第7期クラウン準決勝レポート |
前日の100人余の激闘を勝ち抜いた15人に、前期クラウン覇者の川上貴史(最高位戦)を加えて行われる準決勝。
ここから半荘3回のトーナメント2戦を経て決勝に進む4人が決定する。 RMUのタイトル戦の中で、オープンリーグ、スプリントファイナル、そしてこのRMUクラウンは、年によってシステムが異なる場合もあるが、いずれも本戦を勝ち抜いた者同士によるトーナメントが行われる。 ここでいう「トーナメント」とは、「同一面子で半荘数回行い、上位者が勝ち上がる」形式で、RMUでは、先に挙げた全てのタイトル戦で「3半荘で上位2人が勝ち上がり」という形式が採用されている。 このトーナメント、なかなか接する機会がなく、かくいう筆者もライト会員時代のオープンリーグの準決勝が初めてだったのだが、実際にやってみると、1人が絶好調の時のトータルで2位に滑り込むための選択や、共通の利益がある者同士の結託など、1半荘単位の麻雀以上の戦略性を感じ、今では一番好きな試合形式となっている。 今回の準決勝ではどのような戦いが繰り広げられたのか、卓ごとに、またベスト16については半荘2戦終了時のスコアをもとに紹介していく。なお、卓の番号順の紹介ではないのをご了承願いたい。 【ベスト16】 長崎から2年連続の準決勝進出となる岸部が好調で2連勝、3番手楢原と約80p差はほぼ安全圏。 一方、第3期の覇者である古久根は全くと言っていいほど手にならず。 通常の半荘単位の麻雀に比べれば技術を活かしやすい試合形式だとは思うが、そうは言っても最低限のアガリがないことにはゲームメイキングすらできず、そのまま敗退。 今回唯一の一般参加から準決勝進出の楢原は、苅部とトップラスで8,100点差か2着順差の18,100点差が通過条件だったが、66,000点の大トップでこれをクリアした。 1位通過:岸部、2位通過:楢原 (2卓)石川(B級:+42.3)、本島(最高位戦:+10.7)、中村(長崎:+5.4)、紺谷(最高位戦:▲58.4) 1回戦から門前三色のアガリが飛び交う乱打戦模様の展開の中、石川が連勝。 2,3番手とのポイント差的に4卓の岸部ほど安泰ではないにしろかなり有利な情勢。 本島と中村は基本着順勝負。紺谷は2ラスの上に中村への18,000放銃もあって1人だけマイナスしており、かなり厳しい状況で最終戦を迎えることに。 その最終戦、紺谷が最後の意地を見せ序盤からアガリを重ねトップ目に立つが、これは2人にかわされなければいい石川にとっては望む展開。 結局、紺谷は5万点台のトップを取ったものの、これでは素点が足りない。紺谷トップなら普通のラスでも通過できる石川がおとなしく(?)ラスとなっての残り2人の着順勝負は本島が制す。その結果石川とトータルで並び、追いつき有利の規定により1位通過となった。 1位通過:本島、2位通過:石川 (3卓)岡澤(長崎A級:+91.2)、平井(101:▲12.9)、村田(101:▲17.8)、渡辺(B級:▲60.5) 序盤から岡澤の独壇場。1回戦で5万点台のトップを取ると、続く2回戦も開始早々ハネツモ、マンツモでいきなり5万点台に乗せ、いち早く当確ランプがともる。 平井と村田が2,3着を分け合い、リーチが不発となることが多かった渡辺が2ラスという構図は2卓の2回戦終了時と同じ。だが、岡澤がまんべんなく点棒を削ったこともあって2,3番手とはそこまで差が開いておらず、渡辺も並びによっては5万点台でも通過の目がある状況。 同じ2ラススタートでスコアがより悪くても、可能性はよりある場合があるのがトーナメントの面白いところ。 その渡辺、3回戦で得意のリーチ攻勢がようやく実を結ぶようになり、南場の親で55,000点を超えるトップ目に。 さらに都合のいいことに、岡澤が局をつぶすアガリによって2着目におり、完全に並びが出来上がる。あとはこのまま終わらせれば通過という状況のままオーラスまで持って行ったが、ラス親の平井に並びを崩され、万事休す。 