第3期クラウン決勝観戦記




1月24日、第3期RMUクラウンの決勝戦が行われた。

このクラウンはRMUが主催するオープンタイトルで、一発、裏ドラ有り、3万点持ち3万点返し、順位点5-15という比較的オーソドックスな競技ルールになっている。





まだ3回目…

しかしもう3年経つのか…。

何故だかそんなことを考え色々な出来事が頭をよぎっていた。





決勝に勝ち上がった4名はいずれもプロで、当然濃い内容が期待出来るであろうメンツとなった。



まずは最高位戦B2リーグに所属する坂本大志プロ。

昨年、最高位戦主催のビックタイトルである、「最高位戦クラシック」を制した30歳の若手実力派だ。

本場所のリーグ戦でも好成績を残しており、その能力の高さが伺える。

対局前にも、『実績、経験とも格上の3人相手ですが、自分の持てる力を出し切れば結果はついてくるはずだと思っています』と、謙虚な姿勢の中にも自信を伺わせるコメントを話してくれた。



次に目下三冠王(マーズカップ、オープンリーグ、王座)と、このところの充実ぶりを見せるRMUライセンスA・藤中慎一郎。

『格上のお2人に今の自分をぶつけるだけです、どんな答えが返ってくるのか楽しみです』と、こちらも土田、古久根を強く意識しながらも自信ありげなコメント。



そして、3年連続クラウン決勝進出という離れ技を難なくやってのけるRMUライセンスS・古久根英孝。

『土田さんと公式対局での決勝戦は初めてなのでモチベーションはかなり上がっている。

本当はそういう風に意識してることがダメなんだけどね。

未だ達観出来ず、と。まあいつも通り自然体で臨めれば良いかな』

と、古久根らしい語り口。

このように自分自身を第3者的目線で分析できるのが古久根の強さでもある。



最後に坂本、藤中は当然としても古久根までもが強く意識せざるを得ない打ち手、RMUライセンスS・土田浩翔は、『うまく手が育つように打ちたい、麻雀を楽しみたい』と対局前に語っている。



ところでこの決勝戦には“3”という数字が良く出てくるようだ。

3は宇宙の大原則となる数字だというのをどこかで聞いた気がする。

私などでは意味までは良く解らないが…。

麻雀という小宇宙に挑んだ4人の記録を、私の雀力とつたない文章力でうまく伝わるかは微妙だが、私なりの解釈で書かせていただくとする。





1回戦。

坂本、古久根、藤中、土田の並び。

立会人の合図とともに坂本の指の先から放たれたカラカラと乾いた音が会場中に響き渡る。

すでに多くの観戦者が詰め掛けている。

起家坂本はさすがに緊張しているようだ。

次に珍しい光景が目についた。

土田がワイシャツの袖をまくって卓についている。

上着を着たままでも綺麗な模打を繰り返すことができる土田の袖まくりなんて見たことがない。

何か期するものがあるのだろうか…。



動きのない東1局、南家古久根が18巡目の打牌を静かに終えた。

が、西家藤中が牌山に手を伸ばしてしまう。

無論緊張はあるだろう。

しかし、坂本のそれとは意味合いが違う。

藤中は最近麻雀を打ってないんじゃないか?そんなんで大丈夫なのか!?

