8月21日(日)第5節レポート小雨の中、定刻通りにスタート。
前節までのポイントは以下の通り
河野高志+305.9
多井隆晴+15.0 (△290.9)
谷井茂文-58.7 (△364.6)
阿部孝則-263.2 (△569.1)
※()内は首位とのポイント差
ポイントを見てもおわかりのように、今年はとにかく河野が強い。
前節もさらにポイントを上乗せし、2位以下を突き離している。
誰がこのようなワンサイドな展開を予想しただろうか?
「河野への追撃」
これが河野以外の三者のテーマとなっている。
前半の締め括りとなる第5節、今日も河野がプラスするようだと、後半戦がまるで消化試合のような意味合いを持ってしまうかもしれない。
私自身、一麻雀ファンとして、なんとしても今後は3人で包囲網を敷いて、後半戦も見所あるリーグ戦にしてもらいたい。
河野の大崩れを願うわけではないが、そのようなことを考えながら立ち会いの任に就いた。
一回戦、開局から静かな立ち上がり。
東3局
13巡目、河野にテンパイが入る。
            ドラ
巡目は遅いものの、ドラが全て見えている状況。
マンズの場況の良さも手伝って、河野はリーチと出ると思っていたが、ダマを選択。
「確実にアガリを拾おうとしているのか?」
この3巡後に親の谷井からリーチが入り、ここで追っかけるかと思ったが、さらにダマ続行。
「トップ目だからこその慎重な打ち回しか。徹底しているんだな……」
などと考えていたら、すぐに谷井の当たり牌を掴んでオリにまわり、谷井一人テンパイで流局。アガリに対する嗅覚だけでなく、受けへのそれも鋭いのが河野の麻雀である。
私が打っていれば、テンパイ即リーチである。
結果はどうなるかわからないが、「場況が良い、ならば攻めたい、アガりたい」という欲に負けてしまうことが多い。
自分の置かれている状況をきちんと把握した、プロらしい一局。
若手選手にも、こうした部分を徹底してほしいと思う。
もちろん私自身、見習いたい部分である。
私は長年、河野の麻雀を観てきた。
とにかく攻めるラフファイタ-のイメージが強いが、劣勢に立たされた時、守勢に入った時の我慢強い麻雀が、本来の河野の強さであることを知っている。
もちろん、この1局に限らず、今期のRMUリーグにおいても、河野の粘りある局を何度となく目の当たりにしている。
続く東3局1本場
河野の仕掛けで、多井に続々とマンズが流れ込む。
多井8巡目
            ロン ドラ
これを谷井からアガって頭ひとつ抜け出す。
親の谷井はこの時、ドラを2枚使ったホンイツのテンパイ。
それだけに不運な放銃となった。
その後は河野が4000オールをアガって、河野、多井のマッチレースになるが、オーラス多井がしっかり満貫をツモアガリ、河野をまくって逆転トップ。
二回戦は東場から、河野、多井、阿部の3人の手がぶつかりあう展開でリーチ合戦となるが、これを多井が制して早くも50000オーバー。
このまま多井の半荘となるかと思わせられたが、他も地蔵の役目でそこにいるわけではない。
東4局、親の阿部が
             ドラ
この手を丁寧にまとめて9巡目にリーチ。
            ドラ
待ちの は山にそれぞれ1枚ずつだったが、安目ながら をしっかりとツモリ上げ、裏ドラを乗せて4000オール。
この手からは、王者阿部からの強烈な存在感を感じさせられた。
阿部はどんな手牌にも難しいことはせず、当たり前のことを当たり前に、非凡なまでに繰り返す。
手牌に忠実な手順を尽くしたら、結果は神に委ねるが如くリーチと出る。
そして、
「正しい努力には、しかるべき結果がもたらされる」
そんな道理を私たちに教えてくれるかのように、クールに本手をツモり上げる。
これがまさに阿部の真骨頂であり、阿部本来の王道と呼ぶべき麻雀である。
このアガリをきっかけにアガリを重ね、そのまま多井をマクってトップ。
