激闘!2008スプリントファイナル

対局者

まず、試合前の選手コメントを対局者の紹介にしたい。紹介は会場到着順である。

合田雄亮「今日は会場に一番乗り。行けますよ」
RMUアスリートの中でも急速に力をつけている若手だが、どうやら天然系らしい。

中村浩三「内に秘めた目標を達成したい」
内面の繊細さを感じる打ち手だ。繊細さは時としてバランスを欠くことになりやすい。今日はそれがどう出るか。

吉田信之「去年は何もできなった。今年は納得のいく麻雀で勝ちたい」
昨年に続いてのファイナル進出。胸に秘めた想いが伝わってくる。

平山友厚「普段通りに打つ」
麻雀のキャリアも技術も最上位の古豪は笑って答えた。第2期オープンリーグ優勝。

内田良太朗「初めてのファイナル。最後まで諦めませんよ」
そう、折れない心を強調した。積極的な麻雀を打ち、最後の切符を手に入れた選手である。

江原翔「気負わず、普通に。自分らしく」
第1打に字牌を選ばない男。穏やかな風貌からは信じられない大胆さを持つ。

山下健治「全力で頑張る」
コメントは平凡だが、麻雀は技術の入った不思議系。狙える手役はとことん追及するタイプだ。

山谷克也「落ち着いて、打ちたい」
丁寧に牌姿と牌勢を構築していく本格派。第1期クラウン優勝。

1回戦
A卓の並びは江原・合田・吉田・中村。
東1局、中村にタンピンテンパイが入るが、それをヤミテンで回す。テンパイ3巡後、意を決したようにをカラ切りしてリーチに向かう。
戦闘意欲満々の親、江原から一発で出て、8,000をアガる。
うまくいったようだが、即リーチに踏み切れなかった点に緊張が感じられた。

対する江原、フリコミで始まったが、リーチに一発で危険牌を切れるということは、彼自身のスタイルで打てているようだ。

東2局1本場。合田が珍しく中盤で少考する。その結果1人ノーテン。
流局時の江原の手牌。

 ドラ

合田の少考の内容は、を握りつぶしたものだった。
普段はかなり攻撃的なスタイルの合田だが、しっかり麻雀に入れている。

そんな合田、続く東4局。

 ドラ

ヤミテンで回し吉田から6,400をアガる。

ここでは放銃にまわった吉田だが、2回目のスプリントファイナルにかける思いは大きい。
南3局の親番の吉田、のシャンポン待ちでリーチ。
これを中村からアガり、12,000と追い上げ連荘する。
対する中村、焦りからか南3局3本場にドラタンキチートイツをリーチに出た。
オーラスに親番がある中村だけに、ヤミテンやマチカエなどの選択肢もあったかもしれない。
そう考えていると、江原の追いかけリーチを受けて、その心配が現実のものとなった。
一発でロン牌を引かされ、8,000のフリコミだ。

オーラスは、2着取りの吉田が2フーロして中村から1,300をアガり終了。

B卓、並びは山下・内田・平山・山谷。
東2局1本場、親の内田がリーチ。親番で得点をたたき出すのが信条、という内田はここで流れをつかみたいだろう。
これに追いかけたのは山下。ドラ2枚のチートイツで待ちは
ドラ入りのチートイツはかなりの勝負手である。しかしながら、待ちの追いかけリーチはかなり独特とも思える。
そして、当然のようにツモって3,000・6,000。不思議系の本領発揮である。

しかし、内田もすぐに5,200や4,000オールで追いかけ、山谷も2,000・4,000をツモる。こちらの卓も打撃戦となった。

追いていかれたのは、意外にも古豪平山。
しかし、数々の修羅場をくぐりぬけてきた平山、そう簡単には勝たせまいと、南3局の親番でリーチを掛ける。



実戦ではめったにお目にかかれない6メンチャンだ。
そしていとも簡単にをツモり、裏ドラがで4,000オール。このアガリで、場は更に緊迫していく。

迎えたオーラス、トップの山下からラスの山谷まで6,800点差の大混戦だ。
そして、それを制したのは平山。3着目からリーチし、



高目のをツモり、2,000・4,000で幕を閉めた。.

