2010 クライマックスリーグ

クライマックスリーグ観戦記(第二日)

3/19、20の二日間にわたってクライマックスリーグが行われました。

メンバーはライセンスS阿部孝則プロ、多井隆晴プロ、河野高志プロの3名と、
前期R1優勝のライセンスB壽乃田源人プロ、
後期R1優勝のライセンスA谷井茂文プロ、
準優勝のアスリート北島路久選手の計6名です。

初日は2名ずつ抜け番となり、半荘6回(一人4回対局)行われ、
上位4名が翌日に進出となります。

初日最終成績
河野+91.9 寿乃田+5.7 多井▲3.9 谷井▲22.2 阿部▲27.3 北島▲44.2

初日足切りとなってしまったのが、ライセンスSの阿部孝則、アスリート北島路久。

阿部は自分の麻雀が打てなかった様に見受けられ、
北島はまだ力及ばずといった所であろうか。

初日は河野が好調で、ほとんど河野の一人浮き状態。

残り4半荘で誰が河野を止めるのか。

それとも、河野が他を寄せ付けずこのまま勝利に向けて駆け抜けてしまうのだろうか?

第7回戦
開局はまず親の多井が1,000オールのツモアガリ。

次局は寿乃田が、
 ドラ
ドラを雀頭にしてリーチ。

親の多井のリーチ宣言牌のを捕まえ、裏ドラが1枚のり8,000の出アガリ。

東2局も寿乃田がハイテイでドラのをツモアガリ、1,300-2,600。

東3局は谷井が負けじと
 ドラ
リーチをしてツモアガリ2,000-4,000。

独走の河野を追いかけるべく三者が激しく争っていく中、
河野は丁寧に打ちまわし、まるで足をためていたかのように東4局で親番を迎えると、
 ドラ
ピンフのみの手だが、リーチをかけ一発ツモで2,600オール。

同一本場では、多井のリーチ
 ドラ
これを受けながらもチートイツで粘り、
最後にはフリテンながら多井の待ちである単騎でテンパイを維持して連チャン。

次局、まるでそのご褒美であるかのように
 ドラ
リーチして高目のをツモ。

2,600オールのアガリで激しく争っていた三者をあっさりと抜き去りトップ目に立つ。

次局、何とか多井が河野の連チャンを止めるのだが、
南1局では多井の親のリーチをかいくぐり谷井から8,000をアガリ、
初戦のトップをもぎ取ってしまう。

勝利に向け大きく前進といった所であろうか。

第7戦終了時 小計
河野+128.1 寿乃田+10.5 多井▲11.8 谷井▲55.3

第8戦
河野との差が広がってしまい、追い込まれた三人。

河野のポイントを削りながら、自らのポイントも叩く必要があり、
三人にとってはかなり苦しい戦いになりそうだ。

東1局、起家となった多井が、まず抜け出す。

 ドラ

上記の寿乃田の先制リーチに押し返し、
 ドラ

タンヤオ三色の7,700を寿乃田から出アガリ。

次局は
 ドラ
またも456の三色のテンパイを入れ、一旦ダマテンに受けるのだが、
最後のツモの前にツモ切りリーチを敢行、を引き当て6,000オールとしてしまう。

3面待ちなのだが、山に残っていたのはこの1枚だけ、恐ろしい嗅覚というべきか?

