第11期RMUクラウン決勝観戦記
9月16日台風の近づく三連休初日、第11期RMUクラウン決勝戦が開催されました。この日のレポートをB級ライセンス渡辺卓也が担当いたします。

私は今年、本選出場権をかけた予選全3日間と東京雀友会様主催の祝日例会全てで立会人を行いました。そして本選当日は午前中であっさり3ラスをくらい午後のベスト28の運営へ。

翌日の準々決勝、準決勝の解説、そして決勝戦の観戦記とある意味筆者のRMUクラウンだったのではないか……。「またお前かよ!」と思われた方も多かったことでしょう。

最後の締めくくりこちらの観戦記もよろしければ最後までお付き合いください。
今年すべてを見てきた自分だからこそ書けるものが、ここにはあるかもしれませんよ。

さぁここからが本番です。

毎回予選会場を埋め尽くすほどの参加者達。本戦出場権をかけた苦しい予選を勝ち抜いた予選通過者達。

その裏で役満をあがっても予選通過できずに悔しがる敗退者。

予選すべてに参加し、それでもどうしても本選に勝ち上がれず悔しがり、来年こそはと心に誓う敗退者達。

ありきたりな言葉だが悔しさは必ず未来につながる。負けた記憶こそが未来の自分を築き上げていく。

友好プロ団体所属およびRMU所属の実力者たちが集う本選シード選手。そして予選通過者を合わせて100名を軽く超える本選出場者達。
その中を勝ち抜いた27名に前年度RMUリーグ覇者多井隆晴が加わる。

三回戦トーナメントを勝ち抜き、選ばれし14名と本選一位通過の阿部孝則、そして前年度覇者伊澤興が9月3日に行われた放送対局へと歩みを進めた。

準々決勝、準決勝とともに三回戦トーナメントで行われたが、生放送の緊張感からか、完全な見落としミスからの放銃をしてしまう選手もいた。

見られているから、生放送だからこそやってしまうポカは多い。

R1リーグでも最終節は放送対局になるが、極力放送卓にならないことを願うトッププロもいる。

放送対局というのはやはりどうしても意識してしまうものなのだ。念のため言っておくが、とにかく見られたい! という側の人間も多数いる。

前置きが長くなったが、ついに全てを勝ち抜いてきた4名がここに集う。

決勝戦メンバーは以下の4名。紹介は会場入り順。

前年度クラウン優勝者、S級ライセンス河野以来の連覇がかかる伊澤興。

アマ時代から複数タイトルを獲得し、RMUに入会。B級ライセンス「怪物」楢原和人

第2期クラウン以来二度目の決勝進出、RMUリーグ所属A級ライセンス「ストレートアロー」谷井茂文

そして最大の麻雀プロ団体である日本プロ麻雀連盟B2リーグ所属、齋藤豪。

それぞれに決勝当日開始前の心境を伺った。

伊澤「精一杯打つ」。

RMU創立10周年アニバーサリースリアロ杯トーナメントでも決勝に残り、クラウンでも二度目の決勝ということで緊張している様子は見られない。

シンプルな言葉だからこその自信を感じられた。

楢原「放送対局では特に派手な放銃が多いので、闘争心を持ちつつ冷静に頑張る」。

プロ入り前から王翔位戦、アマ最高位と派手な経歴をもって突如RMUに参戦してきたこの男。決勝そのものには緊張している感はないが、やはり放送を意識している感は見受けられた。

谷井「決勝に残ってから多くの人に応援されたので期待に応えられるように頑張る」。

谷井も二度目のクラウン決勝ということで特に緊張しているようには見られない。特にRMUリーグで放送対局はもうすっかり慣れたもののはず。

谷井の恩師たちが掴んできたこのタイトルを掴みとり、恩返しはできるのか。

そして明らかに緊張している男が一人。

齋藤「決勝経験もなく、特別発信等もしていないにも関わらず、多くの人が応援してくれてありがたい気持ちでいっぱいです。初の決勝で緊張しますが冷静に頑張りたいと思います」

齋藤にとっては完全アウェー感があるだろうこの舞台。

緊張をほぐそうと、くだらない会話で打ち解けてみた。

緊張すると手が震えるという彼に、「そんなんいっぱいいるから気にすることない」という会話から始まり、同い年ということも判明し、個人的には彼を応援することに決定。
「ぶっちゃけ自団体にとられると追い越された気がして悔しいから頑張って!」と一回戦へと送り出させていただいた。

決勝戦開始。

一回戦。起家から楢原、谷井、齋藤、伊澤。
いざ始まるとやはり選手達からは緊張がうかがえる。
伊澤の開幕シャンポンリーチに対し齋藤が丁寧にうち回し、追いかけリーチ。
しかしあがったのは親の楢原。
こちらも丁寧にうち回し平和の1500。
だが次局あっさりと跳満を被らせる。
谷井の面混七対子ハイテイ自摸。

