2010マーキュリーカップ 優勝は平山友厚

(文中敬称略)
GW初日となる4月29日の昭和の日、2010年度スプリントカップ初戦のマーキュリーカップが開催された。68人参加という盛況の中、私はライセンスを取得して最初のスプリントカップで初立会人となり緊張したものの、大きなトラブルもなく大会は進んでいった。

このスプリントカップは、来年に行われるスプリントファイナルの予選でもあるという位置づけ自体は変わっていないが、年6戦だった昨年と異なり、今年は年8戦行われることになった。これにより、1回の優勝だけではファイナルへ進出できない可能性が高くなるなど、1戦単位の比重は軽くなったと言えるかも知れない。
しかしその一方で、今期の趨勢を占う上で初戦の動向は重要と思いながら、会場を見渡していた。

勝ち上がった16人による準決勝には、大会前に昨年度のRMUアワードで表彰された4人のうち、私以外の3人全てが残っていた。予選を16番目で通過した谷井の決勝進出は厳しいだろうが、多井、平山は決勝も見える上位での通過だった。

その準決勝、平山は、スプリントカップでNO.1の実績を挙げていると言っていい吉田と対峙していた。
東場の親で平山が一方的にアガって持ち点を増やし、さらにリーチで攻めてくる。しかし、ここが勝負所と見た吉田が、無筋を3枚くらい切り飛ばし、

ドラ

タンピンドラドラ+345三色確定の待ちで追いつき、追いかけリーチ。とうにオリている他の2人から平山の現物のが切られていないので山にいるかも、と思っていたら、一発で平山がを掴み、倍満放銃となる。

その後、吉田は決勝進出のためにやや無理目の形から攻めたところ、開始時点で卓内トップだった鈴木の反撃に遭い、ここで脱落。最後は鈴木と平山の一騎打ちになり、これを鈴木が制してスプリント3度目の決勝進出が確定。平山は2着で結果待ちとなる。
その他の卓はというと、上位陣のスコアが伸びず、卓内で潰しあう展開に。多井までもが、卓内で争っていた来賀(『天牌』原作者)にトップを取られたばかりか、結果的に2着でも決勝進出だったところを3着となり、脱落。

結局、決勝進出者は、鈴木、来賀、平山、小原の順で決まった。
決勝は、準決勝までのスコアを半分持ち越して半荘1回勝負。しかし、1位と4位との点差が19.5p、半分にして1順位差の10p未満であることから、決勝の着順が完全にそのままの形で全体の順位となる勝負となった。

起家から鈴木-平山-来賀-小原と座順が決まり、対局開始。
最初このメンツを見た時には、実績・雀力兼ね備えた来賀・平山に対し、鈴木・小原がどう対抗するかという構図を想像したが、先に主導権を握ったのは、小原だった。

東1局、16巡目と深い巡目ながら小原がリーチ、宣言牌を鳴いてチーテンに取った親の鈴木に一発ツモだったアガリ牌が下がり、これを抱えて親流れ。

東2局1本場、小原が今度は6巡目に中ドラ1のリャンメンリーチ。とはいえドラ表示牌待ちなので容易には出ないしツモれない。2局続けて流局だったら嫌な感じだっただろうが、自身最後のツモで引き当て、満貫で一歩リード。
その後、鈴木にメンピンツモ裏1のアガリはあったものの、両者ともに大きなリードは奪えないでいると、ここから平山の巻き返しが始まる。

東ラス、流局間際に入ったドラドラチートイツのテンパイでテンパイ料3,000点を得て手応えを感じていたであろう次局、

 ドラ

この配牌が6巡目に

 ツモ ドラ

と三色手のイーシャンテンとなり、一瞬手が止まった後、牌音高くが打たれる。すると、直後にが小原にポンされた次のツモがで、くっつきが弱くなったと入れ替えると、次巡ツモで、ドラを切ってのフリテンリーチに打って出る。2巡後、鈴木に

 ドラ

で追いかけられるが、平山が4枚目のを力強くツモって満貫。局後の平山

「6巡目の選択は少し迷ったが、くっつきの優秀性を信じた。をポンされたので切りも迷うことなく、をツモれば当然のリーチ。アンコで持たれていたをツモれたのはラッキーだったが、はいると思っていた」

実際には残り3枚山におり、これで平山が微差ながらトップ目に立つ。

しかし南2局1本場、2巡目にして四暗刻のイーシャンテンだった小原のドラ切りに注目が集まる中、

 ドラ ロン

気配を消していた来賀がメンホンの5,200を平山から打ち取って原点付近まで回復。

続く南3局、平山がと続けて仕掛ける。北のみの1,300の仕掛けだったが、これに親の来賀が対応してしまい、ション牌のを切りきれず、結果アガリを逃す形になる。
その間にラス目に落ちた鈴木のリーチが入り1,300-2,600ツモ。点数状況は、

