第6期 RMUリーグ第10節レポート
こんにちは、最近16キロの軽量化バージョンにモデルチェンジした重戦車ことA級ライセンスの藤中慎一郎です。
2月1日スリアロスタジオにて行われましたRMUリーグの最終節のレポートをお届けします。最終節が始まる前のポイントは以下の通り。

谷井+105.5
多井+80.5
河野△77.7
阿部△109.8

普通に考えれば谷井、多井の優勝争いに見えますが、条件さえ作れれば下位二人にもチャンスはあり。

なおかつ年度末に開催されるクライマックスリーグ進出の条件である、「3位以内」の争いもあるので、いろいろな局面が見られそうです。

一回戦 起家から 多井 阿部 河野 谷井。

まず4枚目のを渋々仕掛けた河野が三色ドラ1500、1000の和了。
密かにドラのを暗刻にしていた多井の親を流す形でゲームが始まる。

その後河野が快調で、

東3局0本場 東家 ドラ 裏ドラ

ドラ 裏ドラ

親の4巡目リーチ、難なくをツモり4000オール、河野が一歩抜け出す。
そのまま大きな点棒の動きもなく安定感のある試合運びで最終局も

南4局0本場 北家 ドラ

ドラ

この手をダマテンでツモ和了、トップを取りきる。

普段、あまり手役にこだわらない河野にしては珍しく、三色に始まり三色に終わった。
河野一人舞台の半荘であった。

一回戦の対局を見ていて、自分としては気になる選手が二人。

トップを取った河野と、多井との2着争いを制した谷井である。

河野は上手に打ち廻してトップはものにしているのだが、気になる点がふたつ。

ひとつは南3局の親番で、ハイテイに多井のホンイツ仕掛けにオリて親を流してしまったこと。
もうひとつは、南4局にリーチをしていればツモったときにトータルトップの親番の谷井の着順を落とせる状況で、ダマを選択したところに疑問を感じた。

2着とは2万点近くの差があるトップ目、その半荘トップを取るテーマなら確実な選択である。
しかし、4半荘で180ポイントを逆転するには、消極的な選択に思えた。

一方、谷井は多井との僅差の争いを制し2着を取りきったのだが、リードしている立場もあってか少し普段の谷井より守備的。
戦前に公言していた「自分らしく打つ」という形が出せていないように感じられた。