東2局。
ドラが
前局親被りの楢原が3巡目聴牌。

ドラ

ここで楢原には珍しい長考。そして打

高打点を目指しタンピン形へ移行。親の谷井が2副露しの聴牌。

を引き待ちでリーチをかける楢原。決着はまたも谷井のハイテイ自摸。2000オール。

一本場は楢原の先制リーチ。

ドラ

同巡に追いつく谷井。

ドラ

これをダマに構え次巡ツモでタンヤオへ。

ここでもダマのまま押し切り二人聴牌で流局。

二本場では楢原が白發対々三暗刻の跳満を自摸り、谷井に親被りさせる。

東三局親の齋藤のリーチ平和は流局。
次局はあっさり谷井が2000は2300。

ここまで苦しい伊澤の親番。

一盃口出来合いのの三面待ちリーチを打つが、脇にすべて流れ流局。

一本場は果敢に伊澤が仕掛けるが齋藤がリーチで楢原から5200は5500。

南入し点棒状況は楢原322、谷井454、齋藤247、伊澤177。

流局を挟み一本場は全員聴牌でのめくりあい。

親の楢原が谷井から5800は6100。
しかし次局あっさりと齋藤に2600の放銃。

親番の谷井が混一で仕掛けるがここまで我慢続きの伊澤がリーチ一発自摸ドラの2000、4000。

残り二局で一気に平たくなった。

南三局はあっさり楢原の1000点。
オーラスは楢原があっさり自摸って一回戦終了。
出だしのハイテイ自摸2連続の谷井は悔しい2着。

とはいえ全体的に平たい一回戦となった。

RMUでは一順位10p差のためまだまだこれからといったところ。
一回戦大人しかった伊澤、齋藤の逆襲なるか。

二回戦は起親から谷井、伊澤、齋藤、楢原。

東一局から齋藤の逆襲。
リーチ一通裏1を谷井の追いかけリーチ宣言牌でとらえる。

東二局
親の伊澤の繊細さが光る。

ドラ

ここから打で聴牌とらず。

谷井の
ドラ

このリーチが入り同巡を引き聴牌。

この平和ドラ1をダマ聴に構える。

直後に谷井の当たり牌を引きの対子落としてオリへ。
谷井の一人聴牌で流局。

次局はあっさり楢原が谷井から5200は5500。

東4局は伊澤のリーチで楢原のあがりを阻止する。
が楢原も粘り二人聴牌。

一本場は楢原がリーチで自摸って2600は2700オール。

二本場では楢原のダマ24000聴牌が入るが齋藤が1000は1600でさばき切る。

南入。谷井143、伊澤252、齋藤344、楢原461。
またもや楢原のトップ目。このまま一気に勝ち切るか。
しかしもちろんそんなに簡単にはいかなかった。

伊澤が平和ドラドラのリーチ。
1副露の谷井がノータイムでドラ表示牌を押す。
伊澤が一発目に引いた牌は谷井の当たり牌だった。

ポン ロン ドラ

強烈すぎる24000。

伊澤の心中やいかに。

一本場はあっさり齋藤が1300は1600で親落とし。

伊澤の親はあっという間に齋藤がタンヤオ三色の2000、4000の自摸あがり。
24000をあがった谷井もあっという間にまくられる。

南三局楢原の先制リーチ。

これをあがればトップ目でオーラスを迎えられる局面。
しかしこれを阻止し、逆に畳みかけたのは親の齋藤。

追いかけリーチに楢原が一発でつかみ、リーチ一発裏3の12000。

一本場齋藤は攻撃の手を緩めない。
11巡目にリーチで高めタンヤオ平和一盃口。

これに捕まったのはドラ対子両面聴牌の楢原。リーチ宣言牌で12000は12300。

オーラスは伊澤のドラドラリーチに楢原が捕まりピンポイントでの着順入れ替わり。

南入時に461のトップ目から一気にラスへ。
齋藤の押し引きのバランスが光った半荘となった。

三回戦。並びは齋藤、楢原、伊澤、谷井。
東発からトータル二位の谷井が満貫自摸で齋藤に親被らせる。
流局を挟み谷井の500は700オール。

再び流局を挟み南入。
齋藤の2600は3000オール。
5本場は谷井が伊澤に3900は5400の放銃。
齋藤にとっては非常にうれしい放銃となる。

続く楢原の親は齋藤があっさり流す。

ここで親番の伊澤にまさかの配牌。

ドラ

当然の切りダブルリーチ。を力強くつもり4000オール。

4回戦、新決勝に向けてここはトップを決めたい。

積極的に仕掛け谷井から1500は1800。

伊澤の攻撃は止まらない。

5巡目聴牌は以下。

ドラ

ここから切りでカン聴牌。を引きタンピンドラドラへ。

1巡まわして自摸切りリーチ。

