2013クライマックスリーグレポート
RMUリーグは、RMUの頂点を決めるリーグ戦。そこへの参加条件は非常に厳しいものとなっている。ライセンスAでのR1優勝。またはライセンスBでのクライマックスリーグ優勝。クライマックス出場条件は、R1で前期の一位か二位、後期の一位か二位になること。もちろん仮に前期で優勝しても後期でR2に降級となれば出場権は失う。
次にRMU長崎で獲得ポイント1位の選手が参加。
そしてRMUリーグでの上位三人と、年間で、RMUで最も強かった人間を決めるリーグ戦と言って過言ではないだろう。
この厳しい戦いを制してやっとRMUリーグにたどりつく。クライマックスリーグはまさに登竜門となる。
2013クライマックスリーグの参加選手は、
第5期RMUリーグ優勝の河野、2位の多井、3位の谷井。
前期R1優勝の松ヶ瀬、準優勝の宮田。
後期R1優勝の宮本、準優勝の萩原。
長崎から第7期RMUクラウンを優勝し、長崎年間ランキング1位の岡澤。
この対局は二日間で行われる。
「リーグ」とついているだけにポイントは完全に持ち越しとなる。
一日目は半荘五回戦の総当たり戦。二日目は順位毎の奇数卓、偶数卓での三回戦。そして上位4名による決勝二回戦である。
結果から言おう。二日間ともに完全なる多井祭りとなった。
一日目一回戦。
多井が岡澤に12000放銃などで苦しい展開。
しかし多井が岡澤から12000をアガり返すなどして終わってみれば+33.8のトップスタート。
二回戦。
小場の展開だがオーラス多井の親。
トップの松ヶ瀬まで10300点差。とのシャンポン待ちリーチをきっちり高めでツモ。4000オールの一捲りで+21.8ポイントのトップ。
三回戦。
ここは東一局から4000オールなどで走り抜ける。
しかし時間打ち切りによる最終局、多井482松ヶ瀬459と競り合う。が、終わってみればまたも+31.5のトップで三連勝。
四回戦。
ここでも時間打ち切りによる最終局。
宮本が頭一つ抜け出し、多井、萩原の二着争い。
萩原が早い巡目にツモのみのアガリ牌を引く。だが三連勝中の多井がこのままでは二着。
なんとか多井を沈めたい萩原がフリテンリーチを放つ。これを萩原がしっかりツモって多井を三着に落とすことに成功。
とはいえ多井のマイナスはほんの2.5ポイント。
まだまだ誰も多井を崩せない。だがトータルポイントで岡澤が追いかける。
今年度、クラウンだけでなくスプリントカップでも一勝している岡澤。
彼はこちらに来る時は、自分が見る限りいつもスロースターターだ。二回戦終了時-20.9から大きい二連勝でトータル二位に。多井との差はわずか30ポイント。
そして5回戦の直接対決。河野、松ヶ瀬、多井、岡澤。
だがここは、岡澤は苦しい展開。河野に8000放銃などでオーラスラス目。
河野がラス親で2600オールをツモって二着目の多井との差を広げる。多井はリーチ棒が出てからの満貫ツモ条件。
まず岡澤にテンパイが入る。の高め一通の6面張リーチ。
リーチ棒待ってました!と多井も三巡後にテンパイ。暗刻での高め234三色。
岡澤のリーチに唯一通るマンズの筋、を切ってリーチ。
すぐに松ヶ瀬も追いつく。ドラドラチートイツでこれだけは切れないと腹をくくって多井の高め単騎でリーチ。
誰がアガるのか!?
枚数的には圧倒的に岡澤有利。ここで多井が高めを掴めば明日もおもしろい!九引け!などと筆者の祈りは届かず多井があっさり高めをツモ。
きっちりトップをとり一日目5戦4勝の多井。
一日目トータルは
多井116.1
萩原36.5
岡澤21.0
宮本9.0
河野▲5.5
谷井▲48.7
松ヶ瀬▲50.1
宮田▲79.3
う~ん。強い。今日の多井は強すぎる。
きっちりオリるところは当たり牌を掴んだタイミングだし、勝負所をきっちり読み切り物にしてくる。
単純に「ついている」という言葉ではこの日の多井を表すのは間違っている。苦しい展開からワンチャンスを決して見逃さず確実にものにしてゆく。
無駄なく繊細に、かつ時に強引で力強く。
まさに多井が多井たる麻雀の一日であった。
クライマックスリーグ二日目。
この日はまず順位卓による三回戦が行われる。そして上位4人が半荘二回による決勝戦に進出となる。
この日はスリアロチャンネルでの生放送が行われた。
RMUの生放送、と言うより多井は生放送ではいまいち結果を残せていない。本人も自覚しており初日終了時点で「明日こそ!」と語っていた。
結果はこの日も強い多井だった。
生放送で筆者は解説を行っていたのだが正直強すぎて解説にならなかった。決勝戦を行うまでもない強さ。
決勝を待つまでもなく今日の多井にかなう奴なんているのか? どうやって多井を崩せるの!? と、逆にギャラリーをがっかりさせるほどの強さであった。
六、七回戦もトップ。八回戦も二着で断トツの決勝進出。
決勝戦メンツ、及びポイントは
多井185.9
宮本46.1
河野0.2
松ヶ瀬▲1.2
