激闘!2008スプリントファイナル | |||||||||||||||||||||||||||
対局者
まず、試合前の選手コメントを対局者の紹介にしたい。紹介は会場到着順である。 合田雄亮「今日は会場に一番乗り。行けますよ」 中村浩三「内に秘めた目標を達成したい」 吉田信之「去年は何もできなった。今年は納得のいく麻雀で勝ちたい」 平山友厚「普段通りに打つ」 内田良太朗「初めてのファイナル。最後まで諦めませんよ」 江原翔「気負わず、普通に。自分らしく」 山下健治「全力で頑張る」 山谷克也「落ち着いて、打ちたい」 1回戦
A卓の並びは江原・合田・吉田・中村。 対する江原、フリコミで始まったが、リーチに一発で危険牌を切れるということは、彼自身のスタイルで打てているようだ。 東2局1本場。合田が珍しく中盤で少考する。その結果1人ノーテン。 ドラ 合田の少考の内容は、を握りつぶしたものだった。 そんな合田、続く東4局。 ドラ ヤミテンで回し吉田から6,400をアガる。 ここでは放銃にまわった吉田だが、2回目のスプリントファイナルにかける思いは大きい。 オーラスは、2着取りの吉田が2フーロして中村から1,300をアガり終了。 B卓、並びは山下・内田・平山・山谷。 しかし、内田もすぐに5,200や4,000オールで追いかけ、山谷も2,000・4,000をツモる。こちらの卓も打撃戦となった。 追いていかれたのは、意外にも古豪平山。
実戦ではめったにお目にかかれない6メンチャンだ。 迎えたオーラス、トップの山下からラスの山谷まで6,800点差の大混戦だ。
高目のをツモり、2,000・4,000で幕を閉めた。. 2回戦
A卓の並びは江原・山谷・合田・吉田。 東1局 西家合田の4巡目。 ドラ ここにをツモり、打。この辺が若手らしい辛さ。 ドラ その後もアガり続けて合田の1人舞台だ。 ドラ しかし、ここでトップ目の合田が追いかける。
ここから無筋のを切って終局を目指す。吉田としては、内心気が気ではなかっただろう。しかし、これが吉田に幸いした。2軒リーチに手詰まった江原が打。吉田のアガリとなり、裏ドラがのって12,000。ラスと2着が入れ替わる。 きっかけは東2局。 ツモ 全く危な気がない。ひとたびチャンスをつかめば怒涛のラッシュが待っている。 3-4回戦
2回戦が終わって、並びができた。4回戦が終われば下位4名が足切りになり、得点持ち越しの5・6回戦が待っている。こういった戦いの常として、無理な戦いを強いられることも起きよう。戦い巧者なら腕の見せ所であろう。 3回戦A卓。 ロン これで4回戦に望みをつないだ。 3回戦B卓。東1局親の江原が、7巡目にテンパイ。 ドラ タンピンサンショクできあいのリーチ。ハネマンまでもくろむ。 普段なら確実に12,000を取りに行くこともあるのだろうが、この辺りが持ち点に制約のある戦いなのだ。 しかし、そんなインパチが出るもこの半荘のトップは吉田。 ドラ この手牌を合田から出アガリ12,000。続く1本場も、 ドラ 7巡目からゆったりの対子を落とし、タンヤオに振り替えてヤミテン。中村から12,000をアガる。 ここまで苦しみながらも2着に滑り込んできた吉田が、3回戦にしての大トップ。 4回戦スタート時の順位とポイントである。 4位までに入らないと4回戦終了時に足切りになる。 A卓が先に終わり、5回戦への進出は、吉田と内田が当確、山下がB卓の結果次第になった。 さて、B卓。
この手牌で場に2枚目のを悔しそうに見逃す。四暗刻でしかアガるつもりはないのだろう。 次局も中村がリーチ。すると、山谷の「投了」を覚悟した手牌が、「投了」を拒否するように育っていく。先に終了しているA卓の結果次第では届くという、決断のリーチだ。
山谷の意地の一発ツモ、ウラドラで6,000・12,000。逆転4位に滑り込みかと思われた。その時点で4位の山下は青い顔をしている。 ほどなく集計が出る。すると…写真判定、山谷はハナ差足りなかった。 かくて、決勝5回戦は吉田・平山・内田・山下の4者となった。 5回戦
並びは内田・吉田・山下・平山。この半荘で、下位の内田と山下は、優勝を射程圏内に入れていきたい。吉田とほぼ並びの平山は、マッチ勝負をにらんでいる。 東1局、内田と吉田にチャンス手が入るが、それを平山が300・500で流す。静かな滑り出しになった。 ドラ それまでヤミテンに構えていた親の吉田、手替わってピンフイーペーコーになったところで追いかけリーチ。