しかし待ったをかけたのはポンしていた谷井。

親リーチに無筋を連打し。楢原の追いかけリーチも受け会心の500、1000は700、1200。

オーラスは状況的に苦しくなった楢原の見逃しも入り一本場。
二人聴牌を挟み二本場は楢原がリーチ平和ドラ一。
これに刺さったのは谷井。
三回戦終了。

ここまでのトータルは齋藤+42.9、谷井+12.7、伊澤▲23.3、楢原▲32.3。

新決勝に向けトップを取りたい伊澤、楢原。

齋藤との並びがほしい谷井。

逃げ切りたい齋藤。

四者の思惑が交差する。

四回戦開始。

谷井、伊澤、楢原、齋藤の並び。

親の谷井の門混に伊澤が刺さり7700スタート。

一本場は攻撃の手を緩めない齋藤が楢原から5200は5500。

伊澤の親は谷井がドラをポンして2000、4000の自摸アガリ。
楢原の親は齋藤がドラをポンして2000、4000の自摸アガリ。

まるで「お前らはもう黙ってろ」と言わんばかりの二人のまったく同じようなアガリ。
熾烈な優勝争いがバチバチに繰り広げられる。

東4局齋藤の親番。
伊澤に最後の逆転手が入る。

ドラ

しかしこの手を終わらせたのは齋藤。両面チーでと一発自摸を食い下げる。
一本場はしっかり当たり牌を掴んだタイミングでおり一人ノーテンで耐え凌ぐ。

南一局二本場、供託2000点は楢原のリーチに齋藤が追いかける。
ここは楢原が1300、2600は1500、2800。

南二局も楢原がメンタンピンの三面待ちでリーチで攻める。
しかしここであがったのは親の伊澤。
二枚目ポン聴の対々で3900。

伊澤の親番は谷井がリーチ。しかし伊澤が何とか谷井の待ちを使い切り二人聴牌で粘る。
一本場でも再び谷井がリーチ。
700、1300は800、1400をつもり齋藤との点差を縮めていく。

続く楢原の親。ここでも谷井がリーチで攻めていく。
再びの700、1300。

オーラス。ここまで谷井がリーチリーチで攻めてくる。
なんとこの時点でのトータルポイントは0.1ポイント差で齋藤がリード。
ここで二人が新決勝につなぐ最後の最後の手作り。

楢原は
ポン ポン ドラ
の跳満

伊澤も四暗刻の手作り。

をつかんで長考の末歯を食いしばってオリに回る齋藤。

しかしここは齋藤には非常に苦しい楢原の3000、6000ツモ。
三着落ちの齋藤。攻め続けた谷井がここでトータル首位に立つ。

その差は12.9ポイント。
新決勝はあがった人間がトップになった時点で終了する。
ここまでは攻めの谷井、守りの齋藤といった印象。

谷井は9年前、第二期クラウンのリベンジとなるか。
それとも齋藤による新時代の幕開けとなるか。

新決勝、親は谷井。
谷井はあがれば優勝。
齋藤はリーチ棒が出ての満貫ツモ、跳満出アガリ、もしくは満貫直撃条件となる。

配牌であっという間に条件が見える齋藤。
ドラ

すぐにを引く。
三色と一通の両天秤。

あっさりとも引く。

あがれば優勝の谷井もをポンする。

怒涛の連荘で優勝を目指す楢原もリーチ。

ドラ

一発で無筋を押す齋藤。
リーチ棒が出て満貫自摸で優勝の齋藤にが入る。
当然のリーチ。

自摸なら優勝。
追い詰められた谷井。

決着は三巡後だった。

ツモ ドラ

第11期RMUクラウン優勝は日本プロ麻雀連盟所属、齋藤豪。
「本当に自分を応援して下さってる方々にようやく初めての恩返しができました。 これからも少しづつ返して行きたいと思います。」

 

自分のために強くなりたいと思うのは当たり前だろう。
だが終始一貫して彼が残したのは自分を応援してくれる人のために恩を返したいという言葉だった。
自分のためだけでなく支えてくれているみんなのために。
常に一人で戦うゲームではあるが彼はみんなの期待に応えるために必死に歯を食いしばり、
オリるべき場面をオリて、攻めるべき場面で攻めきっていた。

もちろんすべての決勝メンツが素晴らしい闘牌を魅せてくれた。
この四人だったからこその見ごたえのある一日だった。

表彰式で涙を必死にこらえようとしていた齋藤選手。
彼を祝福し、今後の活躍を期待すると同時に、負けたくない、自分もそこに立ちたいと強く思わせてもらえた。

実質二か月に渡り、繰り広げられてきたRMUクラウン。
改めて、

第11期RMUクラウン。
優勝は日本プロ麻雀連盟所属、齋藤豪。

渡辺卓也
(文中敬称略 文責・渡辺卓也)