2013オープンリーグ決勝レポート
年の瀬も迫った12月29日、2013年度のオープンリーグ決勝が開催された。決勝に進出したメンバーは以下の4人。※準決勝通過順に記載

松ヶ瀬隆弥
宮田信弥
多井隆晴
野村祐三

3人はRMUのライセンス保持者、ライセンスを持っていない野村も色々な大会で決勝に残るなど実績を残しており、ライセンスにかなり近い打ち手である。

面白い対局になることが予想された。

1回戦 宮田-野村-多井-松ヶ瀬

東1局 ドラ

西家の多井にドラの風牌がトイツで入っていたが、決勝の1回戦にそう簡単に打ち出す者はいない。

最初の発声は松ヶ瀬。やや気合の入ったモーションで牌を横に曲げる。

メンツ手で待ちはドラの単騎。

恐らくツモれる感触があったわけではないだろうが、万が一アガれればとても大きなアドバンテージとなる。

結果は終盤に形テンを入れた親の宮田と松ヶ瀬の二人テンパイ。

東1局1本場 ドラ

親の宮田が配牌は厳しかったが、ドラを重ねうまくまとめて15巡目にリーチ。

ドラ

だが、前巡に野村がラス牌のを引き入れ待ちで国士無双をテンパイしていた。

野村は宮田のリーチを受け、一発目に引いたとアタマを入れ替え、テンパイを継続。

最終ツモでは再びアタリ牌であるを引かされる。

ハイテイであり、アガリはない。収入はテンパイ料の最高でも1500点。

ここは無難にオリる選択をすると思ったが、少考の後にツモ切って12300点の放銃。

決勝の舞台で前がかりになってしまっていたのだろうか?

