2015オープンリーグ決勝レポート |
RMU創立当初から行われ、かつては年2回行われていたこともあり、RMUのタイトル戦で最も施行回数の多いオープンリーグ。昨年度から友好団体のプロにも開放されたことで出場者が増加。それによって本戦トーナメントが狭き門になってボーダーが急騰したこともあり、今年度からトーナメントシステムが変更された。上位2人がベスト8から、3~6位がベスト16から、7位~22位がベスト32からのスタート。初日にベスト32とベスト16が行われ、ここを勝ち上がった6人とシード選手2人が登場するベスト8からは12/30にニコニコ生放送で放送された。
ただ、初日にベスト16から登場した4人中3人が敗れただけでなく、ベスト8でも残る1人とベスト8シードの2人が敗れ、結局上位シードを得た選手が1人も決勝に残らなかった。 また、ベスト8の時点では筆者含めRMUのライセンスプロが3人残っていたがいずれも敗れ、決勝は秋山裕邦(日本プロ麻雀協会、以下「協会」)、知念毅(RMUアスリート)、廣山美奈子、吉田信之(ともにRMU会員)(五十音順)の4名で争われることとなった。 (1回戦)知念、廣山、秋山、吉田(起家から、以下同じ) 吉田が知念の仕掛けに対し字牌を絞る過程でよりを先に(6巡目)切っていたこととを切っていたこと。加えて全体的にソウズが安かったこともあり、廣山のトイツ落とし途中のが止まらなかった。 東2局は、秋山が興味深い手順を見せる。 ツモ ドラ11巡目に場に見えていないドラを重ねたところ。ドラ引きでテンパイになるよう目いっぱいに受けずに場に2枚見えのを切ると、次巡廣山がツモ切ったを出来メンツからチー、そして知念のテンパイ打牌をとらえて3,900のアガリとなる。 チー ロン ドラその後、秋山の親を軽く流した吉田が連荘、その親番で技を見せる。 ドラこの廣山の勝負リーチ(山に2枚残り)に対し、 ツモ ドラ通っていないを引かされてを切って回ると、と続けて引いて河にを3枚並べてテンパイ復活。次巡、アガリ牌のを静かに引き寄せた。 南3局の親番で、秋山が1,300オールの後、1,500(+300)、2,000(+600)を小さいながらもトップ目の吉田から直撃して差を詰めるが、3本場で リーチツモ ドラ 裏この1,000-2,000をツモって突き放す。 オーラスは、吉田が1,500を秋山からアガってマンツモ圏外から出てさらに加点しようとした1本場、ラス目の廣山が素点を稼ぐべく暗カンしてのリーチ。 暗カン リーチロン ドラ, 裏,チートイツドラドラのテンパイを維持しようとした知念から4枚目ので出アガリ、出場所がよく1枚でも裏ドラが乗れば3着浮上だったが、乗らずに着順変わらず。 (1回戦) (2回戦)廣山、吉田、知念、秋山 そんな廣山が起家で、5巡目に分岐点がやってくる。 ツモ ドラこれまで見ていた廣山だと、手役の絡まないマンズのカンチャンは残さずに、イーペーコーからピンズのチンイツまで見ていたと思うが、初戦ラスで大事に行こうとしすぎたのか、ピンズのペンチャンの部分を払っていく。 もちろん、マンズのカンチャンは動きやすく、リーチに行きやすい形になることが多いので選択自体が悪いわけではないのだが、すぐにを引いてしまったこともあり、らしくなさを感じてしまった部分は残った。 待ちで即リーとしていればこの後の展開が全然変わっただろうし、リーチせずに染めに向かっていれば、 ドラという、変則待ちのメンチンまで伸びていた。(結果的にこの場合はアガれていないが)そんな中、ドラを重ねて悠々と雀頭をから振り替えた知念がリーチ。 リーチ一発ツモ ドラ 裏一発ツモで3,000-6,000となり、廣山にとって痛い親かぶりとなってしまった。 東2局、吉田が知念とのリーチ対決を制し2,600オールをアガっての1本場、その吉田の配牌がいい。 