1位通過:岡澤、2位通過:平井 (1卓)平山(会員:+19.8)、桐生(最高位戦:+3.0)、川上(現クラウン、最高位戦:▲3.0)、橘(協会:▲20.8) 今回、最も接戦だったのがこの卓。現状首位の平山は2着で確定だから有利とはいえ、削られて3着以下に落ちると敗退が見えてくるし、4番手の橘にしてもトップじゃなくても通過の目がある。 何より、条件に差異はあるが、どの2人が通過するパターンも普通に考えられる数字である。 そんな展開もあって、平たいまま南入する。この膠着状態を打ち破ったのが桐生。 リーチツモ ドラ 裏南1局、裏3のハネツモで一気に抜ける。平山の親が流れ、南3局1本場。状況は このままだと桐生、平山で通過となるが、橘は連荘すればチャンスが出てくるし、親のない川上も平山と2着順差で3,000弱の差はまだ射程圏で、桐生をかわす可能性もまだある。その川上、7巡目に ツモ ドラここから打でチートイツとの両天秤とすると、次巡ツモでチートイツテンパイ。ドラ単騎に受けるのが自然だが、問題はリーチをするかしないか。 平山の様子を見るに、どんどん前に出てきそう。川上もそう感じたか、ドラがこぼれることを期待し、ヤミテンに構えた。 すると、ほどなく平山がリーチ。川上もヤミのまま対抗するが、平山が場に3枚ほど見えていて誰も使っていなさそうな待ちのドラ1リーチをツモって1,100-2,100。終局後に川上と検討したのだが、 先制でリーチして、 ・直撃は避けたいであろう平山が回ってくれればツモの回数が増える。 この狙いの方が良かったのではないかという結論になった。 オーラスは、川上がチートイツのみのテンパイ。倍ツモか、平山から満貫、桐生からハネ満条件で、川上は南家だったため、ヤミテン続行のまま17巡目に一発ハイテイツモ狙いのリーチをかけたものの、不発。 1位通過:桐生、2位通過:平山 局後、川上に話をうかがった。筆者の「この1年、どうでしたか」という問いに対し、 「去年勝ったおかげで、色々な人に会えた。また、クラウンの名に追いつこう、少しでもいい麻雀を打てるようになろうと、他団体の観戦にも積極的に行くようになった。また、練習セットの回数も増やし、RMUの選手とのセットにも誘ってもらえるようになった。その結果、今日は負けてしまったけど、勝った去年より内容は良かったように思う。去年は牌譜を見返しても下手だったから。本当にRMUには感謝しています。」 と、敗戦直後であったにもかかわらず、丁寧に返していただいた。 昨年の決勝メンバーには筆者もいた。去年勝てなかったのは残念だったが、その後の川上については色々な人から話を聞いていた。 その結果として、最高位戦クラシックに3組から出て決勝にまで残るなどの活躍をしたのを見て、どこか嬉しいと感じる自分と、もし自分が勝っていたらここまで変われていただろうかと自問する自分とが混在していた。 さて、若干のインターバルの後、ベスト8の戦いが始まった。組み合わせは、 1卓 桐生、石川、岡澤、楢原 【ベスト8】 石川+35.4、楢原+13.9、桐生▲16.0、岡澤▲33.3 (2回戦) 南入したところでは起家から楢原28,400、桐生28,800、岡澤42,800、石川19,900と、1回戦とは真逆の並びだったが、ここでラス目の石川、 リーチツモ ドラ 裏この満ツモで楢原、桐生に並びかけると、ラス前にもマンツモで2人を大きく抜き去って岡澤と1,700点差の2番手に。 オーラス、トップをまくらなくてもこのままの並びで終局すれば相当有利になると判断したのか、親の石川の河がアガりに向かっているようには見えない。 このまま流局も見えてきた14巡目、3着目の桐生と3,300差でラス目の楢原がタンヤオのみをリーチ、これをツモって何とかラス抜け。 岡澤+22.1、石川+9.4、楢原▲9.9、桐生▲21.6 場合によってはラスでも通過できる石川、起家でいきなり ドラこんなテンパイとなり、カンをヤミテンのままツモって4,000オール。さらに南場の親では、 リーチツモ ドラ 裏無し この6,000オールでさらに盤石に。 