まだ1回戦であり先は長いと考えることもできるが、誰もがラスを引きたくない1回戦で
圧倒的不利になってしまうこの放銃はとてつもなく大きい。

東1局2本場 ドラ

宮田の親が落ちない。8巡目にペンをチーしてイーシャンテン。

チー ドラ

ここにを引いて、単騎に受ける。これを次巡に即ツモで1600オールは1800オール。

東1局3本場 ドラ

宮田がなんとしてもテンパイを取るとばかりに10巡目に仕掛けて、ドラ2枚のイーシャンテン。

次巡にテンパイとなるが、役がないのでタンヤオを目指してテンパイ外し。

15巡目に再び役なしとなる牌を引き戻し、ここは巡目も考えて形テンを取る。

この宮田の仕掛けにテンパイで無筋を打った野村が、宮田の最終ツモでツモ切った八を捕らえ、ピンフの1000は1900。長かった宮田の親が終わる。

東2局 ドラ カンドラ

南家の多井が8巡目にドラをリリースし、次巡ツモ切りリーチ。

ドラに動きがなかったのを確認した上での決断か。ただし場況としてはピンズが高めで苦しそうに映る。

ドラ カンドラ

親の野村も開始早々の失点を取り返すべく、親での連荘を目指す。

13巡目に多井の切ったを叩いてタンヤオのみだがテンパイ。2巡後にを引いてアンカン。

ポンアンカン

しかしこのポンで宮田にすごい手を送り込んでしまう。

ドラ カンドラ

全員ピンズ待ちでそれほど優劣はないように見えたが、軍配は野村。

を引きなんとか事なきを得る。

東2局1本場 ドラ

なんとか連荘した野村だが、ここまでじっと耐えていた松ヶ瀬から3巡目にリーチが入る。
1枚切れの単騎のチートイツである。

手詰まった野村が打ち込んでしまい、3200は3500のアガリ。

東3局 ドラ

親の多井が配牌でチートイツのイーシャンテン。

あっさりテンパイが入れば、待ちごろの字牌もあるしアガりは堅いかと思っていたが、切ってしまった牌が数回被るなど、なかなかテンパイしない。

早々にドラトイツで仕掛けていた野村も時間がかかっている。

12巡目に宮田がドラ2チートイツの単騎テンパイを入れる。

数巡後、宮田がをツモ切ると多井が叩く。

ポン ドラ

終局間際、多井がツモアガりを手元に置く。

アガリ牌を食い取られ、それで4000オールを引かれてしまった宮田の心中やいかに。

東3局1本場 ドラ

松ヶ瀬がドラのカンチャンを引き入れてリーチ。

リーチ・ドラ1だが、カンチャンと引き入れ、の待ちならかなり気分は良かったに違いない。

しかし、これがツモれず、あげくツモ切ったドラのを宮田にポンされてしまう。

両者ともアガれないまま、回って回ってテンパイを入れた多井の3人テンパイで流局。

東3局2本場 ドラ

苦しみながらも連荘を果たした多井。筆者の経験則からも「ここは噴きあがるか?」と
思っているとやはり来た好配牌。

6巡で下記に仕上げてリーチを打つ。

ドラ

あと12回ツモれるし、問題ないとも思うのだが少しの違和感があった。

はもとよりを引いてもヤミテンで親マンになる手牌。

待ちはそれほど優秀ともいえないであればこそ、少し様子を見ても良かったのではないかと思えた。

次巡のツモをツモ切る時の多井のアクションは明らかに後悔していた。

結果的にはを引いて手変わり、ヤミテンだとしても他家からは恐らくこぼれていない。しかし、多井もまだ本調子ではないのは間違いない。

東3局3本場 ドラ

ここは宮田がロスなく手牌をまとめ、11巡目にリーチ。

追いつく者はいなかった。一発で引きあがり、リーチ一発ツモドラの効率の良いマンガン。

ツモ ドラ

これで宮田は持ち点が54400点となり、ダントツに。

東4局 ドラ

このまま逃げ切りたい宮田が8巡目にポンテンを入れる。

しかし、マチは悪く必ずしも取るべきとは言えない。

ポン ドラ

ここに親の松ヶ瀬がプレッシャーをかけるべく、リーチを打つ。待ちはカン。宣言牌はで、数巡前に不要なをツモ切っている。

打点も待ちも良くない宮田はオリに回るが、完全な現物がなくなり、で3900点をオリ打ちしてしまう。

親のリーチに打って3900点なら、まだ助かったという範囲かもしれないが、筆者にはとても大きい放銃に思えた。仕掛けた上でのオリ打ちだからだ。

これで気をよくしたのか、松ヶ瀬は次局もリーチ。4000オールは4100オールをツモあがり、宮田に迫る。

さすがに次局は多井に捌かれ、連荘はできなかったが、ここまで一人静かに鳴かず、じっくりと打ってきたのが実を結んだ。

南1局、2局は流局、300・500のアガリと平穏に終わり、迎えた南3局。

親を迎えた多井の配牌。

ドラ

678の三色がはっきり見え、これが思い通りに仕上がればトップまで考えられる。しかし、ツモはそう簡単に来てくれない。

それでも14巡目には理想形に仕上げた。テンパイ打牌は

ドラ

待ちのが二枚切れているだけで、枚数上はかなり良さそうに見える。
多井はヤミテンを選択した。

そして15巡目には松ヶ瀬がこちらも勝負手を入れる。

ドラ

どちらが勝負手を実らせるかと思っていたところ、思わぬ形で決着がつく。

ホウテイで松ヶ瀬がをつかみ、多井に12000点の放銃。

しかし、これはホウテイで自身のアガリがないのだから多井の現物であるを打つべきである。

当人も当然そんなことはわかっているはずだが、この時の打牌モーションはものすごく高速であった。

なかなか勝負手がアガリに結びつかない苛立ちみたいなものがあったのだろうか?

このアガリで多井が一気に行くかと思われたが、この日の牌勢が一番良かった宮田が5200は5800で突き放し、トップを奪取する。

奇しくもホウテイで放銃してしまった二人が3着、ラス。松ヶ瀬は耐えて2着目につけていただけに、悔やまれる。

1回戦結果
宮田 +37.4 多井 +21.6 松ヶ瀬 ▲13.6 野村 ▲45.4

2回戦 多井-宮田-松ヶ瀬-野村

東1局 起家の多井が手なりでピンフドラ1に仕上げリーチ。
それをツモアガって2600オール。

流局をはさんだ東1局1本場、事件が起こる。

東1局1本場 ドラ

筆者は宮田の後ろで戦局を見ていた。

7巡目にチートイツのイーシャンテンとなった宮田が場に高いのを見てか1枚浮いていたを切ると、松ヶ瀬からロンの声。

ドラ

はっきり言ってこれは仕方がないとしか言いようがない。
確かにピンズが高めではあったが、他家の河は、松ヶ瀬以外は普通である。
そして松ヶ瀬の河だが、

(以外は手出し)

この放銃を攻めるのは酷であろう。

東4局 ドラ

松ヶ瀬が素晴らしい勝負勘を見せる。

ドラ

6巡目にこのテンパイ。リーチを打つとしてどう受けるかだが、ドラも1個あるし、リャンメンリーチを打つ人の方が多いのではないだろうか?