ドラツモも順調で、5巡目に ツモ ドラドラ受けのリャンメンターツができて自然にに手をかけ、 ツモ ドラ10巡目、が3枚見えたのでソウズに雀頭を求められるようにを切って目いっぱいに構え、13巡目に三色確定の引きでテンパイし、ダマテンに構える。次巡、廣山を除く2人にもテンパイが入る。 知念 3人テンパイの瞬間、山に残っている待ち枚数は知念5枚、秋山2枚、吉田1枚だったが、最後のが秋山のところに行って止まらず、12,000(+300)の放銃となってしまった。 さて、この局一人蚊帳の外だった廣山だが、実はチャンスがあった。 配牌は ツモ ドラ字牌が全部1枚ずつ、九種九牌があれば流したくなるような配牌から、リャンメンが2つあることもあり、普通にから切り出す。 ところが、ここからのツモが、、、と来ていて、仮に国士に向かっていれば5巡目で13メン待ちのイーシャンテン、8巡目に引きで2枚切れの待ちとなり11巡目にツモれていたのである。 もちろん、廣山の切り出しが変わっていれば吉田の手順が変化してツモ筋が変わるかもしれないが、上記の手牌だと仮に廣山が中張牌からの切り出しでも吉田の手順は変わらなかった可能性は高いと思われる。 ただ、我々競技選手でも連戦となると集中力の維持には気を使うもので、映像配信が入っている中でのこの日5半荘目、さらに決勝、しかも劣勢となると、東1局にしてもそうだが、普段通りの麻雀が打てなくても仕方ない。 そして、この1局がこの決勝戦の大きな分岐点となった。 2本場は秋山が廣山のリーチをかわしてホンイツ仕掛けの1,000-2,000(+600)を回収したが、知念の親はノーテンで流れ、秋山の親は吉田のリーチに向かって安目放銃で流れて南入。 この時点での得点状況が 廣山17,700 と、このまま吉田に連勝されてしまうと吉田が+70近く持って1人浮きで最終戦を迎えることとなる。そうなってしまうと自身が3着目に上がったところでさすがにどうしようもないと思ったであろう秋山、ここから色々な戦略を駆使して吉田の連勝を阻止し、自身の優勝確率を上げるべく奮戦する。 南1局、知念の ドラこの8巡目リーチに対し、11巡目に ドラ河に3枚切れのカン待ちで追いついた秋山、14巡目にそのを引くと、ノータイムでアガラズ、ノーチャンスの切りを選択。 秋山はを連打しテンパイを維持、最後のツモで廣山がどうにかテンパイし、秋山の思い描いた最高のシナリオの1つであろう、吉田を1人ノーテンにすることに成功すると、次局も、 ポン ドラ高目ツモ倍満テンパイの知念が最終手番で切った、 ポン ドラ高目5,200(+300)のアガリを平然と見逃し、またも吉田の1人ノーテン。手変わった前局と異なり、見逃しがハッキリ分かる河を見て吉田は何を思ったか。 こういった場面での選択は個人差の出るところだと思う。RMUのルールだと順位点の差が小さくオカもないため、順位点でつけられた差を素点で埋めることが比較的やりやすい。廣山が今後他人の親を軽く流しに来ないと考えて、前者の時点でアガってしまう選択もあるだろう。 後者の知念からの5,200(+300)は、今度は自身の2着目浮上が現実味を帯びてくる。そのため、吉田から、あるいは知念から高目ならアガるといったような選択が考えられる。 このあたりは、秋山の所属団体である日本プロ麻雀協会の土壌によるところが大きいと思われる。 協会の基本ルールは順位点が10-30とRMUの2倍あるだけでなく、トップには20ポイントのオカも付き、トップと2着はそれだけで40ポイントの差となる。 そのため、そのルールで行われる各タイトル戦の決勝では、自分がトップになるため、あるいは誰かをトップにしないため等の着順操作のための見逃しや差し込みが毎年のように発生する。 