ついに「第1期RMUリーグ」の最終節である。
当然だが、出場者は「勝ちたい!」という気持ちを強く持っているはずだ。
しかしその一方で「勝つにはそれに値する内容でないと…」という、
プレッシャーに似たような物もどこかにあるはず。
この観戦記を書く上で、筆者は卓上で渦巻く各人の想いだったり、
精神面に注目したいと考えている。
言うまでもなく、麻雀は技術もさることながら精神面がそれ以上に大事である。
それは高いステージになればなるほど、終わりに近づけば近づくほどだ。
一つの小さなミスが咎められ、それが致命的なものとなる。
精神的に崩れた者は、ほぼ間違いなく敗れる事になるであろう。
勝つために必要なもの、それは「平常心」。
最終節を迎えてポイントは、以下の通り。
1 阿部 孝則 +94.0
2 土田 浩翔 +79.3
3 多井 隆晴 +31.5
4 河野 高志 ▲51.6
河野だけ、優勝には残る4半荘で最低3トップが必須条件となりそうだが、
他の3人に関しては特に条件はなく、皆チャンスがある。
読者の皆さんには是非、
各人のポイントによる思惑や選択を想像しながら読み進めて頂きたい。
最終節、第1回戦 河野-阿部-土田-多井
東1局 ドラ
会場全体が、この最初の1局に集中する。
人には「欲」がある。
誰もが「リードしたい」、その一方で「ビハインドを背負いたくない」と思う。
その想いのバランス、それに手牌がどの程度マッチするか、非常に面白いところだ。
土田にドラが1枚あるだけで、配牌は皆、普通といったレベルだった。
序盤の捨て牌を眺めても、特に強い者はなく、これも至って普通の局といった感じ。
場に変化があったのは8巡目。
親の河野のに、西家の土田が手出しの。
阿部、多井にはどう映っただろうか?実は土田はテンパイとらずのを1枚はずし。
阿部はイーシャンテン、多井も形はそれほど悪くないリャンシャンテンだが、
土田の手牌が
ドラ
ドラが雀頭であり、この形なら圧倒的有利だ。
すぐにを引き、-でリーチ。
1巡挟んであっさりツモアガり、裏も乗せてハネ満ツモでスタート。
「いきなり大きなリードを取って、これで相当有利に進められるな」
というのが常識的な感覚だが、筆者には何か違和感があった。
それをアガったのが土田だからだ。
土田の麻雀を良く見ている方ならわかって頂けると思うが、
「いきなりピンフ手で3,000-6,000?」なのだ。
チートイツや鳴いてのアガりからリズムを掴み…というわけではなく、
メンゼンで突然の大物手。
本人も嬉しいは嬉しいだろうが、「あれ?」と思っていたのではないだろうか?
東4局 ドラ
親番の多井の2巡目。
ツモ
ドラがということもあり、とりあえずを切るかというところだが、多井は打。
マンズのホンイツはもちろん考えるのだが、
雀頭のリャンメンリーチなど、見ていないということか?
その多井の意思に呼応するかのように、マンズが伸びる。
3巡目から、、、と引き、あっという間のメンホンのイーシャンテン。
そして8巡目にを引き、とのシャンポンでテンパイ。
その後、、とツモ切りでマンズのメンホンが入っている可能性はかなり高く見える。
だが他の3人はまったく追いつかない。
多井のテンパイ気配に気づいていれば、撤退するしかなさそうだ。
南家の河野、を引かされ当然の撤退。ウン、見えている。
西家の阿部、をツモ切り。「ん?」
観戦記者という立場を活かして阿部の手牌を覗く。リャンシャンテンだ。
今日の阿部は大丈夫だろうか?まだ、ピントが定まっていないようである。
北家の土田は手牌が良くない事もあっただろうが、早々に親を警戒し打ち回しており、
その意図がしっかり伝わってくる。
14巡目に多井がをツモり、4,000オール。
この半荘は土田、多井のマッチレースの様相を呈してきた。
東4局1本場 ドラ
やはり多井の牌勢が良い。
6巡目に
ツモ
他家の捨て牌は
南家 河野
西家 阿部
北家 土田
場況を眺めるとが2枚切れており、全体的に変則模様。
は他家に入っていそうで、アンコにするには?だが、は2枚生きていそう。
そんな状況を踏まえて、皆さんはどんな選択をしますか?