私の心配をよそに、東2局1本場、東3局と連続でアガる藤中だが、いずれも微妙なアガリである。



まず東2局1本場。

西家土田が、



 ドラ



この配牌から1巡目に、2巡目にを重ね、3巡目にをポン、5巡目にはドラのもツモ切りし、マンズのホンイツに向かう体勢を取る。

通常はこの手牌からホンイツに向かう人は少ない。

しかし土田は開局から何局か、特に決勝の1回戦となれば尚更、安易なアガリを拾いに行かない。

実は土田は東1局も、



 ドラ



9巡目にこれをテンパイしており、11巡目に藤中が切ったに声を掛けていない。

あくまでこの手牌に与えられた最高形を追うという意思の現れだ。

もちろん他家の進行状況にもよるだろうが、よほどの危険が迫らない限り三色の手変わりを待つのだ。

仮にをツモってしまった時は、この手牌はここまでとやむなくアガるだろうが、

ツモなら切りのリーチに出ているはずだ。

これが土田流である。



話を東2局1本場に戻すと、南家藤中は8巡目に以下のテンパイをしている。



 ドラ



ドラのカンチャン待ちだがチャンス手だ。

しかし14巡目ツモで打とし、カンに待ち変えしている。

この選択が私には微妙な気がしてならない。

を切るのはが良い時、即ちリーチじゃないとおかしい。

だがこの時、古久根、坂本はソウズの上目を1枚も切っていない。

おそらく、ション牌のが土田の仕掛けに切りづらかったのだろうが、

手を不本意に曲げさせられた格好となってしまった。

結果として2600のアガリは拾えるのだが…は山に2枚いた。



そして東3局。

親番の藤中、11巡目。



 ツモ ドラ



ホンイツに向かう途中にテンパイしてしまったというところか。

しかし場を良く見ると、藤中以外の全員が第1打というレアな捨て牌。

南家土田は2巡目もツモ切り、早いのは明白だがドラも切っており変則手ではなさそうだ。

西家坂本、北家古久根は共にソウズのホンイツ模様である。

ション牌なのは気になるところだが、

藤中からはも3枚見えのカンは絶テンである。

しかし藤中はヤミテンを選択、すぐに坂本からこぼれる。

確かに微妙ではあるがリーチの選択はなかったのか。

これだけ分かり易い場況はそうそうないだけにもったいない気がした。

やはりは4枚山だった。



そして東3局1本場。

前2局のアガリと藤中の第2打のを見て危険と判断した南家土田は藤中の親落としにかかる。

を鳴き、5巡目に1,000点のテンパイ。



  ドラ



そのテンパイ打牌の、更に7巡目にやはり土田からを鳴き、西家坂本も追いつく。



   ドラ



こちらは本手だ。

8巡目、土田はを掴まされると切りでテンパイをはずす。

すると10巡目今度は坂本が土田に切りづらいを掴む。

確かに土田の捨て牌はマンズのホンイツっぽくも見える。

小考してやむなくを手出しする坂本の仕草と表情を土田は見逃さない。

次巡、手からを切る土田は一連の動作がほぼ同じテンポで行われている。

結果は坂本のツモアガリとなったが、これも土田のシナリオ通りか。

土田の高い技術力が凝縮された1局となった。



続く東4局は古久根が500-1,000を、南1局は土田がリーチし、2,000-4,000をツモアガる。



そして南2局、最初にテンパイしたのは北家坂本。

4巡目のポンから入り、9巡目にツモで、



  ドラ



こうなったが、前巡にがポンされており難しい選択場面となった。

はション牌、はそれぞれ1枚切れだ。

