第10期RMUクラウン決勝観戦記


第10期RMUクラウン決勝観戦記
RMUアスリート 嶋崎 究

溶けるような暑さの8月になり、今年は例年よりも早くRMUクラウンが開幕した。

今までのクラウンとの大きな違いは、日本プロ麻雀連盟からの参加者がいたことであろう。今年は史上初の団体対抗戦(麻雀プロ団体日本一決定戦)も行われている。どの団体が優勝するかというのもさることながら、団体の壁を越えて、麻雀界が大きく変わっていく時期になっているということに、期待の気持ちが高まるばかりである。

そんなプロ連盟出場元年となった今年。RMUクラウン決勝の舞台に勝ち進んだプロ連盟所属の選手がいる。

名前は藤本哲也。有名プロの多く所属するプロ連盟において、彼が所属するのはB1リーグ。現在、B1リーグには、山井弘、佐々木寿人、滝沢和典、二階堂亜樹などテレビ対局でも見るメンバーが所属する。彼の知名度は、それらのプロに負けているかもしれないが、プロ連盟に入会して12年かけてここまで積み上げてきた彼の実力は間違いない。
彼の第一印象は謙虚で、あまり自ら主張しないタイプなのかな? と思わせるものだった。麻雀のスタイルは? と問われたならば本人は「特に…(笑)」と回答。その後、「しいていえば対応型。自分の手牌と場況に合わせて打牌を選択する」と付け加えてくれた。

日頃、一発裏ドラのない麻雀を主戦場にするだけあり、押し引きのバランスにはとても神経を使っているのだろうと感じた。

そんな彼は今回が初のタイトル戦の決勝とのこと。意気込みを聞いてみると「勝ちたいですね。とりあえず最終半荘に目が残るように意識して打ちます」と語ってくれた。

決勝のメンバーの中にもう一人、友好団体所属プロがいる。

最高位戦日本プロ麻雀協会所属、園田賢。彼の所属するのも団体は違うがB1リーグ。ここ数年、史上最高レベルといわれる最高位戦B1リーグにおいて毎年のように昇級争いに名を連ね、今まで惜しくもAリーグ昇級とはなっていないが、今年はこのクラウン決勝の行われた9/22時点で最終節を残して首位を独走している、今一番Aリーグに近い男である。

そんな彼に自分の麻雀のスタイルを聞いてみた。

「スタイルがないのがスタイル。重く構えることも軽く仕掛けることも、縦も横も、場況も形も、偏ることなく常に最善の選択を心掛けている」

とのこと。誰しもこのようなスタイルに憧れるのではないだろうか。しかし、このようなスタイルはバランスが難しく、どこかで選択を間違えて崩れてしまうことも多い。このスタイルで、常にリーグ戦で結果を残し続けている彼の雀力に疑う余地はない。

そんな園田であるが、タイトルには意外にも縁遠い。最後に決勝の舞台に上がったのは2006年に行われた第17期プロ最強位以来とのこと。決勝経験は少ないが、彼のここ数年の勢いを考えれば、優勝候補筆頭であることは間違いない。

「バカヅキでもいいから勝ちたい」そう試合前に語ってくれた。

そんな中堅プロ2人よりもはるかに麻雀歴の長い男が決勝に残った。名前は伊澤興。RMUのライト会員である彼の競技麻雀歴は30年以上。初めてのタイトル戦の決勝は20年も前の101競技連盟主催の八翔位戦。その後、様々な競技麻雀のタイトル戦や大会に参加し、優勝も経験している。

彼に話を聞いていた時に伝わってきたのは、彼の麻雀愛だ。麻雀をしている時に意識していることは? という質問に対して

「絶対に牌はたたきつけない。超危険牌でもそっと河に並べること」と答えたことが、彼がいかに麻雀を愛しているかがわかるだろう。

意気込みを聞かれると

「ただ勝ちたいです。よく麻雀をする仲間たちがタイトル戦で決勝に進出したり優勝したりしていて、いい流れが来ているので、自分もそれに乗りたい。そしてこれから決勝を迎える仲間に良いバトンを渡したいです」

