2015スプリント③アースカップ

この日、上杉範子さんは成績が良かった。

のっけから「誰?」と思われる方が多いかと思われるので説明すると、今年の3月までアスリートコースに所属していた吉冨範子さん。

ご結婚された後ライトコースに転籍し、今はこのお名前でRMUのスプリントカップやオープンリーグ、その他色々な大会に出場されている。

準決勝、そんな彼女がトップを取って決勝進出を決め、制限時間いっぱいまで続いている準決勝最後の1卓を観戦している。決勝で当たる相手の敵情視察…というわけではなく、視線の先には1人のライト会員の男性、上杉崇博さんの姿が。勘のいい方ならお気づきかもしれないが、結婚されたばかりの夫である。

夫の方もずっと好成績で、4回戦終了時にはオカありのCルールにして、大きなラスさえ引かなければ決勝はほぼ当確というスコアだった。しかし、ラス前のトップ目の親が時間切れ寸前に8,100オールをツモり、ラス目だった上杉の持ち点がちょうど0になってしまう。ただ、トップ目が8万点くらい持っていて2着でも1万点台、マンガンアガればラス抜けはできる状況。

この半荘のトップ目は大捲りで決勝ボーダーに手がかかっていたこと、そして、上杉(崇)はここからラス抜けしなければ絶対に残れない状況であることを、立会人の私だけは知っていた。

規定により残り2局、上杉(崇)の手が中盤過ぎてこんな感じのイーシャンテンに育つ。

ドラアンコに赤もありアガれば最低ラス抜けできる手。もう1局あるとはいえラストチャンスの可能性は結構高く、アガリ逃しはしたくないところで上杉(崇)の選択は。

すぐにドラ表示牌のが鳴け、さらに待ち選択で、1枚切れのペンに取る。そこへさらに稼ぎたい親から放たれるドラのを当然大ミンカン、晒してカンドラをめくると待ちのが現れ、さらにリンシャン牌は待ちに取れていた…倍ツモを逃しこれは痛恨と思っていると、トップ目の親がをツモ切って12,600のアガリで3着に浮上。そのまま終了。

トータルでも3位に踏みとどまり、夫婦そろっての決勝進出となった。

決勝進出の4人の持越しスコア(ここまでのスコアの半分)はこちら。

中西龍 +109.9
上杉範子+88.6
上杉崇博+84.4
岩沢和利+82.5

中西が頭一つ抜けているように見えるが、オカがあるため半荘のトップと2着でも最低30ポイント差がつくので、トップを取った人が優勝となる。

座順が上杉(範)、岩沢、中西、上杉(崇)と決まって対局開始。

東1局、上杉(崇)が

3つ仕掛けて主導権を握った次巡に持ってくる生牌のドラ。もちろんツモ切った方が広いのだが、これを抱えて打。

すると、次のツモもドラでテンパイ。上杉(範)がリーチとくるが、ツモ番を回さずにツモでまずは1,000-2,000の先制。

その後も、中西が3,900、上杉(崇)が2,000とCルールにしては細かいアガリで局は進んで東4局、32,000持ちでトップ目の親の上杉(崇)の配牌。

第一打は、次巡をツモってを切る。この、カンチャンターツを捕らえずに自然にを残した手順が奏功。5巡目からと立て続けに引いて即リー。そして、

最速最強と言える6,000オールのツモアガリで、他3人を一気に突き放す。そしてこの親の1本場は全員ノーテンで流れ、対抗馬が現れぬまま南入。南1局2本場、ここまで2度のリーチが実らずラス目の上杉(範)の親番。

ソウズの多い配牌をもらい、自然に寄せていく。現状2着目の中西がを鳴いてさばこうとするも、以前と変わらぬフワッとした感じの上杉(範)のツモの発声。

イッツーまでついて6,200オール。さらに親が落ちての南2局で

この1,300-2,600をツモアガリ、トップ目の上杉(崇)に5000点弱の差にまで迫る。何もできずに2度の親が流れた岩沢は厳しい。

さらに、どうにかしたいラス前の中西の親も

上杉(崇)が2,000のヤミテンで蹴ってオーラスとなる。

下2人の優勝条件は三倍満以上ツモ和了りくらいしかない。中西にはマンツモでトータル2位に上がる選択肢は残っているものの、優勝争いは上杉夫妻にほぼ絞られた。

上杉(崇)はノーテンで伏せれば優勝だが、上杉(範)との差は6,700なので、1,300-2,600で逆転される。

というわけで、

3シャンテンの配牌をもらうと、普通に手を進めていく。5巡目に

このイーシャンテンになった時に、

・緊急回避用にのポンテンは取るのか
・先にが埋まった時の待ち及びリーチ選択(5巡目の時点ですでに1枚3枚切れ、岩沢の河は普通だが中西の河は変則模様)

これらのことに注目していたが、9巡目にを引いてテンパイし、まだツモが残っていることもあり即リーに踏み切る。条件が緩和された上杉(範)も形を崩さず粘るが、上杉(崇)がをツモって2,000オール。

1本場、上杉(範)の条件は満直ハネツモ(他2人は役満ツモ直)。しかし、あと1牌が埋まらず、テンパイすらしない。

最後は、残り1巡となったところで岩沢が形作りと言えるドラ単騎のチートイツでリーチをかけ、流局で終了。

(決勝成績)
上杉崇博46,600
上杉範子31,900
中西龍 11,300
岩沢和利9,200
(供託1,000)

(トータルスコア)
上杉崇博+136.0
上杉範子+95.5
中西龍 +86.2
岩沢和利+46.7

アースカップは上杉崇博の優勝で幕を閉じた。また、夫婦でワン・ツーというのはRMUのスプリントカップではもちろん初だし、他のワンデー大会でもそうそうないのではないかと思われる。

(優勝者コメント)
「準決勝で諦めなかったので決勝卓に残れました。優勝できて、すごく嬉しかったです。」

確かに、それまでの対局は見ていないが、冒頭の準決勝のシーンまでは相当苦しそうだったし、逆に決勝は上杉(範)のツモアガリ以外は順調に進められていたような気がする。

これで上杉(崇)はスプリントファイナルへの出場をほぼ確実にした。また、今年から参加しているオープンリーグでも上位につけており、こちらでの活躍も期待できる。

また、上杉(範)にしても、今年からスプリントファイナルの出場枠が増えたことから、あと数ポイント加算できればスプリントファイナルへの進出が可能になると思われる。スプリントファイナルでも夫婦対決は見られるのだろうか———。

最後に、上杉範子さんへ送られたおめでとうツイートのリプライを引用して締めくくりとさせていただきます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。そして、上杉崇博さん、範子さん、おめでとうございます!

『ワンツー上がれたね』と
君が言ったから8月30日は、
アースカップ記念日
みたいな感じかな笑。

(文中一部敬称略 文責・宮田信弥)