多井の強さは置いておき、この決勝メンツは、前回の生放送RMU祭の決勝でも戦った三人になった。
正直、こんなことを言うのは悔しいがさすがの三人。
後期R1優勝、以前からその実力を誰もが認めている宮本。
第10期最高位戦クラシック優勝の松ヶ瀬に至ってはタイトルこそ取り損ねているが、今年度何度目の決勝戦なのだろうか。
その実力はもはやいうまでもない、第5期RMUリーグ優勝、業界一ヒールが似合う男とも評判の河野。
始まる前から独壇場の多井を止めることはできるのか。
決勝一回戦。
ここでトータル2位の宮本が崩れる。
それなりに手が入るのだがそれを成就させないライセンスSの二人。
開始早々、多井から12000をアガった松ヶ瀬も何も出来ずに削られていく。
結果が変わらないとしても、「お前にだけいい格好させないぞ」と言わんばかりに点棒を積み重ねていく河野。
多井とも共通する部分だが、手牌を短くし、打点があろうとも当たり牌を掴んだ時にきっちりオリきる繊細さ。
多井との違いを感じさせるのは周りの勝負所をいち早く感じ取り、捻じ曲げ、自分の展開に持っていく感性。
そんな河野の「強さ」を思い知らせる71100点の大トップ。多井もなんと45500点の二着。
実際に打っている松ヶ瀬、宮本がどう思ったかはもちろんわからないが、見ている側からすれば、
「これがRMUのライセンスSだ」
と、有無を言わさず認めさせる半荘になった。
九回戦終了時ポイント。
多井206.4
河野56.3
松ヶ瀬▲13.1
宮本▲18.6
最終戦。
もはや言うまでもなく結果は決まっていた。
だがやはりの強さを見せつける河野。最終戦もトップをとり二連勝。
アガれば優勝の条件でも自分の麻雀を貫き、役ありテンパイになるチーもポンもしない多井。
その事象だけを見れば正直、頭がおかしいと思う人が多いだろう。もちろん点数状況に余裕があったからかもしれない。だが自分のバランスを崩さず最後まで多井の麻雀を見せつけてくれた。
2013年度クライマックスリーグ優勝は多井隆晴。
順位 | 選手名 | 合計 | 1回戦 | 2回戦 | 3回戦 | 4回戦 | 5回戦 | 1日目小計 | 6回戦 | 7回戦 | 8回戦 | 小計 | 9回戦 | 10回戦 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 多井隆晴 | 184.5 | 33.8 | 21.8 | 31.5 | ▲2.5 | 31.5 | 116.1 | 21.6 | 36.0 | 12.2 | 185.9 | 20.5 | ▲21.9 |
2 | 河野高志 | 82.1 | 3.0 | 9.9 | 4.1 | ▲42.2 | 19.7 | ▲5.5 | ▲0.7 | 41.0 | ▲34.6 | 0.2 | 56.1 | 25.8 |
4 | 宮本卓 | ▲15.1 | 17.7 | ▲23.4 | ▲33.3 | 36.5 | 11.5 | 9.0 | 26.9 | ▲13.5 | 23.7 | 46.1 | ▲64.7 | 3.5 |
5 | 松ケ瀬隆弥 | ▲20.5 | ▲50.2 | 6.1 | 19.2 | ▲7.5 | ▲17.7 | ▲50.1 | 9.5 | ▲ 4.0 | 43.4 | ▲1.2 | ▲11.9 | ▲7.4 |
3 | 萩原亮 | ▲7.9 | 14.3 | 24.4 | ▲32.8 | 8.2 | 22.4 | 36.5 | 6.2 | ▲55.8 | 5.2 | ▲7.9 | ||
6 | 岡澤和洋 | ▲44.9 | ▲16.1 | ▲4.8 | 45.0 | 30.4 | ▲33.5 | 21.0 | ▲30.4 | ▲26.6 | ▲8.9 | ▲44.9 | ||
7 | 谷井茂文 | ▲84.2 | 29.5 | ▲29.5 | ▲17.9 | ▲31.3 | 0.5 | ▲48.7 | ▲25.6 | 4.1 | ▲14.0 | ▲84.2 | ||
8 | 宮田信弥 | ▲95.0 | ▲32.0 | ▲5.5 | ▲15.8 | 8.4 | ▲34.4 | ▲79.3 | ▲7.5 | 18.8 | ▲27.0 | ▲95.0 |
生放送でもついに結果を出した多井の野望はもちろんまだまだ止まらない。
「タイトル数20個を目指す」。
引退する時に史上最強の名をほしいがままにするため、結果はもちろん内容でもこれからもどんどん登り詰めていくだろう。
今期のクライマックスリーグは、まさにS級がS級たる所以をまざまざと見せつけられた。
RMUリーグではしばらく苦しんでいた阿部も、RMU祭では新たなステップに上がった強さを見せてくれた。
当たり前のことを言うが、本当に「どいつもこいつも強い」。だがこの三人が強いからこそ、
そこに追いつきたい!こいつらを倒したい!
とこちらの気持ちに火をつけてくれる。
本当に刺激になった二日間だった。
文責 渡辺卓也