2011スプリントファイナル優勝は寺本喜一さん! |
思えば、去年もスプリントファイナルの1日目で負けて観戦記を書いたんだっけ…。
去年は準々決勝敗退で、今年は準決勝敗退。単に出た位置が違うだけで、初戦で負けたという意味では同じ。 今回は、あちこちのタイトル戦で勝ちまくっている多井隆晴プロが、スプリントカップだけはどうも乗り切れず、準決勝にすらいなくて、「鬼の居ぬ間に洗濯」という気持ちが全くなかったといえば嘘になるけど、そこで勝ち上がってきたもう1人の鬼に負けていては世話ないよなぁ……。 あまり前置き(しかも筆者の愚痴)が長くても仕方ないので、決勝進出者の紹介に移ります。 (以下敬称略) (五十音順) 武中真(最高位戦日本プロ麻雀協会) 寺本喜一(一般) 柳井隆道(最高位戦日本プロ麻雀協会) (1回戦)寺本、柳井、武中、河野(起家から、以下同じ) 一発ツモだったのはあくまで結果論であり、河野の対面から見ていて、3メンチャンで7巡目というのはともかく、ピンフのみをダマにしていたこと自体は特に違和感がなかった。 2局で5,000点ほど浮いた河野であるが、迎えた親番で寺本の満貫を親かぶりし、リードがあっさり消し飛ぶ。 ツモ ドラ寺本は、手役(とくに2ハン役)が見えると多少の受け入れを犠牲にしても決め打ち気味に追うタイプである。この局の配牌は、 ドラ確かに678サンショクが見える好配牌だが、3、4巡目にをツモ切っている。 ツモ ドラ この打ち方は、アガリを逃すことも少なくないだろうが、決まれば一定以上の打点が見込めるという意味では、理に適っていると言える。 南1局、柳井の8巡目 チートイツのイーシャンテンとなり、タテとヨコとの分岐点である。横につながっていてピンフになりやすく、イーペーコーやうまく入ればサンショクまで見えるので、あたりをほぐしてリャンシャンテンに戻す人もいそうだ。 ここで柳井はを切って、チートイツのイーシャンテンに取った。すると、この選択がズバリであっさりを引いてテンパイ。ドラ待ちだからか即リーに行く。リーチの時点で山に1枚残りだったが、これをツモってハネ満。 この半荘はこれが決め手となり柳井のトップ、以下南場で細かくアガった河野、逆に役牌+ドラアンコを生かせなかった寺本と続き、武中は何もできずラスとなった。 柳井+28.7、河野+8.7、寺本▲12.2、武中▲25.2 (2回戦)柳井、寺本、武中、河野 ドラのは生牌、は2枚切れ。大半の人はドラ単騎に受けて、リーチして6,000(8,000)オールを引きに行くか、ダマにしてこぼれての9,600の確率を少しでも高くするかの選択になると思うのだが、寺本の選択は、ドラを切っての地獄待ちのリーチ! 確かに、前に出る人は切るだろうし、アガれた時の印象の鮮烈さはドラ単の比ではないが、点数的にはミニマム4,800。裏目を引くことを考えれば、なかなかこういう選択はできない。 ただ、ドラはすでに武中が1枚持っていて、2枚目はリーチの同巡に出ない形の柳井へ、もう1枚もすぐに武中のツモ筋にあったため、ダマにしていても出ていた可能性は低い。そして終盤、を引き当て3,200オール。 1本場は、武中のようやく初アガリとなるホンイツのツモアガリ、続く東4局、武中に ドラ寺本のポンでテンパイが入って先制リーチ。次巡河野が ドラピンフドラ1で追い掛ける。さらに次巡、柳井までもが ドラ河野の入り目の切って3軒リーチ。すると、これを寺本がチー。念のために寺本の残り手牌を確認しに行くと、一応バックのテンパイ。ではあるが、去年今年と寺本の麻雀を何半荘か見てきた印象と、2つ目を鳴くのに逡巡があったことから考えると、一発消しの意味合いの方が強いかと思った。 筆者は、一発役というものがある以上、一発消しも戦う上での手段の1つとは思っているが、準決勝で寺本が追っかけリーチの一発を消した打牌で、筆者の先制リーチの高目に放銃したのを見ているからか、どうも危なっかしさを感じずにはいられない。 結果は、柳井の一発ツモだったはずのを食い取って、現物の中抜きをしている間に河野がをつかんでの7,700放銃で終わり、これなら消した甲斐があるというもの。 その後、河野は失地回復を目指して ドラ高目イッツーのリーチに行くが、 ドラ寺本にダマテンのカンチャン待ちタンヤオサンショクを引き負けるなど、きっかけがつかめない。 これで寺本が独走する中、追いかけたい武中は南2局1本場、南家で12巡目に ツモ ドラドラを使える形でテンパイ。場にはが1枚ずつ見えていて、見た目の枚数は同じ。