ヴィーナスカップ2009決勝 坂巻稔永優勝

6月28日(日)RMUのスプリントカップ(今期第2戦目)のヴィーナスカップが行われた。

前回のマーキュリーカップとは違い朝から空模様も怪しかったが、
銀座柳本店が19卓中18卓埋まるという大盛況。
選手たちも否が応にも気合いが入るというものである。
今回のヴィーナスカップはRMU公式Bルールが採用された。
Bルールは一発裏ドラなしのルールで、普段フリーや仲間内の麻雀では
なかなか打たないルールであるため、一般の方にも楽しく参加していただけただろう。

また10・20・30・40・50・60・70位にはRMUタレントの雪森しずくから、
サイン入りのDVD(雪森出演の舞台)等がプレゼントされ、会場は大いに盛り上がった。

そんな中、予選、準決勝を勝ち抜いたのは以下の4名。

予選1位通過 仲大底 充 128.2P
2位通過 坂巻 稔永 121.2P
3位通過 米谷 次郎 105.9P
4位通過 土井 悟 92.6P

決勝戦はポイントが半分になって行われるので現時点での持ち点はこの通り。
仲大底 64,1P
坂巻  60,6P
米谷  53,0P
土井  46,3P

全員が優勝を狙える位置である。
しかしRMUのスプリントカップは優勝だけが重要なわけでもない。
スプリントファイナルに向けて、年間6回行われるスプリントカップでポイントを貯めるために、
1つでも上の順位で終わることも戦い方に盛り込まれていく。
4位よりは3位、3位よりは2位を確実にとることが大切になってくるのだ。

決勝戦前、仲大底は

「メチャメチャ緊張してるよ。でも今日は準決勝まで、自分でも驚くくらい落ち着いて打てていた。
ドラも常に手に絡んでくれるし、決勝でもドラが来てくれるといいな。」

と予選1位通過にかなり手ごたえを感じているのか、満面の笑みで話してくれた。
決勝戦の鍵を握る男になりそうである。また同じアスリートとして頑張って欲しい気持ちもある。

対象的だったのは4位通過の土井選手。

「1位と少し差がありますね…もちろん優勝目指しますけど、
それよりも恥ずかしくない麻雀が打ちたいです。」

これだけの人数の中で決勝卓に座れるだけで胸を張って良い。
それにも関わらず謙虚な気持ちを持っていた。
優勝の条件は少し厳しいが彼もまた侮れない存在である。

2位、3位通過の坂巻、米谷の両選手は椅子に腰掛け、
決勝戦に向けボルテージを上げているようであった。
その両氏の様は仲大底を脅かす何かを感じさせる。

大勢のギャラリーが見守る中、決勝戦が始まった。

並びは起家から、坂巻、米谷、土井、仲大底

東1局
試合はいきなり動くことになる。
親の坂巻が

 ドラ

の好配牌に、と立て続けに有効牌を引き入れ、3巡目リーチ。
8巡目にツモで6,000オールを引きアガる。

 リーチツモ ドラ 

開局早々、坂巻が大きなリードを奪った。

東1局1本場
親の坂巻、5巡目の手牌がこう。

 ツモ ドラ

このをツモ切りする。そして次巡、をツモ切り。
結果的にのどちらかを放しておけばテンパイであった。
そこに北家の仲大底からリーチが入る。
坂巻は9巡目に本来ならばアガり牌であったを引き、ドラの単騎でテンパイを入れるが、
10巡目に仲大底がリーチツモ三色の満貫をツモアガった。