と、自分だけでもなく麻雀仲間に対する思いも語ってくれた。

そんな中に25歳の競技麻雀歴1年の若者が一人。RMUアスリート山下達也だ。彼は若干25歳。麻雀歴も6年。

大学に入ってから麻雀にのめりこんだ彼は、持ち前のセンスで驚くべきスピードで上達し、麻雀を始めて2年もしないうちに働いていた麻雀店で彼はほとんど負けることのないほどの実力になっていた。筆者は彼と4年ほど前に都内の麻雀店で出会った。同い年とは到底思えないほどの繊細な彼の麻雀に圧倒されたことを今でも鮮明に覚えている。

筆者は彼と出会って以来、その麻雀の実力と彼の気さくな性格に惹かれ、ともに麻雀をする時間も増えていき、同じ勉強会にも参加してきた。出会って4年、彼の麻雀を一番見てきたのは筆者といっても過言ではないだろう。

彼の麻雀は門前型でリーチツモをベースの麻雀。門前では厳しいときは的確に仕掛けもする隙の無いタイプである。

そんな彼が「もっと強くなりたい」とプロの世界に足を踏み入れてから1年。初めてのリーグ戦では圧倒的な強さで昇級。そして7月に行われたRMUのタイトル戦「第1回サマーチャレンジ」ではその実力をいかんなく発揮し、優勝。入会1年未満でのタイトル獲得となった。

そして迎えたクラウンでも本戦、準々決勝、準決勝と危なげなく決勝まで進んできた。

そして、彼が決勝に残ったときに、「観戦記は自分が書きたい」そう自然に思った。

出場者は以上4名。だれが勝つかなんてわからない。だれが勝ってもおかしくない。それぞれに話を聞いてそう思った。

当日開始1時間前に会場に筆者が到着すると、すでに伊澤、山下の姿が。緊張した様子はなく、運営のスタッフらと談笑している。そこに藤本がやってくる。いつもとは違うRMUの雰囲気に戸惑っているようにも見えたが、喫煙所で伊澤、山下と挨拶をしあうと、すぐに準決勝の内容の話に。その時には先ほどまでの戸惑っていた藤本の表情は少し和らいでいた。

最後に会場に到着したのは園田。3人のいる喫煙所にきて元気よく挨拶をすると

園田「飲み物のラベルは(放送用に)はがしたほうがいいですかね? なんでも大丈夫ですか?」
山下「ペットボトルははがしたほうがいいかもですね。中身はアルコール以外なら(笑)」
園田「でも、焼酎だったら水みたいだから大丈夫ですよね?(笑)」

こんな冗談を言える園田には、緊張はみじんも感じられず、確かな自信を持ってこの会場に来たんだということが伝わってきた。そんな比較的落ち着いた4名でまずは1回戦が幕を開けた。

1回戦 (座順)伊澤、園田、山下、藤本
東1局

全員が配牌を取り終わり、まだみんなが理牌をしている中、会場に少し響く声で「ポン!!」といったのは起家の伊澤。園田の第1打のをポンして以下の形。

 ポン ドラ

いきなり跳満まで見える大物手が入っている。
そこから順調にマンズを引き入れて、9巡目に七対子の1シャンテンとなった園田から出たをポンしてカンの聴牌。

 ポン ポン ドラ

園田も次のツモでを重ねて聴牌。の待ちを選択できるが、ソウズの場況が非常によく、園田の目からは2枚山にいるように見える。

親の12000点と戦うことにはなるが、園田の中ではタンヤオ七対子をリーチした時の打点効率の良さと待ちの良さから、リスクに見合うリターンがあると判断しリーチ。

対する伊澤の最初のツモは。受けの広さを考えればを打つのが当然の牌姿ではあるが、は園田のリーチに非常に押しづらい。すると天を見上げる。一息ついてから覚悟を決めたようにすっとを押した。