阿部は第4節までまったくと言っていいほど本手が実らず、本来の姿ではなかった。
それでも打ち方を変えることなく、淡々と彼らしい麻雀を続けてきたのである。
ここに来て、ようやく強い阿部が帰ってきて、後半戦が楽しみになってきた。
三回戦は開局から、大物手が飛び交う。
東一局 ドラ
親の多井の読みが冴える。
マンズの上目に待ちの照準を合わせ、以下の手をリーチしてロンアガリ。
            ドラ ロン
こうした読みは、平面のアガリ形を見るだけでは、なかなか伝わらないと思う。
RMUリーグに興味を持ってくれる方は、ぜひ牌譜を実際に並べ、S級プロの読みを体感頂きたい。
続く1本場、今度は、阿部が、8巡目にして
            ロン ドラ
この二つの手牌に飛び込んだのは河野で、3人からすれば、値千金のデバサイである。
ワンサイドの展開が崩れるこの点棒移動により、ギャラリーもにわかに色めく。
河野は結局ハコを割って、痛恨の大きなラスを引かされることになった。
最終4回戦を前に、河野の不調が気になる。
2回戦まではなんとか持ち前の粘りを発揮していたものの、3回戦になって放銃を繰り返すその姿は、明らかに本来の彼ではない。
しかし麻雀の成績は水もので、良い時があれば、悪い時もある。
スコア上では大崩れとならない彼を見て、「最後もほどほどの結果にまとめるだろう」、と私は考えていた。
完全に調子を取り戻した阿部が、東場から快調にアガリ重ねる。
早々に3連勝ムードが漂い、私はその時点ですでに「今日の主役は阿部」と、本稿のアウトラインをイメージしていた。
長期の成績を競うリーグ戦において、ここまで苦戦をしていた彼の姿をまだ見たことはなかった。
だからこそ、この復調には価値がある。
……しかしその構想は、すぐに変更を余儀なくされることになる。
東4局1本場
河野の手が軽く、7巡目にイーシャンテン。
第一打 とやや変則的な多井のツモ切り を見て、早めにソーズを処理とばかりに打 。
これに多井がロンを掛けた。
河野の手順になんら問題はない。
強いて考えれば、変則手と分かっているからこそ仕掛けを恐れ、ヤオチュウ牌を抑える算段もできたかもしれないという程度。
ロンを掛けられた が背負う罪は、やや河野の想像より大きかったに違いない。
            ロン
試合後、多井は当然のようにこう語った。
「あれだけ早い国士だったから、他からは見逃すつもりだったよ」
河野への追撃、そのテーマを見事に具現化した、最強最速の麻雀である。
これが決め手となり、多井がトップ。
河野は2連続ラスとなる。
実はこの日、河野は体調が思わしくなく、対局中も何度か苦悶の表情を見せていた。
麻雀には心技体すべてが必要で、どこまでも繊細さが求められるゲームである。
体調管理が大事なプロの務めであることを、この日の彼からは教えられた。
次節の復調を願う。
第5節終了時
河野+225.3
多井+98.3(△127.0)
谷井△130.6(△355.9)
阿部△194.0(△419.3)
300あったポイント差を、1日で130まで縮めた多井。
まだアドバンテージはあるものの、河野もこのまま迫られるわけにはいかないだろう。
不調だった阿部もようやく本来の形を取り戻し、残り5節の戦いが非常に楽しみである。
この日、とことん我慢を強いられた谷井。
「選択の場面でことごとく裏目を引き、アガリに結びつかなかった」
と語ってくれた。
本人もわかっているだろうが、長いリーグ戦、ピントがズレて、マイナスすることもある。悪い時こそ、傷を最小限に抑え、チャンスを待ってほしい。
次節以降の谷井に期待したい。
RMUリーグもいよいよ後半戦、ますます楽しみになってきた。
次回、第6節は、9月18日(日)11時から、柳勝どき店で行われます。
是非観戦にお越しください。

文責:山田田
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