2016オープンリーグ決勝レポート |
2016年度オープンリーグ決勝 観戦記 RMUアスリート 嶋崎究今年もオープンリーグのチャンピオンが決まる日が来た。 準決勝には近年まれにみるそうそうたるメンバーが残った。まず1卓は 多井隆晴 RMU代表の多井は、先週行われたスプリントファイナルに続いての準決勝進出。スプリントファイナル準決勝では、惜しくも敗退の多井。トーナメントの勝率75%のこの男の実績から考えれば、決勝進出の1番手か。 2人目は秋山。日本プロ麻雀協会所属の彼はRMUのタイトル戦に多く参加し、毎度のように上位に食い込み、オープンリーグも昨年は決勝まで進出。今年にかける思いは誰よりも強い。 もう一人はRMUアスリート山下達也。去年のサマーチャレンジを優勝してから、クラウン準優勝、後期のリーグ戦でR2への昇級を決めた、ノリにのっている打ち手だ。格上相手にどのくらい食らいつけるか。 4人目は日本プロ麻雀協会Aリーグ所属の橘。Aリーグに4年所属している橘であるが、タイトル戦はなかなか優勝まで届かないことが多く、今回こそはという思いは強いであろう。 実績から考えれば多井、橘の二人が期待される中、準決勝は橘がチャンス手を逃さず2連勝をして通過を当確させると、秋山が試合巧者ぶり発揮し、追いすがる多井、山下を振り切り、決勝進出を決めた。 準決勝2卓は 吉田信之 昨年のオープンリーグ覇者で会員の吉田が今年も準決勝にコマを進めた。彼の強さは言うまでもないが、今年は彼の手作りがより活かせる一発裏ドラなしのルールということで連覇も十分に期待できるだろう。 2人目はRMUアスリート太田雅洋。「まーくん」の愛称でニコ生でも親しまれる彼は、最高位戦クラシックも上位に残るなど、結果も残してきている。ベスト8シードを活かして、優勝を決めることはできるのかが見ものである。 3人目はRMU会員の平山。RMUのオープンリーグは2度の優勝。クラウンも制覇している、実績十分の優勝候補筆頭の男だ。 4人目は岩沢。RMUの大会に数多く出場する彼は、競技経験の長さを活かして、準決勝までコマを進めてきた。特に一発裏なしのルールはお手の物か。 2卓は3回戦までもつれたが、2回戦に勝負手をものにし、トップをとった平山と、3回戦にあがりを重ねてトップをとった岩沢の通過となった。ディフェンディングチャンピオンの吉田は1回戦トップもここで敗退。 そんな4人で始まった決勝は起家から平山、橘、秋山、岩沢。 東1局にまず待ちの先制リーチをかけたのは秋山。 放銃に回った平山であったが、自分の麻雀をしっかり打っての放銃とあって、気負いは全く見らない。 東2局も手がぶつかる。 まず聴牌を入れたのは岩沢。をポンしてカンのホンイツ聴牌。 ポン ドラそれと同順。東1局に放銃の平山がドラ2枚のでリーチ。 すると、共通安牌のない秋山がリーチ宣言牌を見て対子のに手をかける。 このを岩沢がポンしてに待ちを変えると、秋山の対子落としの2枚目のをとらえて3900。 ポン ポン ロン ドラポンを見せられては、秋山のこの放銃はやむなしとも思える。それ以上にドラ2枚のリーチを1度しかツモらせてもらえなかった平山は少し渋い表情。しかし、決勝経験豊富な平山はどこかで必ず勝負手を成就させてくる。平山の実力、実績からそんな気がした。 そんな矢先の東3局1本場。 平山が6巡目に下記の聴牌でリーチ。 ドラ高めのは3枚が2枚の5枚山。このリーチに秋山が押し返そうとするもイーシャンテンどまり。時間はかかったが高めのをツモあがり2000-4000。 これで平たい点数状況になって南入。 平山 31700 南1局。ドラ2枚のチャンス手をもらったのは、ここまで出番の少なかった橘。一発裏なしでの橘の麻雀を筆者はあまり見たことはないが、一発裏ありの橘の麻雀の「当たり前のことを当たり前にやる」という印象。奇をてらうようなことはほとんどせず、自分の手牌と他者との速度、点数状況をきっちりと把握して、その場で一番いい選択をする。 