RMUリーグ第3節
 

2011 RMUリーグ第3節AM10:40、私が会場に到着すると、多井、阿部はすでにいた。
特に気負った様子もなく談笑している。
そして、間もなく河野が現れた。
先の2名の他、観戦者や記録者を交え、他愛もない会話が始まる。
彼らには緊張感というものは全く見えない。
長年の経験からスッと対局に入っていける術を身に付けているのだろう。

あと1名、谷井はというと10:50を過ぎてから登場。
いつもの事だが、そこそこ定刻が迫ってから会場入りするのが彼のスタイルのようだ。
第1節のレポートで宮田プロが書いていたとおり、本当に対照的な対局前である。
谷井は一人、集中力を高めるよう精神統一をしている。

定刻11:00、対局が始まった。

4者の手牌を眺めてみる。

谷井はタンピンがはっきり見える3シャンテン。
横に広く受け入れがあり圧倒的に有利だ。
10巡目に高目タンピン三色に仕上げてリーチを打つ。

これがアガれるようだと、この半荘は谷井のペースで進みそうだが、やはりそう簡単には行かず。
役牌、ドラと2つ鳴いて河野も押し返す。
結果は二人テンパイで流局。

この1回戦、とにかく谷井の牌勢が良い。
しかし、あっさりとはアガらせてくれるメンツではなく、
テンパイはするがツモアガる事もできない。

結局、オーラスを除いてメンゼンで実ったのはわずか1回。
しかもオーラスでマンガンをツモアガってのやっとの2着確保である。
牌勢の印象からすると、この後がなんとなく心配ではある。

トップは河野。
途中谷井に放銃するなどし、ラスの雰囲気が漂っていたが、
リーチで2回マンガンをツモアガる。
やはり強い。
この第3節開始前で、既に2位の多井との差は250ポイント強あった。
1回戦を終えて、3者の胸中はいかようだったのだろう?

2回戦、今期絶不調の阿部がじわじわと点棒を増やし、
トップ目に立つがオーラスに事件が起こる。
この半荘は何とか河野をマイナスに沈めようと、
西家の多井が自風をポン、チーと仕掛け1シャンテン。

この仕掛けで、1回戦とは違い静かだった谷井にメンホンテンパイが入り、
すぐに手変わってツモリ四暗刻テンパイ。
2巡後にあっさりツモアガって、大トップとなった。

実際、あまりにも簡単に引きアガったからか、
ギャラリーからもそれほど興奮した様子は見て取れなかった。

3者の共通目的であった河野を沈める事。
その目的は果たしたものの、この役満により、
阿部は初トップを逃し、多井はラスを引く結果となった。

続く3回戦。
阿部がここまで不調だったその鬱憤を晴らすかのごとく、アガリを連発する。
「ノッテきたな」と感じさせたのが東3局の親番。

 ツモ

この形で5巡目に切りリーチ。
アガリは堅いが以外はそれほど嬉しくない手牌。
巡目が早いが以外が出たらどうするのだろう?
と、興味を持って観ていたが、先に出る事も無く、ツモる事も無く、
11巡目にしっかりとを引きアガった。
これは「阿部タイム」が来たかなと思ったが、思いのほか点数を伸ばせず…。
トップで半荘を終えたが、最終的には42000点台と、牌勢の割りに少し物足りない感があった。

阿部も恐らくスッキリしないところはあっただろうが、今期の初トップ。
嬉しいという気持ちよりも、ホッとした部分の方が大きいだろう。

4回戦。起家の谷井が中盤過ぎにをポンする。
彼のスタイルにしては珍しい仕掛けに、筆者も思わず背中に回って確認。
そこからをトイツ落し。
ピンフのテンパイが入っていた多井がをツモ切ると、谷井からロンの声。
12000のアガリ。
谷井の河には8巡目にがある。
彼は北をポンする前、

 ツモ ドラ

ここから打といっている。
普通はピンズの横伸ばしを考え柔軟に
または無難にだろう。
だが麻雀は立体で考えるべきゲームである。
阿部、多井が第1打にを打っている事から、の重なりによるトイツ手、
も悪くないという思考であろう。
牌理に優れた谷井だからこそできる選択が、最高の結果をもたらした。

この後、南場に親マンを一発で引きアガった多井の追撃を振り切り、
この日の2トップ目をもぎとった。

(第3節の成績表)

順位 選手名
合計
第1節 第2節 第3節
1 河野高志 233.5 95.5 144.4 ▲6.4
2 多井隆晴 ▲30.2 ▲22.3 6.8 ▲14.7
3 谷井茂文 ▲33.9 ▲22.2 ▲60.4 48.7
4 阿部孝則 ▲169.4 ▲51.0 ▲90.8 ▲27.6

対局後に4者に1日の対局を振り返ってもらった。

谷井「う~ん、内容はまあ良かった…かな」

なんとも歯切れは良くなかったが、四暗刻をツモアガり、
この日は一人浮きとなれば気分が悪いわけはないだろう。
しかし、役満をツモアガりながらプラス48ポイントというのは一般的に見ても、
また本人からしても少し不満の残るところか。

河野「いや、しんどかったよ。」

そうは言うものの、1回戦で苦しい展開からマンガンツモ2回でトップを取り、
その後も3着を3回だが、素点は大きく減らしておらず、1日のトータルは約6ポイントほど。
この麻雀を続けられれば、優勝は限りなく近い。

多井「苦しかった。配牌とツモがかみ合わなかったよ。」

確かに配牌は悪いように思えたし、迷わず簡単にまとめられる手牌は少なかった。
それでも、▲15ポイント程に抑えたのは流石である。
表現は難しいが、勝ちに等しいマイナスだったのではないだろうか。
やはり、河野追撃の1番手はこの多井であろう。

阿部「1節や2節に比べれば良かったけど・・・」

今期初トップは取ったものの、最終的には30ポイント弱減らしてしまった阿部。
まだまだ本来の実力を発揮できていないが、
個人的には”阿部らしさ”を随所に見る事ができたので、あとの7節に期待したい。
去年の阿部が戻ってくれば、まだまだわからない。

この日の流れを見て、私には2つの「3対1」の構図が見えた。

まず、今期からの挑戦者として攻め続ける谷井と、
それを受けて立つ河野に多井、そして現RMUリーグ王者の阿部。

そしてポイント的に、河野の独走状態を崩しに行かなければならない3者。

この構図である。

ぜひ、これを読んで頂いた皆さんにも、
自分なりの観戦テーマを持って柳・勝どき店に足を運んで頂きたい。
観る楽しみが倍増する事、間違いなしである。


文責 鈴木智憲