松ヶ瀬はを打ってシャンポンに受ける。

もちろんその間にでのアガリはない。

8巡目に安めではあるが、をツモアガって1000-2000。

南1局 ドラ

ドラがトイツの好配牌を手にした松ヶ瀬が4巡目にテンパイ。

ドラ

ここからの変化は色々考えられる。マンズの2~8を引いた時やピンズ、ソウズでも良い。出アガリだけを考えるなら字牌待ちでも良い。

もっともこの巡目だからカンやピンズのノベ単テンパイには取らないであろうが。

そこにツモと来た。

これならばドラを切ってのよりも変則3メンチャンに受けた方が出アガリも含め早そうだ。

親を維持したい多井が、松ヶ瀬の現物を2つ鳴くことができ、クイタンのみの1500点で追いつくが、テンパイ打牌のがつかまる。

南3局 ドラ

好調の親の松ヶ瀬がポンテンを入れる。

ポン ドラ

このポンの前にと手出しを入れており(実際ははカラ切りだが)、テンパイが濃厚だ。
これに反応した多井。チートイツのイーシャンテンから、松ヶ瀬を警戒し、1枚持っていた現物のを切る。

これにロンをかけたのが野村。

ドラ

野村の河にはピンズ、ソウズが並べられその後にと置いてあるから、煮詰まっている。

多井も当然警戒していたが、一瞬松ヶ瀬のリャンメンターツ落としに気が行ってしまったのだろう。

このアガリにより、並びは1回戦とは真逆になった。

観る者にとっては実に面白い展開である。

2回戦結果
松ヶ瀬 +38.3 野村 +5.7 多井 ▲5.9 宮田 ▲38.1

トータルポイント
松ヶ瀬 +24.7 多井 +15.7 宮田 ▲0.7 野村 ▲39.7

3回戦 野村-多井-松ヶ瀬-宮田

東1局

親の野村8巡目に

ドラ

トータルラス目であるだけに、なんとかツモり四暗刻に仕上げたいところ。

11巡目に松ヶ瀬からが放たれ、当然ながら2000点をアガる。

もう少しこの局の行方を見てみたかったところだ。ちなみにこの時点でが1枚ずつ、は2枚生きていた。

東1局1本場 ドラ

連荘を果たした野村。今局もロスなく手牌をまとめ9巡目にリーチを打つ。

ドラ

このリーチ宣言牌のに反応した下家の多井。手バラからチーを入れる。

実はそれより早くテンパイを果たしていた宮田が危険牌を引くことなく、

ツモ

1300-2600は1400-2700のツモアガり。

東3局 ドラ

多井が仕掛ける。

ドラ

10巡目にここからをポンして、イーシャンテン。

この日の多井は若干アガリまでは遠そうな手牌からでも仕掛けを入れ、他家を牽制し、主導権を取りに行く局面が幾度かあった。

最終的にアガリまで結びつかない場合もテンパイ料をせしめるなど、全体的に多井が局面をリードしていることが多かった。

さらにをポンしてテンパイ。ドラ表示牌のカン待ちで苦しいが、他家もアガリが見込める手とはならず、押し返せない。

多井が一人テンパイで3000点を加点する。

東4局は親の宮田がマンガンクラスのアガリはないものの2000は2300、7700は8300、3900は4800とアガリ続け、1回戦と同様にダントツの体制を築く。

南2局 ドラ

トータルポイントを考えても一つでも上の着順、少しでも多くの点数が欲しい野村が
うまく打ちまわした。

8巡目に

ツモ ドラ

ここでテンパイ取らずの打とする。

ソウズがこのような形でなければ、やむなくリーチを打ったのではないかと思うが、イッツーが見える以上はここは外すのが正解だろう。

数巡のツモ切りの後、結果的にはアガリ逃しとなるを引いてくる。

これはもちろん想定内。フリテンリーチを打つ。終盤になんとかツモって1300-2600。

オーラスは親の宮田がさらに加点する。
8巡目にドラアンコのヤミテン。

ドラ

河も強く

