9月7日。晴れときどき雨。
銀座柳本店にてスプリント2008ジュピターカップ開催。
「秋の運動会」を裏テーマに行われたチーム&個人戦としての両面をもった本カップ戦。
チーム優勝は黄色チームに決まりあとは決勝を残すのみ。
個人
順位 |
優勝 黄色チーム
|
2位 青チーム
|
3位 緑チーム
|
4位 赤チーム
|
選手名
|
ポイント
|
選手名
|
ポイント
|
選手名
|
ポイント
|
選手名
|
ポイント
|
1
|
安藤顕一 |
111.0 |
石山大介 |
66.6 |
北島路久 |
97.1 |
中村惟之 |
84.5 |
2
|
池田俊介 |
72.1 |
小杉正博 |
62.3 |
江原翔 |
85.5 |
合田雄亮 |
24.2 |
3
|
室生述成 |
69.8 |
平山友厚 |
56.4 |
米山明宏 |
16.4 |
山谷克也 |
16.2 |
4
|
江澤陽一 |
51.7 |
山田田 |
45.9 |
飯島健太郎 |
10.8 |
石川義之 |
16.0 |
5
|
岡田ふさ代 |
27.5 |
高橋泰史 |
20.8 |
下出和洋 |
9.0 |
中村浩三 |
12.9 |
6
|
石川泰之 |
25.9 |
萩原亮 |
14.5 |
坂巻稔永 |
6.9 |
水沼利晃 |
12.0 |
7
|
堀江貴太 |
19.4 |
伊東直毅 |
4.0 |
福田英一 |
▲19.2 |
所貴志 |
0.9 |
8
|
蛭田数弥 |
9.1 |
吉田信之 |
▲1.0 |
元木敦 |
▲25.4 |
多井隆晴 |
▲7.1 |
9
|
小川哲司 |
▲12.5 |
深谷 祐二 |
▲2.4 |
阿部孝則 |
▲25.4 |
鈴木智憲 |
▲26.0 |
10
|
渡辺卓也 |
▲18.0 |
佐野大輔 |
▲4.4 |
雪森しずく |
▲30.6 |
長谷川玄 |
▲26.6 |
11
|
白石温郎 |
▲22.8 |
河野高志 |
▲4.5 |
富岡晶 |
▲40.8 |
仲大底充 |
▲28.4 |
12
|
藤中慎一郎 |
▲31.9 |
さくらい良 |
▲20.1 |
谷井 茂文 |
▲41.6 |
島倉典広 |
▲49.6 |
13
|
夢野星 |
▲73.6 |
宇野京子 |
▲51.7 |
赤岩由美子 |
▲43.9 |
飯野正治 |
▲76.4 |
14
|
村田淑子 |
▲73.9 |
齋藤雅迫 |
▲61.7 |
村瀬将之 |
▲116.6 |
山下健治 |
▲142.3 |
|
合計
|
153.8 |
合計
|
124.7 |
合計
|
▲117.8 |
合計
|
▲189.7 |
優勝の黄色チーム
決勝メンバーは以下の4名。コメントと共に紹介しよう。
安藤顕一(一般) 決勝開始前:55.5P
「今まで準決勝も出たことなかったんで緊張しています」
北島路久(アスリートコース) 決勝開始前:48.6P
「入会直後の大会でいきなり決勝に出られるとは思いませんでした。がんばります」
江原翔(アスリートコース) 決勝開始前:42.8P
「準決勝でいい勝ち方できたんで優勝を意識しています」
中村惟之(一般) 決勝開始前:42.3P
「僕の麻雀なんて人に見せられたもんじゃないですよ(笑)」
まず決勝全11局の経過を羅列する。主観的な話はそのあとにしよう。
東1局。親安藤の一人ノーテンで流局。親流れ。
東2局1本場。南家江原がリーチ。全員降りてまたも流局。親流れ。
東3局2本場。親の江原がリーチのみの2,000点をピンフダマの西家安藤からアガる。
東3局3本場。北家中村の先行ピンフのみリーチに親の江原が無筋を2枚切り飛ばし追いかけるもツモアガりは中村。
東4局。親の北島のドラ1リーチに江原がワンチャンスで3,900をオリウチ。
東4局1本場。江原の役牌アンコのリーチに中村がイーシャンテンから打ち込む。ウラ2枚で8,000。
南1局。江原がツモのみで300-500。
南2局。江原がメンタンピン一発ツモ。10巡目にしてヤマに残り2枚のリャンメンを一発でツモる。
南3局。打点を稼ぎたい南家北島がピンフのみをリーチする。ツモってウラ2枚で2,000-4,000。
【優勝条件】
江原(43500点):アガれば優勝
北島(37600点):優勝(この半荘のトップ)まで連荘
中村(20000点):三倍満以上
安藤(17900点):三倍満ツモか役満
南4局。親の北島が7巡目にピンフサンショクのリャンシャンテンになるもその後のツモ悪く最後のツモでようやくテンパイ。
南4局1本場。江原がツモのみ300-500で優勝!!
