2011クライマックスリーグ決勝レポート

2011年度の締めくくりとなるクライマックスリーグ。一日目の結果は以下である。

1 仲川 +55.9
2 渡辺 +46.6
3 河野 +27.5
4 阿部 +18.8
5 多井 ▲14.3
6 谷井 ▲21.3
7 鈴木 ▲56.3
8 松ヶ瀬▲58.9

最初に見た感想は、それほど差がないな、というもの。もちろん、数字だけ見れば上から下まで115ptほどの差というのは、順位点が5-15のRMUルールでは決して小さくはない。しかしながら、2年前に同じ人数、システムで行われた時は、この段階で

1 +104.2
2 +38.7
3 +36.1
4 ▲ 2.1
5 ▲15.2
6 ▲39.2
7 ▲45.8
8 ▲77.7

こんな並び。また、去年の6人での開催時も、4半荘打って残り4回の時点で

1 +91.9
2 + 5.7
3 ▲3.9
4 ▲22.2
(以下足切り)
5 ▲27.3
6 ▲44.2

こんな並びで、いずれもトップ者が前半で大きく抜け出してそのまま押し切っていたこともあり、それに比べれば、という印象が強かったのだろう。

しかしながら6回戦で

(1卓)仲川:+20.5、河野:+10.3、鈴木:▲3.6、多井:▲27.2
(2卓)阿部:+27.0、松ヶ瀬:+14.6、渡辺:▲6.9、谷井:▲36.7

トータル5,6位がラスを引き、3,4位がプラスしたことで、

1 仲川 +76.4
2 阿部 +45.8
3 渡辺 +39.7
4 河野 +37.8
5 多井 ▲41.5
6 松ヶ瀬▲44.3
7 谷井 ▲58.0
8 鈴木 ▲59.9

決勝進出枠のボーダーの4位と5位との差が、一気に80pt弱にまで広がった。

ただ、残り2半荘で4位以内に入るには十分なアドバンテージであったとしても、あくまで目標は残り4半荘で1位になることだから、上位陣も4位以内に残るためだけの打ち方にはならないはず。そこを突ければ、下位陣にもまだチャンスがあるかといったところ。

7回戦は、1卓では渡辺が猛攻を見せ大トップ、谷井、多井が踏ん張ったことで仲川とのトップラスが決まり、首位が入れ替わる。

(1卓)渡辺:+42.0、谷井:±0、多井:▲10.6、仲川:▲31.4

一方、2卓では阿部の先行リーチをドラドラの鈴木が追いかけ、さらに追いかけた松ヶ瀬が

ロン ドラ 裏無し

高目ハネ満を阿部から直撃。さらにドラドラ七対子をツモって、差を広げる。その後、河野が猛追するが、松ヶ瀬が振り切る。
(2卓)松ヶ瀬:+34.7、河野:+18.8、鈴木:▲11.2、阿部:▲42.3

これにより、

1 渡辺 +81.7
2 河野 +56.6
3 仲川 +45.0
4 阿部 +3.5
5 松ヶ瀬▲9.6
6 多井 ▲52.1
7 谷井 ▲58.0
8 鈴木 ▲71.1

ボーダー間の差が一気に詰まり、阿部と松ヶ瀬は、別卓ながらほぼ着順勝負といえる差になった。

そして予選最終の8回戦、アガリを重ねていく多井の点数が5万点を超えている。オーラス、河野がピンフのみのリーチをかけ、ツモ裏条件を満たして鈴木を捲って2着浮上。

(2卓)多井:+35.2、河野:+4.9、鈴木:▲6.6、阿部:▲33.5

多井がトップラスで阿部を捲り、▲16.9で1卓の結果待ちに。

集計後に1卓を見ると、松ヶ瀬が6万点に迫る勢いを見せ、渡辺をダンラスに沈めている。

ラス前、染め模様でマンズが余っている渡辺に、テンパイ維持でを切って満貫放銃したのはややもったいない気がしたが、それでも余裕のトップで、決勝進出を決めた。

(1卓)松ヶ瀬:+29.7、仲川:+10.2、谷井:▲10.1、渡辺:▲29.8

これで決勝の4人が河野(+61.5)、仲川(+55.2)、渡辺(+51.9)、松ヶ瀬(+20.1)に決定。河野は周りが乱高下する中、本日オール2着でトータル首位に浮上。

多井は、昨日から見ていた人によればずっと牌の巡りに悩まされ続けていたらしいが、それでもこのスコアにまとめて最後形作りができるあたりは流石である。

一方の阿部は、最後連続ラスで、6回戦終了時に85pt以上差のあった2人に捲られたことになる。つぶさに見ていたわけではないので内容は分からないが、今期苦悩し続けていた阿部を象徴するような結果となってしまった。

8回戦終了後、多井が集計結果を見て一言、
「松ヶ瀬が残って良かったよ」

確かに、松ヶ瀬が沈んで▲16.9というスコアで決勝に残った場合、上位複数人と80pt以上の差となるため、いくら多井と言えど優勝のための選択は限られてしまう。しかしこのスコアなら、半荘2回あれば松ヶ瀬にも普通に優勝の可能性がある。