この一発裏なしでドラドラの手、3巡目に出たをポンしてイーシャンテン。 次巡にを重ねて以下の牌姿 ドラどちらも比較しづらいが、ここは打。上家で親の平山が直前にを切っていて、ソウズの上目が将来的に鳴けそうだという的確な判断。 これがズバリあたり、この後を引いて、平山からがチー出来て聴牌。 このドラドラの聴牌を勝負所と見た橘はノータイムで無筋を押していく。ドラのを引いても使えるので全部押すつもりだったとのこと。 このめくりあいは平山がをつかみ、橘の3900のアガリ。 チー ポン 当たり前のことを当たり前にやる橘らしいアガリ。 このあとは小さなアガリが続いて迎えたオーラスで下記の状況。 岩沢 35600 ここで各者配牌は(ドラ) 東家 岩沢 アガリの偉いこの局面で全員にアガリが見える配牌。ラス親でトップ目の岩沢もドラが2枚で十分な打点が見込める。 ソウズで一盃口の可能性が出来たので、めいっぱい打ちもあるか。ここは。マンズ、ソウズでどちらかの一盃口を作る構え。 そんな中、すくすくと手が育っているのはドラ2枚の岩沢 6巡目にをツモるとノータイムでピンズの一色へ。 ドラ ツモ 打ここは以外も仕掛けていけるほうを選んだか。 手はどんどんぶつかっていく。次巡岩沢の切ったに声をかけたのは平山。 ポン ドラ 打満貫出あがり2着、満貫直撃またはツモでトップなら当然の仕掛けか。 その鳴きで聴牌を入れたのは3着目秋山。七対子の2枚切れの待ち。リーヅモ七対子でトップだが、この待ちはツモりづらいとダマテン。 次に選択が訪れたのは橘。を引いてイーシャンテン。 ドラ ツモ仕掛けも入っている上に、自分は2着目。親の両面ターツ外しも見せられ、を切るには見合わないとし、打。冷静な判断。 聴牌打牌のに声をかけたのが親の岩沢。ポンしてホンイツイーシャンテン。 ポン ドラ 打ドラのポンも入り、いよいよ場が煮詰まってくる。次巡は秋山のツモ切ったを平山がポンして満貫聴牌。 ポン ポン ドラ3人聴牌に加えて、親は跳満イーシャンテン。 このめくりあいはすぐに決着。力強くアガリ牌を引き寄せたのは平山。 1回戦 熱戦の余韻冷めやらぬ中、2回戦が始まる。 座順は起家から秋山-岩沢-平山-橘 東1局まず聴牌したのは親の秋山。7巡目単騎の七対子。1回戦ラスということもあり、リーチを打ちたいが、ここは様子見のダマテン。 東家 秋山 平山はスリムにしながら中に寄せているように見え、岩沢はピンズのホンイツ模様。橘は上目を厚く持っている手牌構成か。 その時の全員の手牌を見てみよう。 秋山 なんとほか三者は全員イーシャンテン。しかも岩沢は国士無双のイーシャンテンだ。 岩沢は次巡持ってきたも当然しれっと押す。 ここで橘は打。橘はこのをミスと振り返っていた。リーチに対してが通っており国士無双の可能性のある岩沢がいるのだから切るならにしなくてはと。 さて、秋山の親リーチに対してなんと全員聴牌である。待ちの数は秋山2枚、岩沢3枚、平山3枚、橘1枚。次に声がかかった時、それは誰かがあがった時だろう。 そして、その時は訪れる 「ロン、32000」 あがったのは岩沢だった。つかんだのはリーチ者の秋山。 開かれた手牌に秋山は少し苦笑い、そして平山・橘は呆気にとられた表情。 3回戦の決勝戦で、役満をあがった岩沢は1回戦2着の+6.6p。この差はかなり大きい。放銃した秋山だけでなく、平山・橘も岩沢からの直撃をしなければかなり厳しい。 しかし、さすがはここまで勝ち上がってきた強者たちだ。ここから追う3者は底力をみせる。 まずは東2局、ドラ2枚の手を丁寧に進めた橘がヤミテンで岩沢から8000を直撃する。親が岩沢ということもあり、跳満を被せに行くという選択もあったが、ヤミテンで最高の結果になる。 ロン ドラ東4局は秋山が魅せる。 4巡目に以下の牌姿 ツモ ドラドラは出るが高めで満貫の聴牌。しかし、秋山はこの手はこの程度で終わらせないと聴牌とらずの。7巡目に絶好のを引き入れ、最高の形でリーチ。 ドラをツモると倍満、ツモでも跳満の大物手。