【優勝者プロフィール】
江原翔
25歳
アスリートコース所属
北海道札幌市出身
小学校入学前に家族で麻雀を始める。
大学生の時、知人の紹介で土田浩翔主催の麻雀教室に通うようになる
大学卒業後、就職のため上京。東京の公式戦で打つ土田の後ろに立ち麻雀を学ぶ。
RMU発足後、2回目の入会審査で入会。
ジュピターカップでカップ戦初決勝にして初優勝を果たす。 |
前述の通り、江原は土田浩翔に憧れて麻雀界に飛び込んできた選手である。(名前が『翔』なのは偶然か。はたまた運命か)
土田の後ろに立つことで麻雀を学び土田と打つためにRMUに入っている。
江原にとっての麻雀界とは「憧れの土田がいる世界」なのである。
予選中に筆者(B級)、藤中(A級)、鈴木(B級)、そして江原という組み合わせがあった。
江原がオーラスで藤中をハナ差逆転し、トップ。
席を離れた鈴木がつぶやいた。
「土田さんと打っているみたいだったなぁ・・・」
それもそのはずである。このプロフィールを見れば鈴木も納得するだろう。
「土田さんの麻雀は常に意識しています。もちろん全部は真似できないですけどね(笑)」(江原談)
土田の麻雀とは大局観の麻雀であると私は思う。
また、自己の信念に基づき結果ではなくプロセスを重視した麻雀が土田流だとも私は感じている。
そしてその中で重要視される「信念」というキーワードは江原の勝ち方にも随所に見られるものであった。
優勝コメントは「堂々と信念を持った麻雀を打ち切ることに集中しました。結果が付いてきてよかった」
彼もまた、結果とは求めるものでなくプロセスに付随するものであることを知っている。
例えば決勝の東3局3本場。
前局アガりわずかなアドバンテージを得た江原(親)は中村(北家)のリーチにイーシャンテンから無筋を2枚切って追いかけている。
「ドラが見えてないけど先行リーチが高いとはまったく思わなかった。自分の手はそれなりに整っているしリードを広げるチャンスと思って攻めた。振り込んでもまだ東場だしいくらでも立て直せると思った」(江原談)
私の隣で伊東直毅(B級)が観戦していた。伊東は「すごいな、僕はあの2枚は押せない」とつぶやいていた。
そして東4局のフリコミ。
このフリコミには本人含めほとんどの者が首をかしげている。しかしそこに至る過程がやはり江原らしい。
実はこの局、北島(親)のリーチは、
ドラ
そしてリーチを受けた時の江原(北家)は、
ここに上家が切ってきた6枚目のに微動だにしない。
とが北島の現物ということから鳴いてしまう人も多いのではないだろうか。
「鳴きももちろん考えた。でも準決勝まではああいう手をメンゼンで仕上げてきたから決勝に座れた。あのを鳴かなきゃ優勝できないんなら今日は優勝できなくてもいい」(江原談)
もし鳴いていたらすぐにが北島に下がり2,000オールを引かれている。
結局江原が3,900を打ったため鳴きの有無による結果は点差的には差がないが、僅差での争いという点からはトップの持ち点が少ないほうがいいだろう。
「中途半端に前に出て打っちゃったのはどう考えてもぬるい。打ち込みは『やっちゃった』って思ったけど鳴かなかったことは何も後悔していません」(江原談)
そして次局のリーチ東ウラ2。少しだけ江原は優勝を意識する。
優勝を意識したために打ちまわしに歪みが出て結局優勝を逃す人はかなり多いように思う。
しかし江原にとっては結果は副産物。冷静さを失わせるものではない。
南1局のツモのみ300-500。これは役なしカンのダマテンに構えた後、を引いてリャンメンになったのが12巡目でドラが。
の暗刻もあり、手替わりは一切ない。これをダマテン続行のまま次巡にをツモっている。