クライマックスリーグ初となる、競った状態での決勝。

連覇、昇格、初タイトル……、目指すものは人それぞれなれど、頂点を目指す戦いが始まった。

(9回戦)(起家から)渡辺、河野、松ヶ瀬、仲川

東場は最高打点が2,600、連荘もなく互いを牽制するようなジャブの応酬で終わるが、南1局に局面が動く。

ドラ

西家松ヶ瀬が手にした好配牌、わずか4巡でまとまって即リーチ。

リーチツモ ドラ

2巡後にあっさりツモり、裏も乗ってハネ満で大きく抜け出す。

南2局で河野が
リーチロン ドラ

松ヶ瀬の宣言牌で安目ながら直撃を取ると、1本場で
ドラ

ピンフのみながら先制リーチするが、実はその前巡からテンパイしていた松ヶ瀬が
ツモ ドラ
ダマでドラをツモってかわす。

オーラス、親の仲川が
ポン ポン ドラ

積極的な仕掛けを見せ、さらにも手中に入れたことで字牌が重い場を作り上げ、
ポン ポン ドラ

1人テンパイの3,000点をせしめるが、1本場で
ツモ ドラ

松ヶ瀬が役なしテンパイした次巡にツモってトップ。

(9回戦)松ヶ瀬:+29.9、河野:+2.8、仲川:▲8.9、渡辺:▲23.8
(小計)河野:+64.3、松ヶ瀬:+50.0、仲川:+46.3、渡辺:+28.1

優勝条件は、松ヶ瀬と仲川は、河野と1着順差の場合に多少の点差が必要な程度。トップが渡辺なら、場合によっては2着でもいい。

一番下の渡辺にしても、5万点以上の連対で河野を沈めるか、4万点くらいでも1人浮きで河野をラスにすれば届く程度の差でしかない。各自条件を確認して、最終戦がスタート。

(10回戦)渡辺、仲川、松ヶ瀬、河野

東1局からいきなり動く。松ヶ瀬が5巡目に


全部手出しでリーチ。直後の河野の手牌
ドラ

現物は1枚もなく、他家の河を見ると、4巡目に仲川がを、リーチ直前に渡辺がを切っている。これだけ見ると、が一番通りそうに見える。シャンポンはなく、1枚切れのを単騎候補として手に留めてはいなさそうだし、ペン(カン)チャンだとしてもさすがに不自然である。

ここで、河野の選択は。確かにこれもシャンポンか単騎しかない牌ではあるのだが、
ロン ドラ

一発で6,400放銃となってしまう。
これで松ヶ瀬が10戦目にして初のトータルトップに立つ。とはいえ、他の2人も条件が楽になったのは確か。

東2局は、河野が渡辺からメンピンの2,000点をアガって立て直しにかかるが、続く東3局で渡辺が
ドラ

この9巡目リーチ。すると次巡仲川が
ドラ

アガればトータルトップに立てる本手で追いかける。

先に仕掛けていた松ヶ瀬は撤退し、河野はを切って一応テンパイは取ったが
チー ドラ

山には1枚しか残ってなく、こんな形では次に危険牌を引いたら撤退するだろうから、実質は2人のめくり合い。

2軒リーチの時点で渡辺3枚残り、仲川6枚残り、河野1枚残りだったが、

リーチツモ ドラ

3枚残りの渡辺が引き勝ち、裏も乗せて満貫。松ヶ瀬に親かぶりさせてこの半荘のトップ目に立つが、トータルではまだ松ヶ瀬の方が上。

一方、絶好の勝負手を引き負けた仲川には、この後チャンスらしいチャンスは回ってこなかった。

東4局は松ヶ瀬がチーテンの1,000点で局を進め、南入。南1局、勝負の親・渡辺の3巡目
ツモ ドラ

イーシャンテンになったところで配牌から4枚あったを暗カンすると、雀頭のが新ドラに。一気にテンションが上がったであろう渡辺だが、この両面2つのイーシャンテンがなかなか埋まらず、8巡目にが重なった以降はツモ切りを繰り返す。

終盤に入って仲川が14巡目に
チー ドラ カンドラ

この片アガリテンパイを入れるが、16巡目にドラのを食い下げて形テンのドラ単騎に受け替え。すると河野が、自身の残りツモ1回で全くアガリのない手牌で4枚目のを持っているところから、を合わせ打ち。

すると、間髪入れず渡辺がチー、入らなかったはずのテンパイを入れさせてしまう。そればかりか、下がってきたハイテイ牌によって松ヶ瀬にもテンパイが入ってしまい、河野の1人ノーテンになってしまう。

河野としては、テンパイしているかもしれない渡辺をケアしたつもりだったのかもしれないが、普段の渡辺を知っていれば、追う立場で早々に暗カンしている親でダマテンに構えるなんてことは考えづらく、これはミスと言って差し支えないだろう。