多井はシンプルにを切ったのだが、マンズは二度受けで2メンツはアテにしづらく、
このはメンツの種として大事な孤立牌だと思うがどうだろう?
次巡、をツモ切り。
次にを引いたところで選択だがここまでにが5枚切れており、
当然といった感じで切り。次巡、を引いて、打でリーチ。
その河は
この河からどんな待ちを想定しますか?
ソーズはあって1メンツ、マンズはが5枚場に出ており、
単純に嫌ったように見え、待ちくらいしかなく、ピンズは絞りきれないが、
オリるのにはそれほど困らないだろうといった状況だ。
ここに河野がチートイツのイーシャンテンから浮いていたを切って
7,700は8,000にジャストミート。
これは切ってはいけない牌だし、このステージでは切って欲しくない牌だ。
ドラがトイツで入っているならまだしも、
1枚浮いている上にイーシャンテンでテンパイしてすらいないのだから。
こんな「ラッキー」なアガりで連チャン出来た多井が、
「噴く」予想をする事は容易だった。
東4局2本場 ドラ
多井がリャンシャンテンでまとまりやすそうな配牌をもらう。
4巡目にペンを引き、早くもイーシャンテンとなる。
2者が1打目にを切っており、が「丸々山に生きてそうだな」と見ていると、
を引き絶テンのリーチ。この時点では6枚生き。
8巡目にあっさり、を引き、2,600は2,800オール。
さあ、どこまで点数を積み上げれられるか?
東4局3本場 ドラ
多井がカンチャンターツだらけの手をなんとかまとめあげて、12巡目にリーチ。
場況から見るとそこまで悪いカンではないが、
得てしてこういう時は誰かが固めているもの。
河野にアンコで山に1枚のを引くことは出来ずに流局。
東4局4本場 ドラ
まず、南家河野が5巡目にタンピンドラ1をリーチ。
そして、阿部が同巡にドラ1の手をリーチ。
多井の連チャン中にこんな事が起こるのか?
前局アガリを取れなかった多井への報いなのだろうか?
捨て牌と合わせると確かにアガリへの道があるにはあったが、
それを手繰り寄せるのは、至難の業だった。
「麻雀はわからないな~」なんて考えている間に阿部が一発でツモり、
2,000-4,000の4本場。
多井の圧勝ムードだったはずが、「もしかすると…」と
思わせる阿部のアガリであった。
南1局 ドラ
土田が8巡目にイーシャンテンでターツ選択。
ツモ
カンもしくはカンのどちらを払うかの形だが、土田はカンを選んだ。
自分の手にがトイツで、1打目にとが1枚ずつ飛んでいる。
カンの方を選ぶかと思ったが、土田の宇宙的感覚はを感じたのだろう。
すぐにリャンメンが埋まって、選んだからには当然!といった感じでタンヤオのリーチ。
同巡、阿部にもピンフのテンパイが入り、「リーチか?」と思ったが、
土田に通るを置き、こっそりダマテンを入れる。
しかし、待ちは土田の現物ではなく、ドラもある。
そのヤミテンの意図を考えているうちに、
阿部はション牌のを引き、少考の後にツモ切り、リーチを宣言。
土田のリーチに危険牌をぶつけるなら、ダマにしている必要はないとの考えなのだろうか?
すると土田が一発でロン牌をつかみ、メンピン一発ドラ1の8,000を放銃。
理由はともかく、タイミングとしては完璧で、土田としては痛恨の一撃。
3,900と8,000では大違いだ。
このアガリで、阿部が2着目に浮上し、トップ目の多井に16,600点差に迫る。
南3局 ドラ
南2局にピンフで軽く流した土田にドラがトイツで入り、
「持ってきたか?」と思わせたが、ここまでズブズブだった河野が
ノーミスでチャンタの手をリーチ。土田もリャンメンで追いかけるが、
河野がシャンポンの高目のを引きアガり、3,000-6,000。
自身の親番で態勢が1番悪いと思われた河野にハネ満をツモられ、ラス落ちした土田。
開局にハネ満をツモアガってからこの結果に至るまでの経緯を、
土田はどのように考えただろうか?
