2008クラウン終結!優勝は新鋭渡辺卓也 |
開始30分前に会場に到着すると1階のエレベーターで古久根と谷井と一緒になる。 二人ともかなりリラックスした雰囲気。 対局場に入るとすでに多井と渡辺の姿があった。 渡辺は卓に座り摸打のチェックをしている様子。 いつもなら対局前でも談笑する余裕を見せる多井だがこの日は体調があまりよくないようで無言のまま対局開始の時刻を待っている。 そのせいか会場全体も異様に静まり返っているのが印象的であった。 本日の決勝を争うのは以下の4人。 古久根 英孝
RMUライセンスS
第26、27、30期最高位・第7回プロ最強位・第1期天元位/他 卓越した場況読み能力を誇り、そこから繰り出される圧倒的な攻撃力で、数々のタイトルを獲得してきた。 多井隆晴
RMUライセンスS
第31期王位・第1期日本オープン・第11期新人王 攻守のバランスに優れ、RMU生涯成績はトップ率3割3分、ラス率1割7分という高いレベルで安定した成績を残している。 谷井茂文
RMUライセンスB
2007RMUスプリント優勝 私と谷井は、谷井が競技プロになる前からの付き合いなのだが、当時は仕掛けを多用したラフな印象だった。しかし古久根の門下生となってからはメンゼンを重視した手厚い雀風に徐々に変化していき、昨年は見事2007RMUスプリントを獲得した。 渡辺 卓也
競技麻雀を始めてまだ2年ほどというニューフェイス。 1回戦
起家から谷井 多井 古久根 渡辺の順。短期戦ということもあり誰もが先制し体勢作りの足がかりとしたいところ。 東2局 8巡目 ドラ ツモ それまでの捨て牌が以下の通り。 古久根は切りを選択。 次局は西家谷井が7巡目リーチ。 東4局 注目すべきは多井の6巡目。 ドラ ツモ 東家 渡辺 南家 谷井 西家 多井 北家 古久根 をトイツ落としした後二枚切れのを手出ししていることから、親とぶつかることが明白な状況であり、親の渡辺の捨て牌にピンズが高く、あまり良い待ちではないことを考えるとリスキーなリーチに思える。 ドラ 裏ドラ ツモ 多井のリーチが局面を長引かせ、生まれたアガリであるのは間違いない。 それは多井の中でこれまでの流れが谷井に傾いていることを察知したことが要因であろう。 この局も谷井の切り出しが強く、このまま谷井の一人舞台になるのを恐れ、谷井に手を曲げさせて勢いを殺すことが目的であったと思われる。しかしその行為が第三者の渡辺に大物手を成就するきっかけを与えてしまうこととなってしまった。 南2局 親番 多井 8巡目 ドラ 続く1本場でも、 ドラ このリーチをドラアンコで追っかけた南家谷井の宣言牌を捉え、裏ドラはで12000。 南4局 親 渡辺 さすがにこの親はあっさり落としたいという意見は3人一致しているはずだったが、渡辺の牌勢がそれを許さない。 ドラ リーチツモ この4000オールのアガりと、次局も一人テンパイと加点し、終わってみれば11万点を超える大トップ。 2回戦
起家から渡辺 谷井 多井 古久根の順。 東1局 西家の多井が2巡目に以下のテンパイ。 ドラ の手変わりを待ちヤミテンに構えると、2巡後のツモがアガりとなる。 6巡目には下記の牌姿。 ドラ これにうまく対応したのが親番の谷井。ピンフ系の手牌でいつ南を手放してもおかしくない牌姿だったが、うまく単騎のテンパイを組み、13巡目にリーチ。 ドラ 16巡目に見事ツモあがり。 東4局 親番は古久根。 現状は微差のラス目なので、この親番で叩いて渡辺をラス目にしたうえでトップを伺える位置になれば良しといったところ。9巡目には以下の牌姿になる。 ドラ しかし次巡ツモ切ったを下家の渡辺に仕掛けられる。明らかなピンズのホンイツ仕掛け。 ドラ その宣言牌のを渡辺がポンしてこちらもテンパイ。 ドラ リーチと仕掛けに挟まれた古久根の牌姿が、 ドラ 何を引いてテンパイが入っても渡辺に通っていないピンズを切らなければいけない状況なので、これはもう無理だと思ってみていると、次巡をツモ切って8000放銃。 3回戦
