第2期オープンリーグ決勝 優勝は平山友厚!

もう桜は咲いているというのに、朝から肌寒さが漂っていた。
3月30日、今日は第2期オープンリーグ決勝の日であり、同時に2007年度RMUの公式対局最後の日でもある。
第1期オープンリーグ決勝も観戦記者を担当した自分は、ふと半年前のその光景を思い出す。最終局までもつれた激戦を制したのは、S級ライセンスの阿部だった。
その阿部が準決勝で敗退。多井、室生の2人も準決勝で姿を消した。
その激戦を勝ち抜いた強者四人が、この決勝でどんなドラマを見せてくれるのだろうか。

電車が遅れてしまい、慌てて会場に飛び込んだのは開始15分前。会場にいるスタッフに「遅いだろ!」という視線を受けつつ、本当は言い訳をしたかったのが、今はそんな事はどうでもいい。大事なのは、決勝進出者の雰囲気を感じ取ることであった。そこには、「今すぐにでも、決勝を始めてくれ」と言わんばかりの4人が揃っている。

この日、一番最初に会場入りをしたのはアスリートの合田。彼はまだ19歳である。この強豪ひしめくオープンリーグで、決勝に残ってきただけでも賞賛に値するだろう。当然、初めての決勝であるのだが、特に緊張している様子は見られない。むしろリラックスしているように感じられる。

「この会場には1時間半前に着いてしまいました。でも、早く起きたせいかとても体調はいいです。最終戦まで、優勝の可能性があるといいですね」
若いということは、それだけで大きな武器となる(筆者も、彼とはそれほど年が離れていないはずなのだが…)。今まで幾多の実績を残してきたプロとは違い、気負うものは何もない。のびのび打つことができそうだ。

奥の卓に座っているのはライトコースの蛭田。RMU入会前からの知り合いであり、彼とは何度も打ったことがあるのだが、持ち味はなんと言っても爆発力である。一度流れに乗せてしまうと手がつけられない。窮地からでも、その攻撃力でいとも簡単に逆転する場面を何度も目の当たりにしてきた。

「小さな大会の決勝には何度か出たけど、タイトル戦の決勝は始めて。緊張すると思うけど、普段通り打てたらいいと思う」
彼でも緊張することがあるんだなあ、などと少し失礼なことを思ってしまったが、考えてみれば当然のことである。いかに普段通り打つことが大事か。それをよく知っているからこそなのだろう。

石田は、何人かと話をしながら決勝が始まるのを待っていた。自分が話しかけても、それに笑顔で応えてくれる。

リラックスしているように見えたのだが、
「人に見られていると別の牌を切ってしまうことがあるので、普段通り打ちたい」
と言った。さすがに全く緊張していないということは無いようで、話をすることによって、緊張を緩めようとしていたのかもしれない。繊細な麻雀を打つ彼女を、決勝でも見てみたいと思った。

そして、準決勝に補欠繰り上がりで進出し、大三元ツモ等で決勝に残ってきた平山。競技麻雀のベテランであり、その確かな実力は誰もが知るところ。おまけに、完全にオカルトではあるが、こういったギリギリの勝ち上がりをして残ってくると優勝する人が多い。本人もその事は自覚しているだろう。
「普段通り打ちたい」
と言葉少なに応えた彼の目は、優勝しか見ていなかった。

そして1時丁度。立会人の多井が開始を告げた。

1回戦、並びは合田、石田、平山、蛭田。開局から大物手が飛び交う展開となる。
東1局、10巡目に石田がポンテンを入れるも、これに真っ向から勝負したのは平山。

 ドラ

この配牌を貰って、真っ直ぐにピンズのホンイツに向かう。そして14巡目、

 ツモ

でテンパイ。は2枚切れ、は直前に石田が切って1枚切れ。ここで平山は迷わず打。巡目を考えても、誰からでもこぼれそうなで待ちたくなる。
「アガれるなら、だと思った」
はこの時点で2枚山、4枚目のは合田にある。すぐにが合田に流れるも、16巡目に平山はを引き寄せ3000―6000。的確な読みでアガりきった。
親かぶりをした合田だが、配牌からドラ2枚のチャンス手。しかし、2枚切れのどころか、直前に通ったもしっかり止めている。
「ドラ2枚とは言っても、平山さんからの不穏な気配を感じていた」