「ドラ筋待ちでしたけどあの手格好になった局が勝ちに結びつくとは思えなかった。すでに仕掛けてる親の現物もたくさんあったし危険牌を引いたらすぐにオリる気でした。偶然ツモっただけです。ついてましたね」(江原談)
次局のメンタンピン一発ツモに関しては、
「入り目がの。タンヤオが確定しましたよね。直前にを打たれたし待ちがそんなにいいとは思わなかったけど決めるにはここかな、と思った」(江原談)
さて、続く南3局は北島(南家)がピンフのみをリーチしてウラ2枚のツモアガリ。
ピンフのみのリーチは麻雀のセオリーには反するが親の足止めも考えると致し方なしか。これをあっさりツモってウラ2枚。しかしそれでも江原(親)に動揺はない。
「感覚的な展開読みで『もう一波乱くらいかなぁ』とこんなケースを予想してたから親っかぶりで点差が一気に縮まっても何とも思わなかった。むしろ展開読みが当たっててちょっと喜んでた(笑)」(江原談)
そしてオーラス。江原の配牌はアガれる気配を感じさせない。
「配牌を見て『決着は次の局以降だな』と思った。この局で僕が優勝できるなら親のノーテン流局だけだろうから場を歪めるようなぬるい鳴かせだけしないよう気をつけました」(江原談)
江原は鉄壁のベタオリ。そして親に簡単にテンパイはとらせない。親はかろうじて最後のツモでテンパイを入れて連荘。
優勝を決めた江原のツモアガリは以下の手だった。
ツモ ドラ
このツモの直前に上家はを切った。このを鳴いてフリテンの打ちも選択肢の一つではないのだろうか。
いやそもそもテンパイ打牌はなのだが、ここでを切ってテンパイとらずさえある。そうすればこの上家のを鳴いてとのシャンポンでタンヤオになる。
江原はさらっと答えた。
「テンパったんだから切りますよ。僕が優勝できるなら僕のツモにがいてくれるはずですから」(江原談)
うーん、今回のカップ戦覇者はなかなかオットコマエだなぁ。
以上、文中敬称略
順位
|
選手名
|
持越点
|
決勝
|
最終成績
|
獲得点
|
優勝
|
江原 翔
|
42.8 |
29.4 |
72.2 |
10 |
2位
|
北島 路久
|
48.6 |
14.5 |
63.1 |
6 |
3位
|
中村 惟之
|
42.3 |
▲14.9 |
27.4 |
5 |
4位
|
安藤 顕一
|
55.5 |
▲29.0 |
26.5 |
4 |
加筆:
江原君宛てに土田さんから預かったお祝いメッセージを披露します。
——————
江原君
北海道にいた頃、江原君は私の出場している公式戦には、ほぼ全て観戦に来てくれていましたよね。
しかも私の後ろにピタリと張り付いて、1打たりとも見逃すまいと微動だにしない観戦姿勢は、今の若手には見られない希有な存在に映りました。
そしてその姿勢は、彼が仕事の関係で上京した後も変わりませんでした。
まだ私が連盟にいた頃、プロリーグはもちろん、他の公式戦も時間があるかぎり私の背中に張り付いていました。
センスは少し不器用なところがある分、才気溢れるタイプとは正反対に見えます。
しかし優勝と聞いて遅咲きの努力家が、そろそろ頭角を現してきた事を感じます。
だから私はとても嬉しいんです。
心から「おめでとう」と言いたいと思います。
土田浩翔
——————
土田に聞いてみた。
「麻雀打ちが本格的に花開くのは平均すると何歳くらいですかね」
土田は答えた。
「35歳くらいじゃないかな。でもメッセージにも書いたように江原君は遅咲きだと思っている。多分40歳すぎる頃に本格化するんじゃないかな。今回の優勝は遅咲きの花がようやく芽を見せたって感じだね。僕も楽しみが増えたよ」
(文 さくらい良)
|