起家から多井、古久根、渡辺、谷井の順。 渡辺との差も若干ではあるが縮まり、ここで再度渡辺を沈めることが出来れば背中が見えてくる。 東2局 先手を取ったのは北家谷井。 10巡目 このリーチを受けた渡辺、苦しい手牌をうまくチートイツに仕上げテンパイが入る。 ドラ さてどうする? は谷井の現物で二枚切れ。 このアガリでさすがに渡辺の優勝は確定的になったと思われたが、東4局にまさかのボーンヘッドをしてしまう。 まずは東家谷井が7巡目にリーチ。 打リーチ ドラ それまでの4者の河が、 東家 谷井 南家 多井 西家 古久根 北家 渡辺 カンのヤミテンという選択もあるが、場況を読み、山に残っている牌にピントを合わせるスタイルを、師である古久根から受け継いでいる谷井としては当然カンで即リーチ。 さらに多井も11巡目に追いつく。 ドラ この二軒リーチを受けてベタオリの渡辺。16巡目の手牌が以下。 このアガりをきっかけに谷井が4本場まで積むが、多井が2巡目リーチ。 さらに親番でも1000オールをツモリ多井が抜け出すかと思われたが、今度はここまで精彩を欠いていた古久根が、 ドラ この配牌を巧みな仕掛けで7巡目にアガりきり、息を吹き返す。 ツモ ドラ 一人蚊帳の外になってしまったのが渡辺。 南4局 北家渡辺が8巡目リーチ。 ドラ 満貫をツモってもわずかにラス抜けを果たせない。 ドラ 今の渡辺にぶつけても勝算が高いと踏み、ツモ切りで追いかけリーチを打つ。 残り枚数は7枚対3枚であったが、まるで体勢の差を見せつけるように古久根の一発目のツモはであった。 4回戦
起家から古久根、多井、谷井、渡辺の順。 東1局 ドラ ここに上家から場に二枚目のを打たれる。 ドラ この仕掛けをみて北家渡辺、 ドラ こちらも567の三色含みのイーシャンテンとなっていたが、古久根の仕掛けに合わせるように南家多井がツモ切ったでポンテンを取る。 東3局1本場 西家 古久根 ドラ この配牌が11巡目には ツモ ドラ トイツ場の流れを完全に捉えた見事なアガリ。 東4局谷井8巡目リーチ。 ドラ このリーチに対して、親番とはいえドラなしのイーシャンテンから、あっさりをツモ切り8000放銃。 5回戦
起家から渡辺、古久根、多井、谷井の順。 東1局 まずは谷井が11巡目に先制リーチ。 ドラ ほどなくツモリ2000、4000。 東2局 今度は古久根が親番で9巡目リーチ ドラ 一発ツモで4000オールをツモると次局も、 リーチツモ ドラ 裏ドラ 一人テンパイを挟んで リーチツモ ドラ 裏ドラ この2600オールで持ち点はすでに57000点。 東3局 自ら親番をもってきた多井がマンズで仕掛ける。 ドラ しかしこの仕掛けによって死に体の渡辺にテンパイが入ってしまう。 ツモ ドラ 先にピンズが埋まってしまうとマンズが高くなっていることもあり、アガリは難しい状況だったが先にマンズが埋まり待ちは場に安い絶好のピンズ待ち。 リーチ一発ツモ ドラ 裏ドラ 見事一発でツモり、多井をラス目に落としかつ自身も2着に浮上する大きなアガリで再び渡辺がトータルトップに返り咲いた。 さらに南1局の親番では、 リーチツモ ドラ 裏ドラ この4000オールをツモる。このアガリでギャラリーの誰もが渡辺の優勝を確信したであろう。次局は多井の一人ノーテンで連チャン。 続く2本場は、8巡目に古久根がリーチ ドラ このリーチを受けた渡辺。なんと古久根がリーチ後にツモ切ったを叩き前に出る。 ドラ さらに古久根からを食いとって放銃。 ロン ドラ 裏ドラ これは明らかな判断ミスといえよう。 南3局 ドラ 安手のはずがない北家古久根のこの仕掛けに、で5200を放銃してしまう…。 5回戦オーラスを迎えて点棒状況が以下。 トータルポイントは なんと二回戦終了時に200ポイント以上あった古久根と渡辺の差が、満貫で変わるところまでになってしまった。 全員に優勝条件がある最終戦オーラスとなった。 南4局 ドラ 各々の配牌は 東家 谷井
南家 古久根
西家 多井
北家 渡辺
渡辺の手が軽い。 しかし7巡目、渡辺が谷井の切ったにチーテンを入れる。 打 ドラ この仕掛けをみて5巡目からチートイツのイーシャンテンとなっていた古久根。 ドラ 渡辺のをポンして打。 打 ドラ 加カン ドラ カンドラ 親番の谷井も12巡目には、 ドラ メンツ手とチートイツのイーシャンになっている。 ドラ カンドラ ツモ ドラ カンドラ 優勝 渡辺卓也
「決勝の大舞台でライセンスプロを相手に勝ち切れたのが本当に嬉しいです! 2位 古久根英孝
「後半はいつも通り打てたけど、最初二回は対局に入りこめなくて酷い内容で申し訳なかった。」 3位 谷井茂文
「負けてしまいましたが、師匠の古久根さんと決勝で戦えたことが嬉しいです。内容的にも楽しかったです。」 4位 多井隆晴
「しいて言えば、予定より早くトップ目になってしまい、最終戦で攻めきれなかったのが敗因ですかね。勉強し直してきます。」
渡辺は初戦の大量リードに助けられたとはいえ、ライセンスプロ3人相手に優勝した事は賞賛に値する。しかし本人も語っているが随所に課題を残した事もまた事実。 文責 壽乃田 源人
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