RMUリーグ第2節

GW真っ只中の5月2日、RMUリーグ第2節の対局日である。
日程的にも一般の方の観戦は少なくなるのかなと予想していたのだが、
思った以上に多くの方が足を運ばれ、私の杞憂に終わり嬉しい誤算となった。

さて、このRMUリーグの対局では、半荘の合間に「質問タイム」なるものがある。
プロの対局において、対局者にその場で直接質問できる機会はほとんどないと思うのだが、
RMUでは新しい試みとしてそれを設けた。
観戦者が対局者に一打一打の思考を直接聞けるというものだ。
対局中は当然ピリッとした雰囲気だが、この合間の時間は適度ににぎやかであり、良い時間が流れていると思う。
まだ観戦者に少し遠慮があるのか、なかなか質問が飛び交う事はないが、
是非遠慮なく疑問に思ったことをぶつけてみて頂きたい。
理に基づいた詳細な説明や、感覚的なもの、打ち手それぞれの面白い回答が聞けることは間違いなく、
その場にいる皆さんに今まで以上に麻雀の奥深い部分、新鮮な部分を提供できる事は間違いない。

この文章を読んで頂いた方には是非足を運んでみて頂きたい。
きっと有意義な時間が過ごせるはずである。

少し前置きが長くなったが、対局内容に入ろう。

1回戦

起家から多井-古久根-阿部-河野 (抜け番:土田)

東1局 ドラ

初戦の起家ということで、多井の手順を追って行きたい。

配牌は

   ドラ

この手牌からであれば、を打つのがマジョリティであろうか。
多井の選択は。さすがの一打である。
メンホンチートイツを本線に見据え、メンツ手を拒否した一手だ。
東1局から手なりで打ち進め、簡単な手組みでリーチを打つ事などハナから見ていない。

実際、すぐにを引いたりすると、
その後どう打ち進めるか迷いが出ることになり、ミスにつながりかねない。
秀逸な一打だと私は感じた。迷いを断ち切るように打ち進めていくのも技術なのである。

5巡目には

   ツモ ドラ

とし、イーシャンテン。構想どおりか。

しかし、古久根が早そうだ。2巡目に、5巡目にドラのを手出しで、
確実にイーシャンテン以上だ。

多井は次巡、アンコになるを引いて打としたが、これは少し疑問。
ホンイツトイトイから四暗刻まで見たのかもしれないが、
古久根の河にが切られている。
しかも、古久根と河野が初巡に打としており、
は山に残っている可能性が高い。
多井も当然、そんなことはわかっているはずであり、
それでも打といったのだから、何か感じるものがあったのだろうか?
後日、本人に聞いてみたところ、
「初戦の東1局から効率だけでは打てないよ。さすがに最高打点(四暗刻)は拒否しづらいね。」

8巡目には古久根がリーチ、10巡目には阿部が追いかけるが、
すぐに古久根が1,000-2,000をツモアガり。
で高目イーペーコーの手だが、安目のツモでも悪い気はしないだろう。
とりあえずは古久根が幸先良いスタートを切った。

東2局 ドラ

親の古久根が6巡目に上家多井の打を仕掛けてペンのテンパイを取る。
この仕掛け、私には違和感があった。
前局、メンゼンでツモアガったのに何か焦りがあったのだろうか?
河野の打を見てのものだろうが、待ちは悪く、すぐにアガれなければ、
向かってくる相手にペンチャンでは押し返せない。
ドラがで、仕掛けるつもりで5巡目に打としたのだから、
鳴くのは一貫性という面から見れば、問題ないのだが、どこか余裕がないように感じた。
とは言ったものの、親でありながら捌きに行ったのはさすがというべきだろう。
実際、河野は愚形だがテンパイ、阿部にはドラがアンコで入っていた。

8巡目に阿部が待ちの仮テンながらドラアンコのテンパイ。
次巡を引き、ここでのリーチに踏み切ると思ったが、ダマテンを続行。
同巡、河野がの変則待ちでリーチを打つ。
阿部は次巡、を引いたところでに受けて追いかけた。
河野の切りリーチにが打ちにくかったのだろうか?
牌姿から先のテンパイの方がアガりやすいと判断するのが自然ではあるが、
阿部はどういう思考だったのだろう。
結果として阿部がで一発ツモを逃した後、河野がで1,000-2,000をツモアガり。