 ツモ ドラ

一転して打撃戦の様相だ。

東2局
親の米谷が13巡目にリーチを掛ける。

 ドラ

5,800のリーチである。
次巡、南家の土井が追いつき、追いかけリーチ。
更に次巡、北家の坂巻も追いつく。

 ツモ ドラ 

ドラとの選択で坂巻はドラ単騎待ちを選択。
すると南家の土井からロンの声がかかる。

 ロン ドラ

決勝戦前、恥ずかしくない麻雀を…と控えめに語っていた土井が、
堂々と戦いの狼煙をあげた。

東3局
7巡目にテンパイを入れた坂巻が丁寧にダマテンを選択。
すると直後に土井から2,000点をアガる。

 ロン ドラ

これで持ち点が
坂巻37,900  米谷20,900  土井28,900  仲大底32,300 となった。

東4局
6巡目に親の仲大底が切った東を米谷が果敢にポン。
そのときの米谷の手牌が

 ポン ドラ

攻めにも受けにも対応できるベテランらしい仕掛けである。
しかしダブ東を切った仲大底が遅いわけもない。
ツモ切りを繰り返していた仲大底の11巡目

 ツモ ドラ

平和が崩れるテンパイだが、打でリーチにいく。
そのをチーした坂巻も

 チー ドラ

を勝負し、親のリーチをかわしに出た。
しかしアガったのは米谷。
12巡目に坂巻の切った仲大底の現物であるを喰って、仲大底のを討ち取った。

 チー ポン ロン  ドラ

安めだが、3.900点のアガりとなった。

南1局
先にテンパイを入れたのは6巡目、親の坂巻。

 ドラ

次巡ここにを引き打とするも、ドラのを持ってきて迂回。
そこに前局初アガリを決めた米谷からリーチが掛かる。

 ドラ

ドラ待ちで不自由であるが、ツモることができれば満貫である。
このリーチを受け、下家の土井が現物のを手出しで捨てる。
そして仲大底がリーチの現物であるを切ると、土井からロンの声が掛かった。

 ロン ドラ 

土井にとっては優勝に向けて価値のある、また仲大底にとっては痛い3,900が動いた。

南2局
親の米谷がマンズのホンイツ気配ではあるが、仲大底に手が入る。

 ツモ ドラ

ドラを引いて絶好のテンパイだ。
を切ると、タンピンイーペーコードラ1でダマ満貫、リーチをしてツモればハネ満となる。
を切ればダマでも高目のツモでハネ満、
しかしリーチをかけなければ出アガりで3,900である。
関連牌は場に萬子気配の米谷が切ったものと坂巻が切ったが2枚、
は親の土井が切ったものが2枚という状況。
少し悩んだ結果、仲大底の選択は「切りダマ」であった。
3巡後にトップ目の坂巻からを討ち取り3,900の加点となるが、対局後

「最悪の選択、最悪の結果になった…」

と仲大底。後悔の残る打となった。
しかしながら、トップ目との差は7,400点差と縮まり、トップが見えてきたことは間違いない。

南3局
前局の横移動でトップ目に踊り出た土井は、
迎えたこの親で更に他家と点差をつけておきたいところである。
しかし手が入ったのは、またも仲大底。3巡目に

 ツモ ドラ

仲大底は打でテンパイとらずを選択。次巡を持って来てテンパイをとる。
5巡後を持って来て待ちを変え、単騎テンパイ。
その後をツモって800-1,600を引いた。

オーラス、点棒状況は以下の通り。
仲大底30,600  坂巻33,200  米谷24,000  土井32,200  
そして優勝の条件はこう。

仲大底…親なのでとりあえず連チャン
坂巻…アガれば優勝
米谷…ハネ満ツモかハネ満出アガリ
土井…1,300-2,600ツモ

誰しもが優勝を欲しがる状況で場は進む。
しかし、4者とも思うように手が進まない。
急所牌が埋まらない。鳴けない。条件を満たせない…。

そんな中、仲大底が17巡目にチーテンを入れ、連チャンに賭ける。
だが坂巻は中盤からすでに受けに回り、甘い牌を場に出さない。
そんな坂巻を見てか、攻めあるのみの土井も17巡目必死にテンパイを入れる。
だがドラのを切りきれずに土井はを抜いた。

すると。

「ロン」

 ロン ドラ

手牌を倒したのは米谷だった。
土井からだとアガっても3位である。
リーチしてツモることが出来れば優勝。
もちろん米谷の頭には入っていただろう。アガらない人も多いかもしれない。
しかし1年間に及ぶスプリント戦において4位と3位の差は後々大きいものになるだろう。
そんな長い戦いを見越しての、経験豊富な米谷らしいアガりであった。

かくして、今年度2回目のスプリントカップであるヴィーナスカップの栄冠に輝いたのは坂巻稔永となった。
点棒が激しく動いた決勝戦は見るものたちを飽きさせず、
最後までハラハラドキドキさせる見事な打撃戦となった。

優勝した坂巻は

「東1局で6,000オールをアガった時にいけそうな気がした。
途中何回か放銃して危なかったけど(笑)本当に嬉しい。」

と、少し冷や汗を流したようだが、ピンクのシャツが似合う最高の笑顔で優勝を喜んだ。

一方の仲大底は

「あのだよね。ローピン…。南3局のチートイツもリーチしていればな…。
悔しい。本当にくやしい!」

と、普段の冷静な彼からは想像できないほど悔しがっていた。
だが私は、彼もまた真剣に麻雀と向き合っているのだな、と同じアスリートとして少し嬉しくなった。
我々には今後も優勝のチャンスはいくらでもある。
これからも一打一打を大切に頑張って行こう。

優勝の坂巻さん。おめでとうございます。

さて、次回は8月23日のマーズカップです。
今回とは一転、一発裏はもちろん、赤ドラまでありのルールです。
皆さん奮ってご参加下さい。

文中敬称略 文責・内田良太朗