これでは周りも止まらない。つかまってしまったのは松ヶ瀬。

この12000をアガった宮田が大トップのまま半荘終了。

3回戦結果
宮田 +39.8 多井 +12.2 野村 ▲12.5 松ヶ瀬 ▲39.5

トータルポイント
宮田 +39.1 多井 +27.9 松ヶ瀬 ▲14.8 野村 ▲52.2

4回戦 宮田-多井–野村-松ヶ瀬

東1局 ドラ

とにかく点棒が欲しい野村が8巡目にリーチ。

ドラ

特に状況のない場面であればヤミテンで5200、ツモで2000-4000に構えるのがセオリーであろう。

しかし、野村は叩かないといけない。迷わずリーチと行った。

ツモってウラをのせる事しか頭になかっただろう。

16巡目にツモアガるが、ウラはのらず。

嬉しい事には間違いない。だが……。

東3局 ドラ

親を迎えた野村。マンガンをツモアガりトップ目で迎えた親である。
ここで連荘をし、とにかく点数を叩くのみ。
相当気合も入っていたはずだが、これをあっさりと多井が流す。

ポン ツモ ドラ

これが7巡目の出来事。次戦も合わせて親は3回残っているが、そのあっけない親流れにかなりショックだっただろう。

それでも宮田のアガリを挟んで南1局、野村に手が入る。6巡目にこのリーチ。

ドラ

10巡目にツモアガって2000-4000。

その後、大きなアガリはなくこのまま野村のトップかという空気が流れて、オーラス。凄い1局が待っていた。

まず動いたのは南家宮田。4巡目にをアンカンし、9巡目、12巡目にをポン。

ポン ポン アンカン ドラ カンドラ

出て6400、をツモれば点パネでマンガンである。

そこにラス親の松ヶ瀬が業を煮やしたか、ツモ切りでリーチを打つ。

実は宮田のポンの前にマンガンのヤミテンを入れていた。

ピンフドラ3で打点が十分であること、また直前に野村にを打たれていたことから一瞬ヤミテンに構えたのだと思うが、もう黙っていられなかったのだろう。

そしてここにトップ目の野村がリーチを打ってくる。

「いったい何事だ!?」とも思ったが、野村としては大きめのトップを取り少しでも最終戦に向けて条件を軽くしておかなければならない。

それにしても、宮田の3フーロ、親の松ヶ瀬のツモ切りリーチに割って入ってくる以上、
自信があると見るのが普通だ。

リーチドラ1のカン待ち。普通に考えればありえない。
しかし、多井はを切っており、宮田も手牌にが組み込まれていることは考えにくく、
松ヶ瀬は読みにくいが、かなり山に眠っていそうに見えた。

野村は最終戦を前に大勝負に出た。

実際、この時点ではまだ3枚生きていた。

そしてこの勝負を制したのは野村であった。18巡目にを掘り当てた。

ウラドラ()を2枚見る事ができたが、なんとも言えない虚脱感が漂う1000-2000。

しかし、野村がトップを取ったことによって最終戦は現実的に全員に優勝のチャンスがある非常に面白い状況となった。

4回戦結果
野村 +23.9 多井 +12.1 松ヶ瀬 ▲12.1 宮田 ▲23.9

トータルポイント
多井 +40.0 宮田 +15.2 松ヶ瀬 ▲26.9 野村 ▲28.3

最終戦を迎えたこの時点で、トータルトップの多井とラスの野村でも差が68.3ポイントと逆転が不可能な差ではなく、誰にでも優勝の目がある。

タイトル戦の決勝としては全員に目があるのは、そこそこ珍しいのではないだろうか。

ただ、松ヶ瀬、野村は多井をラスに沈めるのが必須であるが、そこは試合巧者の多井。相当難しいのは間違いない。

5回戦 宮田-松ヶ瀬-多井-野村

東1局 ドラ

各者それぞれに条件があるため、全体的に重く場が進行していくものと筆者は考えていた。
場を軽く進められるのは多井だけである。宮田もサクサク流していてはトップを取りきれるかわからない。