東:小原 32,600
南:鈴木 31,200
西:平山 29,100
北:来賀 27,100

となり、スプリントカップでは稀に見る僅差でオーラスを迎える。それぞれの現実的な優勝条件は

小原:鈴木はおろか、平山ともテンパイ料で変わりうる差で、よほどの確信がそろわない限りノーテンで終了させることはできないので、実際には1回連チャンしてから。

鈴木:小原から直撃でない1,000や1,300以外はどうアガってもよく、テンパイノーテンでも逆転なので、条件的には一番楽かも。

平山:700-1,300ツモか3,900出アガリ、2,600直撃

来賀:1,000-2,000ツモか6,400出アガリ、5,200直撃

という、誰にでも優勝の目がある状態。そして、それぞれがもらった配牌が

小原  ドラ
鈴木  ドラ
平山  ドラ
来賀  ドラ

シャンテン数は3~5、一番少ない鈴木は受け入れが少ないため、速度的には大差ないといっていい。小原はクイタンの仕掛けが利けば一番早そうだが、その場合、ドラを生かせない安手だとあまり条件が変わらずにもう1局ということになるので、楽ではない。
第1打で小原がを切った直後、鈴木は最初のツモでが重なり、打。私は他所から見ていて、条件を満たす十分形のイーシャンテンクラスかと思っていたのだが…。
確かに打点はほとんどいらず、縦の手を見たのかもしれないが、そこまでスピードがあるわけでもないこの形から、ほぼ真ん中のドラのを切るのはちょっと早計ではなかったか。
というのも、平山は最初のツモでを重ね、ホンイツを見て打。一見するとピンフ手にもなりそうな形だが、

「上家(鈴木)の第1打がドラで、この時点では動けなかったけどが重なったことでホンイツに行けるようになったし、ドラも早い巡目ならまた切られるかも、という期待ができた。」

と、平山の指針に影響を与える形になってしまったからである。
このを小原がポン、切ったを平山がポンといきなり場が動き出す。鈴木はを引いて役なしのイーシャンテンになるが、7巡目にまたを引いてきて、これをツモ切り。
これを平山が

  ドラ

「チー」

待ってましたとばかりにをさらし、打。イーシャンテンのままだが、ホンイツドラ1で3,900以上は確定したので、テンパイすればどこからでもアガれる形に。
この後、平山がツモ切りを続ける間に、小原がラス牌のドラを引き、を鳴いて

   ドラ

この形でテンパイする。しかしその次巡平山が、小原の待ちでもあるラス牌のを引いて勝負あり。最後は小原がツモ切った

「ロン、5,200」

平山がアガって対局終了。

対局後のコメント


「南3局の親番で、が打てずにアガリ逃しをしてしまうなどバランスが悪く、それが敗因ですね」

終始劣勢だっただけに、1つのミスがこの結果につながってしまったように思えるが、そこに至るまでの戦いぶりはさすがと思わせるところがあった。


「オーラスまでトップ目だったので、いい夢を見させてもらいました」

普段はよくフリー雀荘へ行かれるということで、これを機にまた大会に参加して楽しんでいただけたらと思う。


「最後の手は難しかった。今回がスプリント3回目の準優勝で…また頑張ります」

決勝に3回残るのは並大抵のことではないが、そこで勝てないのは、何かが足りないのかもしれない。ただ、これは彼に限ったことではなく、私を含めた多くの人に言えることかも知れないが。


「大会前に昨年度の表彰(RMUアワード最優秀順位率)をされたことで、いい麻雀を打たなければ…と気を引き締めて打てたのが良かったと思います。また、劇画『天牌』の原作者として知られる来賀さんと決勝を打てたことは、一生の思い出になりました。これからも、一生懸命に麻雀に取り組んでいきたいです」

チャンスはそれほど多くなかったように思うが、その僅かなチャンスを確実に物にできるあたりはさすがである。

こうして、今期のスプリントカップ初戦のマーキュリーカップは、実力者・平山の優勝で幕を閉じた。
最初に書いたように、今回の優勝ポイントだけでスプリントファイナルへの進出が確定するわけではない。しかし、平山の実力・実績からすれば、ここからベスト12を逃がすことはちょっと考えにくく、早くも1議席確定かと思わせるものがある。

しかし、スプリントファイナルはまだ始まったばかりで7戦残っており、今回敗退した人にも不参加だった人にも、皆ファイナル進出のチャンスが十分にある。

スプリントカップ第2戦・ヴィーナスカップ(Bルール)は、5月29日(土)、銀座『柳本店』で行われます。
皆さんのご参加、お待ちしています。

(文責 宮田信弥)