2018オープンリーグ決勝自戦記
 

創設当初の第1期から参加していたオープンリーグが、私にとっての初タイトルとなりました。自戦記という形で、レポートにしてみたいと思います。

今回のトーナメントは、初戦で多井、阿部の両RMUリーガーを乗り越え、2戦目はトップ→2着の有利なポジションから一転して、温い放銃でピンチになりかかったところをしのぎ、この日の準決勝へ進みました。

準決勝は放送卓で3着、2戦目につまらない放銃でラスと追い込まれた3半荘目の放送卓において、ツモり四暗刻テンパイに始まり、親番の高打点のアガリ3連発で一気にひっくり返して決勝進出を決めました。

そして、わずかなインターバルと放送での選手紹介の後、決勝戦がスタートしました。

 

【1回戦】…4人の選択とそれが織りなすアヤ

おそらく、自分以外の3人はこういった決勝の舞台は初だったと思う。となると、入り方というのはとても大事になってくると思うが、その東1局にいきなり選択の場面を迎えたのは佐藤。

佐藤やすし
昨年度に会員になったばかりだが、26連続ラスなしを記録するなどいきなり抜群の安定感。準決勝で打った感じからも、この日ネットカフェでパブリックビューイングして応援していたSNSの麻雀仲間の顔ぶれを見ても、腕達者なのは見てとれる。

ドラの白暗刻の配牌が入り、順調に手が進み6巡目に待ちでテンパイし、ダマテン。すぐにツモの4,000オール。

アガられた瞬間は、自分の手牌にがくっつき候補で浮いていたので(放銃しなくてよかった)くらいにしか思っていなかった。

後から考えると、この状況において大きく分けて3通りの選択があるように思う。
1.常にダマテン
2.決勝ならリーチ
3.常にリーチ

佐藤との公式戦での対局は今回の準決勝が初だったが、佐藤は選択という意識がないまま1.を選んでいる人のイメージがある。

もちろん、Bルールでの12,000(4,000オール)は大きいし、リーチすると出アガリ率が低下する上にツモらないとハネマンにはならない。しかし、巡目が早く河が強いので早い巡目ならの打たれる確率はそこまで下がらない。ツモった時にこのルールでさらに2,000オールの加点も大きい。

仮に空振りしても、他家のアガリで終わるよりも流局するケースの方が多いだろう、その時に手牌を開けた時に、強烈なイメージを与えることができ、空振りによる1万点程度の利益の減少をある程度補えると思うので(特に佐藤には上記のイメージがあるからなおのこと)、リーチという選択もあったかもしれない。

その後、佐藤←宮田1,500(+300)、臼井の2,000-4,000(+600)ツモを経ての東2局、私にとっては選択ですらない、目一杯に構えてシャンポン部分を引いての手なりリーチ。

宮田信弥
オープンリーグだけで5回目の決勝進出。タイトル戦決勝では2位と3位しかない善戦マンだけど舞台経験だけはこの中で随一。

暗槓後に太田が切って3,200のアガリ。太田が押し返して対局中はどんな手かと思っていたが、

このメンホンチートイツテンパイからで納得。

太田雅洋
今期のR2では不振(その後降級)だったが、今回の予選で同卓した際に大トップを取られたり、最高位戦クラシックで準決勝に進出していたりと、一発裏無しルールと相性がいい印象のある選手。

ただ、リーチしていないと、佐藤の手に浮いていたを切るタイミング次第で大三元の可能性があった模様。紙一重ながらも、いつものリーチが大物手を防ぐ形になった。

その後、臼井が佐藤を逆転、そのままの状態で迎えた南3局3本場。供託が2本ある状況での臼井の選択が面白い。

臼井大樹
今期R3で苦戦中(その後降級)だが、オープンリーグでは好成績。ファクトリーなどで勉強熱心な選手。

アガリの価値が大きそうな場面で、私ならそもそも宮田の切った1枚目のから仕掛けそう。仮に鳴けなかったとしてこうなったら、供託回収も含めてを払いたいところだが、臼井の選択はツモ切り。

これはこれで分かるけど、続けてドラではないほうのを引いて役なしダマテン。

確かに役なしドラなしでリーチしたとして、ドラの固まっている相手に押し返されたり、ツモ切らざるを得ないドラを鳴かれたりなどのリスクはある。しかし、役なしリーチにリスクを感じるなら、役牌シャンポンを残した方が出アガリも利く。またいざという時の受け駒も増えるし、融通が利いたと思う。

本譜は、佐藤から出た2枚目のを鳴けず(アガれず)、もツモれないまま、子方3人の手牌が進んでいくというリスクが顕在化していく。

宮田が16巡目にを切って待ちのタンピンテンパイ、巡目が深いのでダマテン。

同巡、太田の手がこうなり、30秒ほど考えての選択は切りダマテン。直後に臼井がをツモ切って2,000(+900)の放銃となった。

この放銃により臼井はいったん2着目に落ちるが、太田の選択が切りダマテンの5,200ではなかったことが幸いし、オーラスに1,000点アガってトップとなった。

(1回戦結果)臼井+24.1 佐藤+13.6 宮田▲6.5 太田▲31.2

 