坂本はテンパイを取りつつの手変わり待ちを選択、

のタテ引き、もしくはポン後のタンキ待ちにかなり気がいっていたと思われる。

次巡のツモはテンパイを外さずとスライドさせている。

が、無情にもその後2巡のツモはであった。河にはと並んでいる。

そこにテンパイ打牌でを叩き切ってきた南家藤中の手牌がこの形。



 ドラ



この手格好と北家坂本のマンズの余り具合からすると少々暴牌気味ではあるが、

藤中は勝負所と踏んだのだろう。

をポンし、タンキに待ち変えする坂本。

そして次巡の藤中のツモは待望のであった。



 ドラ



形だけで見ると決して良い待ちとは言えないが、

坂本がマンズ、土田は序盤でと並べ変則手ではない捨て牌、

藤中からはが3枚見えの場況。

勝算があると判断した藤中はリーチに踏み切る。

はこの時4枚山だ。すぐに土田の元にが1枚、次巡坂本の元にもが。

しかしこの時の坂本にはこのを止めることは出来なかった。



点数以上の大きなモノを得た藤中は、オーラスも7巡目リーチで先制、

一発ツモで2,000-4,000と土田をマクって1回戦を制した。



1回戦終了時成績

藤中 +29.0

土田 +8.5

古久根 ▲15.5

坂本 ▲28.1





2回戦

坂本、藤中、土田、古久根の並び。



東1局12巡目、親の坂本がまずテンパイ。



 ドラ



2巡後を引き入れてタンピンのでリーチを打った。

前巡、南家藤中の手牌はこう。



 ドラ



ここからはないと判断し、打の役なしダマテンでの手変わり待ちを選択。

坂本のリーチを受けツモ切りで追っかけた。

この時北家古久根も6巡目にドラのを重ね、

9巡目にはチートイツのイーシャンテンにこぎつけていた。

1回戦はただひたすら我慢の展開となり、

2回戦の初っ端に来たチャンス手も2軒のリーチに挟まれてしまう。

それでも16巡目にテンパイを果たすが小考の末にオリの選択をしている。

土田はしぶとくテンパイし、古久根の1人ノーテン。



続く1本場も古久根から坂本へ2,900は3,200の放銃。

いつも最前線に身を置きギリギリの攻防を制していく古久根だが、依然苦しい展開が続く。



東3局、土田しかアガれないような800オールの後の同1本場、

10巡目またもや坂本が先制、同巡藤中追っかけの図式。

ドラは



西家坂本 

北家藤中 



しかしここは親の土田がクイタンでかわす。



東2局2本場、全員の配牌がまとまっており、ぶつかりそうな予感。

ドラは



東家土田  

南家古久根 

西家坂本  

北家藤中  



まず動いたのは藤中、2巡目に土田が切ったをポン。

すると土田は3巡目にしてイーシャンテン。



 ドラ



5巡目には藤中が、



  ドラ



6巡目には古久根が、



 ドラ



更に7巡目には坂本もイーシャンテンとなった。



 ドラ



ここで土田はをチーして1,500のテンパイを取る。

すると次巡古久根はを引き入れ打とし、

カンで8,000のテンパイ、は実に3枚山。



そして本来坂本がテンパイするはずだったは藤中に流れ、

そのテンパイ打牌は土田への放銃となるだった。

藤中の手牌にドラ2枚以上はガラス、古久根と坂本の早さは捨て牌から読みとれるとしても、

場に2枚目のは実際は4枚目。

動かなければ連チャンは難しかったと考えられる。

しかし、これが土田の言う手牌を育てる打ち方なのだろうか?

土田の目には一体何が見えているのか、その肌で何を感じとっているのか?