そんな合田は東2局、誰もが驚くチャンス手が入る。

 ツモ ドラ

なんと第一ツモでドラのを重ね、早くも四暗刻イーシャンテン。合田の四暗刻が炸裂か……と誰もが固唾を飲んで見守る中、テンパイすることもなく蛭田が石田から1000点をアガる。だが、合田はそんな手が入っていることなど微塵も感じさせずに、次の局へと臨んでいた。

東3局、平山は再び親番で手が入り、4800、5800は6100を合田、石田からそれぞれ打ち取り、早くも5万点オーバー。だが、このまま自由にさせておくわけにはいかない、と言わんばかりに下家である蛭田が積極的に仕掛けて連荘を止める。

 ポンポン ロン ドラ

これを合田からアガる。たしかに、打点的にも鳴いていきたい形ではあった。そしてこれが彼のスタイルでもあるのだろう。だがアガることよりも親の平山に自由に打たせたくない、そんな意思が感じられた。この辺りの勝負感覚はさすがと言ったところか。
この後、蛭田が平山を追い上げるものの、最初のリードを守りきり、平山が一回戦トップで終わる。
1回戦 平山+26.6 蛭田+10.6 合田△8.2 石田△29.0

2回戦、並びは蛭田、合田、平山、石田。
まずは東2局に合田が蛭田とのリーチ合戦を制して4000オールをアガる。

 ツモ ドラ

平山も負けてはいない。
合田の一人ノーテンで迎えた東3局2本場、平山の親番。蛭田がポンを4巡目までに入れる。だがこの派手な仕掛けにも、ひるむことなく立ち向かっていく。と強打し、蛭田が打点を追ってアガりを逃した後、2枚切れのを力強くツモり、2000は2200オール。

 ツモ ドラ

一見すると無謀なアガリに見えるかもしれないが、好調の平山がここでオリることは、隙を作ることと同じである。ここで蛭田の仕掛けにひるんでしまったなら、この半荘はどうなっていただろうか。

「今までに数多くの決勝を見てきた」という平山にとって、それこそが罪であるとよく知っていたのだ。反対にこの局を悔やんでいるのは蛭田。
「親を流そうとしていたのに、途中から打点を追い、蹴ることができなかったのが痛かった」
たしかに点数が欲しいのはわかるが、この局面、平山が1回戦トップだったことを考えると連荘をさせない事に重きを置くべきだった。その後は平山が連荘を続け、4本場では9巡目に、

 ドラ

この手を大胆にも即リーチ。が4巡目の時点で3枚見えていることもあり、待ちが良いと踏んだのであろう。結果はすぐにを合田が掴み、12000は13200をアガる。またしても東場の親で5万点オーバー。その後もアガりを重ね、6万点を越す大トップで2連勝。

2回戦 平山+49.6 合田△2.4 蛭田△16.7 石田△30.5
2回戦までの合計 平山+76.2 蛭田△6.1 合田△10.6 石田△59.5

3回戦、並びは蛭田、合田、平山、石田。
すでに平山は2番手の蛭田ですら80ポイント以上の差をつけている。なんとか平山包囲網を敷いて、彼をマイナスにさせたい所だろう。
比較的小場で進み、全員がほぼ原点という平たい状況の南1局。
親の蛭田が3フーロのあと、テンパイ打牌でドラのを打ち出す。蛭田としては連荘狙い、当然のドラ切りだ。このドラには何の動きも入らなかったのだが、直後のツモで下家の合田は、で「ツモ」を宣言。蛭田は思わず目を開けて驚いていた。役無しタンキ待ちだったのかな?と思って開けられた手牌は、

