対局者
3月22日、第4期オープンリーグの決勝が銀座・ヤナギカルチャースクールで行われた。
リーグ、トーナメントを勝ち抜いて決勝に進出したのは以下の4名。
藤中慎一郎(A級ライセンス)
石川泰之(B級ライセンス)
蛭田数弥(RMU会員)
寺岡伸治(RMU会員)
藤中は今決勝最上位のA級ライセンスで、その力は誰もが認めるところで、
実力、経験ともに抜けている存在だろう。
「“さすがに”緊張していない」
「個性的な打ち手が多いが、だからこそそれに惑わされずに自分の麻雀を打つ」
といったコメントからは、本命としての自覚がうかがえる。
石川はRMUの試合では初の決勝進出。
リーグ戦ではあまり成績が振るわず、この決勝で優勝し、来季への弾みをつけたいところ。
前日、21時に寝たら朝の4時に目が覚めてしまい、日曜朝に放送される『所さんの目がテン!』を見てきたという。
折しも今朝のテーマは「緊張」。
「心拍数は90くらいがベストらしいね」と話す石川に、緊張した様子は見られない。
蛭田は第2期オープンリーグ以来2回目の決勝進出だ。
そして蛭田は今回の決勝メンバーの中で唯一藤中に五分以上の対戦成績を残している。
本命を藤中とするならば、対抗には蛭田を推したい。
前日、赤6枚の麻雀を打ってきたそうだ。
しかしながら、今回は一発裏ドラなしの麻雀だ。
バランスに戸惑うのでは?という筆者の問いには、
「慣れたルールで打つことで、自分の平常心を確認しておきたかった」との答え。
そういう考え方もあるのかと参考になる。
寺岡は日本麻雀機構の第1回関東エリア王覇者だ。
そのときは決勝まで大量リードを築き、追う3者を振り切っての優勝だった。
しかしそんな寺岡も同一メンツによる複数回戦の決勝は初めて。
どれだけ自分の麻雀を貫けるか、それが寺岡個人だけでなく
決勝全体のカギを握ることになるだろう。
当日は電車が遅れたことで、ぎりぎりでの会場入りとなったが、
あわてたり焦ったりした様子は見られない。
同卓者について、「皆さん強い方ですからねえ」と、
まるで他人事のように話す寺岡。緊張はしていない…のか?
1回戦
起家から藤中、石川、寺岡、蛭田の順。
東1局からいきなり石川にドラ3のチャンス手。
12巡目、石川(南家)
ドラ
開始早々の大物手成就か?
そう思われたが、蛭田が猛然と突っ込んでくる。
無筋をバシバシと押しているが、
その手牌はチートイツのみのイーシャンテン。
を掴めば切ってしまうのではないか。
17巡目、蛭田ようやくテンパイ。しかしその打牌にロンの声がかかった。
石川のマンガン?いや、幸いにも倒れたのは寺岡の2,000点の手牌だ。
寺岡(西家)
ポン ロン ドラ
蛭田がオリを選択していた場合、流局しても1人ノーテン濃厚。
放銃したものの、安手に打って得した格好。ツイているのかも。
一方、寺岡の配牌は
ドラ
と、とてもアガれそうにないもの。
これがアガれるなんて、こちらもツイているか。
石川が恵まれていない印象の東1局。
さらに続く東2局、親の石川はタンヤオドラドラをテンパイするが、
終わってみれば3人テンパイで流局と、またもや不発。
1回戦終了後に石川本人も「出だしはどうも具合が悪かった」と語っていた。
そんな石川だが、またもチャンス手がやってきた。
東2局1本場5巡目
石川(東家)
ツモ ドラ
ドラを引いてテンパイだが、ノータイムでを切ってテンパイとらずを選択。
3巡後にを引いてフリテンリーチと出た。
12巡目、石川(東家)
ツモ ドラ
12巡目に高めのをツモ。
流れるような手順での4,000オールだ。
「具合の悪さ」を払拭する狙い込みでフリテンリーチを敢行したと言う石川。
作戦成功といったところだろう。
東2局2本場、今度は蛭田にドラドラ。
蛭田(西家)
ドラ
こんな絶好の配牌をもらうと、有効牌をサクサク引いて8巡目にテンパイ。
ツモ ドラ
おや、似たような手恰好をつい先程見たような…。
蛭田の選択は打。
タンヤオがあるので出アガり可能で、打点も5,200と十分。
タンキのテンパイにとるのも頷ける。
次巡にツモ、打でに待ち替え。
蛭田(西家)
ドラ
しかし直後、下家藤中の打牌は!
