スプリントファイナル決勝戦観戦記
横田 千遥
時刻は夜の20時を過ぎた。残すは新決勝戦。これで今回のスプリントファイナルの優勝者が決まる。
準決勝・決勝で計6回戦戦い抜いた猛者たちの戦いも、これで終わりを迎えようとしている。1局で終わるのか、それともここから長い戦いが始まるのか、最終決戦に向かう4人の顔は朝に比べ憔悴しているようにも見えたが、目の輝きが失われた者はいない。私は麻雀に携わる者の1人として、この戦いが熱くなるであろうと確信していた。
「ロン、5200」
そして、発声と同時に決着の時はきた―――。
まずはスプリントファイナルについて簡単に説明させていただきたい。
年に8回行われるスプリントカップで上位入賞し、その順位によってトライアルポイントが付与される。そのトライアルポイントの上位22名で行う、スプリントカップ出場者の頂点を決める大会である。
スプリントカップについて代表の多井が「朝起きて、今日麻雀したいなって思う人が、当日気軽に参加できる大会。それがこのスプリントカップのいいところでもあるんだよね。」と総会でおっしゃっていた。
その言葉が私はすごく記憶に残っている。その言葉のとおり、各スプリントカップでは毎回100名近くお集まりいただいている。皆様には、感謝の気持ちでいっぱいである。
3月4日、大塚麻雀スタジオにて、スプリントファイナル準決勝・決勝戦が行われる。最高気温は20℃を超えるらしい。私がスタジオにつくと、対局者たちが談笑している姿が見られた。そして11時。放送が始まるとともに、準決勝が幕を開けた。
ルールはRMU公式Aルール。(一発、裏ドラ、カンドラカン裏あり、赤なし、ウマ5-15、オカなし)
A卓から勝ち上がったのはこの2人。
1位通過、中井昌。準決勝1回戦・2回戦ともに2連勝し盤石な通過を見せる。
2位通過、中村亮太。1・2・3回戦すべて2着で終え、最後もあさやんとの条件戦を見事振り切り決勝へ駒を進めた。
B卓を勝ち上がったのはこの2人。
1位通過、尾澤大河。2回戦目に大トップを取り、万全のトップ通過を決める。
2位通過、櫻井邦俊。1・2回戦トップラスとなり、3回戦目は尾澤以外3者ともに通過の可能性がある中、見事トップを取り通過。
以上、この4名で2017年度スプリントファイナルの優勝者が決まる。
決勝 1回戦 尾澤→中村→櫻井→中井
東1局 ドラ
9巡目、中井から先制リーチ。
            ドラ
満貫からのリーチが入る。
しかし、親の尾澤も黙ってはいない。11巡目追いかけリーチが入る。
そして親の尾澤が一発でつもる。
            ツモ ドラ 裏ドラ
1枚切れの 。裏ドラも乗り、開局6000オールのツモあがりを決める。
その後嵐のようなリーチ合戦が続く。
南2局 親 中村 ドラ
先制は中井。7巡目先制リーチ。
            ドラ
またしても満貫のリーチ。
しかしすぐ尾澤もテンパイ。
            ドラ
三色は崩れたが、ここは勝負とみてリーチに踏み切る。
それを見た櫻井
            ドラ
ヤミテンからツモ切りリーチへ。
そしてこの3人リーチを制したのは中井。
            ツモ ドラ
3000-6000のツモあがり。
ここまで辛い展開だった中井、このあがりで勢いに乗りたいところ。
決勝戦1回戦終了
尾澤 +38.5 櫻井 +13.5 中村 △17.0 中井 △34.5
決勝 2回戦 尾澤→櫻井→中村→中井
東1局
尾澤が中井から2000、次局も桜井からリーチドラ1の3900は4200を上がり迎えた2本場。
東1局 2本場 ドラ
中井が4巡目先制リーチ。
            ドラ
ドラは無いが好形の3面待ち。
10巡目、ここで櫻井が追いつく。
            ドラ
を切ってリーチへ。
11巡目、イーシャンテンで粘っていた中村
            ツモ ドラ
打 で勝負に出る。
中村もリスクをわかっての打 リーチ。だがこれは櫻井への放銃となってしまう。
裏ドラの も乗り、8000は8600のあがり。これで尾澤の流れを止めたいところ。
東4局 親 中井 ドラ
1回戦目苦しい展開だった中井、親番で挽回したいところ。
配牌              ドラ
少し苦しいと思ったが、これが化ける。
5巡目、中村からの をチー。 10巡目尾澤からの をポン。
13巡目に3枚目の を引き、
      チー    ドラ
5面待ちへと変化。
をツモり、4000オール。ここで桜井をかわしトップ目に出る。
南2局、中井は櫻井へ痛恨の12000を放銃してしまうが、南3局で3000-6000ツモ。
南4局、櫻井から3900直撃、1本場で4000は4100オールをあがり、きっちりトップを取り2回戦を終える。
決勝戦2回戦終了
中井 +34.8 櫻井 +19.5 尾澤 △19.9 中村 △34.4
TOTAL 桜井 +32.5 尾澤 +18.6 中井 +0.3 中村 △51.4
決勝 3回戦 尾澤→中村→中井→櫻井
東1局 親 尾澤 ドラ
開局トータルトップ目の櫻井に大物手が入る。
            ドラ
ダマでも満貫のジュンチャンをリーチ。相手をねじ伏せるかの気持ちを感じさせる。
しかし尾澤も追いつく。
            ドラ
ドラの を引き入れ、櫻井と直接対決へ挑む。こちらも気持ちの入ったリーチ。
鳴き仕掛けを入れていた中村
      ポン ポン ドラ ツモ
ここで がこぼれ櫻井への一発放銃となってしまう。
東2局 親 中村 ドラ
親の中村、9巡目に先制リーチ。
            ドラ
開局櫻井へ12000を放銃している中村、ここは是が非でもあがりたい。
その気持ちに山も応えたのか、 を一発でツモり4000オール。新決勝へ向けて、少しでも点差を縮めておきたいとこだ。
東4局 親 櫻井 ドラ
手を緩めない櫻井。13巡目リーチ。
            ドラ
高め を一発でツモり4000オール。
2着との差を2万点近くに広げる。
しかし尾澤、中村も食らいつく。
東4局2本場 ドラ
尾澤          ポン ドラ ツモ
2000-4000は2200-4200のツモ。
南2局 ドラ
6巡目、親の中村からの先制リーチ。
            ドラ
3面待ちの満貫手だ。
中井から が出て、12000のあがりを決める。
だが櫻井はトップを取り切り、3回戦を終える。
決勝戦3回戦終了
櫻井 +32.6 尾澤 +13.0 中村 △8.1 中井 △37.5
TOTAL 櫻井 +65.1 尾澤 +31.6 中井 △37.2 中村 △59.5
新決勝は1局目、わずか6巡での決着となった。
トータルトップ目の櫻井が、中村から5200のあがり。
10時間近い長い戦いを終えた後、対局者たちは握手を交わし、互いの健闘を讃えていた。本当に素晴らしい光景だった。
目を離せないリーチ合戦、駆け引きが幾度となく続いた3回戦+新決勝方式。観戦している私も、頭が痛くなってくるほどの熱い展開。スプリントファイナルを戦い抜いたすべての皆様に、私は心から感謝を伝えたい。
2017年度、スプリントファイナル優勝者は櫻井邦俊。

文責:横田千遥
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