残念ながら私の力量では理解することが出来ない。



東3局3本場、ここにきて初めて古久根に早いテンパイが入る。



 ドラ



6巡目のリーチに一発で飛び込んだのは藤中。

現物は無いところでのツモ切りは仕方ないようにも見えるが、

藤中の手牌はそこそこ整ってはいるもののたいした手でも無く、

早い捨て牌の古久根に対する準備不足感は否めない。

序盤から手牌をもう少しスリムにしておけば違う結果になっていたはずだ。



少しずつ点棒を削られ、勝負してるわけでもないのに放銃となってしまう。

そんな嫌な流れに入ってしまった初戦トップの藤中。

点数表示は15,700となっている。

しかしこういう状況で突如として手が入るのが藤中だ。



南1局、南家12巡目。



 ドラ



ツモればハネ満の大物手だが待ちが待ちだけに苦しい。

が、同巡テンパイの北家古久根からがこぼれた。

手牌からするとこのは明らかに引っ張り過ぎで古久根のミスと思われる。



ここまで、いまいちピリッとしない藤中と古久根を後目に坂本はピュアに真っ直ぐ攻めて行く、

それを正面から受けずに交わしていくということを選んだ土田は戦略と仕掛けを多用して応戦する。



南3局1本場。

西家坂本が6巡目リーチで、捨て牌は以下の通り。



Y



手役があるとすれば下の三色に見えるが、坂本の手牌はこの形。



 ドラ



1,000点差で2着目の土田の親番で勝負に出たトップ目坂本のリーチ。

安手の可能性は低く、ドラ入りの良い待ちか、

三色と読めばその関連牌はスジさえ打てず、現物以外は切りにくい非常に強い捨て牌になっている。

そこに一発で無スジのをツモ切りしてきた南家古久根は、



 ドラ



このダブ南ドラ1を坂本のリーチの1巡前にテンパイし、ダマテンに構えていたのだ。

坂本の河にはが置いてあり、古久根からすれば願ってもない状況となった。

は4枚山、は2枚山だ。

そして8巡目、3人目のテンパイを入れたのは北家藤中。



 ツモ ドラ



藤中は小考した。

待ちは坂本のリーチ後に現物となった

しかし捨てなければならないは当たってもおかしくない。

ここで打てばこの半荘のラスは確定的だ。

1回戦トップなだけにそれだけは避けたい。

いったん現物の切りで廻るか?