南4局 ドラ
オーラスを迎えて、多井一人だけは、安心できる状況。
うまく手が入れば、さらに点棒を増やそうと考えているだろう。
阿部も2着はほぼ大丈夫そうだが、油断は出来ない。
前局でラスに落ちた土田と3着目に浮上した河野の差は1,400。
再び3着になるにはそれほど厳しくない点差だが、
局が始まる前に土田はきっとラスを覚悟していただろう。
以前に土田がこう言っていたのを思い出した。
「なるべくしてなるラスは素直に受け入れる」
ここまでの展開を省みて、アガれる手は来ないし、
無理にアガリを取りには行かないだろうなと私は予想していた。
そんな考えを巡らせているうちに、河野がすんなりと仕上げて高目タンピン三色のリーチ。
10巡目に高目のを掘り当て、またも3,000-6,000。
阿部には800点届かずの3着だが、原点以上まで持ってきた。
河野としてはとにかく素点を叩かないといけないので、
3着という着順には不満であろうが、この半荘の内容としては満足だろう。
多井がトップを取り、優勝戦線は三つ巴となってきた。
この後の3者の打ち回しに、さらに注目して行こう。
■1回戦スコア
多井 +29.7 阿部 +6.1 河野 ▲4.7 土田 ▲31.1
■これまでのトータル
多井 +61.2 土田 +48.2 阿部 +100.1 河野 ▲56.3
2回戦 河野-阿部-多井-土田
東1局、東3局2本場と多井が一人テンパイ。
東3局3本場 ドラ
土田には珍しいリーチのみを3巡目に打つ。
第1打にを切ってある待ちだった。
時間は掛かったが、13巡目にツモアガリ。
東4局 ドラ
さあ、ここからノッてくるかと注目した土田の親番。
配牌はそれほど悪くなく、十分アガリがありそうだが、それ以上に多井が良い。
マンズが9枚と字牌、端牌のみで、メンホンをやって下さいと言わんばかりの手牌である。
多井が8巡目にメンホンをテンパイ。
・で高目のなら満貫の手だ。
10巡目にはらしい手順で土田がピンズのメンホンイッツーのハネ満を入れるが、
を引きの待ちに変わったばかりの多井にで6,400の放銃。
南1局 ドラ
仕掛けた多井がまたも、1人テンパイで流局。
テンパイ料だけで、何点稼いでいるのだろう?
南2局 ドラ
配牌で河野がイーシャンテンだが、ドラのが1枚浮いており、カン受けが残っている形。
第1ツモは。さて、どうしますか?
河野の選択は、を切ってのダマテン。
このを土田にポンされる。
これは、中途半端ではないだろうか?
「さすがにダブリーのみでは…」というのはわかるが、
カンのテンパイを取ってリーチに行かないなら、
ドラを切らない(この形では)選択をすべきではないかと思う。
ましてや、河野は点数を稼がなければいけない立場であり、状況的にも外しやすい。
さてテンパイを外すとしたら、何を切るのが良いだろうか。
パッと見、が外しやすい。
しかし、ソーズが手変わってもピンフにしかならず、大した打点は望めない。
観戦に訪れていた古久根はを推奨していた。
ピンズの一通を見ながら、もしを引いたらドラタンキやタンピンを狙うという打ち方だ。
なるほどと思わせられた。
結果は、やはりと言うべきか、土田の満貫ツモ。
しかし、この後に手が入る河野の底力はさすがだ。
南3局にはメンホンのテンパイが入ったところで、ノータイムでリーチ。
ドラ
さすがに流局したが、オーラスではドラ2枚のリーチを一発でツモり、裏も乗せてハネ満。
なんとトップになる。
■2回戦スコア
河野 +24.9 多井 +11.4 土田 ▲7.8 阿部 ▲28.5
■これまでのトータル
多井 +72.6 土田 +40.4 阿部 +71.6 河野 ▲31.4
3回戦 河野-阿部-多井-土田
東1局 ドラ
6巡目にを引いて、マンズの456のイーペーコーが完成し土田がタンキでリーチ。
河にはとがトイツで並んでいる。
普通の人ならどちらかのトイツを捕らえているので、ツモでアガっている可能性が高い。
これに一発で飛び込んでしまったのが阿部。不運というか土田にやられたというか…。
仕方のないようなフリコミだが、5,200は痛い。