なんとこれが2枚ずつ山に生きている。倍満をツモれば、まだまだ着順アップの可能性も出てくる。 しかし、何としてもあがりたい秋山に襲い掛かったのは親の橘、ピンフドラ1の待ちで追いかける。これが3枚山。 そして、次の秋山のツモはなんとその。一発という役はないが、追いかけられてすぐの放銃に秋山も少しがっくりとした。流れが悪いというのはこういうことなのか。麻雀の残酷な一面を目の当たりにした。 これで橘は5800点の加点で、トップ目の岩沢になんと9000点差まで迫る。 南入して、南1局チャンス手をもらったのは平山。ドラのが暗刻の手を素直に仕掛けてツモりあげ2000-4000。これで30000点を越えてくる。 南2局を迎えたところで、点棒状況は以下の通り。 岩沢 53000 この岩沢の親を流せば、橘、平山にもトップの可能性が十分あり得る点差だ。 ここで全員の配牌。(ドラは) 東家 岩沢 断然いい配牌とツモもらったのは橘。なんとこの配牌が5巡目に以下の聴牌。 ドラは場に既に2枚切られている。残りの1枚を持っているのは親の岩沢。 その岩沢は3巡目にドラのを重ねて以下の勝負手となっている。 ドラ岩沢としてはあがりたいが、直撃されるのが最悪なので、できればリーチはしたくない。ここから岩沢の手順を見てみよう。 4巡目 ツモ 打 これが手役の作り方だよと教えてくれるような手順で、結果的に橘のを放つことなく満貫聴牌。このカンに仕掛けた平山が飛び込み12000。 放銃の平山はもちろんだが、橘にとっても一度見えかけた岩沢の背中が遠くなっていくこのあがり。さすがにこの半荘の岩沢のトップは堅いか。 しかし幾度も決勝の舞台を経験している平山の切り替えはさすがだ。放銃のことはすぐに切り替え、平山らしい手順で234の三色をリーチしてツモあがり2100-4100、失点を取り返す。 が、反撃もここまで。 南3局は岩沢の700-1300。 2回戦結果 2回戦終了時トータル 新決勝があるとは言え、平山、橘も1万点差までには詰めておきたい。そのためには少なくとも岩沢には3着以下を押し付けて、2着順差はつける必要が出てくる。しかし、相手は競技経験の長い岩沢。そう簡単には崩れてはくれないだろう。 最終3回戦は起家から橘、岩沢、秋山、平山。起家の橘は先行していかないと南場の親が落ちてからが厳しくなる可能性もあるが、岩沢の上家であるということはラッキーか。平山もラス親ということもあり、最後まで自分らしく打てそうである。 まずは東1局。軽い手が入ったのは親の橘と局を消化していきたいトータルトップ目の岩沢。岩沢は2巡目にをポンして早くも両面2つの盤石のイーシャンテン。 ポン ドラ橘は同巡聴牌するも、取らずの打。仕掛けも入っているがフリテンリーチをしやすい手格好を考えれば、このルールでは外すのが一般的か。 ツモ 打 ドラそして、橘が聴牌を外している間に、 とツモって岩沢は5巡目聴牌。 のあふれる形の橘であったが、6巡目にを暗刻にして同テンのでリーチ。 リーチを受けた岩沢は橘の安牌がないこともあり、押していくが、このめくりあいは橘がをツモり、2600オール。安めであったが、岩沢に対してまず10000点以上の差をつけていく。 1本場はリーチをかけた平山の一人聴牌で流局。 東2局は秋山がドラ3枚ので先制リーチ。これに対して、親番の岩沢もの追いかけリーチ。この2軒リーチに困ったのはタンピン三色イーシャンテンの平山。岩沢の当たり牌をつかんで以下の牌姿。 ツモ ドライーシャンテンを維持する打牌候補のは2軒リーチにともに無筋で実際にはすべて当たり牌。当たったときの打点を考えるとを選択しそうなところであるが、平山の選択は。岩沢のリーチ宣言牌のを見て単独のの方がよりも当たりづらいという読みを入れて、トータルトップで親の岩沢には放銃しないようにするという選択。決勝の最終戦でも冷静にこの選択ができるのはさすが平山といったところ。 ロン ツモ8000点の放銃となってしまった平山だが、東3局に6400を秋山から取り返す。 