今回の秋山の戦い方は、まさにこれがバックボーンにあったと思われる。 余談ではあるが、決勝で幾度となく敗れている筆者は、第5期オープンリーグの決勝で最終戦ではあるがアガラズをしたこともあるし、第7期クラウンの決勝では秋山と同じ協会の大崎に5回戦制の4回戦でこういった見逃しをされて苦しめられたこともある。 その後、廣山は1,000(+200)オールをアガって、供託を回収したものの次局は知念の1人テンパイで流局。4本場となった吉田の親番は秋山がリーチで廣山から5,200(+1,200)をアガってひとまず3着目に浮上し、南3局。秋山がダブをポンして、 ポン ドラこの3,900テンパイ、この仕掛けに対し廣山が ツモ ドラ だが、知念のはチーしてを切ってフリテン単騎に構え、吉田からの直撃とテンパイ維持を狙う。 実は吉田のはトイツ落としで、ここで鳴かずに同巡強い牌を持ってこなければ、ひょっとしたら次巡直撃が取れたかもしれない。しかし、3枚並んだ時点で見た目だけでが1枚ずつしかなく、吉田が2枚持っていたり浅い巡目に掴んでくれたりする保証もない以上、やむを得ないか。 その後、秋山は4枚目のから単騎に待ち変えると、2つ仕掛けていた知念が、 ポン ポン ドラここからをツモ切るも秋山は微動だにせず、結局この半荘3度目の吉田1人ノーテンで流局。 続く1本場で、秋山は早いテンパイから好形に変化してのリーチで、 リーチツモ ドラ 裏満貫をツモって吉田に迫る。この時点で 南4局 廣山14,800 吉田37,400 知念34,400 秋山33,400 と、東場で吉田がダントツだったところから、廣山を除く3人競りにまでなっていた。ここで、3,900アガればトップになる知念が、 ドラダマテンでも吉田をまくってトップになるが、トータルを考えてか1巡回してツモ切りリーチに踏み切る。これに対し、どうしてもアガって連荘したい秋山が、 ツモ ポン ポン ドラ 仮に知念に当たっても吉田がトップでなければ良しの判断か。 これに対し、知念がテンパイする前から、 ツモ ドラピンフドラ1テンパイを入れていた吉田。 が3枚切れで目に見えて薄いが、出アガリが利くところへを引いてくる。 知念の現物のを切ればテンパイ維持できるが、秋山にそこで待たれている危険性を察知してか、を切って回してテンパイせず、結果2人テンパイ。これには多井はじめ解説陣も驚嘆。 結果的にで秋山に放銃しても1,500で済んでおり、ノーテン罰符より局面への影響は小さかった。だが、秋山へは放銃できない、という吉田の意思と読みを見せつけた。 南4局1本場 廣山13,300 吉田35,900 知念34,900 秋山34,900 供託1,000 さらに3人が平たくなったところで、配牌とツモがかみ合った知念が5巡目にピンフテンパイ。 ドラこれまたダマテンでもトップだが、素点が欲しいこともあって即リー。河も強く、一発目にを引かされた秋山が、仕掛けて前に出た瞬間に放銃、裏がで満貫になった。 この局面はどうアガってもトップなので、例えばダマテンに構えて他からは1枚くらいは見逃し、吉田から出た時の2着順ダウンを狙うという戦略もあるかもしれないが、これはこれで理にかなった戦略である。 秋山の戦略に意図せぬままうまく乗ることができ、結果的に好位置につけた。 (2回戦) (3回戦)秋山、知念、廣山、吉田 RMUの規定により、場所決めをした時点でトータルトップの吉田の北家スタートが決まる。他3人の中で一番条件の厳しい廣山が西家スタートなのは吉田にとっても好都合か。 一方、ここまで見逃しを重ねて吉田を苦しめてきた秋山、東家スタートで吉田の下家と見逃しもかけにくい席だが、ここからどう追い詰めていくか。知念だけは割と普通に打てるが、できることなら2着順差をつけたい。 