【2回戦】…いつもより押してみた

展開的に3着スタートは不可避でやむを得ない。しかし、ここで自身が3着以下でも、臼井に連勝されても厳しくなるところ。東2局の親番、門前で手を進めても追いつかないだろうし高くなりにくいし、2,900あるなら、と、この1メンツもない形からいつものようにダブ東を仕掛ける。

2フーロしたところで佐藤からリーチが入るが、

この形から押し返してテンパイを入れると、ドラと振り替えて打点が上がった直後に佐藤がを掴んで5,800のアガリ。考えうる中で最高レベルの結果になった。

その後、臼井が太田から役牌ドラ3の8,000をアガって、トップを逆転されての南1局。イッツーとチャンタの両天秤で進めた仮テンから、ツモってチャンタイーペーコードラ1のテンパイ。ただし待ちのが見た目残り1枚しかないのでダマテンに構える。

そうこうしているうちに、太田のマンズのホンイツ仕掛けと佐藤のリーチに挟まれるが、怯まずに打点で押し切って、臼井から出アガってトップ再逆転。

正直言って以前の私なら、この8,000のアガリはなかったかもしれない。例えば、佐藤のリーチを受けてすぐのトイツ落としで回っていたとか(その場合はすぐに引いてジュンチャンでテンパイし返すが)、上の画像にある佐藤の14巡目のをポンして亜リャンメンからの単騎待ち替えをして無難にテンパイ維持(良くて2,900)を狙うとか、アガリ直前のでオリるとか、紙一重だけど分岐になるようなところはいくつもあったように思う。

もちろん、「読みを入れて、通ると判断したから切る」、というのが理想だろうけど、通ったら勝てる(可能性が上がる)牌を押すのも、決勝で勝つには必要なのかもしれない、と思って押したのが、好結果につながった。

この1戦目トップの臼井からの直撃により、優勝争いは混沌としてきた。太田だけが連続ラスで取り残され、結局トータル4位で終わってしまったのだが…最後の逸機はここだったように思う。

ドラの白暗刻で切って単騎待ちのテンパイを取った後、待ちを変えずに流局。しかし、リスクを冒して待ち替えして、アガリを取りに行けば、8,000~12,000がアガれていた道はいくつかあったように見えた。

上のシーンでいうと、2枚切れの単騎なら数巡後の私の打牌が止まらなかった可能性が高い。また、同じく2枚切れの単騎ならば、臼井が佐藤の現物として手中に留めていたのが打たれた可能性がある。そしてこの画像の直前のをとどめてフリテン3メンチャンに受けていれば、最終手番でこのはツモアガリ牌になっていた。

確かには、太田のテンパイ直後に佐藤の切ったのスジとはいえ、親の佐藤のピンズ仕掛けに放銃のリスクはある。しかし、私はその前から佐藤の仕掛けに対応しているように見えるだろうし、臼井にしてもが余っている佐藤に通ってないピンズを切る可能性は低い。つまり、佐藤以外からの出アガリの可能性は低いと見ていい。

スコア的にピンズで佐藤に放銃するとほぼ終了の状況ではある、しかしそれはこの役牌ドラ暗刻のチャンス手をアガリ逃ししても似たようなもの。

3回戦勝負の1回戦でやや大きめのラスを引き、2回戦のラス前でも小さいとはいえラス目。それでも、初戦3着の宮田がトップ目といういい並びなので、これをかわせばほぼ平ら。

少なくとも点棒状況で迫れていれば、3回戦開始時のスコアがトップと30p前後となり、これならまだ希望が持てる。それを目指すためには、このチャンス手は是非ともアガリたいところで、リスクを冒す価値は十分あったと思う。

結果的にここを連荘できた佐藤がこの半荘の2着に浮上。オーラスの太田の親は並びを維持したい上位3者が仕掛けて終わらせにかかり、優勝争いはほぼ三つ巴の争いとなった。

(2回戦結果)宮田+24.1 佐藤+8.3 臼井▲6.6 太田▲25.8
(小計)佐藤+21.9 宮田+17.6 臼井+17.5 太田▲57.0

 

【3回戦】…小場を制す

太田を除く3人は10p以内の差なので着順勝負、3人の中で最先着した者が新決勝をポールポジションで迎えることができる。太田は最低限トップ、できればマイナスを大きく減らせるレベルの大トップが欲しい。

そんな中、起家となった臼井にいきなりのチャンス手。4巡目までにをポンして暗刻、トイトイかドラ()1のイーシャンテンとなったところに4枚目のを持ってくるが、暗槓して打点アップとはせずにツモ切り。