そして次巡に園田がをつかみ、12000点のあがりとなる。園田もこうなることも想定の範囲内だと納得したような表情である。

 ポン ポン ロン

いきなり手のぶつかる展開となった決勝戦だが、次局もぶつかる。
東1局1本場

西家の山下が3巡目にをポンして早くも以下の牌姿

 ポン ドラ

そして2巡後にを引き入れて中膨れ単騎の聴牌となる。ほかのピンズを引いても変化が多くあるこの牌姿であるが、なかなかピンズを引かない。

そんな足踏みをしていると、ピンズを打たずに回っていた親の伊澤がのシャンポンで聴牌しリーチ。

このを清一色聴牌の山下が一発でつかんでしまう。伊澤の河にはピンズが切られておらず、は止まらない。

なんとクラウン決勝は伊澤の2連続親のマンガンスタートとなった。

ロン ドラ 裏ドラ

2本場は前局放銃の西家山下が、ドラのをポンしてカンの聴牌。

そこに勝負に出たのは東1局に同じく満貫を放銃した園田。メンタンピンの待ち。

そして山下が1発目に持ってきたのはそのあたり牌の。このは止まらずに園田への一発放銃となる。

ロン ドラ 裏ドラ

山下にとっては大きすぎる2局で2万点の放銃となってしまう。

山下はどちらも打点のある聴牌とはいえ、待ちの悪い形であった。いつもの山下であれば、止まるかどうかはわからないが、ノータイムで淡泊に放銃することはない。特に園田のリーチには降りるという選択も十分にあっただけに、いつもより前のめりになっているのがうかがえた。

このまま伊澤の半荘となるかと、思われた1回戦であったが、待ったをかけたのはここまで落ち着いて対応してきた藤本。

東2局には親の園田のリーチに対して、3枚目のドラのを引き入れて以下の聴牌。

ドラ

園田の河にはは切れておらず、周りからのの出あがりが少ないことからリーチする人も多そうだが、藤本の選択はダマテン。

園田の河にはが早く待ちの可能性が高いと読み切り、次にを引いてきたときに対応できるようにしたいという、対応型の藤本の冷静な選択である。

結果をツモり2000-4000。そこにはリーチをかけていればという後悔はなく、いつも通りという雰囲気を感じた。

東3局には園田の先制リーチにドラを重ねて追いかけ、めくりあいを制して園田から5200をあがると、親番ではダブを仕掛けてトップ目の伊澤から5800の直撃し、瞬く間にトップ目に躍り出る。

2人のトップ争いの様相を呈したが、ここで粘り強いのは園田。配牌からチャンタに向けて手作りをすると、構想通り聴牌をしてペンのリーチ。他三人は園田の異様な捨牌に前に出られず、一人旅となる。この山に3枚のをしっかりとツモリあがり3000-6000。

ドラ 裏ドラ

勢いに乗る園田。南1局に4巡目にツモり三暗刻の形でリーチしてツモり、2000-4000。これでついに園田もトップの藤本と8000点差まで追い上げる。

南2局はその勢いのある園田の親番ということで、ここまで周りに対応してきたトップ目の藤本が役牌を仕掛けて1000点のあがり。受けているだけでなく、さばくべきポイントではしっかりとさばく藤本の強さが光る。

南3局は伊澤のリーチをする中、山下が何とか聴牌して2人聴牌で流局。1本場を迎えて4者の点数は以下の通り。

藤本 42400
伊澤 39900
園田 33200
山下 3500

この局1番に聴牌したのは2着目の伊澤。

ドラ

が3枚切られている。リーチをする選択も十分にあるが、伊澤の判断はダマテン。

伊澤はオーラスにトップ目に立っておく重要さを経験から熟知している。特に現在トップ目の藤本はラス親。オーラスにトップに立っておけば、他二人のツモあがりで着順が落ちることはない。