最初のテンパイをとらず、打とした人はこの牌姿でアガれていた8,000だ。
ロン ドラ
痛恨のアガり逃し!
この隙に他家へ先を越されてしまうのでは…?
と思いきや、10巡目の蛭田の打牌が横に曲がっている。
そして15巡目に「ツモ!」
蛭田(西家)
ツモ ドラ
「3,000-6,000は3,200-6,200」
「最初の2局は、イマイチ麻雀に入りきれていない部分があったが、
テンコシャンコしながらもハネマンをツモれたことにより、どうにか立ち直った」
とは、蛭田の後日談。
アガれば落ち着けるのは皆同じようだ。
東3局
「麻雀とは自分との戦いで我慢することが大事と考えています。いつも会心の一撃を狙ってます!」
これは藤中のプロフィールからの引用だが、
この局は筆者にその言葉を思い出させてくれた。
14巡目、藤中(西家)
ツモ ドラ
何を切る?
といってもが3枚見えているうえに、序盤にを既に切っていてフリテン。
いくら四暗刻テンパイといえど、切りは無理がある。
ここで楽をせず、を切るのが我慢ということなのだろう。
そんな藤中の我慢が、最終手番で実を結んだ。
藤中(西家)
ツモ ドラ
ハイテイがついてマンガンのツモアガり。
重戦車藤中、会心の一撃で石川、蛭田に詰め寄った。
蛭田(東家)の1,000オールツモと流局2回を挟み南入。
この時点の点棒状況は
藤中31,200 石川31,600 寺岡21,200 蛭田34,000 供託2,000
3本場とリーチ棒2本、一発裏ドラのないBルールにおいて、
2,900点がこの半荘の着順に大きな影響を与えるのは間違いない。
この局は、石川があっさり6巡目にチートイツをテンパイ。
時間はかかったが14巡目に寺岡から出アガリし、本場とリーチ棒の回収に成功する。
これで石川がトップ目に立った。
石川(南家)
ロン ドラ
しかし南2局。
藤中がすぐさま2,000-4,000でトップを逆転。
藤中(北家)
リーチツモ ドラ
寺岡(東家)の1,500を挟んだ南3局1本場で、
蛭田が寺岡から5,200は5,500をアガリ、1回戦は僅差でのオーラスとなる。
蛭田(南家)
ポン ロン ドラ
オーラスを迎え、4者の点棒状況は
藤中39,200 石川30,600 寺岡12,700 蛭田37,500
最初のテンパイは6巡目に寺岡で即リーチと打って出る。
寺岡(北家)
ドラ
捨て牌はこう。
このリーチに真っ向からぶつかっていったのは、トップ目の藤中。
リーチを受けた時点の形が
藤中(南家)
この1シャンテンで、
7巡目、ツモ、打。まずは裏筋から。
8巡目、ツモ、打でテンパイ。無筋2本目を勝負。
11巡目、ツモ切り。無筋3本目。
12巡目、ツモ、打で待ち替え。
行きも行ったり無筋4本。
藤中(南家)
そして直後石川から打たれたに「ロン、1,000」の発声。
「まだ1回戦なんだし、打ってもだいたい2着止まりなのでいってみた。
3着に落ちるようならそのとき(今後の対策を)考えればいいと思っていた」
と語っていた。
1回戦は藤中が制する形で終わる。
寺岡は開局でアガって以降、ほとんど手が入らなかった。
そんな中、他家は次々に長打を決めている。
しかもツモアガりが多く、寺岡の点棒はガリガリと削られていく。
そして、オーラスの藤中のアガリに誰よりもショックを受けたのは寺岡だろう。
大舞台で実力者に堂々と押し返され、しかも打点はたった1,000点。
こんな経験はそうそうあるものではない。
2回戦に立て直すことができるか?注目だ。