しかしは非常に切りにくい。

でテンパイ取らずの保留の一手も無くはない。

だが結局、藤中はを静かに河に置いた。

裏も乗り8,000は8,300の放銃はあまりにも痛すぎた。

放銃を責めるのは少し酷だが、藤中にとっては前半戦最大の山場だったように思う。



そして悔しそうに思わず次のツモ山に手を伸ばす古久根。

しかし指先にはの尖った感触だけが突き刺さっていた。

助かったのか、目が無いのか。

恐らく古久根の心境は複雑だったに違いない。



これが決定打となり、2回戦は坂本がトップを取った。





2回戦終了時成績

土田 +20.4

坂本 +7.1

藤中 ▲2.6

古久根 ▲24.9





この時点での心境を、後にそれぞれが次のように語っている。



土田

『坂本をレベル的に遜色ないと評価していたので若い坂本が走る展開を予想していた。

メンゼンタイプが3人なのでメンゼン場は不利と判断し仕掛けを多用した』



坂本

『1回戦はガチガチに緊張していたが、ラスを引いて良い意味で開き直れた。

悪くない、戦える』



藤中

『気持ちをリセットし、立て直すことだけを考えた』



古久根

『ガマンするしか無い展開の中でなんとかついて行ってるだけだが、

最終戦までに40ポイント程度の差なら展開としては向いているはずだ』





3回戦

土田、古久根、藤中、坂本の並び。



東1局7巡目、ミスのない緻密な手順で南家古久根が先制リーチ。



 ドラ



5枚山のを一発でツモり、裏3枚のオマケ付きで3,000-6,000。



続く東2局。

今度は8巡目に南家藤中が、



 ドラ



このピンフドラ1をテンパイするが、ダマテンに構えてしまう。

直ぐに土田から②がこぼれ2,000。

振り込んだ土田は勿論、全員が怪訝そうに藤中の手牌と場況を見渡す。

確かにハネ満を引いて迎えた東家古久根の捨て牌は、スピード感がありかなり脅威ではある。

しかしは特に悪いわけではない。

仮に親とぶつかったとしても、ここは勝負しても良い手牌と場面ではなかったのか。

微妙な場面で弱気な選択をしてしまう藤中は、2回戦のラスを引きずっているように見えてしまう。

特に土田、古久根にはその辺りを確実に見透かされている。

一見無難な選択は、決勝戦に限って言えば、敗者のする選択になり得る可能性を多分に秘めている。

相手が強ければ尚のことは言うまでもないだろう。



そして南1局、北家坂本の配牌がこれ。



 ドラ



しかしツモがスゴい。

と引き込み、



 ドラ



これで6巡目リーチ。

力の入る坂本の指先は、4巡後にを卓上に踊らせた。

値千金の4,000-8,000で開局以来声のない古久根を捲りトップに立つ。



続く南2局も坂本が2巡目にピンフドラ1で先制リーチ。

イーシャンテンで粘る東家古久根から打ち取り、3,900。



南3局。

今度は、東家藤中の配牌がスゴい。



 ドラ



第1打、

そして2巡目、これまでの展開に少しジレてしまったかのような北家古久根の軽い仕掛けが入る。

すると藤中はと立て続けに引き込み、4巡目にして18,000のテンパイ。

5巡目、これに飛び込んでしまったのがこの要因を作った古久根。



さすがの古久根も展開の悪さに加え、悪い鳴きグセが出た上の放銃となれば…と思っていた次局。



南3局1本場。

テンパイ一番乗りは意外にも10巡目の古久根。

しかし、手牌はこれといった手変わりのないピンフのみである。

待ちのはまずまず良さそうには見える場況だ。

古久根は即リーチせず、3巡後にツモ切りリーチを打った。

藤中が古久根から見て4枚目のをツモ切った時だ。

結果はを一発でツモり、裏ドラはそのとなって2,000-4,000。

この手を満貫に出来る打ち手は少ないと思われるが、前局を踏まえて考えると、

これはもう古久根にしか出来ない芸当のように思えてしまう。



南4局。

トップ目の東家坂本に2,600差で迫る北家藤中の手牌は、6巡目にこの形。



 ドラ



しかしツモが効かずツモ切りが続く。

11巡目、東家坂本が、



 ドラ



この形から古久根が切ったにポンテンをかける。

苦しかった配牌からと引き込んだタイミングでテンパイが取れる牌が出てきた。

巡目も巡目、わからないでもないが…と思っていると、

坂本の動きでテンパイした古久根からリーチが入る。



 ドラ



ツモり四暗刻、待ちはこの巡目にして2枚山。

しかし6巡目からイーシャンテンだった藤中がリーチの現物のをツモ切り、坂本は事なきを得た。



南4局1本場。

12巡目、ドラ1で先制リーチの坂本が、一発でツモり4,000オール。

点数表示は60,000点を超えた。

こうなると前局のアガリが生きてきたかに見える。



南4局2本場。

一気にたたみ掛けたい坂本は、15巡目にリーチ。



 (※アンカン) ドラ



はなんと4枚山。

そして17巡目坂本がツモ切った5に南家土田が大長考する。

土田は開局の親カブリ以来なす術なく残り点数は1,300となっているがその手牌。



ドラ



土田は坂本のリーチの1巡前にテンパイし、ダマテンに構えていた。

このままだとハイテイが坂本に回る。

土田が考えたのは、坂本のツモ山に坂本のアガリ牌があるかどうかとずらした時にどうかということ。

ツモをずらすだけならポンでも良いがミンカンをすればずらした上に坂本がハイテイになる。

もしかしたら、リンシャンかハイテイにがいるかも知れない。



土田はミンカンを選択、会場内になんとも言えない異様な空気が走る。

そして注目の坂本のハイテイ牌がツモ切られた。



「ロン」



発声したのは古久根。



 ロン ドラ



土田のミンカンでもドラになり、

マンズ1メンツが全てドラという、

ホウテイドラ3の8,000は8,600に放銃という恐ろしい結果となった。



着順に影響はないが、坂本にとっては非常に後味の悪い終わり方となった。

ただでは死なない土田と粘り強い古久根に、坂本も恐怖を感じずにはいられなかったであろう。





3回戦終了時成績

坂本 +43.7

藤中 +10.6

土田 ▲23.3

古久根 ▲31.0





4回戦

この頃から坂本の健闘を聞き最高位戦の若手、中堅どころが十数名駆けつけ大応援団となっている。

ギャラリーは50名を越え会場は異常な程熱気に包まれている。



東1局、土田、藤中、古久根、坂本の並び。



東家土田は4巡目にこの形。



 ドラ



そして捨て牌がこう。







その後、と引くが、をノータイムでツモ切った!?

(うわっ!すごいな)

と、毎度のことながら思ってしまう。

親の7巡目、高目ピンフドラ1のテンパイをとらない人が果たして何人いるだろうか。

しかし三色狙いならのターツは要らないはず。

が雀頭になればチャンタまでつく。

だが次巡のツモでを重ねリーチとする土田に私は言葉を失う。

このツモを予想していたということなのか?!

