RMUスプリント ネプチューンカップ

冷え込みの厳しくなった東京の冬、2月13日。
麻雀柳・銀座本店にて、2010年度最後のスプリントカップである、
『ネプチューンカップ』が行われた。
36名9卓と幾分少なめの参加人数だったが、
筆者にはとんと縁(実力ですかね?)がないスプリントカップ決勝、
準決勝の常連と言ってよい強豪達の顔がいくつもあって、
スプリントファイナルへの進出もかかるこの大会もまた、
激戦になるのだろうなと思わせた。

一発裏ドラのないRMU公式Bルールで行われたネプチューンカップ、
予選4回戦と準決勝を終えて、決勝に残ったのは以下の4名。
ポイントは決勝までのポイントを半分にして持ち越される。

■1位通過 河野高志(S級ライセンス)(写真 左より2人目)

今更詳しい紹介は必要ないRMUトッププロの一人である河野がトップ通過。
予選3回戦目に持ち前の親番での爆発力を発揮して、
役満を含む11万点の大トップ。
それが決め手になり決勝の椅子を早々手に入れた。
3回戦以降は終始ニコニコだったことも付記しておこう。

■2位通過 佐野大輔(一般)(写真 一番左)

2010年度サターンカップの覇者である佐野が僅差の2位で通過。
準決勝を観戦させてもらったが、卓内での堂々たる立ち振る舞いや表情に、
オーラのようなものを感じた。
決勝の経験もあり、浮き足だつようなことはまずないだろうと確信した。

■3位通過 田島文夫(一般)(写真 一番右)

どこか飄々とした雰囲気をもっている人だなあというのが筆者の印象だった。
対局中もとにかく静かに、
淡々と打牌をしていて感情を表にださない打ち手である。
スプリント決勝進出はこれが初めてだが、
競技歴は短くなさそうなので、緊張の様子はない。

■4位通過 山下健治(B級ライセンス)(写真 右より2人目)

3回戦終了時だっただろうか、筆者は山下に対してとんでもない非礼を犯した。
ポイントを順調に積み上げる彼に対して、
「決勝の採譜お願いできませんか」とそう尋ねたのだ。
だが穏やかな笑顔で、
「決勝に残れなかったら引き受けます」
と言ってくれた。
筆者の言葉を胸にかどうかは定かではないが、
決勝最後の椅子を彼は勝ち取った。
山下さん、その節は申し訳ありませんでした。

さて、決勝戦開始前の4名のポイントは、

河野 +54.7
佐野 +47.2
田島 +44.7
山下 +43.2

と稀に見る混戦である。
山下にだけ河野との素点での条件はあるが、1,500点という難しい条件ではない。
他の3名はトップを取った者が優勝という非常にわかりやすい図式となった。

決勝戦は東家から田島、山下、河野、佐野の並びで開始された。

東1局 ドラ

親の田島が5巡目にして、ドラアンコのカンテンパイ。
は序盤に河野が2枚切っているだけで、マンズは場に安い。
誰もがツモ切りそうなので、
放銃にまわってしまった人は厳しいなと思っていた。
しかし、アガリ牌は姿を見せず、巡目だけが過ぎていく。
田島は10巡目に4枚目のドラを持ってくるが、これをノータイムで空切りする。
決めていたんだろうなと思ったが、
これはどうするのが正しいのか非常に難しい局面である。
三者はこのドラ切りに即反応して、
安かったはずのマンズも出てこなくなってしまった。
しかし流局間際の15巡目、田島は山に2枚眠っていたを静かに引き寄せた。

 ツモ ドラ

一発裏ドラ無しの短期戦、大きな4000オールとなった。

東1局1本場は、佐野がこれ以上の連チャンはさせまいと、
2巡目役牌ポンから仕掛けて、400-700で田島の親を落とす。

東2局 ドラ

9巡目、親の山下にテンパイが入る。

 ドラ

出て7,700、ツモって4,000オールのダマテンだったが、
ここでも佐野がかわし手を入れていた。

 ロン ドラ

河野からチートイツのみの1,600点をアガる。
は河には1枚切れているだけで、
1回勝負ということや田島の4,000オールなどの要素から、
リーチにいっても不思議ではなかったが、
長引いてしまうと山下のアガリも十分にあったので、
これはファインプレーだった。

東3局、親である河野の手が止まる。
13巡目にをツモり、以下の牌姿に。

 ドラ

ダブはション牌、は場に1枚切れ。
河野は少考後、を横に曲げた。
局面だけ見れば、シャンポンという選択肢は難しい。
トップまでの点差はまだあるとはいえ、
安目の2,000オールでさえ十分な得点である。
しかし、河野のツモ筋にマンズはなく、
17巡目のツモは一番引いてきてはいけないであった。