東3局は阿部が4,000オールをツモアガる。

同1本場は河野が自風のドラアンコのカンをあっさりツモアガり、2,100-4,100。
ちょっと内心「ずるいな(笑)」と思ったりもしたのだが、
この手、この巡目にツモアガりを出来る人は少ないのかもしれない。

配牌がこう。

   ドラ

そしてツモが、次巡でカンテンパイをとるか、
もしくはを打ってテンパイとらずかという選択だが、
456の三色がみえるといっても、ピンズが好形なので後者を選択する人の方が多いのではと思う。
しかし、これを最速でアガってしまうのだから、やはりこの男、強い。

東4局 ドラ

阿部が6巡目にを手出しで、ドラのタンキ待ちチャンタをテンパイ。
ポロッとこぼれることを期待しつつ当然のダマテン。
すると親の河野が7巡目に待ちのピンフをリーチ。

さて、阿部はどうするのかと見ていると、10巡目にをツモ切って放銃してしまった。
私には中途半端に映った。ドラのマチである。安易にこぼれる相手ではない。
タンピン三色のような大物手を張ったところから、
リーチ宣言牌で出てくる可能性が少しくらいならあるかもしれないが…。
親とメクリ勝負に出るのなら、引けた時にハネマンになるのでリーチしても良いだろうし、
抜け番で観戦していた土田は

「9巡目に引いた1枚切れのタンキでリーチだ」

と述べていた。
確かにそれならアガれる可能性もある。
当然、簡単に出すメンツではないがは河野のゲンブツであり、
2軒リーチに手詰まれば、打ってくる可能性はそこそこある。
そう打っていれば、結果的には一発で河野がつかみ、放銃となっていた。
また、もしオリる気があるのならを切ってはいけないだろう。

南1局 ドラ

南入したが、ここまで大人しかった(そうせざるを得なかった)親の多井の反撃があるかと見ていると、
完璧な手順で

  ドラ

に仕上げ、リーチを打つ。
しかし、河野がそれを阻んだ。
同巡に追いかけ、一発で多井から討ち取る。
打点こそ、リーチのみに一発がついて3,200だが、
多井にとってはそれ以上に感じる放銃だったことは間違いない。

南2局は親の古久根が好形のイーシャンテンになるが、引けずにノーテンで流局。

南3局は河野が阿部のリーチ宣言牌を捕らえ、5,200は5,500の出アガり。
これで持ち点が53,800となり、トップの座を磐石のものとする。
こうなれば、オーラスの親でさらに叩きたいところだが…。

南4局

親の河野の配牌は良くないが、態勢からこれも仕上がってしまうのだろうかと見ていると、
イーシャンテンまではこぎつけたが、古久根がクイタンで流し、半荘終了。

河野 +38.3 古久根 +8.7 多井 ▲15.6 阿部 ▲31.4 

2回戦

起家から河野-古久根-土田-多井 (抜け番:阿部)

東1局、親の河野が国士無双のイーシャンテンになったところで
タンピンの十分形イーシャンテンに構えていた多井が、
リャンメンターツの牌が薄くなったこともありクイタン1,000点のポンテンを入れる。
すぐに河野が掴み、終局。

東2局、土田に良い配牌が入る。アンコ1つにトイツが3つ。
まさに土田のための配牌だ。
さあ、どう仕上がるんだ!?と見ていると、なんと2巡目にトイツをアンコに、
3巡目にはドラのを重ねて早くもツモリ四暗刻のイーシャンテン。
前局の河野に続き、またも役満を予感させる。

  ドラ

土田であれば、はポンするかもしれないが、
それ以外のポン材は1枚くらい出たとしてもスルーだろうと見ていた。

が、予想に反して6巡目に河野が切ったを叩き、
トイトイドラ2のツモれば三暗刻というテンパイを入れる。

多井もチー、ポンと2フーロして高目マンガンのホンイツテンパイを入れる。
脇の2人はオリ。土田のアタリ牌は全て吸収され、あとは多井が引けるかどうか。
残りのツモも少なくなり、このまま2人テンパイで流局か…というところで、
土田が最後のツモの後に手出しを入れてオリた。
筆者は土田の手牌が見えない場所にいたのだが、確信した。
多井のアタリ牌を止めたなと。