こうして僥倖で親のつながった渡辺、こういった連荘の後にチャンスが巡ってくるとはよく言われる話だが、1本場は手が入らない。なんとかテンパイで親をつないでの2本場、

南家・仲川
チー チー ポン
西家・松ヶ瀬
ポン

7巡目にして早くも4つ仕掛けられる。そして、渡辺は9巡目に
ツモ ドラ
この形となる。もう、「形が悪い」とか、「ドラが出ていく」などと言って悠長に組み替えている場合ではないと判断したのか、当たるなら当たれと言わんばかりにドラを叩き切ってリーチに行く。

すると、3つ仕掛けてまだ両面2つのイーシャンテンだった仲川のところに、一発でが流れてくる。

さすがにこれは切れないと判断したのか、現物のを抜く。

一方、

ポン ドラ
1つ鳴いて聴牌だった松ヶ瀬。

ひるむことなく無筋を3枚並べ、自力でをツモって渡辺の親を蹴ったばかりか、この半荘もトップ目に立つ。

続く南2局もチーテンから仲川の親を蹴り、ラス前の親番では更に加点しようとリーチ。これはラス親を残す河野にかわされたものの、リードを保ったままオーラス。

点数状況は

持ち点(トータルポイント)
親:河野19,100(+37.4)
渡辺36,300(+39.4)
仲川26,500(+37.8)
松ヶ瀬38,100(+73.1)

現状トータルトップは松ヶ瀬。一見大差だが、順位点の絡みがあるためそうでもない。

河野はとりあえず連荘、次局ノーテンで伏せるためには12,000直撃か6,000オール。
渡辺は満貫直撃かハネツモか脇からの倍満。
仲川は6,400直撃かハネ満。

こんな具合に、まだ全員に現実的な優勝のチャンスが残っている。

最初にイーシャンテンに到達したのは、一番厳しい条件の渡辺。

4巡目に
ドラ

ドラを1枚抱えた七対子のイーシャンテン。

ドラドラ七対子ならリーチしての直撃かツモで逆転となる。しかし、次巡がアンコになり、少考して切り。この選択は筆者の目には疑問に映った。

もちろん、何も条件がなければ四暗刻への渡りは当然見るし、うまくテンパイすればダマでの直撃も狙えるのだが、この条件ではメンゼン縛りなのでしょせんリャンシャンテン。ハネ満以上なら何をツモっても一緒で、ドラが1枚とはいえすでにある状態なので、七対子に絞って、受け入れを最大限にしておきたいと思うからである。

結果論ではあるが、あと2巡を引っ張れれば、これが重なってドラ単騎のテンパイ、ドラはこの時点でまだ2枚山に残っていた。

5巡目には松ヶ瀬がイーシャンテン
ドラ
以外は出アガリの利かないテンパイになるが、を重ねて切ってこの形にしており、役アリ聴牌を組むための手順を正しく踏んでいるようには見える。

さらに6巡目に親の河野がイーシャンテンになり、

ドラ
8巡目のツモでを切って目いっぱいに構える。

9巡目、先にテンパイしたのは松ヶ瀬
ツモ ドラ

出アガリの利かないテンパイで、河にはが1枚切れている。決めていたのか、切ってノータイムでリーチ。

直後に河野が追いつくが、
ツモ ドラ

降りられない状況で手順にが出ていく形になっており、ゲームセット。

(10回戦)松ヶ瀬:+26.3、渡辺:+11.3、仲川:▲8.5、河野:▲29.1
(最終結果)
松ヶ瀬:+76.3、渡辺:+39.4、仲川:+37.8、河野:+35.2




こうして今期のクライマックスリーグは、松ヶ瀬が最後方からの大逆転でタイトル戦初優勝という形で幕を閉じた。松ヶ瀬はまだライセンスを持っていないので、今年も前2年と同様、ここからRMUリーグへ昇格する選手は現われなかった。

ただ、前期までとの決定的な違いは、クライマックスリーグを、R1を制したアスリートが取ったということである。

ここまで行く手を阻んできたRMUリーグ勢、確かに高い壁であることには間違いない。
河野は最後崩れたとはいえクライマックスリーグで存在感を示しただけでなく、年間通じて安定した戦いを見せていたし、多井はクライマックスリーグこそ決勝に進めなかったが、今期RMUリーグとRMUクラウン、そしてオープンリーグを勝ち、個人成績三冠でMVPである。

阿部や谷井にしても、今期のままであろうはずがない。しかしながら、今回の松ヶ瀬の優勝は、それが決して突き破れない壁ではないことを示してくれた。

松ヶ瀬とはファクトリーでよく会うが、今回の優勝にもそこで学んだ成果が表れていたと思う。

以前から打ち筋の評価が高く、さらには下半期にカップ戦、R1、クライマックスと立て続けに取ったことで選手ポイントを大幅に上乗せした松ヶ瀬、彼が次にこのステージに上がってくる時には、おそらくB級ライセンスとして、RMUリーグ入りの権利を懸けていることだろう。

これまでこの舞台に縁のなかった筆者も、後期リーグ戦で遅蒔きながらやっとこの舞台への進出権を争うR1へ初昇級したわけであるが、新年度は、ただ争うだけでなく、その先を見据え、地力を付けて臨みたいものである。



(文中敬称略 文責:宮田信弥)



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