これも含め石川は、通過に向けて特に変わったことをするでもなく、いつもの石川らしく打っているように感じた。おそらく本人の中では、この半荘は「決勝0回戦」のつもりなのだろうと思って見ていた。 さて、石川が抜けてしまったので実質あと1議席となった決勝の椅子、岡澤が4,000オールなどで優位に進め、南2局の時点で (起家から)石川44,900、岡澤40,600、桐生15,600、楢原17,900 岡澤に並びかけさえすればいい楢原はともかく、並びも作らないといけない桐生は相当苦しいと見ていたところ、桐生にチャンス手が入る。 ポン上 ドライーシャンテンの岡澤が切ったドラが鳴けてのポンテン、すぐにダントツの石川から高目のが出て12,300のロンアガリ。しかし……。 桐生から見て、トップを取れば楢原は自然にまくれそうだが、石川からアガってしまうと、岡澤をトップ目にしてしまうことになり、これだと約14,000差の岡澤をまくった上で、さらに約16,000点差をつけなければいけなくなる。 石川が岡澤の上にいてくれた方が、確実に都合がよかった。したがって、石川からだけは見逃すなり、ポンして単騎のフリテンから、チャンタが消えてもいいから待ちを変えて、石川以外からの出アガリかツモアガりを目指した方が良かった。 結局、この横移動で相当気が楽になったであろう岡澤が、残り2局を自力でアガリきって、石川とともに決勝進出を決めた。 1位通過:石川、2位通過:岡澤 (2卓) 東1局、12,000を本島からアガった平井を、東2局、終盤のリーチで一発ツモイーペーコードラ2の6,000オールを引いた岸部がまくって、そのままの並びで6万点近い大トップ。 (2回戦) 今度は平井が5万点くらいの大トップ、1回戦トップの岸部が2着に残ったことで最悪の並びとなり、他の2人はかなり苦しくなった。 平井+35.6、岸部+11.9、平山▲9.3、本島▲38.2 (2戦トータル)岸部+55.4、平井+42.0、平山▲21.7、本島▲75.8 当然、こうなってはダメなことくらい、他の2人だって百も承知。例えば本島は、親もなくなった南3局のラス目で、 ドラこの形でリーチして、ツモったでアガっていない。もちろん、この半荘トップ目の平井からの直撃ができれば理想だが、この状況で離れたラス目のリーチに対し、ドラまたぎになりうるを平井が切ってくるとは思えない。しかも、RMUの順位点は1着順1万点と、アガリの点数に比してそれほど大きくない。筆者の見解としては、 ・直撃を狙うならヤミテンに構え、上位2人からの以外はアガらない。ツモはハネマンなのでアガるが、ツモはツモ切ってリーチ。 このどちらか、おそらくは後者を採りそう。もっともこれは「見逃し後にをツモれるか」という可能性と、「ヤミテンで直撃できるか」の可能性と、「オーラスに手が入るか」という可能性との比較であり、自分が対局者であれば3番目が一番通過の目があるのではないかと思っているだけなのだが。 (3回戦) 3番手の平山でさえ、上位のどちらかと3万点以上の差のトップラスを決めないといけない厳しい条件。波乱が起きることなく終了し、平井と岸部が勝ち上がりとなった。 1位通過:平井、2位通過:岸部 こうして、決勝面子が確定した。 岡澤、平井の両ベテランはもちろん、筆者とほぼ同年齢の石川、岸部も競技歴は長く、去年のキャリアの短い同士の決勝とはまた別の、濃密な戦いが繰り広げられるに違いない。今から非常に楽しみである。 最後に……。 今回は、トーナメントという特殊な状況下での選択をメインにレポートを書かせていただいたので、通常と異なる選択に違和感を覚えた方もいらっしゃると思う。しかし、こうした試行を張りめぐらすのが好きな人にとって、これほど面白いシステムはなかなかないと思う。 オープンリーグは会員限定の試合だが、スプリントファイナルはまだまだ誰にでも本戦進出の可能性があるし、RMUクラウンは来年以降もまたチャンスはある。もしこれを読んでトーナメントに興味を持ち、これらの大会に参加していただけたなら、所属競技選手としてこれほど嬉しいことはない。 (文中敬称略 文責・宮田信弥) |