2009ウラヌスカップ 優勝は有田幸司 |
外は肌寒く、時折冷たい雨も降ろうかという2月11日、2009年度のRMUスプリント最終戦、ウラヌスカップが開催された。 さて、本大会は以前のレポートにも触れられているように、全6戦の大会ごとに優勝~ベスト16入賞までにポイントが付与され、累計ポイント上位12人が別日に行われるスプリントファイナルのタイトルを争う仕組みになっており、本日でその12人が決定する。筆者は、初戦のマーキュリーカップで準優勝という好スタートを切ったにも関わらず、残りの参加した大会全て予選落ち、ベスト8が最低条件の今日もあえなく予選で散って、決勝のレポートを書くこととなった次第である。 さて、準決勝が終了して5位以下が確定した時点での暫定ポイントランキング上位は以下の通り。 ※カッコで示した決勝進出の4人の点数は、この時点で最低限確保している6p(4位)を一律に加点したもの
1 水沼利晃 15
この表に入っている中では、首位で通過が確定していた水沼がさらに2p加点して飛び級を確実にした他、ボーダーギリギリと目されていた竹中も2pの加点で通過を確定させた一方、入賞すれば飛び級も狙えた多井は、4回戦で大トップを取るもあと1,000点ほど足らずに次点で予選落ち。 これによると、この時点で決勝進出者3名を含む吉田までのファイナル進出が確定しており、鈴木も3位に入ってもう1p加えれば、追いつきで山谷と入れ替わって12位に滑り込んで進出となる。 また、飛び級となる条件は となっており、皆優勝を目指すのはもちろんですが、状況によってはこれらの条件を意識することも有り得るだろう。 ここで、開始前に伺った4者のコメントを紹介。名前の後の数字は、決勝への持ち越しポイントである。 1位通過:仲大底充(RMUアスリート)61.6p 似たような条件だった筆者と開始前に進出条件の話をしていたのだが、2回戦、筆者がツモり四暗刻の親リーチに放銃した隣の卓で四暗刻をツモるなどしてポイントを重ねてのトップ通過。 2位通過:有田幸司(一般)54.3p 一般参加ではあるが、スプリントカップの常連であり、マーズカップで4位入賞。さらには今年度のアマ最高位戦で準優勝という成績も残している実力者である。 3位通過:飯島健太郎(ライセンスB)51.0p オープンリーグ優勝経験(第3期)があり、リーグ戦でも安定した戦いを見せておりながら、スプリントカップには本当に縁がなく、信じられないことに前回私がレポートを担当したマーズカップまでベスト16すら一度もなかったそうである。しかし、その滑り込みでベスト16入りしたマーズカップをきっかけにそこから3連続でベスト16入り、そして4連続目となったの今大会は決勝進出でファイナルへの切符も手にした。 4位通過:鈴木大成(ライトコース)49.8p 先に述べたようにまだファイナルが確定しているわけではないので、最低限そこだけは逃がしたくないところだろう。 ご覧いただいて分かるように、1位の仲大底と4位の鈴木とでも持ち越しのポイント差は12ポイント程度、つまり、決勝の着順がほぼそのまま全体の順位になるという中、決勝がスタート。 起家から有田-仲大底-鈴木-飯島 東1局、親の有田が9巡目リーチ。
ピンフのみだが、有田の河には1巡目と6巡目に
この形で、6巡目までのツモが 続く1本場、10巡目の有田。
ここから、飯島の切った
ピンフのみとはいえ3メンチャンの即リー。次巡さらに飯島もテンパイ。
5,800は6,100。 有田「マンズのカンチャン待ちにはしたくなかった。ピンズがアガリやすそうだったので、シャンテン数の変わらない微妙な鳴きだったけど、あのように仕掛けた」 この時点ですでに さらに2本場の有田の配牌。
と、今度ははっきり一色手が意識できる形。2巡目にツモ
あっという間にテンパイが入る。