1回戦終了時
石川▲5.4 寺岡▲33.3 蛭田+12.5 藤中+26.2
2回戦
再び起親から藤中、石川、寺岡、蛭田の順。
東1局、独特の手つきでツモ宣言、寺岡だ。
寺岡(西家)
ツモ ドラ
点数は500-1,000と安いが、寺岡にとっては初のメンゼンでのアガリ。
筆者のメモには大きな字で
「蛭田テンパイ遠い 藤中1シャンテンでドラ掴む」
「どこか1回戦とは違う雰囲気」
と書かれている。
1半荘目、寺岡は打点でもスピードでもまったく勝負になっていなかった。
しかしこの局を見る限り、寺岡と蛭田、藤中の立場が逆になっている。
この半荘、何かが起きるかと思わせられた。
そして東2局。
石川のリーチ、同巡に蛭田が飛び込む。
石川(東家)
リーチロン ドラ
蛭田(西家)
ツモ 打 ドラ
ここからの放銃。
ドラドラの1シャンテン、仕方のない放銃であるし、
筆者はこの手でオリる蛭田を知らない。
ここで問題なのは蛭田が放銃に回ったこと。
なおこのとき、寺岡は以下の手牌。
寺岡(南家)
チー ドラ
かなりの手が入っている。何か起きそうな予感しかしない。
局面が大きく動いたのは東4局3本場。
寺岡(北家)
リーチツモ ドラ
3本場を合わせて8,900点の収入。
我慢の展開を強いられていた寺岡、ついに本手が決まった。
2着目からトップ逆転を窺う蛭田だったが、南3局についにその打牌が捕まる。
蛭田(南家)
ポン ツモ 打 ドラ
石川(北家)
ポン ポン ロン ドラ
石川、会心の8,000を直撃。ラス目から一気に蛭田、藤中に詰め寄った。
南4局、4者の点棒状況は以下の通り。
藤中26,600 石川27,900 寺岡37,700 蛭田27,800
石川が7巡目にテンパイし、9巡目に蛭田から出アガって2,000点。
僅差の2着争いを制した。
ロン ドラ
2回戦終了時(カッコ内はトータルポイント)
石川+4.9(▲0.5) 寺岡+22.7(▲10.6) 蛭田▲19.2(▲6.7) 藤中▲8.4(+17.8)
3回戦
起親から藤中、寺岡、石川、蛭田の順。
3回戦はわずか11局で終了する。流局は1局だけ。
まずは東1局。
藤中が3,200オール、5,800は6,100と駆け出す。
東1局、藤中(東家)
ポン ツモ ドラ
東1局1本場、藤中(東家)
ポン ロン ドラ
同2本場、蛭田が先制リーチをし、一発でツモって2,200-4,200のツモアガり。
蛭田(南家)
ツモ ドラ
藤中、蛭田が一歩抜け出したが、東2局で藤中が蛭田を振り切る。
藤中が5、6巡目とツモ切りした後、7巡目に突如ツモ切りリーチ。
が4枚とも見えている蛭田がを切るが、無情にもロンの声。
藤中(北家)
ロン ドラ
石川、寺岡共には不要牌かつ安全に見える牌だ。
4人がかりの捲り合いでハズレを掴まされた蛭田だが、すぐに反撃を繰り出す。
東2局1本場1巡目、蛭田(南家)
ツモ 打 ドラ
ここからジュンチャンに寄せ、7巡目にはイーシャンテンになる。
7巡目、蛭田(南家)
チー ツモ 打 ドラ
9巡目にドラのをポンして打。
11巡目にを加カンすると、リンシャンから引いてきたのは。
14巡目、蛭田(南家)
加カン チー ツモ ドラ
14巡目にを引きよせる。攻撃型雀士ならではの3,100-6,100が炸裂。
さらに蛭田は南2局でもチンイツの2,000-4,000をアガり、トップの藤中に追いついた。
南2局、蛭田(西家)
ポン ツモ ドラ
しかし南3局、蛭田の切ったが藤中に刺さる。
南3局、藤中(西家)