そして始まった最終戦。

6巡目に多井が自風のを仕掛ける。10巡目に松ヶ瀬がを切ると多井からロンの発声。

チー ポン ドラ

松ヶ瀬はリャンシャンテンからの放銃だが、多井の河は

これでは攻める立場から、打ってしまうのも仕方がないであろう。

普通3900程度のアガリではトップは決まらないと思うが、優勝者が決まるこのポイント状況においてはとてつもなく大きいものである。

東2局1本場 ドラ

4巡目に野村がペンをチー。8巡目に1枚切れのを手出し後、9巡目にをチーして打

まず間違いなくテンパイであろう。このを鳴かせたのは多井である。

多井が野村の染め手に気づいていないはずはない。

自分は3900点をリードしている状態であり、基本的には高みの見物をきめこんでいれば良い立場だが、野村にトップをとってもらう分には大体の場合において都合が良い。

宮田が2巡目に仕掛けているのもあったか、自由に打たせないために鳴かせたと見るのが妥当である。

このアシストで野村がマンガンをツモあがり、トップ目に立つ。

多井は野村→多井→宮田の並びに内心、ほくそ笑んでいたに違いない。

その後は野村に5200のアガリが出るが、その他は誰もアガれないし打たない。

オーラスを迎えて、点棒状況は以下のとおり。

宮田 33800 松ヶ瀬 13700 多井 29900 野村 42400

ラス親の野村はただただ点数を叩くのみ。この時点で多井とは32.5ポイント縮めているが、
まだ35ポイント強稼がなくてはならない。

宮田は24.8ポイント差あったので、この時点で多井と10.9ポイント差。多井からの直撃はなかなか考えにくいので、現実的に野村を捲くるのが簡単か。

そして始まったオーラス。野村が7巡目に自然なポンテンを取り、1000オールを引く。

これで宮田は少し厳しくなった。

オーラス1本場。親の野村12巡目にこの手牌。

ドラ

ここにをツモって打。テンパイをしなければいけない親なのに何故?

が三枚切れであったのも理由であろうが、一番大きな理由は…

を引いた野村。もちろんを横に曲げる。

「ロン」

発声は多井。野村は多井のテンパイを察知していたか。

多井の異様な河から、役をチートイツと読むのは容易だが、1巡でも良く止めたといえる。これで多井の優勝が決まった。

 

優勝はトップを一度も取っていないS級ライセンス多井。対局後の挨拶で以下のように述べている。

「僕にもまだまだ麻雀の知らない部分がたくさんあります。それでも対局者含め、ここにいる人達とは相当に実力差があると思っています。このままではRMUの将来が心配なので、全員に頑張って欲しい」

このコメントだけ読むと、少し不快に感じる方もいるかもしれない。

しかし悔しいことに納得せざるを得ない。

敗者の3人には大きな敗因があった。多井にもミスはあっただろうが、致命的なものではなかった。何よりトップを取っていないにも関わらず優勝という結果にそれが表れている。

最終結果

多井 +50.6 宮田 +13.0 野村 ▲4.6 松ヶ瀬 ▲59.0

この日、牌勢が1番良かったのは間違いなく宮田であろう。

2回大トップを取ったものの、2回ラスを引いてしまったのが痛い。

恐らく本人も分かっていることだろうが、道中で良い意味で手を抜くこと、やり過ごし方というところに課題があるように思えた。

野村、松ヶ瀬は打たなくても良かった12000点が結果的には大きく響いた。

5回戦の中で12000点くらいならと思われる方もいるかもしれない。

しかし、このステージで12000点を放銃すればその半荘はまず3着かラスだ。

短期決戦では1回のラスがとてつもなく大きい。

私も観戦していて勉強、再確認させてもらった。

多井という壁は高かった。

しかし、それぞれの敗因は己にあった。

そう考えれば、決して手の届かない壁ではなかったようにも思える。

筆者を含め、他のライセンス者、アスリートはさらに研鑽し、その壁を崩さなければならない。

皆それぞれがレベルアップし多井を苦しめることができるようになれば、RMUの対局はもっと面白くなるはず。

そうなっていけば、対外的にもRMUの名はもっと麻雀ファンに浸透していくだろう。

鈴木智憲
文責 鈴木智憲