あとはリーチ後のドラ引きに備えてノベタンにするか、わずかでも出やすそうな変則待ちにするかの選択で、武中は後者を選択して切りリーチに行く。 しかし、よりによって一発目のツモがでこの受けだとアンカンできず、さらに次巡引いてきたのはと、あまりにも露骨な裏目。 それでもアガれればまだよかったが、 ドラ武中の欲しいところを、たくさん使いきって追いかけてきた柳井との2人テンパイに終わりチャンスを逃すと、続く南3局2本場、 柳井が ポン ポン ツモ ドラ安目ながらも1,300-2,600(+600)をツモって武中に迫る。 どうにか2着は確保したい武中は、 ポン ドラ5巡目にこのテンパイを入れると、次巡を引いて両面に受けかえる。 しかしこの待ちがどこからも出ない。マンズに寄せていたらアガれていたであろう無駄ヅモを繰り返している間に、親の河野が ドラ打点はないが親権主張のリーチ。 このリーチ棒でアガれば2着浮上という条件になった柳井、 ドラここからリーチ後一発目に、河野の捨てたをで鳴いて、捌きにかかる。 ちょっと苦しいかなと思って見ていると、2巡後に河野のアガリ牌のを喰い下げる。さらにツモが利いて チー チー ツモ ドラ河野と武中のアガリ牌を固めてアガリ切ってしまう。これには両者渋い表情。 (スコア)寺本:+31.1、柳井:+6.5、武中:▲5.1、河野:▲32.5 (3回戦)武中、柳井、河野、寺本 現状首位の柳井と\60p前後離れている2人は、そろそろ前を追いかけに行かないと優勝が苦しくなってしまうところ。 東1局には武中が ポン ツモ ドラこの1,600オールツモアガリ。東3局1本場では河野が リーチロン ドラ 裏この5,800(+300)を柳井からアガる。 親が流れて東4局、親の寺本が、と切って ドラというテンパイ、そこへとツモ切ってリーチ。 役もドラもなく、待ちも決していいとは言えない親リーで、これで親が維持できればいいのだが、武中がまわしている間に ツモ ドラは切っていてフリテンシャンポンでテンパイし、その次巡のツモで、意を決してを横に曲げる。結果は寺本がで安目とはいえ満貫の放銃となる。 その後、寺本は南1局の河野の6巡目リーチ ドラこれを8巡目に ドラメンホンチートイツで追い掛けるも流局。これはいいとして、続く南2局1本場は、10巡目に ドラ役なしドラなしのテンパイ即リー。この前巡、柳井に ドラこんなテンパイが入っていたが、3枚2枚切れだったため、リーチしていなかった。 柳井はダマでそのまま押していったが、河野が、 ドラで割って入ったところで、ドラをつかんで撤退。最後のを寺本がツモ切ったのはそ 柳井は大きく沈んではいないのだが、下位2人が浮いている展開になり、このまま終わ ダブアンコのイーシャンテンになったところで切ったドラを柳井がポン、河野はを引いてリーチに行くが ポン ドラ柳井が満貫をツモアガって僅差ながら河野をかわして2着目に浮上。 そしてオーラス、何とかトップを取りたい武中だが、先手を取った寺本の攻めを押し返せないまま、流局連荘が続き2本場。 この局は柳井が ポン ポン ドラでドラを切って攻めを見せるが、その直後に寺本が ドラピンフのみで10巡目に先制リーチ。これを受けて河野が ドラこのイーシャンテンから11巡目にを切って寺本に放銃。 「(自分が合わせたドラに動きがなく、)ドラが見えたし、安いと思ったけど…」 は局後の河野の弁だが、現状ラス目のトータル2着目がかけた親リーへの対処としてはどうだったか。 少なくとも、1戦目のピンフのみをダマにするような打ち手が切るような牌ではないと思う。確かにリーチはかけた瞬間は安かったが ロン ドラ 裏リーチはこんなマンガンになることもあるからだ。慎重さがベースにある河野だからこそ、もう1回我慢してほしかった。 裏ドラがめくれた瞬間、河野の表情が自嘲気味に緩んだような気がしたのは、気のせいではあるまい。 続く3本場、寺本が今度は第1打からと並べていかにも変則手の構えから、ペンとカンを鳴く。 単純に考えれば789サンショクは確定的で、いかにもマンズの上が待ちでありそうな形なのだが、 ツモ ドラ8巡目にこの形から切り役なしテンパイを取ってダマに構えていた武中が、15巡目に、さらに流局間際の18巡目にはも押す。 もちろん、武中がここを切るからには、通るという何らかの読みの根拠があったはずだろうし、終盤になってピンズ染め模様の柳井にピンズは打てないという読みがあったのだろう。 