まもなくを引き、700-1300は800-1400でトップ目に。

迎えたオーラスは伊澤に2枚のイーシャンテンの配牌。すぐにをポンして山下から1000点をあがりトップをとった。

1回戦
伊澤 +29.9
藤本 +16.6
園田 ▲2.6
山下 ▲43.9

1回戦を終わって、伊澤はトップを取れてほっとした表情。藤本、園田も悔しさはあるものの自分麻雀は打てているということには納得の様子。山下もまだ3回戦あるということでそこまで悲観しているようには見えなかった。

2回戦、起家から園田、伊澤、山下、藤本。

東1局、まず動いたのは1回戦トップの伊澤。をポンした後、をポンして1枚切るところ。

 ポン ポン ドラ

形だけならを切りそうな局面。が、を先に切ってからドラのを手出しして、ソウズの一色をぼかした点、のポンで字牌がケアされやすい局面になることを想定してを切りカンに受ける。

この選択がズバリ当たり、タンピンの1シャンテンとなった親の園田から放たれたをとらえ、8000の出あがり。

1回戦の勢いそのままに伊澤がまずトップ目に立つ。

東2局、3局と小場で進み、迎えた東4局。ここまで我慢の展開の藤本に本手がはいり、以下の形でリーチ

ドラ

このリーチに対抗したのは仕掛けていたトップ目の伊澤。リーチ後にカンをチーして1枚切るところで以下の形。

 チー チー ドラ

ここでではなく、比較的安全なワンチャンスのを切ってシャンポン聴牌。その後4枚目のを持ってくると、-がノーチャンスとなり、打聴牌すると、リーチの藤本がをつかみ3900は4200の加点となった。

ここは伊澤の独特の押引きのバランスが最高の結果となる。そして1回戦同様にして伊澤が点数を増やしていく展開となっていく。

南場に入って4人の点数は以下の通り

伊澤 42000
山下 30300
藤本 25800
園田 21900

南1局にチャンス手が入ったのは親の園田。風牌のとドラのがトイツの形から素直にをポンしてから、をチーして聴牌を入れると、自力でをツモり、4000オール。ここまで出番のなかった園田がトップの見える位置まで上がってくる。

 ツモ チー ポン ドラ

1本場は山下がリーチをしてツモあがり、1000-2000は1100-2100。南2局は藤本が園田から3900とここまで出番の少なかった二人も食い下がる。

そして、南3局はトップ目の伊澤が丁寧に手を進めての先制リーチをする。これに対して戦える相手がいないかと思われたが、園田がこれ以上伊澤の好きにはさせられないと、押し返してカンで追いかけリーチ。

このめくりあいを園田が制して1000-2000。これでオーラス全員にトップの可能性のある点数状況となる。

オーラス、藤本がサイコロを振り、全員今までより気持ちを入れながら、配牌をとっていく。

ここでダントツにいい配牌を手にしたのは1回戦同様、トップ目の伊澤。6巡目にの聴牌をすると、すぐに山下からこぼれて1000点。安定感抜群の打ち回しで2連勝を決めた。

2回戦(トータル)
伊澤 +20.9(+50.8)
園田 +7.9 (+5.3)
山下 ▲7.4 (▲51.3)
藤本 ▲21.4(▲4.8)

伊澤に2連勝を許す展開となり、3回戦以降、3者は並びまで意識していかなければならない状況になった。

3回戦、並びは起家から山下、園田、藤本、伊澤

東1局、まず仕掛けて出たのは伊澤、をポンしてピンズに染めていき、もポンして、カンの聴牌。そこに高打点の聴牌を入れたのは親の山下。

ドラ

ここはヤミテン。それはトータルトップ目の伊澤がすでにドラのを切っており、直撃を狙えるからである。

しかし、そこにリーチをかけたのは南家の園田。ドラのを引き入れてペン待ち。
こうなったら黙っている意味がなくなってしまったと、次巡に山下もツモ切りの追いかけリーチ。

