マーキュリーカップ優勝は中村浩三

決勝進出者

「マーキュリーカップ」が5月6日に行われた。RMUが新年度を迎えて最初のカップ戦である。
決勝出場者は以下の4名。

飯野正治 (決勝時ポイント54.9)

麻雀歴は50年を超えるという71才が堂々のトップ通過。リーチと喰い仕掛けとをバランスよく繰り出すファイトは年齢を感じさせない。

中村浩三 (決勝時ポイント47.1)

今年2月からRMUに入会した新人アスリートである。予選1回戦をラススタートとしたが、以降をオールトップで決勝まで駆け上がってきた。

石川貞夫 (決勝時ポイント46.5)

競技麻雀歴の長い関東雀友会のベテランだ。牌将位戦関東代表歴があり、大阪で当時行われた決勝に招かれたことがある。予選前半のポイントを守り、5回戦はS級ライセンス河野との対決を2着でしのぎ、決勝進出。

三宅浩一 (決勝時ポイント44.6)

101(イチマルイチ)A級選手を引退後はフリーの麻雀プロとして、また自身主宰するマージャンウォーカーの編集長として、麻雀界に関わってきた。ロジカルな麻雀は説得力がある。

決勝前予想

決勝前に不謹慎かもしれないが、印は私の予想である。予想のあとの数字は単勝の予想オッズである。(かなり独断的で恐縮だが、笑って許していただきたい。)
○(対抗) 3.1倍  飯野正治  予選のポイントを守るか
△(連下) 7.5倍  中村浩三  勢いナンバー1
▲(単穴) 3.3倍  石川貞夫  決勝経験あり
◎(本命) 2.1倍  三宅浩一  実力最右翼

決勝は乱打戦

決勝戦はまれに見る乱打戦となった。全16局。そのうち流局は1局しかない。
15のアガリが飛び交う派手な展開となった。その決勝戦をご紹介していこう。

決勝時のポイントに差はあるが、事実上は決勝戦の結果が優勝を決めるポイント差だ。
4人ともにそれぞれの緊張感を浮かべながらの闘牌がスタートした。

東1局、中村が12巡目にリーチ

 ドラ

高め出アガリ満貫、手替わりも待たず先手を取りにいく。
有効な手替わりだけでが浮かぶ。それは承知の上での先手なのだろう。
入り目のに好感触を受けたのかも知れない。

ところが、同巡テンパイを入れた親の飯野が追いかける。

 ドラ

中村のロン牌のをアンコに引いての追いかけリーチだ。
飯野のロン牌は中村が3枚抱えている。勝負的にはいいところだが、確実に中村のリーチが親のリーチを誘発した。
すると南家の石川もツモ切りで「リーチ」と出る。中村よりも先にテンパイしていた石川の牌姿はこう。

 ドラ 

2巡後に飯野がをツモ切りして中村に3,900の放銃。3人リーチを結果制したのは中村だった。
乱打戦の始まりである。

6,000オール

東2局、親番を迎えた石川の反攻がはじまる。すんなりと7巡目にテンパイ即リーチ。

 ドラ

これも手替わりには見向きもしない。不確定の三色より先手を優先させる。
3巡後にツモ、裏ドラで堂々の6,000オール。

ところが続く1本場、飯野のリーチに飛び込む。裏ドラで打った5,200は嫌な辻占だ。

 ロン ドラ 裏ドラ

まだまだ予断を許さない。

中村の連チャン

親番を迎えた中村の東3局は早いテンパイを入れて「リーチツモ」の1,000オール。束の間の穏やかなアガリ。

そして東3局1本場、親中村の7巡目、手牌は

 ドラ

上から出たをチー打。シャンテン数の変わらないチーだが、ジュンチャンへ向かう。
喰い仕掛けに全員が反応する。ツモ切りを挟み、手出しのに下家の三宅が首をかしげている。
メンツ選択でを落としていく。
を叩いて中村がテンパイを入れたのが11巡目。

 ポン チー

石川がリーチを打つも、流局間際に中村がツモ、4,000オール。

三宅登場

ここまで、苦しい戦いを強いられてきた三宅に6巡目にテンパイが入る。当然のようにリーチ。

 ドラ

すると飯野から安めながらが一発で出て8,000。存在のアピールは今までの静けさと比して強烈だ。

農耕民族のゲーム

私は常々麻雀とは、狩猟民族のゲームではなく、農耕民族のゲームであると思っている。
麻雀のアガリは、風雪に耐え作物を刈り取るようにアガルものだ。
「本道のアガリはツモアガリ」にある。
獲物をとらえる、仕掛け・出アガリは本道を求める手段にすぎない。

これには、異論があっていい。考え方のひとつくらいに思ってほしい。

再び三宅

東4局、親番を迎えた三宅がロジカルに打って9巡目のテンパイ。そしてリーチ。

 ドラ

観戦していて、「ついに三宅が刈り入れの時を迎えた」と思った。親ハネまで見込めるリーチ。
時間は要したがツモの4,000オール。

続く1本場、中村がこのヤミテン。

 ドラ

石川から打ち取って5,200。三宅の親を落として東場を終了させた。

三宅と中村の一騎打ちと思ったのだが、観戦者の予想を超える波乱がまだやってくる。

南入・波乱その1

南1局、をアンカンした5巡目の親番飯野の手牌。

 アンカン

ツモ ドラ カンドラ

テンパイとらずの打。ここまで苦戦している飯野だが、カンのテンパイをすんなりとはずす。
2巡後絶好のを引いて3メンチャンでリーチと出る。
しかし、これが簡単にツモれるほど状態はよくない。

決めようと三宅が追いかける。

 ドラ カンドラ

バイマンまで見える超ド級だ。飯野のロン牌を使いきってのリーチでもある。
ところが、この勝負は飯野に軍配が上がる。
終盤、三宅の引いたは「ロン牌」と書いてあるような牌だった。
三宅から飯野へ9,600。

波乱その2

流局を1局はさんで(飯野1人テンパイ)、南1局2本場、飯野の10巡目リーチ。

 ドラ

切りのあと、1巡回しのツモ切りリーチに中村がささる。7,700は8,300。

中村何としたことか。おそらく血の気が引く感覚を味わったことだろう。トップ目が打つ牌ではなかった。
まだリードはあるものの、楽観はもう許されない。

そして決定打

南1局3本場、一時は1万点を割っていた飯野の持ち点が、3万点を超えた。
トップ目の中村に残り8,000点まで詰め寄っている。バラバラな配牌を喰い仕掛けからホンイツへ。

 ポン ポン ドラ

意を決した中村の終盤15巡目のリーチ。

 ドラ

一発ツモで3,000・6,000。これがほぼ決定打となった。

以降三宅が2,000・4,000のツモなどでオーラスの親に望みをつなぐも中村が逃げ切った。

オーラスの中村のアガリ。

 ロン

放銃した三宅の手牌。

三宅にすればもはやこれまで、中村にすればホッと息をつく瞬間。

そしてマーキュリーカップは中村の掌中となった。

最後に

決勝戦を最後まで戦った飯野さん、石川さん、三宅さん、お疲れ様でした。
特に71歳の高齢ながら、最後まであきらめることなく健闘した飯野さんは、この大会の実質のMVPだと思われます。

また、私の戦前の予想を見事に覆してくれた中村さん。おめでとうございます。
この次優勝する時は、本命を背負って優勝してください。
それが、アスリートとしての強さの証明につながることだと思います。

(文中敬称略 文責・真下修)