土田は実際にアタリ牌のを止めていた。
確かに多井の河を見れば、字牌は切れない。
むしろその色の数牌の方が当たらないように見える状況ではあるのだが、
この止めは、土田にこの後何か良い風が吹くことを予感させた。

東3局1本場、東4局と古久根が5,200は5,500、2,000-4,000と
立て続けにアガリ、一歩抜け出す。

南1局 ドラ

調子が上がってきた古久根がの678の三色でリーチを打つ。
親の河野がなんとか連チャン、
そして古久根のアガりを阻もうと123の三色のチーテンを取る。
待ちは古久根のゲンブツのである。
そして、多井が11巡目に

  ドラ

の役なしだが、なんとかテンパイを果たすが、

が場に3枚切れておりリーチを打つにはリスクが高い。
1巡のツモ切りをはさんで、を引く。
として、次巡の古久根のツモ切り、を捕らえて、
値段は安いが価値のあるピンフ、1,000の出アガりだ。

南2局 ドラ

特に目立つ動きや捨て牌もなく、淡々と進んでいる場に突然ドラが放たれ、
「ん?」と思う間もなく、河野がでツモアガる。

  ツモ ドラ

「なんだ、一発で引くならリーチだったかな」という
河野の心の声が聞こえたような気がしたが、これはさすがに気のせいだったか(笑)。
それにしても、河野はデキが良い。
これなら今日のプラスは堅いなと思わせる内容であった。

南3局は親の土田が1つポンして、片アガりのクイタン1,500のテンパイを取る。
土田がこういう仕掛けをするときは態勢が悪い時などによく見られるが、
この時はどういう思考だったのだろう!?
ちゃんと記憶していないのが申し訳ないのだが、
サイコロの目が4・8だったのかもしれない。

同1本場、古久根が河野のチートイツに捕まってしまう。
河野は待ちを変えたばかりで、古久根はを引いて、

を切っての放銃であった。

このRMUリーグでは未だトップがない古久根。
仕方のない放銃なのだが、こういうところを見ると、
復調するまでには、まだ時間がかかるのかなと思ってしまう。

迎えたオーラス、親は多井。配牌は

  ドラ

はっきりと345の三色が見える手牌だ。
3巡目にはを引いて、早くもイーシャンテンとなる。

トップ目の河野はあまりまとまった配牌ではなかったが、

を重ねた後、を仕掛け、以下の手牌となる。

   ドラ

古久根は2着を取りにクイタン仕掛けを入れ、カンのテンパイ。
親の多井はドラを引いて雀頭をと入れ替えはしたが、
一向に有効牌を引くことができない。

10巡目、土田がをリリースする。手牌が

   ドラ

2人がテンパイしていて、親はイーシャンテン。自分はリャンシャンテンだ。
ここから土田はション牌のを切っている。ちなみには1枚切れでは自ら切っている。
得意のチートイツやサンアンコ、四暗刻を狙うとして、
ドラのは切らないまでもを切れば良い事だし、
タンヤオに仕上げてリーチを打つつもりなのだろうか?
確かにそれならば2着になる可能性はあるが…。

このを河野が仕掛けて、待ちのテンパイ。
手の中が全てタンヤオ牌になるので筆者には若干怖い仕掛けに映ったが、
とにかくテンパイだ。

この仕掛けで、なんと土田はと引いて、ツモリ四暗刻のテンパイ。
気合を込めて、「ビシッ!」と牌を横に曲げる。さすがトイツ王子。
全くのオカルトでしかないが、牌はその打ち手の雀風に合わせてというか、
常に強い意志を持って打っていると意志のとおり寄ってくるのだなと、
そういう風に思わざるを得ない。
また、先の手牌からを切ることができる感覚が凄く、また恐ろしい。
結果は書くまでもないだろう。
土田が60,000弱の大トップを取る。