河野の後悔が残る同1本場は、田島が佐野からピンフのみをアガり、
着々と局を潰していく。

東4局は田島がリーチ。

 ドラ

高目で満貫になる勝負手である。
なるほど、田島の頭にかわし手だけで勝てるなどという甘い考えはない。
優勝するための道程はもう見えているのかもしれない。
しかし、この場面で易々と田島にアガらせてしまうほど、
他の面々も甘くはなかった。
佐野、山下共に仕掛けて、山下が田島から1,300点をアガる。
リーチ棒を入れて、この直撃は大きい。

東1局に筆者が思い描いていたより、はるかに拮抗した形で東場を終えた。
南入した時点での持ち点は以下の通り。

田島 40,200点
山下 26,800点
佐野 27,800点
河野 25,900点

田島有利は変わらないが、全員に親番が残っているので、
誰にも優勝のチャンスは残されている。

南1局、ここまで落ち着いて打っていたように見えていた山下に、
致命的なミスがでてしまう。
分岐点は8巡目、山下の手牌は以下のように育っていた。

 ドラ

ここから北家佐野の切ったをポン。
シャンテン数の変わらない鳴きだが、チャンタになれば満貫手になるし、
仕掛け自体の是非は難しいかもしれない。
しかしリーグ戦などで打っている山下はこれを動く打ち手ではないように思う。
山下の発声はいつもどおりのものだったが、
やはり目に見えない焦りのようなものがあったのか。
同巡対面の佐野がツモ切るを見て、彼はどう思ったのだろうか。
対照的に本局の河野は与えられた材料を最大限に活かし、
スーアンコをテンパイするも、残りのツモは一度だけ。
ツモる手に力が入るが、空振りに終わった。

その後も三者は懸命に田島を追うが、致命傷は与えられず。

南4局も、

 ドラ

という配牌にを2枚引き、次巡重なったばかりのをポン。
さらにをツモり5巡目にはテンパイ。

 ポン ドラ

7巡目にあっさりをツモって、自らのアガりで優勝を決めた。

決勝終了後のポイントは以下の通り。

優勝 田島文夫 +71.6
2位 佐野大輔 +51.2
3位 山下健治 +34.2
4位 河野高志 +32.8

優勝が決まった後も穏やかな表情を崩さずに、
少しだけ笑みを湛えていた田島の表情が印象的だった。
さっそくお話を聞きに行くと、

「スプリントカップには何度も参加していましたが、
あまり結果は良くなかったんです。
最近、麻雀のスタイルを少し攻撃的に変えたんですが、
それが良かったんですかねぇ」

と語ってくれた。
なんでも競技麻雀の大会やタイトル戦の観戦などにも足繁く通っているらしく、
失礼になってしまうかもしれないが、
田島さんほどの年齢で今尚麻雀の研鑽に努める姿は、
単純に素晴らしくかっこいいものだなと思ってしまった。
話を聞き終えて、優勝するべくして優勝したのだなと、そう感じた。

かくして、今年度のスプリントカップは、
今回のネプチューンカップで全日程を終了した。
しかし、RMUを代表するライセンスプロやアスリート選手、
そして一般参加の強豪たちが、今年度最強のスプリンターを決める、
今までのスプリント優勝者やポイント上位者による、
『2010年スプリントファイナル』がまだ残されている。

これにて、その出場メンバーも決定した。

1 多井隆晴 29
2 谷井茂文 22
3 佐野大輔 20
4 平山友厚 20

~以上4名はベスト8進出~

5 宮田信弥 18
6 山崎千三 16
7 小林景悟 15
8 鈴木大成 15
9 藤中慎一郎 14
10 小原健史 13
11 村田淑子 12
12 寺本喜一 12

細かな分析や予想はファイナルのレポートに筆を譲るが、
非常に濃い、面白そうなメンバーが揃ったなと思った。
激闘はもうすでに約束されているようなものだ。

筆者も今年度はまったく良い所がなかった今年度を猛省し、
来年度こそはスプリントカップ優勝をひっさげ、
スプリントファイナルへの出場を来年度の目標の一つに掲げようと思う。

最後になりますが、RMU所属の選手はもちろん、大会常連の一般参加の皆様、
友好団体のプロの皆様、大会には出たことがないけれど、
少しでも興味があるという方。
来年度もスプリントカップへの出場を心よりお待ちしております。

(文中敬称略・文責 飯島 健太郎)