11月28日、2010年度RMUスプリント第6戦のサターンカップが開催された。
まだ12月には入っていないのだが、師走間際のこの時期。
やはり、皆さんお忙しいのか若干、寂しい人数での大会となった。
ただ、人数は確かに寂しかったのだが、Cルール(赤アリ)ということもあり、
内容はいつも以上に白熱したものとなった。
運営係が何度、「点棒貸して下さい」と呼ばれた事か…(汗)。
さて、そんな白熱した予選の末、決勝に残ったのは以下の4名。
1位通過 A級ライセンス 谷井茂文
予選を4連勝、そして準決勝を大きめの2着と、
内容、勢い、ポイントの全てにおいて
優勝は決まりじゃないかと思わせるような圧勝ぶり。
筆者は谷井の麻雀を良く知っている方だと思うが、
短期決戦である事やCルールということを踏まえてか、
若干、鳴きのバランスや攻守のバランスを変えていたように見えた。
スプリント総合成績も多井に次いで2位であり、
この決勝でも優勝候補の最右翼である。
2位通過 RMU会員 渋谷渚
私の知っている限り、スプリント・クラウン等、RMUの多くの大会に参加し、
良い成績を残している強豪である。
どんな時も飄々と打っており(そういうキャラクターなのかもしれないが)、
RMUのライセンスプロ、アスリートにも是非、
見習って欲しいほどのポーカーフェイスな打ち手だ。
3位通過 RMUアスリート 江原翔
彼が決勝に残ったのがわかった時、
ふとアタマに浮かんだのが「あ、また残ってる」だった。
そう、彼はスプリントの優勝経験者なのだ。
ただ、決勝卓の常連と言うほどではない。
何故、脳裏にそんな事がよぎったのか…。
きっと私の中でインパクトが強い打ち手なのだ。
土田浩翔の麻雀を目標とし、
それをベースとして打っている為(話を聞いた事はないが恐らく…)、
打ち筋は読みにくい所がある。
独特の打ち筋で場の主導権を握る事ができれば、優勝の可能性は大いにあるだろう。
4位通過 一般参加 佐野大輔
会場の通路に近い卓で2回程打っていた事もあり、
何局か打ち筋を観させて頂いたが、「この人、強いな」と思わされた。
手組みのバランス、勝負に出る局面での勝率等、
相当の打ち手である事が容易にわかった。
一般的に「プロ」と呼ばれる打ち手達と比較しても、全く遜色ないだろう。
左から、江原、谷井、佐野、渋谷
この4人で行われる決勝はきっと、面白い闘いになる。
何故かはわからないが、そんな確信めいたものがあった。
起家から江原-渋谷-佐野-谷井
そして始まった東1局。いきなりヤマ場を迎えた。
谷井がドラのがアンコの配牌を貰い、予選からの勢いを感じさせる。
「これ、アガれたら決まるな…」
しかし、麻雀はそう簡単な物ではなかった。
いや、ここまで勝ち抜いてきた3人がそうさせなかった。
テンパイ一番乗りは谷井。ドラはアンコだったが、
その他はカンチャンターツが2組で、普通ならアガるのはなかなか厳しそうだ。
だが、そこは勢いが違う。
ズバズバと有効牌を引き込み、7巡目にカンでテンパイ。
ドラ
前巡にそれを処理していた親の江原が8巡目、を引き、リーチ。
ドラ
そして同巡、北家の佐野がピンフのみではあるが、追いかけリーチ。
そして、谷井のツモは。少考の末、ツモ切ると佐野に刺さる。
ドラ 裏ドラ
メンピン一発ウラで、8,000点。
対局終了後、谷井は「佐野のリーチには行かない方が良かったかな」と語っていた。
江原のリーチだけなら、突っ張る価値は大いにある。
待ちのはゲンブツであり、
他家から打たれる可能性は高い。
しかし、2軒となれば状況は180度変わり、
挟まれた渋谷が手詰まって親の江原のゲンブツを選び、打つ可能性はあるものの、
谷井の待ちで競り勝つ可能性は薄いのだ。
対して、佐野はこの局をこう振り返る。
「優勝するにはトップを取らなければならない状況で、
東1局で並びを作る事が出来たのはとても大きかった」