ロン ドラ
この半荘2回目のチートイツの直撃で、3半荘目は藤中がトップ。
3回戦終了時(カッコ内はトータルポイント)
石川▲32.7(▲33.2) 寺岡▲18.9(▲29.5) 蛭田+18.3(+11.6) 藤中▲33.3(+51.1)
4回戦
起親から石川、藤中、寺岡、蛭田の順。
藤中と蛭田が40ポイント差、石川、寺岡までは80ポイント差。
石川、寺岡はもちろんのこと、
蛭田もここで藤中に着順で下回るようだと最終戦が厳しくなる。
そんな4回戦は、石川の連チャンで幕を開けた。
東1局8巡目、石川(東家)
ロン ドラ
配牌でトイツだったを3巡目に重ねると、
6巡目にドラのを引き入れてテンパイを果たす。
8巡目にに待ち替えすると、
すぐに蛭田からがこぼれて、3,900の出アガり。
東1局1本場14巡目、石川(東家)
ロン ドラ
またもやのアンコだが、今局のは配牌には1枚もなく、
すべて途中で引いてきたものだった。
12巡目にテンパイすると、14巡目に寺岡からが出て7,700は8,000。
東1局2本場7巡目、石川(東家)
ツモ ドラ
ここから打を選ぶ。
次巡を被るがピンズは場に高く、は少ない。
一方場に激安のソウズ。石川の手牌もソウズを伸ばして10巡目にテンパイとなる。
11巡目、石川(東家)
ツモ ドラ
テンパイ時にリーチをかけるか少考していただけに、ややもったいない印象を受けた。
しかし、これはこれで大きな4,200オール。
石川は、僅か3局で藤中との点差を40ポイント詰めた。
東1局3本場は蛭田が好配牌を仕上げ、9巡目にリーチ。
16巡目、蛭田(北家)
ツモ ドラ
16巡目に高めのをツモり、2,300-4,300。
石川の親は落ちたが、蛭田が藤中をまくったために、
石川と藤中の差はさらに10ポイント詰まる。
東2局7巡目、石川(北家)
ツモ 打 ドラ
ここ数局、石川の手に次々とドラが寄ってきている。それも無理なく使える形。
今局もピンフ、ドラドラ、高目サンショクのイーシャンテンに進む。
またも大物手炸裂かと思われたが、8巡目に入ったところで寺岡がツモ宣言。
8巡目、寺岡(南家)
ツモ ドラ
えっ?筆者は内心驚いた。
ダマに構えたからには、を先にツモってしまったときは、 フリテンリーチを打つのだと思っていたからだ。
トータルポイントを併せて考えたとき、この手が700-1,300にしかならないのと3,000-6,000になるのとでは雲泥の差である。
確かにツモ、打のフリテンリーチと比べ、 ツモ、打のフリテンリーチははるかに苦しい。
だからしぶしぶツモったのだろうか。
あるいは、寺岡にはまだ親番が2回残っているので、
トータルトップ目の藤中の親を落とすことを優先したのだろうか。
東3局14巡目、寺岡(東家)
ツモ 打 ドラ
14巡目と遅いが、4者中テンパイ1番乗り。
ダマテンで1巡回すが次巡、意を決してツモ切りリーチと出る。
しかし、石川も16巡目にテンパイ。
東3局、石川(西家)
チー ドラ
が、そのまま2人テンパイで流局。
またしても石川はドラドラの手恰好が入っていた。
東3局1本場は、寺岡が2巡目に早くもイーシャンテンとなるが、
そこからテンパイまでが遠い。
寺岡が有効牌を引けない間に、先に蛭田がテンパイ、即リーチと打って出る。
10巡目、蛭田(南家)
ドラ
決着は14巡目、寺岡がツモ切ったのは高めの。
このマンガンで蛭田の持ち点が3万点を超えた。
この半荘、蛭田と藤中との点差は1万7千点、