対局後、土田に話を聞くと

は場を動かしたいという思考で切った。河野に鳴かれても良いと思っていた」

とのこと。整理すると

 
・古久根はクイタン仕掛けであり、鳴かれる可能性は少ない
 
・親の多井はをトイツ落とししており、いつリーチと来られてもおかしくない。
 
・トップ目の河野に鳴かれてアガられても、自分の着順は3着のまま変わらずだ。

多井にアガられるよりは、河野に捌いてもらった方が良いというわけだ。

理から言っても、なるほどと思えるのだが、その結果、付いてきたものが大きすぎる。
四暗刻のインパクトが強すぎて、私達観戦する側は
「土田の感覚はホントにすごい!」と上記のような思考があることを忘れがちだが、
これが何よりも勉強すべきところであると思う。
感覚は実戦による沢山の経験を積み重ねて磨いていくものだが、
理はそこまで時間をかけなくても身につけられるものだ。
こういう麻雀に多くの方に触れていただき、
特にRMUのアスリートには観に来て、何かを学んで行って欲しいと思うのである。

土田 +43.5 河野 +7.2 古久根 ▲13.7 多井 ▲37.0

3回戦

起家から阿部-古久根-多井-土田 (抜け番:河野)

東1局 ドラ

12巡目に多井が土田にタンピンドラ2のマンガンを献上してしまう。
打った時の手牌が

 

ドラなしのイーシャンテンである。
12巡目とそこそこ深い巡目にこのようなところから放銃する多井は珍しい。
相手のシャンテン数を読み違えたか?

東2局、配牌からマンズ3枚とを引いた土田が
親の古久根が切った2枚目のをポンしてのテンパイを取る。
すぐに雀頭のを引きのタンキ待ちに変える。
ここで、の手出しを見た他家は手牌が勝負できる形でもないので、オリに回る。
土田の1人テンパイで流局。

東3局 ドラ

結果から言うと古久根が多井に親マンを打ってしまうのだが、
この局は多井、土田の字牌の扱い方如何で、結果は大きく変わっていただろう。

多井の8巡目

手牌  ツモ ドラ

捨牌  (以外は全て手出し)

ダブ東をアンコにした多井、ここから1枚切れのではなくション牌のを切る。
これを南家の土田がポンして、これまたション牌のを切る。その手牌が

   ドラ

一見、不要なだが、ドラがなので温存しているのだろうか?
しかし、上記の捨て牌でを切って来た親に対して、
ション牌の方からぶつけるのはどうだろう?

2回戦のオーラスでもあったが、土田はしばしば、
一般的には手順どおりでない字牌の処理を見せる。
まるで、局がこの後、どのように進むのか全てが見えているようだ。

土田が切ったを多井がポンして、打待ちのテンパイ。
この字牌の切り順(ション牌→1枚切れ)、ほぼ間違いなくテンパイである。
麻雀は相手よりシャンテン数で優位に立ちつつ、手を進めるのがセオリーだ。
それに反する手順で打った多井。「肉を切らせて骨を断つ」という戦術に出た。
二者の間で役牌の交換が行われた後、
土田はと引き、
イーシャンテンになったところでション牌のをさらにぶつける。

   ツモ ドラ

多井のテンパイにも行った土田。
いったい何が見えているのだろう?

その同巡、イーシャンテンになっていた古久根に多井のアタリ牌のが訪れる。
少考の後、古久根はツモ切って放銃してしまったが、これはなんとか止めて欲しかった。
確かに多井はピンズを2枚手出ししており、そこまでピンズのホンイツは臭わないが、
10巡目にして場に4枚見えているである。
99%テンパイの多井に対して打点は別として危険牌であることに間違いない。
しかも、古久根の手はと中膨れののイーシャンテンである。

筆者は長いこと、古久根の対局を観て来たが、
この状況で打ってしまうのを目の当たりにした記憶はない。
古久根のバランスが大きく傾いている。絶不調だ。
完全復活する日はいつ訪れるのだろう?
まだ少し、時間がかかりそうな気がしてならない。

打ち手、それぞれの思考・思惑がドラマを生み出した一局であった。

大きな動きもなく南入し、南1局。ドラは

北家の土田が、6巡目にしての国士無双のイーシャンテン。
その捨て牌が

捨牌  (はツモ切り)

がツモ切り、は古久根のツモ切りに合わせたように見え、
チートイツかまたはマンズの染め手を考えさせるような捨て牌である。
しかも土田がこういう河を作っても、逆に違和感がないので恐ろしい。