一回戦結果
多井△8.9
阿部△30.3
河野+37.4
谷井+1.8

トータル結果
谷井+106.8
多井+71.6
河野△40.3
阿部△140.1

二回戦 起家から 河野 阿部 多井 谷井。

追いかける立場の3人がしのぎを削る。

まず、1回戦、手が入らず見ているだけでラスになってしまった阿部が口火を切る。

東1局0本場 南家 ドラ裏ドラ

ツモ ドラ 裏ドラ

多井の仕掛けにリーチで対抗、他家に待ち牌が吸収されていく中、8枚目のをツモり1300-2600。

それに呼応するかのように、河野が3連続の和了を見せ反撃。

東4局0本場 南家 ドラ 裏ドラ
ツモ ドラ 裏ドラ

3連続の最後には、門前で高め三色リーチをきっちり高目をツモ和了。
2000.4000で阿倍のトップをマクる。

南場に入ると手が入っていなかった多井が、技術を見せ反撃。

南1局0本場 ドラ

ドラ

12巡目に南家の阿部がを鳴いて、タンヤオドラ2のテンパイを入れると、西家の多井がこれに反応を見せ、

ドラ

を鳴いて打、次巡を鳴いて打、次巡を引き入れテンパイ。
これで次巡の阿部のを討ち取ってしまう。

門前リャンシャンテンの手、周りに一歩遅れている進行状況だったが、河に一枚も危険牌を置かずに和了をさらっていってしまった。

この結果はたまたまかもしれないが、この形からチーの発声ができることは、場の状況の察知能力を含め、さすがである。

さらに親番を迎えて下の配牌。

南3局0本場 ドラ
ドラ

ここからソウズの混一色を目指しながら、捨て牌を丁寧に作り、

9巡目には下の手牌。

ドラ

この手にを重ね、打と匂いを消し続け、10巡目にを鳴く。

後のを出やすくするため、2枚切れのを残し生牌のを打ち出す。

河を丁寧に作ったおかげでもすんなりと鳴けてテンパイ。

先にテンパイを入れていたトップ目の河野から、を打ち取り12000。

劣勢だった多井が、本日の対局で初めてトップ目に立った。

次局は多井からトップを取り返さんとばかりに、まず河野が先制リーチ。

南3局1本場 ドラ
ドラ

が4枚見えていて、かなりいい待ちになっている。

ここでトップを取らないと、河野に追いつくには厳しくなってしまう阿部が、

ドラ

このテンパイ、がそれぞれ三枚ずつ見えていては河に二枚、残りは山に残っていると読みを入れて追いかけリーチ。

一発目に手に入れたのは

裏ドラで乗らずも、2000.4000のツモ和了でトップ目に返り咲く。

オーラスを迎え、四者の点棒状況が、
親の谷井が20000
南家の河野が27500
西家の阿部が39500
北家の多井が33000

ここで河野がリーチと来ると、お互いの敵に2着順差がついていて並びがいいと判断した多井が仕掛ける。

ドラのが対子で逆転されづらく、多井の意図を汲み取った阿部が差し込む形で着順を変えず終局。

阿部、多井のお互いの利害が一致した、見事な連携である。

二回戦結果
谷井△25.0
多井+10.0
河野△8.5
阿部+23.5

トータル結果
谷井+81.8
多井+81.6
河野△48.8
阿部△116.6

三回戦 起家から 河野 阿部 谷井 多井。

多井が谷井に追いつき、河野の大逆転は苦しくなった。

阿部も河野をマクるのに、首の皮一枚で繋がっている状態で迎えた三回戦。

起家の河野が軽く連荘後、まず阿部と谷井がぶつかる。

東1局2本場 ドラ
ドラ

南家の阿部がまず678の三色で先制リーチ。

2回戦でほとんど前に出ることなくラスを引かされてしまった西家の谷井が追いかリーチ。

ドラ

軍配は阿部に、谷井がを放銃してしまい裏ドラがで8000。

次局は南家の谷井が先制。

東2局0本場ドラ

ドラ

谷井が4巡目に上の手牌にを引き入れイーシャンテン。

河にソウズの情報は1枚も無く、谷井の選択は上目の三色を狙いつつ打

その後を引き入れてリーチ。そして、ダブが対子でイーシャンテンだった阿部がテンパイを入れて追いかけリーチ。

また両者のぶつかり合いとなる。

ドラ

阿部のリーチ後、すぐに谷井に訪れた地獄の使者は、場に切れていて残り1枚の

なんと裏ドラがで18000の放銃となってしまう。

実は谷井のソウズのターツ選択で、すぐを引いていて待ちを嫌う形にしていれば、1300.2600の和了のはず。

それだけに谷井にとっては、辛い結果となってしまった。

選択としては難しいところだと思うが、少しでも和了やすく、待ちが外側になる待ちを残す選択と、どちらが正解なのかは誰にも断言はできないのではないかと思う。

その後、順調に加点していき阿部が65000点持ちのトップ目になると、阿部の追い上げで尻に火が付いた河野の猛反撃が始まる。

南1局0本場 ドラ

ドラ

親の河野が、上の形から2巡目にを阿部から鳴く。

普段だとあまりしなそうな仕掛けだが、阿部との点差を考え、南場の親番での賭けに出たか。

加点が必要な阿部、谷井も下家と対面ということもあり、真っ向勝負。

これが、逆に河野の強引な仕掛けを助ける結果となってしまい、

ポン ポン ポン ツモ

河野、4000オールをツモ和了、阿部の背中を捉える。

その後、阿部に差を広げられるものの、南3局に4000オールをツモ和了。

箱下から脱出して、多井への追撃の姿勢を見せた谷井を打ち砕くかのように、さらに次局に、河野が大物手を炸裂させる。

南3局1本場 ドラ
ドラ