藤中と蛭田のトータルポイント差は13ポイント差まで縮まった。
一方寺岡は、この後も点棒を失い続けてしまう。
点差による焦りからか、傍目にも無謀な勝負を挑み続け、箱を割ってしまった。
現状、確かに寺岡と上位との差は大きいが、
石川、蛭田と藤中の差が詰まったために上位は平たくなっている。
この状況が最終戦にかけて、寺岡に有利に働くのだ。
競っている3人にとって、寺岡と争う理由が減る。
優勝争いをしている者の本手をさばくのと、
目なしの者の本手をさばくのとでは意味合いがまるで違う。
寺岡のアガりやすさが増し、フラットな状況では厳しい7万点、
8万点といった点棒も築きやすくなる。
ここで踏みとどまればまだ希望が残っていたが、
実際にはここからの数局で寺岡は敗戦を決定づけてしまった。
東4局では蛭田が5,800、800は900オールと続けてアガる。
東4局、蛭田(東家)
リーチロン ドラ
東4局1本場
ポン 大明カン ツモ ドラ
2本場では石川が2,200-4,200をツモアガる。
さらに迎えた南1局の親番では12,000、5,800は6,100、
12,000は12,600と叩き出し、持ち点は一気に9万点を超えた。
東4局2本場、石川(南家)
暗カン リーチツモ ドラ
南1局、石川(東家)
ロン ドラ
南1局1本場
ポン ロン ドラ
南1局2本場
ロン ドラ
日頃どれほど善い行いをすればこんなにもドラが寄ってくるのだろうか?
南1局平場、同2本場はそれぞれドラが入ってのテンパイだ。
このままいつまでも連チャンが続くのではないか。
筆者には、石川がドラを引くたびにそう思ってしまった。
3本場で、ようやく蛭田が先制する。
南1局3本場8巡目、蛭田(北家)
ツモ 打(リーチ) ドラ
これを寺岡から出アガり、1,300は2,200。ようやく石川の親番が終わった。
南2局
少しでも点棒を回復させたい藤中だったが、テンパイが入らないまま18巡が過ぎる。
流局かと思われたが、ハイテイで蛭田が500-1,000をツモアガる。
蛭田(西家)
チー ツモ ドラ
南3局は久々に流局する。全員ノーテンで点棒のやりとりはなし。
南4局1本場、4者の点棒状況と、
この半荘を含めた現時点でのトータルポイントは以下の通り。
(カッコ内はトータルポイント)
石川+74.9(+41.7) 寺岡▲58.8(▲88.3) 蛭田+14.3(+25.9) 藤中▲30.4(+20.7)
この半荘の着順が入れ替わることはまずないだろう。
RMUのルールは、1着順差につき10ポイントずつ差がつくため、
最終戦を10ポイント差以内で迎えた場合、その2人は着順勝負となる。
蛭田は5,900点、藤中は11,000点、石川との差を詰めれば最終戦を着順勝負で迎えられる。
南4局1本場1巡目、蛭田(東家)
ドラ
アガれそうにないばかりか、テンパイにすら辿りつけるかどうかといった配牌だ。
さらに3巡目には早々と石川がダブ南を仕掛ける。
絶望的な状況の蛭田だが、ここから手牌が急激な伸びを見せた。
6巡目にを重ねると、7巡目には3巡目に引き続きドラのを引いてくる。
10巡目には再びを引いてアンコにすると、
同巡に石川から出たをポンしてテンパイ。
10巡目、蛭田(東家)
ポン ドラ
次巡にあっさりを引きよせ、2,600は2,700オール。
これで石川とのトータルポイントは5.9ポイント差まで詰まった。
南4局2本場では、蛭田が11巡目にチーテンを入れる。
終盤で藤中もテンパイをいれ、2人テンパイで流局するのだが、