ドラ受けを残したということもあるだろうが、完全に常人の域を越えているように思う。



なんとこれに飛び込んでしまったのがトータルトップの坂本。

ドラを2枚抱えていた坂本は手を広げ過ぎて土田に対する対応が出来ていなかった。

のトイツ落としで7,700はあまりに痛い。



東1局1本場。

4巡目、土田がダブ東をポン、9巡目のテンパイがこの形。



   ドラ



はこの時点で4枚いる。

ついに土田が来るか?と思わせた。

しかしツモの発声は以外にも藤中。



というのも、藤中の配牌は、



 ドラ



こんなバラバラだったからだ。

しかしその最終形はなんと、



 ツモ ドラ



この2,000-4,000。スゴいツモである。

藤中はこういう手の入り方をすることがよくある。

あの配牌からこのアガリは出来過ぎとも思える。

土田の仕掛けが怖いのも解るが、リーチの選択はなかったのだろうか?

決勝戦という特殊な戦いにおいては、腹をくくらなければならない局面が幾度となく訪れる。

そう、今この場は戦場なのだ。

しかし今日の藤中は手が来ているにも関わらず、そういう局が少な過ぎる気がする。



土田はアガれなかったこともショックだったが、

このアガリを見て藤中の優勝はないと思ったと後に語っている。



東3局1本場。

東家古久根が9巡目に、



 ドラ



この確定ハネ満リーチを打つが流局。

はたったの2枚しか山にいなかった。



東3局2本場。

10巡目、最初のテンパイは北家藤中。



 ドラ



一手変わりピンフジュンチャン三色ドラドラまであるが、は第1打に切ってありフリテン。

とはいえソウズの下は場況が良く、実際にこの時点で5枚山だ。

そして11巡目、西家土田がドラのをチーして、



Y ドラ



この満貫テンパイ。は残り2枚。



これを見て藤中は次巡ツモでカラ切りリーチと勝負に出る。

決着は17巡目、藤中がを掴み8,000は8,600の放銃。

藤中が1巡ヤミテンにしたせいで南家坂本にドラを切られ、それに対して動きが入った。

藤中が即リーチなら、スジとはいえション牌のドラは坂本も打たない。

土田の捨て牌からホンイツとは解りづらいが、みすみす手を進ませてから勝負に出たのでは、

待ちがフリテンなだけに無謀だったかも知れない。



東4局、ラス目の坂本の親番。

2局の流局連チャン後にリーチのみの2,000は2,600を藤中から、

3本場ではチートイツをリーチでツモアガリ、

3,200は3,500オールと一気に土田と微差のトップ目に躍り出た。



局は進み南3局。

今度は古久根がラス目で親番を迎える。

14巡目と遅いながらもリーチ。



 ドラ



一発でツモり、まずは4,000オール。

流局を挟んで、またも15巡目と遅いテンパイながらピンフリーチ。

2巡後にツモって裏1の2,600は2,800オールとトップ目に立つ。

またもや土田はトップの座を奪われてしまう。



以降の2局は流局となり、乱打戦を制した古久根の初トップで終了。

トータルトップの坂本は3着に踏みとどまったが、藤中はラスまで叩き落とされる結果となった。





4回戦終了時成績

坂本 +30.3

古久根 ▲3.7

土田 ▲12.6

藤中 ▲17.0





最終5回戦。

土田、坂本、藤中、古久根の並び。



東一局、西家藤中が12巡目リーチ。



 ドラ



しかし1枚切れのはすでに古久根の手の内にトイツであり、藤中のチャンス手は空振りに終わる。



東2局1本場。

イーシャンテンが一番早かったのは北家土田。

4巡目にこの形。



 ツモ ドラ



偏りのない平均的な場況で、土田は打としたが、

受けがフォロー出来ている分、を切るべきだったのでは…。

2巡後に引いたのは裏目のだった。



追い抜いたのは11巡目の古久根。



 ドラ



ピンズの上目は非常に高くなっていて、

東家坂本と北家土田の捨て牌からは危険なシグナルが読み取れる。

そして14巡目、東家坂本が堪えきれずに



 ドラ



南家藤中の切ったにポンテンをかけてしまう。



と言うのも、坂本はこの決勝を通じ、こうした軽めの仕掛けを時折見せてきた。

しかし、ここまでは全て良い結果に終わっていた。