 ツモ ドラ

なんとドラタンキのチートイツ。
「初めから、(蛭田と石田からは)見逃すつもりでした」
ここで蛭田から6400をアガってしまうと、全員が原点近い持ち点のため、自分がトップを取れても平山をラスにすることが難しくなってしまう。このアガりで空気が変わったと感じたのは僕だけではなかっただろう。
「(アガるかどうか)決めていないと、少し間が空いてしまうのが普通だけど、彼は微塵もそんな気配を見せなかった。本気で優勝を狙っているなと改めて警戒したよ」
と平山が後に語ったが、この見逃しには対局後誰もが合田を賞賛していた。
そして、その満貫をアガった合田がトップ目で迎えた南3局、蛭田の先制リーチを受けつつも、平山が押し返して追いかけリーチ。石田も負けじとチーテンを入れて、蛭田のに2人から「ロン」の声。

平山
 ロン ドラ

石田
 チー ロン ドラ

平山が頭ハネで連荘、このまま3連勝してしまうのだろうか。
次局の南3局1本場、石田のにダマテンの平山が再び「ロン」の声。この半荘も決まったかな…と思いきや、なんと合田からも「ロン」の声が、またしてもダブロンである。

合田
 ロン ドラ
平山
 ロン ドラ

これには思わず平山もため息を漏らす。ここで平山がアガっていたら3連勝濃厚でこの試合は決まっていた。平山をマイナスにすることこそできなかったものの、この半荘は合田が魅せてくれた。

3回戦 合田+40.8 平山+4.8 石田△15.8 蛭田△29.8
3回戦までの合計 平山+81.0 合田+30.2 蛭田△35.9 石田△75.3

そして4回戦、並びは石田、平山、蛭田、合田。
不調である親の石田は、東1局で合田のテンパイ打牌をとらえて4800をアガるものの、1本場で蛭田が3000,6000は3100,6100をツモって再び親カブり。それでも石田は、南1局の親番にようやくチャンス手が入る。

 ドラ

4巡目でこのテンパイ。サンショクをみてダマテンに構え、9巡目でを引きリーチ。
しかし、ラス目の親に向かってくる者はおらず流局。この局を振り返って石田は
「せっかく入ったチャンス手だったけど、ここはリーチをせずにダマテンに構えを拾わなければならなかった」
と、今日はここが別れ目だったと悔やんでいた。もしダマテンに構えていたとしても、が出たかはわからない。大きく沈んでいるので、6000オールが欲しい気持ちもわかる。しかし、今のこの体勢でそう簡単にツモれるとも思えず、点棒状況的にも他家がリーチに向かってくることはほとんどないだろう。そう考えれば、ここはダマテンに構えるべきだったのかもしれない。

続く東1局1本場で蛭田が、

 ツモ ドラ

このハネ満をツモり、逆転への足がかりとする。
その後も蛭田が快調に飛ばし、オーラスの時点で蛭田が50500点のトップ。石田28200点、平山20700点、合田20600点と続く。このオーラスが平山をラスにしたい3人にとっての正念場となった。
蛭田は平山からアガってラスを押しつけたいが、それが無理なら満貫やハネ満等の高い手が欲しい。平山はなんとかラス抜け、親の合田はとにかく連荘を続けるしかない。

そんな中、蛭田はなんと6巡目に、

 ドラ

この形からポン。打点が欲しいところでこの仕掛け、おまけにはすでに一枚切れている。ちょっと無茶じゃないかな、と思っていたが、この後ドラのを2枚連続でひく。すごい感覚だと思った。このポンはきっと理屈じゃないのだろう。
そして9巡目に、

 ポン ドラ

一枚切れではあるがバックの満貫テンパイ。これを平山から直撃できれば、最終戦は本当にわからなくなる。その平山も11巡目にこのテンパイ。

 ドラ

平山もここはオリることができないので、無スジをどんどん押してくる。一体どっちが勝つのだろうか…と静かに見守る中、ノーテンすら許されない合田が苦しむ。実は、合田は、