ここで蛭田はノーテン宣言をすることも考えられた。
蛭田が石川をトータルポイントで逆転し、さらに差をつけるためには、
13,000点以上の差を詰め、広げなければならない。
ならば、藤中に点差を詰めるチャンスを与えず、終わらせてしまうのはどうだろう。
…さすがに選べないか。そもそも筆者がこう考えたのも、
結果的に次局で藤中が大物手をアガってしまうからなのだが…。
南4局3本場1巡目、藤中(西家)
ツモ 打 ドラ
2巡目にをポンすると、3巡目にはを重ねる。大物手の匂いがする。
6巡目にはをポン。会場全体に緊張が走る。
7巡目にを重ねてテンパイ。
7巡目、藤中(西家)
ポン ポン ツモ 打 ドラ
11巡目には石川もテンパイを入れるが、テンパイにとるにはを打たなければならない。
11巡目、石川(南家)
ツモ 打 ドラ
さすがに切りきれず打。を引けばテンパイ復活だが、叶わず。
蛭田はポンの時点でを2枚持っており、大三元はないことがわかっていたが、
終盤にション牌のを引かされ、ギブアップ。
あとは藤中がツモれるかどうかだが…
流局間際の17巡目、藤中が力強くを引きよせた。
17巡目、藤中(西家)
ポン ポン ツモ ドラ
9巡目にからに待ち変えしたのが結果的に大正解。
最終戦を着順勝負で迎えられる、価値あるアガりとなった。
4回戦終了時(カッコ内はトータルポイント)
石川+67.4(+34.2) 寺岡▲66.3(▲95.8) 蛭田+17.6(+29.2) 藤中▲18.7(+32.4)
最終5回戦
起親から蛭田、寺岡、藤中、石川の順。
石川、蛭田、藤中の3人の点差が10ポイント以内であるため、最終戦は着順勝負となった。
大きく離された寺岡が逆転するには、2着と約12万点差をつけたトップが必要になる。
東1局
絶好の配牌を手にしたのは蛭田。
1巡目、蛭田(東家)
ドラ
蛭田はを切ったが、結果的にこれが大失敗。
2巡目、5巡目とが被らせ、テンパイを逃してしまう。
ようやく10巡目にを引いてリーチを打つが、直後の寺岡からツモ宣言。
寺岡(南家)
ツモ ドラ
チンイツへ移行するためにダマテンにしていたが、
親のリーチが入ってしまってはアガらざるをえない。
開局早々にアガり逃しをしてしまった蛭田。
しかし次局、蛭田に再びチャンス手が入る。
東2局
7巡目、蛭田(北家)
チー ドラ
ここから対面から出たをポン。
しかしこの仕掛けが蛭田の敗着となった。
蛭田らしくない、単にチンイツのテンパイだから、ハネマンだからというだけの仕掛け。
試合後、ライセンスS・多井が
「あのは鳴いてほしくなかった。確かに形はテンパイだが、ドラのは期待できない状況だからね」
と言っていたように、事実は山に1枚しか残っておらず、誰も切らない形。
一方はごろごろ残っていた。
結局、この局は石川が500-1,000のツモアガり。
石川(西家)
ポン ツモ ドラ
着順勝負の半荘で、チャンス手を2度も空振るのはあまりにも痛い。
そして誰かがミスをすれば、その代わりに別の誰かが浮上するのは勝負事の理である。
そして東3局、ついに決勝打が飛び出した。
1巡目、藤中(東家)
ドラ
この配牌を手にすると、、、と引き込み、
わずか4巡目に親マンリーチをかける。 ドラ
そして、7巡目にあっさり高めのをツモ。
勝負を決する4,000オールとなった。
蛭田の1,300は1,600、寺岡の500-1,000を挟んで南入。
南1局では蛭田が最後の親番だがテンパイを入れられず流局。
南2局は寺岡の最後の親番。