決勝に4位で望んだ佐野は、1位通過の谷井と約65ポイント差があった。
Cルールはオカが20ポイントあるので、
トップを取れば順位点と合わせて35ポイント入る。
そして、谷井を3着かラスに沈めれば、
40ポイントもしくは50ポイント差がつく。
この満貫直撃はとてつもなく大きいのである。
もしこのまま仮に半荘が終われば、
66ポイント縮まる計算となるので、佐野は優勝である。
しかし、谷井もしぶとい。
東2局すぐに江原から5,200を討ち取り、ラス目を脱出した。
南1局、ここまでなかなかチャンスのなかった渋谷が、
16巡目にチートイツ・ドラ2・赤のテンパイを入れ、
テンパイ打牌で打ち出したが、
なんと同じくチートイツ・ドラ2の佐野に捕まる。
佐野は次局もダブ南・赤で2軒リーチにカンで押し切り、
優勝に向け磐石の状態を作った。
ここで押し切れる力、精神力なのか感覚なのか、
とにかく素晴らしいという他ない。
そして、迎えたオーラス。
佐野は少し遠めながら、クイタンで谷井の親を捌きに行く。
ドラなし
5巡目、ここからのチー。
鳴かなければアガリはないかもしれないが、
鳴かなくてもアガれる可能性はありそう。
どちらに転ぶかわからないが、鳴いても良い紙一重のラインではないだろうか。
この手、筆者には声が出せるかどうか…。
13巡目に-でテンパイした佐野、いかにもアガれそうな待ちだが、
ここに、まず親の谷井から、
また、満貫ツモまたは佐野から5,200以上の直撃で優勝という条件の江原から、
リーチが飛んでくる。
佐野は歯を食い縛ってオリるが、
手詰まった渋谷がホウテイでスジを頼りにを打ち、
これが谷井のシャンポン待ちに放銃する。
裏ドラが2枚乗って12,000。
このアガリで再び谷井がトップ目(優勝)に立つ。
そして優勝の条件は、
谷井:このまま終局すれば、優勝。
佐野:谷井からの満貫直撃かハネマンツモ。
江原:谷井からのハネ満直撃か倍満ツモ。
渋谷:役満ツモ。
このようになった。
筆者は佐野と谷井の間で見ていたが、両者ともなかなかの配牌。
谷井はドラはないが、形はまずまず。
しかし普通にアガリに向かうかどうかは難しいところだ。他家の動向次第か。
佐野は配牌で赤が2枚。
現実的には谷井からの直撃よりもハネ満のツモアガりを目指すべきだろう。
そんな中、4巡目にドラのを引き、条件を満たした佐野。
9巡目にテンパイを果たす。
ドラ
当然のヤミテンに構えるが、ツモる指先に力が入る。
他家はこのツモ動作で恐らく、テンパイに気付いただろうが、
そんな事はこの状況下では関係ない。
簡単にアタリ牌を出すようなメンツではないのだ。
テンパイする直前に江原にを切られた佐野。
江原からアタられるわけではないのだが、その心境はどうだったのだろう?
ツモれる感触はあったのだろうか。
15巡目、筆者が予想していたより静かに、噛み締めるようにを引き寄せた佐野。
素晴らしい優勝だった。
そして、素晴らしい半荘だった。
誰もが丁寧に打ち、暴牌はないが激しくぶつかり合った良い麻雀だった。
筆者が観たスプリントの決勝戦では(全てを観ている訳ではないが)、
一番の好内容だったと言っても過言ではない。
正直な所、運営で体は疲れていた。
それでも、決勝を観て麻雀が打ちたくなった。
本当に良い麻雀だったと思う。
良いものを見た後は本当に気分が良い。
きっと、同様の感想を持った観戦者も多かったのではないだろうか。
次のスプリントは是非、対局者としてここに座っていたいな。そう思った。
さて、次回のスプリント第7戦ウラヌスカップは、
一発裏ドラアリの標準的なルールで12/18(土)に行われます。
多数のご参加をお待ちしております。
文中敬称略 文責・鈴木智憲
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