古久根が8巡目にを引き、

 
 ツモ ドラ

牌効率ならマンズを払うところだが、
ツモの来方も微妙でチートイツもあるかなという手牌である。
古久根の選択は打。15巡目にをポンして、打でテンパイ。
即、を引きあがり700-1,300。
対局後に古久根に聞くと、

「微妙な手牌だったし、ここまでの調子だとまともに打ってもアガれないと思った」

との回答だった。

普通の1局で終了に見えたが、実は土田は古久根のアガる4巡前にを引き、
テンパイしていたのだった。
は残り1枚だが、誰が掴んでも止まらないであろう牌だ。

(多井は手が整っていないこともあり、切らない可能性はある)。

対局後、土田は「いや~リーチだったかな」と言っていた。
確かに、が出そうな状況であれば相手の足を止めるためにもリーチはかなり有効だ。

もし、土田がテンパイ即リーチを打った場合、他家の打ちまわしにどう影響が出るだろうか?
古久根は土田の変則的な河に(ドラ)とぶつけることができなかったかもしれず、
そうなれば上記のアガりも生まれず、どうなっていたかはわからない。

南2局 ドラ

南家多井が8巡目にドラアンコのリーチを打つ。
そのリーチ宣言牌を土田がチー。
土田は自らの大局観から、ツモを喰いずらすことをよく行うが
この時は発声が早く、普通にアガリに行く鳴きのようであった。
結果的には山に残り3枚のを引かせてしまい、裏ものって3,000-6,000。
親の古久根にこのが入った場合、が暗刻の古久根は間違いなく止めるはずで
恐らく多井のアガリは生まれなかったであろう。

オーラス、古久根がアガれば2着の、
ジュンチャン三色のハネマンテンパイまで持っていくが成就せず。
多井がトップ、土田はしっかりと2着をキープする。

多井 +30.1 土田 +5.7 阿部 ▲10.2 古久根 ▲25.6 

4回戦

起家から土田-河野-阿部-古久根 (抜け番:多井)

東1局 ドラ

6巡目に起家の土田がを仕掛ける。
土田は基本的に打点が高いので、簡単には向かいにくい。
実際に対局している3人もそうイメージを持っているはずだ。
アガれそうなテンパイが入る者もなかったのだが、
のみ1,500のテンパイのまま流局。まんまと3,000点の収入を得た。
後でわかったことだが、賽の目は左だったらしい(笑)。

東2局 ドラ

一番、最初にテンパイを入れたのは古久根。
2つ仕掛けてジュンチャン三色(123)のペン待ち。
そこに阿部が、のシャンポンでリーチを打つ。
古久根は1牌押したが、待ちが苦しいこともありすぐに撤退。
16巡目に土田がアンコとなるを引いて、カンのテンパイ。
同巡、河野がのピンフ三色でリーチ。
次巡、土田が無筋のを切るならということで、ツモ切りリーチ。
もちろん、待ちのカンが山に残っているという読みもあったはずだ。

この時点で

土田:…2枚
河野:…2枚 …1枚
阿部:…1枚 …2枚

終盤にこれだけアガリ牌が眠っているのも珍しい。

3者のせめぎ合いは、河野ので決着がついた。
4,800は5,100にリーチ棒が2本付いて非常に大きなアガリ。
前局のノーテン罰符とこのアガリで土田の持ち点は40,000点を超えた。
この2局の流れで私は「この半荘は土田がトップだ」と思ってしまった。
他の3者には申し訳ないが、そう感じさせるのに十分な2局だったのである。

しかし、東3局に親を迎えた阿部が土田から2,000出アガり、
4,100オール、2,800オールと突き抜ける。

同3本場、3連続アガりを決めた阿部だが、配牌は良くない。
序盤の河を見ても特別早そうには映らない。
しかし、連チャンのプレッシャーが古久根を動かせる。
6巡目に阿部のツモ切ったをチーしてのテンパイを入れる。
フラットな状況なら200%鳴かない手牌である。
即、土田に下がった牌は
つまり、古久根は鳴かなければで高目タンヤオのピンフテンパイが入っていたのだ。
そうなれば、恐らくリーチを打つだろうが、もしダマテンに構えると、
次巡を引くのでと入れ替え、でタンピンサンショクの手に変わっていた。