東2局 ドラ
西家の土田、第1ツモでを引き、チャンタを見てを一枚外した。
すぐにが重なり、と役牌が2組トイツとなった。
次巡、ペンをチーしてホンイツ仕掛け。しかし、初巡にが切られているため、
この時点では他家としてはホンイツを警戒しにくい。
すぐにもポン、さらにをチーと激しく仕掛けるが、手牌は4枚でまだイーシャンテン。
そこに、南家の多井からリーチ。
多井はを鳴かれた後、引き戻したを抑えていたら、アタマになってのリーチであった。
すぐに待ちの高目をツモアガり、1,300-2,600。
東3局 ドラ
この局の主役はまたも土田。
6巡目までの捨牌が以下。
普通に考えたら、マンズの一色手か。
土田はいつも捨牌が強烈で読めないイメージがあり、
この局も何でもあると逆に考えてしまいがちだが、
のトイツ落としでチートイツも否定されている。
となると、手出しでマンズ手のテンパイか最悪でもイーシャンテンだろう。
その後、ペンをチーして2枚切れの打。ほぼ間違いなくテンパイである。
さらに掘り下げるとが必要ない形で安全牌のを持っているということは、
「良い」待ちが残っている可能性がかなり高い。
そこにチートイツドラ2を、なんとかものにしたい阿部がぶつける。
テンパイして、生牌の切り。
上記のような読みを入れていたとしても、かなり怖い牌である。
そして次巡、を引いてきてツモ切り。
自分で既に切っているので待ちに変えることは出来なかった。
土田のに刺さって、高目のイッツーで8,000点の放銃。
この放銃で阿部は「ラスだろうな」と思った。
筆者の知る阿部は簡単にこういう危険牌を切る打ち手ではないはずだが、
意外にもあっさりと切ってしまった。
どこかに焦りがあったのだろうか?
ただ、その一方で
「東3局なら、あるいは阿部なら立て直してくるかも」
という想いもあった。そんな場面を見たかった。
それほど、阿部がメンタル強者なのを知っているからである。
しかし…。
東4局 ドラ
阿部の配牌は字牌が4種でアガリには遠いもの。
自分を落ち着かせようとしているのか、局面を遅くすることを考えてか、
ストレートに手を進めず、唯一のリャンメンターツを切り出していった。
9巡目、何気なく切ったが多井に刺さる。
ドラアンコのタンヤオで8,000。
それほど強烈な捨て牌ではないが、
とはいえ2巡目に、そして5巡目に生牌の。
好調の親の土田にぶつけているのだから、やはり警戒すべきか。
阿部を責めるのは酷だろうが、この放銃で阿部のこの半荘、
いやもしかしたら第1期RMUリーグは終わったと言っても過言ではない。
そのくらい、キツい連続放銃だったのだ。
南2局 ドラ
10巡目にピンフをテンパイした土田、次巡にはタンピンに手変わる牌を引きリーチ。
ここにメンチンのイーシャンテンとなった河野が飛び込み、一発で8,000を放銃。
振り込んだ牌はトイツ落としで打ったのだが、
チンイツも見つつ、トイツ手も見える手だったのでこれは仕方ないか。
南4局 ドラ
阿部が11巡目に少考してのリーチ。
その少考の理由だが、待ちのが自分の手牌を合わせて5枚見えており、
高目で一般的にアガリやすいの方が3枚見えているのだ。
そして、8巡目からずっとテンパイが入っていた土田が15巡目にを掴む。
土田にも阿部の少考の理由は大方、推測は出来ていただろう。
だが、土田はもっと点を叩くつもりだったろうし、
そして満貫なら打ってもトップのままということもあり、ツモ切った。
このメンピンドラ1の3,900放銃で、半荘終了。
■3回戦スコア
土田 +31.7 多井 +16.7 河野 ▲16.3 阿部 ▲32.1
■これまでのトータル
多井 +89.3 土田 +72.1 阿部 +39.5 河野 ▲47.7
4回戦 土田-河野-多井-阿部
東1局 ドラ
多井が自風のをアンカンして、新ドラのタンキに受ける。
悪くない待ちだが、捨牌的に間違いなくテンパイの多井にぶつけてくる者はいないので、
山にあるのか、収納されたかどうかがわからない。
しかし、終盤に自らツモアガって2,000-4,000。