決勝戦の私の経験上だからサンプル数としては少なすぎるのかも知れないが、

このような動きを何度かしてしまうと最終的には良い成績は残せていない。



話を戻そう。

同巡、追いかける親の坂本がリーチで押し返してくる心配がなくなった古久根は、

待ちの悪さはもちろん土田も気配が出ているので、

不安を抱えながらもツモ切りリーチと大勝負に出た。



坂本の待ち3枚山対古久根カンは意外にも3枚山、

更に土田もようやくテンパイは1枚だけ山にいる。

息をのむめくり勝負は最後のツモ番で古久根がを静かに手元に引き寄せた。

裏ドラ表示もで2,00-4,000。



土田の選択ミスによる、ハネマンのアガリ逃し、

そして坂本の仕掛けがなければ完成しないこのアガリ。

我慢に我慢を重ねてきた古久根が、

この並びの順位点を含めると坂本を交わしついにトータルトップとなった。



東3局、先制したのは北家坂本。



 ドラ



12巡目のリーチは高目ハネ満の大物手だが、2巡後に東家藤中も追いつく。



 ドラ



と、こちらは三色確定7,700で、テンパイ打牌は

坂本のリーチ後一発目のツモも

藤中がヤミテンにする気持ちは痛いほど解るが…。



結果は、藤中がテンパイ即ヅモで4,000オールとなり、今度は藤中がトータルトップとなる。



続く東3局1本場。

11巡目、藤中がたたみ掛けるように先制リーチ。



 ドラ



ならば仕方ないと、同巡テンパイの南家古久根もリーチ。



 ドラ



藤中の一発目のツモは、無情にもアンコになるはずのだった。

裏も乗り、8,000は8,300を藤中から直取りした古久根が再びトータルトップに返り咲く。



4,000オールを引いた次局に難しくなりそうなイーシャンテンからすんなりテンパイするを引いた。

ドラもありリャンメン待ち、役もないならリーチ…。

藤中はその程度のレベルはもう卒業しなければいけないところにきている。

私と藤中の関係性も含め、彼にはいつも厳しくなってしまうが、

が場況的に良いならわかるが、むしろかなり悪い。

ならばこれだけ手変わりがある、つまり本手ではないなら、

せめて2、3巡は様子を見てほしかった。

藤中がリーチをしなければ古久根もリーチするわけがないことは言うまでもないだろう。



南1局1本場。

3巡目、南家坂本の手牌。



 ドラ



ここから上家に2枚のを打たれ、思わず飛びついてしまう。



この時点で完全に勝負あり。

厳しい言い方をすると、その前の東場の親番で動いてしまったことにより、

ライバルに決定打とも言えるアガリを生ませてしまった。

劣勢に追い込まれている時に、こんな仕掛けが成就することはないだろう。

しかも劣勢に追い込まれている要因を作ったのは他でもない自分なのだ。

この仕掛けにより、古久根にテンパイが入り、これに自ら5200の放銃となった。



南3局。

最後の親番を残す藤中が、9巡目にリーチのみで粘ろうとするが、

古久根にクイタンで捌かれ、第3期クラウンの決勝は幕を閉じた。





私なりにそれぞれの敗因と勝因を考えてみた。



まず藤中。

勝負どころの捉え方、腹をくくらなければならない局面の捉え方があまりにもズレ過ぎていた。

実戦不足、これに尽きると思う。

本当に腹をくくった麻雀を打てるようになった時、彼は間違いなくトッププロの仲間入りを果たすだろう。





坂本。

バランス的には決して悪いとは思わない。

リーグ戦ならそこそこ良い成績を残せるはずだ。

戦略的リーチや軽い仕掛けは相手が弱ければ通用するが、

今回は相手が少し悪過ぎたのかも知れない。





土田。

正直私は土田がなんでこんな負け方をしたのか解らない。

ただ1つ思ったことは、今回のような麻雀ではなく、力で相手をねじ伏せるような土田麻雀が見たかった。





そして古久根。

勝因はスキルが高いことは言うまでもないが、

やはりその粘り強さと、いかなる状況においても自身を客観的に見ることが出来るということなのだろう。





最初に彼が言った、

“未だ達観出来ず”

この言葉が妙に心に残った。






文責 阿部孝則




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