土田は前述のと古久根のアガリ牌になり得たも引き、
古久根の待ちを見切ったかのようにタンキのチートイツでリーチを打つ。
こうなるとリーチが強い。古久根はなんとかオリ切り、土田の1人テンパイで流局。

結果として、古久根は1,300-2,600または3,000-6,000を逃したことになる。
阿部の親を蹴りたいという思考は当然であるが、やはり古久根に余裕がなさすぎる感は拭えない。
得意のシュンツ手によるアガリを逃してしまった古久根にはこの後、浮上するチャンスは訪れなかった。

南1局、土田の親番。再び阿部を捲り返すことはできるのか。

阿部が3巡目にバラバラといって良い手牌から2枚目のを仕掛ける。
6巡目、土田がをツモ切ると2巡目にそれを重ねていた河野がポンしてイーシャンテン。
もし、阿部が手が遠いことから仕掛けなければ、このは阿部に重なることとなり、
河野はテンパイを入れられたか微妙な状況だ。

河野は鳴いた次巡、でダブ南ドラ2のマンガンをテンパイする。
待ちはどうかと河を見ると、土田は1打目に
阿部はマンズの染め手だからピンズは持っていない。古久根も4巡目にを手出し、
次巡をツモ切っており持っていない可能性が高い。
はわからないとしても、はごろごろ眠っていそうだ。
「これは河野のアガリは堅いな」と感じた。
後に牌譜を見ると、なんと山に6枚残り。

中盤、土田にが2枚入ったが、それでもまだ4枚ある。
しかし、終盤に差し掛かっても一向に引けない。

徐々に手が整ってきた阿部が、古久根の打牌を仕掛け、マンズのホンイツをテンパイ。
この仕掛けで、河野がツモるはずのがまた土田に流れ、阿部もを引いてオリ。
ここまで脇に流れ、しかも喰い上げられたりするとアガれないケースが多いのだが、
まだ山に2枚いたをなんとかツモりあげ2,000-4,000。

南2局、親の河野、前局のアガリで勢いづいたのか、
4,000オールをツモアガり、土田をかわして2着目に浮上する。

そして南2局1本場、本当になかなか見ることのできない、
ただ、ただ「すごい」一局を見ることになる。

各人の配牌は

ドラ

河野 

阿部 

古久根

土田 

比較的、古久根がまとまりやすそうではある。

南家阿部が3巡目までにという切り出し。
北家土田がと2人とも異様な河を作ってくる。

11巡目、河野が2連続アガリの余勢を駆ってリーチを打つ。
   ドラ

同巡、阿部がテンパイし追いかけリーチ。なんと手牌は

  ドラ

この時点でが1枚、が2枚山に残っており、
四暗刻成就の可能性がかなりある。

次巡、河野ツモ切り、阿部がドラのをツモ切り。これを古久根が

   ドラ

上記の手牌からポンすることもできたが、スルー。
がかなりの確率で当たると読んだのだろう。

12巡目、土田が突然、リーチを宣言する。
この2軒リーチに切り込んでくる以上、安手でないのは間違いないが、
その捨て牌を見るとソーズが1枚も切られていない。
場への字牌の切れ方を見ても、チンイツに間違いない。

   ドラ

待ちの4メンチャンだ。

土田のリーチの発声の直後、決着はついた。河野のツモ切りは
裏が2枚乗り、三倍満に1本足らずの倍満、16,300の放銃。

阿部の3枚はどこにあったのだろう?
私に限らず、観戦の方、そしてなにより阿部本人が残りの山をめくって確認したかったに違いない。

この局について対局後、河野がしきりに反省していた。
「ダマにすべきだったが、思わず曲げてしまった」
異様な場況であり、ドラ表示も含め3枚見え、役もあることからダマテンに構えれば万全だったが、
態勢の上昇を感じていればこそ、曲げたくなるのも当然だろう。
しかし、それが敗着となってしまった。
もし、ダマテンにしていれば古久根からで出アガっていたのは確実だった。
(古久根が阿部のをスルーした場合もすぐにメンゼンでテンパイし、
を切ることになる)

ここをしっかりアガリきれていると、恐らく河野はトップをとるか、
トップ目の阿部を追い詰めていたのは間違いない。
何の根拠もないが、そういう結果になっていたはずだ。
そして、アガった土田はやはりトップでこの半荘を終える。

土田 +32.7 阿部 +17.7 河野 ▲9.5 古久根 ▲40.9

5回戦

起家から土田-阿部-多井-河野 (抜け番:古久根)

東1局、土田が仕掛けて1人テンパイで流局。
アガらずとも他家とは4,000点も差がついてしまう。
これを非常に大きいと感じるのは私だけであろうか?