おそらくは、打点アップよりも万が一の時の守備や、リャンメン待ちになった時のアガリやすさを取ったのかもしれない。

結果ドラを引いて待ちになるのだがアガれず、さらにを引いてトイトイ変化もあったのだがこれも見送り、結果流局となる。

ちなみに、もしここでトイトイ変化をした場合、ツモアガリより前に私がで7,700放銃となっていそうだが…。

正直、4枚使いからを切るというのは想定から抜けていたし、役牌暗刻よりはトイトイだとは思っている。しかし、はドラ跨ぎリャンメンもだけどトイトイに切りたくなかったのが大きく、ほとんどツモらない間の2つポン、最後手出しを見ると、1枚切れのが重なった可能性は低い。そう思って、ションパイのトイツよりも通りやすそうと思ってしまった。

後から考えればどうせ手詰まっているのだから切らずに他のトイツから切った方がいいかな、とは思った。

局は進んで東2局。

親の佐藤がドラ表示牌を仕掛けてチャンタドラ2のテンパイ、続けて太田が、

仕掛けた佐藤の現物の切りで追いかけリーチ。さらに宮田がそれを仕掛けて、

片アガリのタンヤオテンパイ、すぐにツモって300-500。

瞬間芸とはいえ、先制リーチを受けて、どうせリャンカン埋まらないとぶつける手にならないので、うまくさばき手に移行できたと思う。

この半荘は完全な小場になり、僅差のままオーラスまでやってくる。

(点数状況) 臼井298 佐藤271 太田297 宮田334

9巡目に臼井からリーチの声が。役あり3,900以上ならダマテンにしそうなのでリーチで一番怖いのはドラが固まっていることだが、手牌が整ってない上に、放銃で2着順(以上)落ちるのは最悪。

テンパイ料で臼井と着順が変わることがなくなったのもあって、ツモられて2着はやむなしのベタオリ。流局が第一希望も、もう一つの理由として、

佐藤が臼井に2,000の放銃で3回戦終了。

この半荘僅差のラス目の佐藤と、トータルで大きく離れた太田は着順を上げるために臼井のリーチに対して向かってくる場面。したがって、このように横移動の決着がまあまあ期待できる、というのもあった。

横移動が3,900以上ならマクられるが、それはツモられと大差ない。それ未満の横移動なら本譜のようにトップを維持できる。

逆に考えて、ここで臼井が脇から見逃すという一勝負はどうか?

前述のとおり、宮田はほぼ向かってこないので、リーチした時点で実質ツモ専となる。成功すれば2番手の宮田と10.3p差で新決勝を迎えることができる。

しかし、リーチ棒出した瞬間に3着目に落ち、太田がツモアガって宮田をマクる分には宮田との1着順差は変わらないのでまだしも、アガリ方次第では2着順、場合によっては自身がラス落ちして宮田か佐藤とトップラスという最悪の状況まで想定できてしまう。

したがって、ここは2,000の素点を得ての2着キープが妥当な選択の気がする。

(3回戦結果)宮田+18.4 臼井+6.8 太田▲5.3 佐藤▲19.9
(小計) 宮田+36.0 臼井+24.3 佐藤+2.0 太田▲62.3

 

【新決勝】…勝負は親決め?

座順は順位により自動的に決まるので、二度振りで親決めだけ行う。2回目のサイコロを振ることになり、状況を確認。

(11.7p差か…親が臼井に行くのは満貫一発で終わるから最悪だし、自分が親も満ツモで終わるからあまりよくないし、佐藤か太田のどちらかに行ってくれないかな)と思いつつサイコロを振ると、親は太田へ。

(よし、ベスト)。これにより気分の安寧を得ると、1局目のやや遅い手では無理に行かず、2局目の配牌にあったトイツから仕掛けて幕を下ろした。

正直、レポートを書くにあたって改めて振り返っても、3回戦の東場の親で大物手が連続で入ったからという明確な勝因があった準決勝とは異なり、決定的な勝因が思いつかない。

強いて挙げるとすれば、

・いくつかミスはあったが、それが放銃やアガリ逃しなどの大ダメージに繋がらなかった。
・決勝であることを意識して、何カ所か思い切って押し通したのがアガリに結びついた。
・勝負の3回戦が、比較的得意な小場の展開になった。

といったところか。

特に2つ目。この放送対局全盛の時代において様々な形の決勝を見ることができるようになったが、その見たものを自身の負けた決勝に落とし込んで、自分なりにある程度消化できていたこと。それが、他の3人にはない強みになって、わずかの差となって表れたように思う。

麻雀業界が変わりゆく中で、今の自分にどれだけのことができるかわかりませんが、1つの結果を得たこと、これを糧として、より一層頑張っていきたいと思います。引き続き応援、ご指導のほど、宜しくお願いします。

宮田信弥

(文中敬称略 文責 宮田信弥)