。

筆者は初戦予選落ち、2戦目が立会人のためまだ0ポイントだが、残り6戦でポイントを重ねて、ファイナルの舞台で板倉とぶつかりたいものである。

次回のスプリントは7月22日のアースカップです。

多くの人がとっつきやすいと思われる、赤入りのCルールで行われますので、毎回のように参加してくださっている方はもちろん、こういった大会に慣れていない方々のご参加も心よりお待ちしております。


(文中敬称略 文責・宮田信弥)