東4局は橘が11巡目に以下の牌姿で聴牌。 ドラ現状で自分がトップで岩沢がラスという並びが出来ていること、ドラ1でをツモればマンガンの手であることを踏まえるとリーチをしそうな気もするが、ここはヤミテン。のであがり2600よりも、ヤミテンで5200以上の出あがりができる方を選んだ。そしてダマテンが功を奏してが岩沢から打たれ、大きな大きな5200の直取りに成功し、なんとトータルポイントでも岩沢を逆転する。 南入して点数はこの状況。 橘 42000 南1局は、トータルで捲られてしまった岩沢が橘の親をやらせないと、積極的に仕掛けていき700-1300。親落としに成功して、ラス目のままではあるが親を持ってくる。 南2局も面白い局となる。6巡目、早々にマンズのメンホンを聴牌したのは親の流れた北家の橘。とのシャンポン待ち。 ドラこのがすぐに秋山から出る。が、橘はこの満貫を見逃す。岩沢の着順を簡単にはあげさせない判断。プロ協会の着順の大きいルールが主戦場の橘にとっては当然の見逃しか。 そして8巡目にをツモり、に待ちを変える。 ドラまた、見逃された秋山も七対子ドラドラ聴牌すると、続いて親の岩沢ものタンヤオドラ1のシャンポン待ちで聴牌。 この3人のあがり競争を制したのは親の岩沢。をツモり、2000オールで2着順アップ。トータルトップに返り咲く。 1本場は橘、平山の2人聴牌。南3局はトータルで大きくマイナスをしている秋山の親番。 早い巡目に仕掛けて出たのは、南家の平山。、とポンして3巡目にはイーシャンテン。しかし、もう一人イーシャンテンになったのは岩沢。4巡目にタンピン二盃口まで見える形である。 ドラ優勝を決める大物手の予感がしたが、岩沢の判断は橘の切ったをチーしてタンヤオの聴牌。満貫、跳満も見える手であったが、平山ができればあがってもらいたい秋山の親番で手バラから仕掛けることはなく、もう聴牌していてもおかしくないということで、2着を守りに行くという判断か。 しかし、このチーで下家の秋山に流れた牌は一盃口が確定し、二盃口の聴牌となる。これは結果論だが、この局を流せてもまだオーラスが残っていることを考えればもったいなくも感じる。これが焦りからくるものでなければいいのだが。 そんな心配をよそにあっさりとをツモり、300-500。岩沢としては予定通り2着目でオーラスを迎える。 点数状況は 橘 39700 そしてこの時点でのトータルは 岩沢 +58.6 橘は現状で25.4p差。新決勝方式を考えても、岩沢の着順を落とすために3900以上の手作りを目指すか。平山はとにかく連荘してトップを目指すのが当面の目標。秋山もとりあえず岩沢と最低でも2着順差のつく橘からの満貫以上の直撃または岩沢からの3900以上の直撃を狙いにいくか。岩沢はあがれれば一番いいが、あがれないときは放銃さえしなければ3着には入れる。 そんな思惑の入り混じったオーラス。4人の配牌は 東家 平山 一番いい配牌は岩沢、これならまっすぐあがりにいける。秋山はマンズに寄せていき、平山は手なりに進めていく。 まず選択が来たのは7巡目の橘。カンを引き入れて以下の牌姿。 ツモ ドラを切って234の振り替りを見る手もあるが、フリテンになる可能性が高く直撃ができないということもあり、の選択。 岩沢にも聴牌が入る。くっつきのイーシャンテンでを重ねて、役はないがとりあえず聴牌をとる。 ドラ次巡を引いてタンヤオに振り替わり、出アガリできるようになる。しかし、これでもうもも止まらないか。 他二人も追いついてくる。秋山はメンホンのイーシャンテンとなりドラのを切ると、親の平山もこれをチーしてイーシャンテン。 秋山はを引き、カン聴牌。 そして聴牌打牌のを平山がシャンテン数は変わらないが手広くなるためチーをする。このチーで放たれたのは。 秋山はこのを見逃す。平山からの出アガリでは岩沢のとの差は素点の8pと着順分を合わせた28pが縮まる。 