その巡目に藤本も以下の形で聴牌。

ドラ

2軒リーチに対して、はどちらにも無筋である。そしてドラもない役なし聴牌では場に3枚。何よりトータルラスの親の山下がツモ切りリーチで安いわけがない。ここまでの藤本の冷静に対応していく麻雀を考えれば、現物を切って回っていくものと思われた。
しかし、ここでの藤本の選択は切りリーチ。

決勝も半分を終えて、トップの伊澤とは50p以上の差。これ以上離されるわけにはいかないという焦りもあったのか、このリーチは決して藤本らしいリーチとは言えないものだったかもしれない。

結果は藤本が山下の当たり牌のドラのをつかみ、裏ドラはとなり24000の放銃となってしまう。

 ロン ドラ 裏ドラ

しかし、放銃した藤本からは悲観するような様子は見受けられなかった。むしろ、行くと決めて勝負して負けたのだから仕方ない、ここからまた頑張ろう、そんな雰囲気すら感じた。

そんな藤本は東2局、3900を園田からあがると、勝負手が入ったのは南入した南1局。配牌と第一ツモは以下の通り

ツモ ドラ

藤本はここからチャンタに決める打ち。ドラがというのもチャンタに決めやすい要因の一つであったか。この後はチャンタに向かって手を進めると、7巡目にカン待ちの聴牌をしてリーチ。

このリーチに一発で飛び込んだのが、親の山下。53000点持っているトップ目とはいえ、ここまでのマイナスを取り返さなければという思いが山下にを打たせてしまったか。東1局の半分の12000を藤本に返すことになる。

 ドラ 裏ドラ

藤本の追い上げはまだ止まらない。南3局の親番、山下の先制リーチを受けるも、しっかりと押し返して、ドラ2枚のテンパイで、追いかけリーチをすると山下がつかみ、7700の出あがり、これでついに藤本がトップの見える位置まで来た。

しかし、1本場で粘りを見せたのが、伊澤。ドラのない手ではあったが、積極的に仕掛けての聴牌をいれる。そこにかぶせてきたのは親の藤本。ドラのを重ねて跳満まで見えるリーチ。

しかし、伊澤は降りない。無筋も3枚押した。伊澤の長年の経験はここが勝負どころであると確信しているのであろう。

このが山下から出て1000は1300。

伊澤の3連勝が現実味を帯びてくる。

オーラス。山下、藤本は1300-2600か6400の出あがり以上で単独トップになる条件。園田は跳満ツモでトップである。

先制リーチを入れたのが2着目の藤本。-でドラのツモで1300-2600のピンフリーチである。

このリーチに三者はまっすぐ行けずに回る。終盤に山下も聴牌。ピンフドラ1の。ツモれば文句なし、出あがり一発と裏が絡めば、条件を満たすのでリーチ。

親の伊澤は当然のベタ降り。2者ともあがり牌は引けずに、海底が回って来たのは園田。

そして以下の牌姿。




安牌はたくさんある。しかしここで安牌を河に置けば伊澤の3連勝は確定する。だからと言って、他者が条件を満たしていないリーチの可能性もあり、振り損になることも大いにある。

逆に12000を放銃したら、伊澤との差は広がってしまう。そんなことを考えたのだろうか。園田はサイドテーブルに置いてあったここまでの成績表を今一度見返す。すると軽くうなずき、覚悟を決めたように1つの牌を手に取り河に放った。

その牌は、

RMUルールはオカがなく、順位ウマも5-15と小さい。したがって、この8000を打って伊澤を2着に落としても2000点しか変わらない。

しかし、点数以上に園田の勝ちへの執念を感じた。この半荘は特に園田は手が入らずに勝負をさせてもらえなかった。しかし、それでもやれることをしっかりとやる。他の3人に対して、まだおれはあきらめていないと、高らかに宣言をしているように見えた。

3回戦(トータル)
山下 +25.2(▲26.1)
伊澤 +11.6(+62.4)
藤本 ▲5.6(▲10.4)
園田 ▲31.2(▲25.9)