しかし今度は藤中があっさり1,000は1,300で流す。
そして運命のオーラス、4者の点棒状況は以下の通り。
蛭田17,100 寺岡43,200 藤中38,200 石川21,500
優勝の条件は、
藤中…アガれば優勝。下家の石川がノーテンで流局の場合も優勝。
石川…ラス親のため、藤中との16,700点差を逆転し、
さらにノーテン宣言できるまで点差を開いたうえで流局させる。
蛭田…藤中からハネマン直撃、もしくは三倍満ツモ。
リーチ棒が2本(藤中からの場合は1本)出た後に倍満ツモでも優勝。
まず藤中が6巡目に先制テンパイ。
藤中(北家)
ツモ 打 ドラ
これで決まったか?と思われたが、これが3段目になってもアガれない。
また下家の石川がまだテンパイしていなさそうなため、
15、16巡目にかけて引いてきたを絞り、テンパイを崩す。
石川はツモに苦しみながらも15巡目になんとかテンパイを果たす。
流局かと思われたが、17巡目にツモアガり500オール。決着を次局以降に繰り越した。
ポン ツモ ドラ
1本場となったため、蛭田はリーチ棒が1本出れば倍満ツモでも優勝となる。
石川は8巡目2シャンテン、13巡目にようやくイーシャンテン。
藤中は10巡目にイーシャンテンになるが、
前局同様、石川に対して牌を絞り、オリることを選択する。
石川のイーシャンテンの牌姿は以下のとおり。
チー
しかしこの手牌がテンパイすることはなかった。
流局し石川の手牌が伏せられた瞬間、藤中のオープンリーグ優勝が決定した。
最終戦終了時(カッコ内はトータルポイント)
石川▲12.0(+22.2) 寺岡+27.7(▲68.1) 蛭田▲28.4(+0.8) 藤中+12.7(+45.1)
優勝は藤中。
我慢するべきところでは徹底して我慢し、決めるべきところで会心の一撃を決める。
そんな自分の麻雀を存分に披露し、そして勝ちきった。
これぞA級ライセンス。見どころ満載の麻雀だった。
準優勝はB級ライセンス石川。
今回の決勝戦で、もっともドラに恵まれていたが、
多くのチャンスを蛭田に潰されてしまい、歯がゆい展開だっただろう。
また石川には敗着らしい敗着が見つからない。
強いて挙げるなら、勝負所であと1枚を押せなかったことだろうか。
3位は蛭田
敗者3人の中で、もっとも「らしい」麻雀を打っていたように思えたのは蛭田。
そのアグレッシブな麻雀でポイントを築いていった。
しかし最後の最後、勝負を決めるところでミスが出てしまった。
最終戦の東1局、2局が本当に惜しまれる。
4位は寺岡。
寺岡は序盤、まったく手が入らなかった。
そして手が入る前に、4回戦でバランスを壊し大きく失点してしまった。
半荘の順番が違っていたら、まったく違った結果になっていたかもしれない。
2回戦、5回戦の麻雀は、さすが決勝進出者と思わせられる内容だっただけに、残念だ。
あとがき
こうして、第4期オープンリーグはA級ライセンス藤中の優勝で幕を閉じた。
これまでの優勝者を振り返ると、
第1期 阿部孝則(S級ライセンス)
第2期 平山友厚(RMU会員)
第3期 飯島健太郎(B級ライセンス)
第4期 藤中慎一郎(A級ライセンス)
と、ライセンス選手、実力者の優勝で占められている。
そろそろ若手の誰かが獲ってもいいと思うのだが…
筆者を含む若いアスリートの皆さんには、奮起を促したい。
(文中敬称略 文責・合田 雄亮)
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