しかし、岩沢とからの直撃で46p、橘からの直撃だと38p、ツモなら45pとそれ以上に縮めることができることを考えれば、ここからだけはあがれない。このあたりの着順意識は本当に見習いたい。 このチーで岩沢はを引き入れて両面待ちへと変化。ボルテージは上がってくる。 この時点で橘の待ちは2枚、岩沢は1枚、秋山は2枚。 2回戦の東1局、岩沢が国士無双をあがったあの4人聴牌に似た感覚になっていた。 次、誰かが発声したときが3回戦の終局であろうと。 対局室にいた観戦記者の私はあえて目をつぶることにした。 そして、その時は訪れた。 「ロン、8000」 橘の声であることはすぐに分かった。そしてここまで徹底的に岩沢からの直撃に徹してきた橘のことだ。誰からあがったかということもおおよそ見当もついた。 目を開けると、こんな局面でも、丁寧に点棒を渡す岩沢の姿があった。 そして最後までやれることをやり遂げた橘が、今までよりも少し大きく見えた気がした。 3回戦 3回戦終了時トータル さて、残すは新決勝方式のみ。トータルトップの橘はあがれば優勝、岩沢は10600点差なので1局で決めるには3000-6000以上のツモあがり、または6400以上の直撃であるが、親を持ってくることも重要である。平山、秋山はとにかく親で連荘したいところ。 そんな新決勝方式1局目は親の秋山がダブを仕掛けて1000オール。 続いてイーシャンテンとなったのは親の秋山。の両面2つ。 ドラ12巡目には岩沢も他二人よりも手広いイーシャンテン。 ドラしかしこれで岩沢から放たれたに声をかけたのは橘。カンの聴牌。 他3人は橘を止めたいが、麻雀の神様はすでに優勝者を決めていたようだ。今回は目をつぶっている暇もなく、橘が次に手にした牌がそのであった。 完璧なまでの逆転劇であった。 中盤でリードをしたものが守りに入って、追いつかれるというケースはよくある。しかし、今回の岩沢は守りに入ることなく戦い続けた。結果として橘への放銃が多くなってしまったが、自分のあがりが十分見込める形からのヤミテンへの放銃で、その牌だけを止めろというのは、酷な話だ。 この大逆転を生んだのは橘一人の力ではなく、岩沢を追う平山、秋山も全員で岩沢を苦しめるような打牌を徹底的にしたことが非常に大きい。追いかける3人が優勝するために、できることを確実に行う。言うのは簡単であるが、実行するのは簡単なことではない。 特にプロ協会所属の二人の、「着順への意識の高さ」は本当に勉強になった。代表の多井もよく言うがこの部分は現在のRMUにはまだまだ足りていない部分である。 RMUの選手が友好団体の選手から学ばなければならないことは非常に多い。友好団体の試合に積極的に参加することも大事であるが、自団体の試合に参加していただいている方々から学ぶということも同じくらい大事なことだ。 特に橘のように友好団体のトップリーグで活躍している選手がRMUの対局に参加しているということは、我々アスリートにとって大きなチャンスである。それは同卓して経験を得ることもそうだが、同卓しなくてもその麻雀を見て学ぶ機会があるからだ。 勉強会に参加することや、対局の数を増やすこと以外にも、麻雀力を向上させる方法がたくさんある。個々の意識次第でそれはなんとでもなるのである。 これは自分自身に対して感じたことであるが、将来のRMUのためにここに記しておこうと思う。 さて、優勝した橘はプロ団体の開催するタイトル戦では初優勝となった。優勝のインタビューで、「雀王になるために麻雀をしているので、次は雀王」と語った次には「明日の雀竜位戦も見てください」と自団体の放送の宣伝。常に日本プロ麻雀教会の一員であることを意識しているのだということがひしひしと伝わってきた。 そんな橘からは麻雀の内容だけでなく、競技麻雀プロとしての姿勢も見習わねばと強く思わされた。 こんな選手になりたいという目標がまた一つできたことが、筆者にとってこのオープンリーグで得られた最大の財産になりそうだ。 優勝は日本プロ麻雀教会所属、橘哲也。 > (文中敬称略 文責・嶋﨑究) |