2人テンパイで流局かと見ていると、内田がなんと残りツモ1回でリーチ。
ドラ3枚使いのピンフ、高めイッツーである。バイマンツモまでもくろむ。 東2局1本場。供託のリーチ棒が3,000点落ちている。親の吉田が積極的に仕掛けて、 ドラ 待ちは決して良くないが、高めのなら18,000まである。これをアガれたら吉田は大きく優勝に近づく、かと思われたが、鳴かせた上家の内田が当然のようにリーチ。
手牌を短くした、吉田と真っ向勝負と出た。危険は承知。吉田からの放銃なら、混戦になる。しかし、この局アガッたのは、平山。
ドラトイツのピンフを吉田から打ち取る。リーチ棒4本付き1本場は、マンガンを上回るアガリになった。なかなか、一筋縄ではいかない。やはり大事な局面を押さえてくる。 ドラ しかしこれに吉田は全力で向っていく。全くのノーガードだ。すると、危険牌をつかんだ平山は手牌を回しはじめる。この辺がうまい。見ていて唸らされるところだ。そして、13巡目に吉田がメンホンイーペーコーをテンパイ。
リーチの内田がをツモ切り、8,000。前局に勝負手を潰された焦り、というよりも勝ちたい、という気持ちがひしひしと感じられる。 ドラ ツモは3,000・6,000。局の序盤はゆったりと、色によせてゆき、ペンを仕掛けてからは、スピード感のあるアガリだった。 南2局、平山がトイツ手に決め打つ。 ドラ この手牌にツモで打。次巡ツモで打とした。
ツモなら、平山の優勝が決まるだろう。 しかし、この手牌はここまで。平山がツモ切ったが内田に2,600の振り込み。悔しいだろうが、平山は淡々と点棒を払う。自分がアガれなかったとは言え、結果的には助かった形になるのが吉田。もちろん、このときの平山の手牌がわかるはずもないのだが、雰囲気は察していたのに違いない。 ラス前は内田が2,000・4,000をアガり、迎えたオーラス。 5回戦までの成績はこうなった。 吉田 +88.6 順位点があるので、平山はそれほど厳しい条件ではない。内田・山下は、条件が厳しいが、吉田と平山を沈めればチャンスは訪れるだろう。 そして、スプリントファイナルの本当のファイナルラウンドが始まった。 最終6回戦
並びは、内田・山下・吉田・平山。 ドラ ここにツモ。普通の打牌ならなのだろうが、好牌先打でをツモ切る。すると、染め手模様の下家の山下がカンでチー。またしても一色場か。北家の平山にピンズのメンホンテンパイが入る。
ツモが利かない親の内田が親番を守るべく、終盤に動いて形テンを入れる。山下もマンズをチーしてテンパイ気配。親番を維持するため内田がハイテイ牌をツモ切ると、その牌に吉田から、「ロン」の声。 ロン ドラ 5,200。内田にとっては痛いフリコミと親流れであった。 そして、いい形で向かえた吉田の親番。東3局1本場、9巡目親の吉田のリーチは3メンチャンだ。 ドラ を一発で引き、4,000オール。強い、ただそう思った。 吉田は、常に勝負所で手が入っているイメージがある。それは、どこまでも諦めない精神と、このスプリントファイナルにかける気持ちが、好牌を呼び込んでいるのではないかと思う。いや、そう思わざるを得ない。 続く東3局2本場、平山の3巡目。 ドラ 早いイーシャンテン、しかも、タンヤオが確定してドラアンコ。観戦していて、ほぼ、アガリは平山のものだと思っていた。しかし、この手がなかなかテンパイしない。そしてツモ切ったがヤミテンの吉田に刺さる。
直撃の形になったのが、痛い。この半荘だけで、2位の平山と吉田の差は30,000点あまりの差になった。これを見た平山はどう思ったか。これが決定打となったのは言うまでもない。
戦いすんで
吉田の優勝で決着がついた。その麻雀を見ていると、このファイナルで最もキチンとオリていた印象と、局面によって最も激しく攻めていた印象が浮かぶ。相反することのようだが、その局面ごとに、最善を目指したのだろう。説得力のある、素晴らしい麻雀を見せていただいた。準優勝の平山は、「負けて悔いなし」と吉田の強さを称えていた。 観戦を終えての帰宅途中、この翌日にクラウンの決勝を控える多井代表とこんな会話をした。 決勝戦を戦った8人の方々、お疲れさまでした。 (文中敬称略 文責:真下修)
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