後者についてはテンパイが入っていて間違いではなかったのだが、 チー チー ロン寺本に読みを外される形で、5,800(+900)の放銃になり、トップ目から陥落してしまう。 最後は、アガればトップ逆転の柳井が ポン上 ツモツモってマンガンでトップで終了。終わってみれば差が開く結果となった。 (3回戦)柳井:+27.9、寺本:+6.2、武中:▲6.8、河野:▲27.3 (4回戦)河野、寺本、武中、柳井 東1局 東3局 合間に柳井への2600放銃があったものの、ダントツになる。ここから先は流局と細かいアガリが続く。 オーラスも、河野の親リーに対し ドラそれ以前からこの役なしでテンパイしていた寺本、この形でリーチに行かずに自風のをツモって通っていないをしっかりと勝負して、イーシャンテンだった武中からこぼれた河野の現物のを拾って、トップを決める。 (4回戦)寺本:+34.5、柳井:+6.5、武中:▲14.8、河野:▲26.2 (5回戦)寺本、柳井、河野、武中 下2人は親が後に回ってくるとはいえほぼ圏外と言っていい。逆に柳井と寺本との差がちょうど\10pしかないので、ウマが5-15のRMUルールでは、純粋な着順勝負となる。 東1局、柳井に ドラこの高目タンピンサンショクテンパイが入る。リーチしてかぶせに行くかな、と思って見ていると、これをダマテンに構える。そして、高目ので河野から出アガリ。 リーチをかけると下位2人から出ることは絶対にないと言っていい状況なだけに、好判断かと思った。しかし、続く東2局の親番、 ドラ他家に動きはなく、このイーシャンテンからがアンコになってを切るまでは良かった。しかし、上家の寺本の切ったに声をかけないばかりか、を引いてを切ってやめてしまったのはどうだったか。 下位2人のダマテンは状況的に考えづらいので、あるとすれば寺本くらいだが、自身の親番でこれはさすがに消極的過ぎなかったか。 結果から言うと、この時点では誰もテンパイしておらず、これを鳴いていると1人テンパイだったところ、親が流れたうえに最終ツモでテンパイした寺本の1人テンパイで逆に差が4000点詰まってしまう。 さらに、東3局1本場も、武中のトイトイ仕掛けに対し、 ドラからスライドさせつつ押す寺本に抗し切れず、2人ノーテンで、あっという間に差が2,000点にまで詰まる。 トイトイのテンパイが入った次巡に親の武中がを掴み、トイトイドラ3の 12,000(+600)をアガり、逆に寺本が1万点以上のリードを奪う。 南1局は、残りツモ1巡くらいのところで柳井がテンパイしたタンヤオチートイツがひょっこり武中からアガれて差を詰める。 ロンこれで寺本の親を流すが、南2局は逆に、 ポン ポン ロン寺本が柳井からアガり、自力で親を流す。この時点で10,400点差。 南3局、柳井がどうにか満ツモ圏内に差を詰めようと、リーチをかけるが、 リーチツモ ドラ 裏河野にツモられる。放銃ではなかっただけましか、と見ていて思ったが、 ハネ満条件の柳井に入ったテンパイは以下。 ドラこれでは全然足らない。次巡、を引いてサンショクはついたが、ドラが出ていくため この際、を引くまで待つかと思ったが、すでに2フーロしている寺本を止めるべくここで裏裏条件のリーチに行く。しかし、はすでに純カラ。 最後は寺本が ポン チー ロンラス親の武中から出アガリ、幕を下ろした。 (5回戦)寺本:+26.9、河野:+3.5、柳井▲7.5、武中▲22.9 4位 武中真(最高位戦日本プロ麻雀協会) ▲74.8 3位 河野高志(RMUライセンスS)▲73.8 2位 柳井隆道(最高位戦日本プロ麻雀協会) +62.1 優勝 寺本喜一 +86.5 こうして、スプリントファイナル2011は寺本の優勝で幕を閉じた。 下の2人はともかく、柳井には十分勝つ可能性があった。この両者を分けたのは、経験の差のような気がする。 うまくいった選択もうまくいかなかった選択も含め、独特な選択をすることがあるのが寺本の麻雀だが、それこそが数半荘での勝利という目的に対して、彼の長年の経験で培ったアプローチの仕方なのだろう。 そして、経験の少ない柳井は最後に心理的にはまってしまったように思う。麻雀は本当に奥が深い。 これで、2011年度のスプリントカップもすべて終わりました。 来年度もスプリントカップは、同じ形式で行われ、5/6(日)に開幕戦のマ-キュリーカップが行われる予定となっております。 皆様のご参加を、RMU選手一同、心よりお待ちしております。 (文責・宮田信弥)
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