 ドラ

4巡目でこのイーシャンテンだった。その後しばらくツモ切りが続いて8巡目でツモ。単純効率なら打だが、バランスで言えばのほうが優秀だろう。ダイレクトにを引かない限りほとんどロスにならず、ドラ引きやタンピン、345のサンショクやイッツウまで見える。合田も頭ではわかっているだろうが決勝という舞台で焦ったのか、合田は打。そして平山のテンパイ後にドラのを引いてきて万事休す。前の半荘、上手く打っただけに悔やまれる一打となった。
そうなると蛭田が平山からアガってくれることを願うしかないのだが、結局平山から白がこぼれることはなかった。そして蛭田は終盤にアガれないをツモってしまい、そのまま蛭田と平山のテンパイで流局。平山の優勝が限りなく近づいたように感じた。

4回戦 蛭田+37.0 石田+1.7 平山△12.8 合田△25.9
4回戦までの合計 平山+68.2 合田+4.3 蛭田+1.1 石田△73.6

そして最終5回戦、並びは蛭田、合田、平山、石田。
平山は東1局1本場に1300は1600を打ち込むが、それ以降振り込みをすることなく確実に局を進めていく。
しかし、東4局の1本場、再び合田にチャンスが舞い降りる。

 ポンポン ポン ドラ

ここで合田がツモアガろうものなら、この半荘平山をラスへと落とし、トップの行方が一気にわからなくなる。
親の石田が強くテンパイ気配を出していたため、合田は打。これが石田へ2900は3200の振り込みとなり、波紋を投じるにはいたらなかった。

その後は淡々と局が進み、迎えたオーラス。
条件は2着目の蛭田でさえ倍満直撃という状況。
最後、平山が石田から2000は2300をあがり、優勝を決めた。

5回戦 石田+32.7 蛭田+16.0 平山△7.6 合田△41.1

合計 平山+60.6 蛭田+17.1 合田△36.8 石田△40.9

平山は、開局からリードを一度も渡さないという危なげない展開で優勝。大きなミスをすることなく、安定感抜群の麻雀を見せてくれた。

「今までたくさんの決勝戦を見てきたので、どんな状況になっても心の揺れを防ぐことができた。多少ミスや振り込みをしても、すぐに立て直すことができたのが勝因だと思う」
経験豊富な古豪は、やはり強かった。

「普段通りに打てて、ツモも良かったけど、後先で負けていたのが大きかった。平山さんの親番を蹴ろうとしていたのに、できなかったのが残念だった。でも楽しかったです」
とは蛭田。

1回戦こそやや緊張が見られたものの、その後は普段通り打てていただろう。放銃回数、点数は少なかったが、1回戦、2回戦で平山の親番を止めることができなかったのが非常に悔やまれる。そうすれば、4回戦で爆発した勢いそのままに優勝することができたのかもしれない。

誰もが賞賛したドラの見逃しを始め、いくつかの場面で光るものを見せた合田。まだ荒削りなところが多く、手順、状況判断ミスをしてしまうことがあったが、これからが非常に楽しみな選手である。

「至る所でミスが出てしまいました。結果は残念でしたが、この経験をこれからに繋げられたらいいと思います」

誰の目から見ても、明らかに状態の悪かった石田。途中ふんばりがきかずに放銃してしまったり、致命傷となったリーチ判断が残念で仕方がない。

「今日はツモれる気がしなかったから、あのリーチはするべきじゃなかった。条件戦にあまり慣れていないこともあり、後々の事を考えて打ててなかったのもよくなかったです」
それでも最後まで諦めず、丁寧に打ち続けていたのが印象的だった。

いくつもの決勝戦を観てきたが、やはりこの舞台は独特である。
決勝でしか味わえない空気、見ることができない闘牌というものが、存在する。
今回の第期回オープンリーグ決勝もそうだった。
1打に感動し、1打にドラマが待っている。
すでに、次はどんなものが見られるだろうか、と考えている自分がいることに気付くのに、そう時間はかからなかった。

こうして、2007年度RMU最後の公式戦は幕を閉じた。怒濤のように過ぎ去ったこの一年が終わりを告げようとしている。今までに味わったことのない、ハイレベルな大会ばかりであった。2008年度、更なる飛躍の年になることは間違いない。

(文中敬称略 深谷祐二)