東1局、秋山が2,000をアガっての1本場、吉田が ドラこの役なしサンメンチャンで先制リーチすると、3巡後に秋山が追いつく。 ドラツモっても吉田からの直撃でも、一気に優勝が見えてくる追いかけリーチ。山の残り枚数は4枚対2枚で多かった吉田がツモで競り勝ち、裏がで1,000-2,000(+300)。実際に得た点数以上の大きなアガリとなった。 東2局で秋山が廣山から8,000をアガった後、廣山が500オール、2,000(+100)オールと連荘する。ただ、この連荘にも秋山の意思が介在している。吉田の上家でをポンしてピンズの一色手の捨牌を演出し、吉田に安易にさばかせようとしないといった、バラバラの手牌でも優勝に向けて出来る限りのことをやっているのが見て取れる。 そんな秋山の努力もあって、東4局、吉田が親を迎えた時点で 秋山34,300 知念27,200 廣山27,900 吉田30,600 吉田をラスに落とせる可能性の見える状況になっていた。 そろそろ加点しておきたい吉田の分岐点は6巡目 ツモ ドラ前巡にを切った時点で方向性を決めていたのか、刻子手一本に絞る切り。すぐに知念からがポンできて当然の切りテンパイ。その次巡、秋山が追いかけリーチ。 ドラ同巡知念も追いかける。 ドラ廣山は完全撤退で山に吉田1枚、秋山2枚、知念3枚のめくりあい。吉田だけは一応オリられるのだが、リーチの2巡後に持ってきた、秋山には現物だが知念にはのダブルワンチャンスとはいえ無筋のをツモ切る(実際に知念の入り目)。すると、次巡秋山がをつかんで、 ポン ロン ドラ吉田の12,000のアガリとなった。 吉田にとって、ツモれば6,000オール、知念からアガれればトータル2位からの直撃になって大きいが、秋山からアガっても、秋山が今までのような封じ込めをしにくくなるという利点がある。 秋山は、あくまで自分が優勝するために色々やってきたのであり、こうなってしまっては秋山の優勝条件そのものがかなり厳しくなってしまうからである。 吉田がさらに加点しての2本場、知念、秋山ともに高い手を作りに行って、成就させたのは知念。 リーチ一発ツモ ドラ 裏1巡回したリーチがタイミングよしの倍満でこの半荘のトップ目に立つ。しかし、吉田が2着のままではまだ15,000くらい足りない。 南1局、秋山の最後の親は廣山からリーチがかかり、まっすぐ行かざるを得ない秋山がワンチャンスのをツモ切ると、 ロン ドラ 裏廣山の8,000に放銃。廣山も大トップが必要で、8,000確定、裏1枚で12,000の最高目はさすがに見逃せない。これで苦しくなった秋山、南2局は何とか知念の連荘をアシストしチャンスを待つも、吉田が自力で流す。 南3局も吉田がアガってこの半荘のトップ目に立ってオーラス。吉田以外に優勝条件があるのは知念のハネツモだけ。しかし、その気配すらないまま18巡経過し、吉田が伏せて対局が終了した。 (3回戦) こうして、2015年度オープンリーグは、吉田信之の優勝で幕を閉じた。 吉田は、準決勝の放送されていない時の半荘だけ出来がよくなかったと聞いたが、見返してみると本当に内容がよく、学ぶべきところが多い。 吉田は、RMUのみならず各競技団体のオープンタイトル戦に毎回のように参加しているだけでなく、かつて放送されていなかった時代のRMUリーグや、Rリーグの観戦にも毎回のように訪れており、その情熱は素晴らしいと思う。 知念、秋山、廣山もそれぞれ持ち味を発揮したいい決勝戦だったと思う。 長丁場となった中、最後まで生放送及びタイムシフトをご視聴くださった皆様、予選から参加いただいた選手の皆様、また、最後までこの観戦記を読んでいただいた皆様すべてに感謝の意を表します。 今後も、RMUの各種大会へのご参加及びスリアロ番組のご視聴を宜しくお願いいたします。 > (文中敬称略 文責・宮田信弥) |