3回戦終わっての表情は、明暗が分かれた。当然、3連続でプラスの伊澤は充実の表情。藤本、園田は厳しい展開だなという思いが伝わってきた。

山下は最初の大きいラスを引いたことから、少し開き直っているようにも見える。

4回戦、並びは起家から園田、伊澤、山下、藤本

東1局は最初に聴牌したのは山下。一盃口が確定するを引き入れてのリーチ。このリーチに対してポイントの沈んでいる親の園田をツモ切り、裏ドラも乗り8000。

そんな山下は、親を迎えた東3局に以下の牌姿で9巡目に聴牌

ドラ

場にはが2枚。トータルトップ目の伊澤が仕掛けてドラまで打っていることを考えると、足止めを兼ねてリーチするかと思いきや、ここはダマテンを選択。仕掛けている伊澤のに声がかかっていないことと、直前に園田に2枚目のを切られたことによる間の悪さからの判断だったが、これが結果的には一発ツモ。

リーチをしていれば4000オールだったが、ここは1000オール。こういうこともあると当然考えてのヤミテンの選択ではあったと思うが、さすがに山下の表情も曇った。

1本場は伊澤がヤミテンのタンヤオ聴牌を園田からあがり1300は1900。

東4局は親の藤本が4巡目にリーチ。このリーチに手詰まったのは山下がを放銃して、裏も乗り、12000。山下にとっては痛い放銃となってしまう。

ロン ドラ 裏ドラ

しかし山下は粘り強い。1本場、藤本、伊澤の2軒リーチを受けてから、親の現物待ちののピンフドラドラをダマテンにしていたが、伊澤から降り打ちがないとわかると、追いかけリーチ。このを一発ツモで3000-6000は3100-6100。すぐにトップ目に戻る。

南入して点数状況は以下の通り、

山下 46100
藤本 32300
伊澤 25200
園田 16400

南1局、山下の勢いが止まらない。ドラ2枚のピンフを2巡目に聴牌してのリーチ。これを藤本から出あがり8000。山下が一人抜ける展開となる。

南2局は園田がリーチをかけてツモあがり1000-2000。裏が乗れば伊澤が親被りでラスまで落ちるが乗らない。

2着から4着までおよそ3000点。何とか伊澤にラスを押し付けたい3人。しかし、南3局に最初に聴牌したのは伊澤。をポンして、あまりなしのホンイツの聴牌。
これを藤本からあがり3900をあがり、伊澤は単独の2着目となる。

さすがにこの展開は伊澤圧倒的有利か。

そんなオーラス。配牌からメンツ手の厳しい園田は国士へ。伊澤は役牌のがトイツの配牌。このが第一打に山下から放たれるが、このは鳴かない。さすがに形が悪すぎるか。

その後、最初に聴牌をしたのは親の藤本。なんとドラのを重ねてのドラ2枚の七対子。とりあえず単騎に受けてヤミテン。その後、自分がを切っていることもあり、単騎にしてヤミテン。

その次巡に伊澤がをチーしてバックの聴牌。

その仕掛けを見た藤本は、ツモってきたを空切ってリーチ。

伊澤には安牌がない。そして、なにより国士に向かっている人がいるで、この1枚切れのバックの聴牌が、親リーチに対していかに分が悪いかも伊澤はわかっている。でも、こうなったらある程度は押すしかない。伊澤は今日、押し続けてここまで来たのである。
しかし、伊澤がこのをつかむのには時間はかからなかった。今日初めての伊澤の大きな放銃。

ロン ドラ 裏ドラ

この12000放銃で伊澤はラス目に。山下、藤本にも優勝の目が大きく出てきた。園田も満貫をツモると2着になり、新決勝方式に向けてチャンスが出てくる。

1本場。さすがに心が折れる放銃になったかと思われた伊澤であったが、今まで通り、素直に聴牌に向けて、字牌から切っていく。このあたりの切り替えはさすがだ。

そして周りの3名よりも先にのシャンポン聴牌。をツモれば、文句なく3着になるが、それ以外では裏ドラが乗らなければラスのままである。1手替わりで三色もある聴牌もあるが、ここはリーチを選択。