同1本場、ピンズ染め模様の土田に対して、
北家の河野がをビシッと切ってくる。
たいして整っていない手牌からは当然切ってこないはずであるから、
イーシャンテンくらいは入っているだろう。
これに反応したのか、土田が以下の手牌から動く。

  ドラ

をチーして、ホンイツのみだがテンパイを取る。
河野が少しイヤなのは確かであるが、これには少し違和感を感じた。
下家の阿部がツモ切ったのは
このメンホンのテンパイを逃したのは痛い。

そして、このをあっさりツモ切った阿部。
役なしではあるが、テンパイが入っていた。
次巡、カンのツモドラ1、600-1,100をアガる。
結果論ではあるが、土田は鳴かなければメンホンをテンパイし、
をツモ切るが、阿部は役なしでアガれず、
場はまだまだ長引いて土田がアガる可能性はかなりあっただろう。

「鳴き」は怖い。基本的には手を進めるため、作るため鳴くのだが
本来のツモ牌がずれることにより、場にどう影響を及ぼすかわからないのだ。
だが、それを使いこなせる打ち手は間違いなく強い。
その「鳴き」が上手い土田がミスをした。弘法も筆を誤ったのだ。

ということは、風は他家に吹くはずで、このケースは阿部に利した。
私はこの半荘、阿部に注目していこうと考えた。

東2局、その阿部が親を迎え以下の手牌から早々と仕掛ける。

  ドラ

上家の土田が2巡目に切ったをポン。
私には、ダブ東とはいえここから仕掛けるのは少し厳しいと映る。
よほどツモが効かない限り、アガるのは簡単ではなさそう。
また、この後土田が簡単に鳴ける牌を切ってくるとは思えない。

そのを切った土田の手牌は

   ツモ ドラ

こんなところからを切るのは、意図があるとしか考えられない。
前局の阿部のアガリを見て、メンゼンで仕上げられるのがイヤだったのだろう。
鳴くのなら鳴いてもらった方が、好都合だということに違いない。

その土田の思惑がハマったのかどうかはわからないが、阿部は有効牌を引けず、
イーシャンテンでもたついている間に河野が蹴って終局。

その後、大きな動きもなく南入し土田の親番。

土田らしくないと言っては失礼だが、ピンフイーペーコーに仕上げ、リーチを打つ。
安めで5,800、高目ドラなら親マンだ。
抵抗したのは南家阿部。345のピンフ三色のイーシャンテンで頑張る。
しかし12巡目に土田のアタリ牌を引かされ、撤退。
またもや土田が1人テンパイで終局した。

同1本場、土田が阿部の第1打を仕掛ける。

    ドラ

うまくなどが重なれば親マンも見えてくるが、
現実的にはホンイツのみの手だ。
もっとも土田はアガリだけを考えて鳴いたわけではないと思うが。

対局後、土田に聞いてみた。

「前局、リーチがアガれなかったから仕掛けたんだよ」

一般人の感覚からすると、リーチを打ってアガれないこと、結構普通にあるんですけど(笑)。

意外と時間がかかったが、15巡目に上家河野のをチーしてテンパイ。
しかし、この動きでドラのを喰い流してしまい、
それをアンコにした阿部が待ちのリーチ。

土田、最後のツモでを引き、珍しく長考に入る。
下した決断はツモ切り。阿部へ8,300の放銃となる。
ここで連チャンできれば、トップを取れるという確信があったのだろうか?
しかし、あまり見られない長考からも、
また結果からも土田のコンピュータに少し狂いが生じ始めたことが感じ取れる。