この手をリーチして高目のを当然の如くツモ和了、めくった裏ドラ表示牌も

一時は3万点近くあった差を、倍満で引っくり返してしまう。

南4局0本場 ドラ

オーラスは、逆転されてしまった西家の阿部が、河野を追いかけるべくまず5巡目にテンパイを入れる。

ドラ

河野との点差は11000点、お互いに親ではないので6400直撃かハネマン以上の和了が必要。

そのため、阿部はツモって裏ドラ一枚以上の選択を拒否していったんダマテンを選択。

実はは多井と谷井に全て持たれていて、三暗刻は成就出来なかったのである。

次巡を引き入れ四暗刻のイーシャンテンに構え打

ドラ

8巡目に一枚切れのを残しドラのをリリース。

これが好判断となり、が暗刻になって条件であるハネ満のテンパイを作り上げてしまう。

なんとか多井との差を少しでも詰めておきたい北家の谷井が、ホンイツのテンパイを入れるのだがそこで溢れるのは
阿部の手出しである

を考えればを切りそうだが、ライバル多井にしか目がいかなかったか、多井の河にあるで12000の放銃。

阿部の再逆転で三回戦は終局となる。

河野、阿部の熾烈な三着争いに正面から挑んだ谷井と、二人と争う必要が無いと引き気味に構えた多井。

明暗の差がくっきりと出る形となった。

条件戦になっている河野と阿部は、打点の高い手組をしているケースが多いので、真っ向勝負はリスクが高い。

それを読みきって立ち回った、多井の経験のなせる技なのであろう。

この半荘、多井は自ら和了ることなく谷井との大差を手に入れた。

三回戦結果
谷井△61.8
多井△27.2
河野+39.0
阿部+50.0

トータル結果
多井+54.4
谷井+20.0
河野△9.8
阿部△66.6

四回戦が始まる前に条件を確認。

谷井は三着順差なら4400点、河野は三着順差で34200点、阿部は河野を捲るのに三着順差で26800点の点差が必要になる(着順差が一つ減るごとに10000点の差がさらに必要)。

三選手とも、目標の順位を狙うには条件が厳しい状況になっている。

四回戦 起家から 阿部 谷井 多井 河野。

最終戦、先制はじっと我慢を続けていた西家の多井。

東1局0本場 ドラ
ドラ

6巡目にリーチして、待望のをたぐり寄せて、裏ドラで乗らずも2000.4000の和了。

条件を考えると、かなり大きなリードである。

今回の対局で多井は、苦しい配牌が多い。

その中でチャンス手はきっちりものにしつつ、条件を考えながら、序盤から守備意識を高め打ち廻していて、まるで付け入る隙がない。

東2局に親の谷井が2000オールをツモ和了。多井に食らいついた次局、

東2局1本場 ドラ

ツモ ドラ

谷井の親を確実に潰していきたい多井が、5巡目に切りリーチで先制。

谷井が9巡目に、


ドラ

このテンパイで追いつくのだが、待ちが苦しい。

直前に勝負手のイーシャンテンでを阿部が押している。両方共筋が通る形で、なおかつは3枚見えていてカンチャン待ちの場合ワンチャンスになっている。

現物のを打ちテンパイを取るのか、マンズの好形を求めテンパイを外すのか。

谷井の選択は打。次巡に無筋のを持ってきての放銃となってしまう。

選択としては間違っていないと思う。ただ今日の谷井の選択は不思議と悪い結果を導いてしまうのである。

点数は裏ドラが乗らず2600と安いのだが、谷井の親が流せた事を考えると勝利に一歩近づいた和了であろう。

戦況を眺めていた阿部が南入して親番で動き出す。

南1局0本場 ドラ

ドラ

6巡目阿部にリーチが入る。
メンホンで手を進めていた谷井に手が入り8巡目、

ドラ ツモ

リーチの同巡に引かされたが押し出され放銃。

裏ドラは。またもや裏3の放銃、谷井の勝利を打ち砕くかのような和了。

その後阿部は、一人テンパイ、4000オール、4000オールと連荘を重ねる。

河野どころかスタート時200ポイント以上差があった谷井まで捉え、暫定2着に浮上する。

このまま大きな動きがないままオーラス。

普通、オーラスは条件が絡み、点数に制約がある場合が多く、ただ連荘すればいい親に有利に働く。

しかし、現状河野がトータル最下位。

谷井もほぼ優勝がなくなり3位以内をキープしなくてはいけなくなってしまったため、3人が全力で親を流す状況になってしまった。

こうなっては連荘など至難の業。谷井が仕掛け、多井が差し込み、あっさりと終局となる。

トータル結果
多井+58.9
谷井△15.7
阿部△18.0
河野△27.2

第6期RMUリーグは今年からSS級となった多井が、3度目の戴冠となった。

今期のRMUリーグ最終節は、一人首位を走り続けた多井を、終盤谷井が切れ味鋭い攻めで逆転して迎えた。

そして、今節の谷井に大きなミスを感じられた局はなかったように思う。

ただどうしても攻めには常に表裏があり、今回の谷井はその裏を引き続けてしまった。

一方、多井は今までの数あるタイトル戦決勝の経験から、常にポイント差を踏まえつつリスクある勝負の場には上がらない選択をしているように見えた。

鋭い攻めで勝ちを掴んできた谷井と、守ることでも勝てることを知っていた多井との経験の差が出たように感じられる。

一年を通してRMUリーグを見てきたが、四者が最後まで戦い続けたリーグは初めてという気がする。

選手全員がベストを尽くしてくれた結果なのだと、改めて四人に賞賛を贈らせていただきたいと思う。

(敬称略)

藤中慎一郎

文責 藤中慎一郎