そして3巡後、をツモってきた伊澤はこのを軽くたたきつけていた。ここまで丁寧な打牌を心掛けてきた伊澤にも、さすがに気持ちが入ったのだろう。これは致し方なし。裏ドラも乗り、2000-4000。

ツモ ドラ 裏ドラ

並大抵の打ち手なら前局の放銃で、心が折れていただろう。しかし、伊澤の麻雀に対する愛情はそのようなことでは折れない。最後まで自分のやれることを見失わない姿勢。4回戦のオーラスも伊澤の強さに圧倒された。

4回戦(トータル)
山下 +37.0(+10.9)
藤本 +2.3(▲8.1)
伊澤 ▲11.6(+50.8)
園田 ▲27.7(▲53.6)

新決勝方式を迎える。伊澤と山下の差はおよそ4万点。藤本との差はおよそ6万点。

1局目、親は藤本。その藤本がシャンポン聴牌から3面待ちに変わったところでリーチ。安めのツモであったが、1300オール。


2局目、配牌からドラ2枚の園田がのリーチ。それに対して、をポンしていたのは伊澤がをポンして、の聴牌で優勝を決めに行く。トータルラス目の園田とは大きな点差があるため、このリーチには押しやすい。

もしこれが山下からのリーチだったら状況は違ったかもしれない。いや、この日の伊澤の腹のくくり方から考えれば、変わっていなかっただろう。

伊澤の声が静かな対局室に響き渡る。

「ツモ」

1半荘目に声が裏返った伊澤のそれとは違い、何かかみしめるような発声だった。

4位は園田賢。

苦しかった。対局後の彼を見れば、それがひしひしと伝わってきた。しかし、そんな中でも彼は「行き過ぎる悪い癖が出てしまった」と反省していた。

そんな彼から筆者は苦しいときに何をすればいいのか?何ができるのか?を必死に考えてそれをひたすら実行していく彼の姿勢から学ばせてもらうことは非常に多かった。

来期からはAリーグにいるであろう園田。今回は悔しい結果になったが、彼は近い将来、名実ともにトッププロとして麻雀界を引っ張っていく存在になる。筆者もそんな彼に少しでも近づいていきたいと思う。

3位、藤本哲也。

対応型。その通りの麻雀を4半荘通してやり通していたのではないだろうか。しかし、決勝が初めてという彼には決勝という場での戦い方というものが手探りだったのかもしれない。どこかで決めに行くような一手がなければならないのが決勝。

対応型の彼にその引き出しが、このクラウンから増えたならば、彼がGⅠタイトルを取る日もそう遠くはないだろう。


準優勝、山下達也。

この日、一番自分の麻雀が打てていなかったのは彼かもしれない。初めてのGⅠタイトルの決勝で競技麻雀を始めて1年の若者にいつも通りやれというのは酷なことかもしれない。しかし、いつもともに勉強している仲間としては、山下ならやってくれるのではないかという期待があったのも正直な気持ちだ。

そうは言っても一番悔しいのは本人であろう。

この経験からまた一つ強くなる山下に期待しつつも、自分もまけてはいられないという思いもより一層強くなった。

そして伊澤興。押すと決めたらしっかり押す、引くと決めたらしっかりと引く。当たり前かもしれないが、普段の麻雀と決勝の麻雀ではその線引きのラインが違う。その線引きが一番的確だったのは伊澤であり、勝因であろう。

そしてそれができたのは伊澤自身が自分の麻雀を信じて、それを4半荘貫きとおした結果である。それは並大抵の覚悟ではない。決勝に臨む覚悟が4人の中で一番決められていた彼はこの第10期RMUクラウンにふさわしい男である。

第10期RMUクラウンは伊澤興。


嶋崎究
(文中敬称略 文責・嶋崎究)



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