大きな大きな満貫である。
東2局1本場 ドラ
流局をはさんでのこの局。染め手がぶつかる。
まず、阿部が14巡目に待ちのメンホンテンパイを入れる。
次巡、多井がペンカンのメンチンをテンパイ。
そして阿部が即を掴み、放銃。
それは、多井が自分(阿部)にアンコのを切ってきたところで、引かされた牌。
しかしマンズは1枚も余ってはいない。
嫌な気配を感じたのか、やや少考したが、その選択はツモ切りだった。
このハネ満で多井の持ち点は52,800。
大勢は決した。
その後は土田、阿部が高打点を目指した手作りに行くが、
テンパイまででアガリには結びつかない。
南場で土田の親が終われば、ノーガードで前に出るのは阿部のみで、
誰にもアガリは出ずに淡々と場は進み、オーラス。
多井がを仕掛けたところで、
親の阿部がやむなしといった感じで無理やりクイタンに向かう。
12巡目に多井がテンパイ。阿部はまだイーシャンテン。
しかし鳴ける牌は出ず、また1牌を引くことができずに流局。
こういうステージの最終戦のオーラスはもつれることが多いのだが、
拍子抜けするくらいあっさりと終わってしまった。
■4回戦スコア
多井 +40.7 河野 +17.8 土田 ▲18.2 阿部 ▲40.3
■最終成績
多井 +130.0 土田 +53.9 阿部 ▲0.8 河野 ▲29.9 古久根 ▲184.2
総括
振り返ると、色々な出来事があった。役満が考えられないほど出た。
多井は2度も役満を振込んでいるが、結果的には頂点に立った。
これは、10節40回戦が長く険しい道程であるかを、
そしていかに総合力が必要であるかを表していると思う。
多井は色々な意味で、5人の中で一番ブレがなかったようなイメージがある。
初めの頃は強者4人を相手に迷いながら打っていたのか長考する場面が良く見られたが、
後半は思い切りの良い打牌をしていた。
迷いつつも多井らしい選択が随所に見られ、
麻雀というゲーム性から、もちろん悪い結果が出る事もあったが、
最終的には素晴らしい結果となって示された。
土田は「宇宙流」と言われる打ち筋で、観る者を存分に楽しませてくれた。
常人にはできないチートイツや仕掛けてのアガリもあれば、
高い雀力から導き出される繊細な受けもあり、個人的には非常に勉強させてもらった。
阿部は最終節を迎えて、トータルトップ目だったが、最後の最後に崩れてしまった。
私が阿部の麻雀を見ている中で、一番と言っていいくらいの崩れ方だった。
阿部と言えば、字牌の扱いが丁寧で重厚な麻雀を打つイメージがあるが、
この日はどうも淡白に見えた。
自らの武器を失ってしまってはこのステージではやはり勝ち目はないと言うことか。
河野は野獣と言われるように高い攻撃力を存分に発揮した。
ただ、調子が良い時は連続トップを取るが、悪い時は淡白に放銃する場面も見られ、
逆に連続でラスを引いてしまう印象があった。
そして、残念ながら途中で脱落となってしまった古久根だが、
このRMUリーグでは全くと言って良いほど、実力を発揮出来ていなかった。
それが何故かは誰にもわからないが、
一つわかる事はそれが古久根本来の実力では無いと言う事である。
後の出来事だが、第3期RMUクラウンとクライマックスリーグで優勝し、
やはりなと思わせてくれた。
5人が打っていたのは間違いなく単に牌を組み合わせて行くだけのゲームではなく、
牌を使った「闘い」だった。
卓上で個性を主張し、意地をぶつけ合い、時には駆け引きをし、
まさに「闘牌」と呼ぶにふさわしいものだった。
改めて麻雀というゲームの奥深さ、難しさ、そして楽しさを感じさせられた。
麻雀には、まだまだ解明されていないと言われる部分が沢山あると言われている。
私が生きているうちにどこまで麻雀の全てが解明されて行くかはわからないが、
何か一つでもそれに携わる事が出来たら…。
「麻雀プロ」として何かを残せれば、と強く思った。
そんな風に、観る者に何かを感じさせる事が出来る「麻雀プロ」同士の、
最初の「闘い」を制したのは多井隆晴。
(文中敬称略 文責:鈴木智憲) |