東1局2本場では多井に7,700の放銃でラス目に落ちていた寿乃田が、

 ツモ  ドラ
ドラをアンコにして2,000-4,000のツモアガリ。

河野をラスにしたい三者にとってはいいアガリとなる。

三者の思惑通り河野ラス目で進んでいた東4局2本場に、河野からリーチが入る。

 ドラ
このリーチに対し、ポイントの少ない親の谷井が、
何とか親番を維持するべく粘ろうとするのだが、河野のリーチ宣言牌は

あってもおかしくないを切って5,200を振り込んでしまう。

対局後谷井は、

待ちはあると思っていたのに、つまんでしまい手が止まりませんでした」
と後悔を口にしていた。

続く南1局、2着目につけていた寿乃田に大物手が入る。

配牌が、 
 ドラ

この微妙な配牌をマンズのメンホンチートイツに仕上げ、リーチをかける。

 ドラ
このときが谷井の河に2枚切られていて、寿乃田の目からはが4枚見え、
はいい待ちなのだが、同じくも2枚切られていて残り1枚。

観戦していると、チートイツなので、何か他の待ちへの変化を考え、
ダマテンに受けた方がいいのではと思って見ていたが、この判断が功を奏す。

数巡後にション牌のを持ってきて、これで待ち替え出来たかなと思うと、
すぐ下家の谷井がをツモ切り追いかけリーチとくる。

アガリ逃がしになるのかと思いきや、次巡にをツモ、3,000-6,000のアガリとなる。

結果河野とラス争いをしている谷井からの出アガリではなく、
ツモアガリとなり河野をラスにする可能性をより残せる形となった。

ラス目に落ちてしまった谷井も、最悪でも河野より上の着順をと考え、粘りを見せる。

ノーテン罰符と、ピンフのみではあるが河野から出アガリでラス目を脱する。

オーラスには南家の多井が更なる加点と、このままの着順の状態維持を狙い、
谷井からは見逃し覚悟でリーチと出る。

それを受けた寿乃田も、この並びを維持したいという意図を察知してまっすぐアガリに向かい、多井への放銃で終了となる。

三者が自分のやるべきことを理解して行動した結果、
首位の河野をラスにすることが出来たのではないかと思う。

第8戦終了時 小計
河野+99.2 寿乃田+22.6 多井+21.7 谷井▲72.0

第9戦
河野包囲網とも言うべき三人の連携でラスを引いてしまった河野、
東1局、東2局とやはり手牌が重く受け気味の展開となる。

そんな中、東2局1本場で、
 ドラ

テンパイが入るのだが、を2枚使いの待ちではドラ、
待ちとしてはかなり苦しい。

親の谷井と寿乃田に仕掛けが入っていて、
どちらかがドラをトイツ以上で持っていそうな雰囲気。

どうするのかと思ってみていると、躊躇なく河野はリーチと踏み切る。

対局後河野に話を聞いてみると、
「第8戦で受けに廻る展開が多く、前に出ないままラスとなってしまった。

早くにを切っている寿乃田にドラが固まっていそうなので待ちが悪いのは承知だが、
このままポイント差を考え大事に行き過ぎるとやられてしまうと思いリーチに踏み切った」
との事だった。

結果は見事4枚目のドラを(寿乃田2枚、谷井1枚)引きアガリ1,300-2,600とする。

ここから停滞気味だった河野の手牌が勢いを取り戻す。

東3局1本場 ドラ
谷井 
河野 

互いに待ちを潰しあい、残り谷井1枚、河野2枚の戦い。

軍配は河野に上がり、谷井がで放銃。

なんとそのが裏ドラとなり、裏3の8,000。

その後、河野の大量リードへの焦りから緊張の糸が切れてしまったのか、
谷井、寿乃田が三連続で河野に放銃して7万点近くまで一気に叩かれてしまう。

唯一冷静に対応していた多井だったが、
2人の放銃をみていることしかできなく、このまま河野がトップでこの半荘を終える。

東2局1本場での、不利を承知でリーチしてアガリを勝ち取り、
一度離れかけた流れを取り戻した勝負勘は驚愕である。

河野自身もこの一局が分岐点だったとコメントしていた。

第9戦終了時
河野+158.1 多井+4.0 寿乃田▲13.6 谷井▲79.2

最終第10回戦
2着目の多井ですら、既に150ポイント強も突き離している。

この差は三者ともいかんともしがたく、結局そのまま河野の優勝となった。

近年最終戦前にここまで大差で迎える決勝は見たことが無く、
河野の圧勝といっていいのではないだろうか。

最終成績
河野+164.5 寿乃田+26.4 多井▲30.2 谷井▲89.2

対局を通して見ていて、とにかく河野が強く、一番冷静であった様に見えた。

最近成績の振るわなかった河野であったが、
今回の対局を見る限りは復活と言っていいのではないのだろうか。

対局後のコメントで、
「最近また麻雀が楽しめる様になってきた、冷静にそして真摯に対局に向き合えていて、それが今回の勝因ではないかと」
と語っていた。
心身共に充実しているコメントに聞こえ、
来期の河野は何かをしてくれそうな予感がした。

あえて宣言させていただこう。

「野獣復活」と。

藤中慎一郎
文責 藤中慎一郎 (文中敬称略)