このイーシャンテンからツモ切られたもので、一見すると仕方がないようにも思えるが、観戦していた藤中によると、 「連チャン中の親の上家であることを考えると、( とのこと。 有田「ここで手出しを入れるとホンイツのテンパイを強く意識させてしまうので」 確かに、テンパイが入った後仲大底がピンズの下をバラ切りして薄くなっていて、手出しが入るとピンズの上はより警戒されるだろう。この注文にはまる形で仲大底が 3本場、またも有田が先制リーチ。
仲大底から安目の 「1半荘勝負でこれだけ連チャンされている非常事態なんだから、動いてでも親を蹴りに行くべきではなかったかな」 動けるタイミングは2回。
この形から6巡目の
この形から8巡目、宣言牌の さらに連チャンが続き4本場、ここで大きく局面が動く。
ここまでほとんど有効牌を引かず、あまりパッとしない3シャンテンである。
234のタンピン三色がはっきり見える形の2シャンテン、仕上がれば一気に挽回できる手になりそうである。8巡目に (有田の捨牌) 直後に仲大底が
仲大底の決断はツモ切り、するとこれが有田のロン牌。
裏が1枚乗って12,000は13,200、これで早くも有田は6万点オーバー、逆に仲大底は1万点を割り込み、苦しくなった。 「宣言牌が なるほど。ちなみに、 『宣言牌の と局後阿部に聞いたところ、 「フラットな状況ならありえない選択と言えるけど、この状況ではないとは言い切れない」 とのこと。 5本場、ようやく鈴木がテンパイ一番乗り。
焦ってカン
3巡後にドラをツモって満貫。ここまでずっと有田のアガリが続いたが、放銃がなくリーチ棒分しか失点のない鈴木が、有田を追う一番手に名乗りを上げた。 東2局は、飯島が9巡目に
から
次巡 東3局、鈴木にチャンス手が入る。配牌からドラの
6巡目にこのイーシャンテン。そこから手が進まない中、9巡目に
の形で少考した後、 藤中「あの河で それならば、仲大底が実際にツモ切った 続く1本場、仲大底が11巡目に先制リーチ。
捨牌は9巡目に
有田にトイツで持たれ、しかも12巡目には
次に有田がツモってきたのは、両者に通っていない 「ロン」 リーチの瞬間には考えられなかった形で仲大底のアガリになる。この結果は、アガった仲大底はもちろん、他の2人にとってもいい形。あとは、これで裏が乗って満貫になればちょっとした事件だが、裏ドラは 東4局は、飯島がリーチしての1人テンパイ。 この時点での点数は 有田52,500、仲大底6,500、鈴木40,900、飯島20,100 まだ有田が優勢だが、鈴木もピッタリ後につけておりまだまだ楽ではない。残る2人はあと1回の親でどこまで迫れるか、といったところ。 しかし、この後も小さな動きがしばらく続く。 南2局2本場、仲大底にとってのラストチャンスになる局だったが、西家の飯島が6巡目までに2つ鳴いて
このテンパイ、11巡目に仲大底から
さて、こうした大会麻雀においては、優勝以外の価値が大差ないことから、決勝においていわゆる『目無し』というものが存在しがちであり、これが展開に歪みを招く原因になりやすい。 「(目無し作りは)意図的にやった。その方が、オーラスで戦いやすいと思った」 とのこと。だが、何が正解なのかは、今の私には分からない。 南3局、2着目の鈴木の親番だが、有田が
2つ仕掛けて飯島からアガって蹴り、オーラスへ。 有田53,500、仲大底1,900、鈴木42,400、飯島22,200 有田はアガれば終了、鈴木は6,400直かハネ満のアガリ、飯島はとにかく連チャン、まだ3人に優勝の可能性が残っている。 南4局、有田の配牌
ターツ候補が揃っており、ピンフかタンヤオにはなりそうである。しかし、これといった有効牌を引けない間に飯島が
この配牌を5巡で
この形に仕上げて即リー。こうなると、有田はもちろん、鈴木も条件を満たす手が入っていない限り前に出てこられない。一人旅で 1本場、飯島が捌きの難しい形になる。