南2局、河野のリーチに同巡、イッツーをテンパイした阿部の打牌がつかまる。
リーチ、タンヤオに一発がついて5,200。

南3局、河野と土田が早い巡目から激しく仕掛ける。
河野はトイトイ、土田はドラを活かしたチャンタ。
この2人にはさまれたラス目の親の多井だが、
粘って最終ツモの一つ前でテンパイを入れ、連チャン。

同1本場、待ちはカンと悪いながらもタンヤオでリーチを打った多井。
もちろん、他家への牽制の意もあっただろう。
結果、流局したが、1人テンパイで微差ではあるが、3着目に浮上した。
この時点での点数状況は

多井 28,100 河野 32,200 土田 27,800 阿部 30,900 供託 1,000

大接戦だ。まだ、誰がトップをとるかわからない。

同2本場、阿部がドラ2の配牌をもらい、から仕掛ける。

    ドラ

すぐにも仕掛けるのだが、この間に親の多井がをトイツ落とししている。
仕掛けた以上、前に出るということなのかもしれないが、
多井はほぼ間違いなくイーシャンテン。
自分はまだリャンシャンテンだ。
しかも北家が仕掛けるということは親にツモが早く回る。
ある程度、アガリ切れそうな手牌でないとやはり仕掛けることはリスクが大きい。

当然だが、5巡目に多井がピンフをリーチ。
結果は見えていた。なんとかテンパイした阿部だが、余ったで放銃。
裏はのらず、2,900であったが、多井はこのアガリでトップ目にたった。

同3本場、あっさりチートイツをテンパイした土田が7巡目にリーチ。
捨て牌はいかにもチートイツだが、イーシャンテンの河野がをツモ切り、放銃。
これは致し方ないところか。

オーラスを迎えたところで、点数状況を確認しておこう。

河野 24,900 土田 35,100 阿部 27,400 多井 32,600 

最初にテンパイを入れたのは、親の河野。ポンの次巡、
カンチャンを引きカンのテンパイ。
続いたのが、西家の阿部。
安目でマンガン、高目だとハネマンの大物手だ。

   ドラ

しかし、阿部はと落としてのリーチ。この
切られることはまずないだろう。

安牌だけを切っていた土田が16巡目にドラのを叩き切ってリーチを宣言する。
土田のスタイルからして、つまらない手ではリーチを打って来ないであろうが、
どんな手なのだろう?

 
 ドラ

やはり、役アリだ。
土田は型ができればリーチを打つタイプだが、
トップ目、巡目、待ちなどの状況を考えるとリーチを打つまではやり過ぎか。

次巡、土田がをツモ切り、阿部のハネマンが成就した。
これで土田はラスまで転落してしまった。
対局後、本人も相当悔やんでいたが、それでもトータルではダントツのポイントで首位だ。
上記のミスもご愛嬌と言ったところか。

阿部 +25.4 多井 +7.6 河野 ▲10.1 土田 ▲22.9

第2節終了時

土田  +128.2
河野  +63.7
阿部  +49.5
多井  ▲57.8
古久根 ▲183.6

土田、恐るべし。
このままぶっちぎりで優勝してしまうのではないかと思わせるくらい強い。
もちろん、猛者達があっさりそれを許すとは思えないが、
今日の勢いを次節、次々節と持続するようなことがあれば、
優勝をほぼ手中にすることになると言っても過言ではないだろう。

河野・阿部は高いモチベーションでそれぞれの麻雀を打ち、安定している。
多井は結果は付いてきていないが、内容が悪いわけではなくいずれ盛り返してくるだろう。
心配なのは古久根だ。体調が良くないことも関係しているのだろうが、
どうも対局に入り込めていないように映る。
次節以降は持ち前の鋭い攻めを期待したい。

あとがき

筆者の主観バリバリで書かせて頂いた。
「何を偉そうな事ばっかり書いてるんだ!?」という
意見を持たれても当然ではある。

しかし、この5人の戦い。
良い意味でも悪い意味でも違和感たっぷりである。
それは、観る側の私の雀力が足りないのかもしれないし、
彼らが深い思考を重ねた結果、裏目に出てミスと見えるのかもしれない。

日本でトップクラスの打ち手達が繰り広げるドラマを是非、観に来ていただきたい。
きっと今まで以上に「麻雀」を好きになって帰路についていただけると思う。
そうなれば、対局者5名ともども幸いである。

(文中敬称略 文責:鈴木智憲)