6巡目、ここから少考して、1枚切れている
この形に上家から
こうテンパイし、 鈴木「一発ツモか直撃だったら裏1で条件を満たすのでアガるつもりだったが、鳴かれるとは思わなかった」 ここで対局時間が長くなり、条件が変わってきたこともあって、選手の希望で若干の休憩が取られる。 「トップ欲しいし、見逃しますよね?」 これに多井が答える。 「このまま2着や3着でもファイナルは鉄板で、トップを取ればトーナメントⅡ(飛び級)なのだから、狙う価値は十分にありますよ」 そして、2本場から再開。持ち点は、 有田50,700、仲大底▲900、鈴木41,600、飯島27600 供託1,000 となり、鈴木は3,900直、満貫出アガリ、6,400ツモと条件が楽になったのだが、好配牌をもらった飯島が7巡目に先制リーチ。
やはり誰も向かってこれず、長引いたものの14巡目に 3本場、 先程と比べ、鈴木は満貫出アガリでは届かなくなった。
となるが、まだイーシャンテン。しかし、他の3人はそんなことを知る由もない。
このイーシャンテンになっていた。14巡目、有田が食い下げた お世辞にもいいテンパイとは言えないが、もう手変わりを待っている余裕もないし、有田の現物の 「(有田に)2つ鳴かれていてテンパイかと思い、巡目も遅く、ダマにした方がいいかと思った。リーチとダマ、どちらがいいか微妙で分からなかった」 結局、有田は
テンパイを取ったのだが、次巡 「あれはリーチをした方が得なことが多い。2,000点じゃ、テンパイ料と変わらないしね」 改めて考えてみると、有田がテンパイでまっすぐ向かってきてめくり合いになればリーチしていた方が打点は高いし、微妙な牌でオリてくれればテンパイ料で差を詰められる。ひょっこりツモった時の1,000オールとリーチでツモった2,000オール(以上)との違いも大きい。あと、飯島がリーチすれば、鈴木は条件を満たす手が入っていない限りオリるだろうから、次局へ進む可能性も大きくなる。 そして4本場。 有田49,200、仲大底▲2,400、鈴木37,200、飯島36,000 優勝するためにはハネ満か5,200直が必要になった鈴木が、7巡目にテンパイ。
一応、直撃条件は満たしており、これ以上のテンパイもちょっと望み薄。飯島に迫られていることに危機感も覚えていたようで、この形で
テンパイすれば当たりとなる
一発なので、裏が1枚乗れば逆転である。一呼吸おいて鈴木が裏をめくる。 めくれた牌は、 鈴木が自分の手牌に視線を戻すが、その先に 有田 46,800 わずか400点届かず、有田がトップ。そして、これがそのまま最終順位となった。 対局を終えて
4位:仲大底充 東1局で致命傷を負ってしまい、その後も何もさせてもらえなかった感がある。特に、南場の親が落ちてからの何もできない時間は長かったと思うが、こういう経験もなかなかできるものではないので、いい経験になったと思う。
3位:飯島健太郎 随所に光る手順は見せていたし、最後の追い上げも見事だった。だからこそ、最初の失点が痛すぎた、と言える。
2位:鈴木大成 惜しくも届かなかったが、内容的には優勝者と遜色のないものだったと思う。 優勝:有田幸司 「内容が勝った人間らしくないので胸を張れない。決勝も展開が向いた。オーラスは、軽い手は来ず、役牌がトイツになっても鳴けずで苦しかった。最後は、裏条件くらいかな、と思っていたところを一発でツモられたので、その時点でまくられたかと思っていた」 中盤以降は時折軽くなった印象もあったが、それ以外は本当にすばらしい内容で、展開だけで優勝したものではないことは確かだろう。
こうして、全6戦のスプリントカップは幕を閉じた。だが、これは次なる戦いへの序章に過ぎない。 最後の戦いは、これから始まる。 文中敬称略 文責 宮田信弥
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