2回戦
A卓の並びは江原・山谷・合田・吉田。

東1局 西家合田の4巡目。

 ドラ

ここにをツモり、打。この辺が若手らしい辛さ。
不自由なペンチャンよりも、リャンメン変化の可能性を優先している。のポンテンでカン待ち。ほどなくを引き待ちに変化する。
すると、ここで山谷からリーチ。合田のマチであるを4枚使いきってのでのリーチだ。合田のツモ切りが刺さって1,300。点数の問題ではなく、合田のチャンスをつぶす大きなアガリであった。
気落ちしたかのように見えたが、合田の手は落ちない。続く東2局、合田がすばやく仕掛けて3,000・6,000をアガる。

    ドラ

その後もアガり続けて合田の1人舞台だ。
オーラス、吉田の親番。ラス目の吉田が、リーチと出た。

 ドラ

しかし、ここでトップ目の合田が追いかける。



ここから無筋のを切って終局を目指す。吉田としては、内心気が気ではなかっただろう。しかし、これが吉田に幸いした。2軒リーチに手詰まった江原が打。吉田のアガリとなり、裏ドラがのって12,000。ラスと2着が入れ替わる。
仕切り直しのオーラスは、合田の1,300で終了。
この半荘は、良くも悪くも合田の独り舞台となった。
しかし、吉田の華麗な追い上げがあったことは忘れてはならない。
A卓に注目している内に、B卓では内田がアガリ倒していた。

きっかけは東2局。

 ツモ   

全く危な気がない。ひとたびチャンスをつかめば怒涛のラッシュが待っている。
やはり、最後の椅子を勝ち取った勢いがそのまま残っているのだろうか。
最後もダントツのトップ目から1,000・2,000をツモって終了した。

3-4回戦
2回戦が終わって、並びができた。4回戦が終われば下位4名が足切りになり、得点持ち越しの5・6回戦が待っている。こういった戦いの常として、無理な戦いを強いられることも起きよう。戦い巧者なら腕の見せ所であろう。

3回戦A卓。
牌勢に恵まれず、終始苦しんだ山谷が意地のトップを取る。
オーラス、ヤミテンに構えたのが功を奏してのマンガンだ。

 ロン 

これで4回戦に望みをつないだ。

3回戦B卓。東1局親の江原が、7巡目にテンパイ。

 ドラ

タンピンサンショクできあいのリーチ。ハネマンまでもくろむ。

普段なら確実に12,000を取りに行くこともあるのだろうが、この辺りが持ち点に制約のある戦いなのだ。
一方、南家吉田の手牌はマンズのメンホン2シャンテンであった。しかし、リーチと同時に手牌にが飛び込む。ダマテンならすぐにでも出て行ったかもしれない。吉田はゆったりと手牌を崩してゆく。そして、4巡後には吉田の手牌の中に、決して出ることのないが2枚と、が1枚しまいこまれた。
これで流局かと見ていると、終盤合田が江原に放銃。ウラドラがで痛恨の18,000となった。後で合田が言うにはオリ打ちらしい。手詰まって手牌に3枚のを頼りのワンチャンスだそうだ。
この半荘、合田は箱を割ることになる。
「一気に集中力を欠いてしまった」合田敗戦の弁である。

しかし、そんなインパチが出るもこの半荘のトップは吉田。
南1局の江原の親を役ナシのツモアガリで落とした後の親番で爆発した。

 ドラ

この手牌を合田から出アガリ12,000。続く1本場も、

 ドラ

7巡目からゆったりの対子を落とし、タンヤオに振り替えてヤミテン。中村から12,000をアガる。
3本場にはチートイツのリーチをツモり、3,200は3,500オール。

ここまで苦しみながらも2着に滑り込んできた吉田が、3回戦にしての大トップ。
優勝への最短距離につけた。

4回戦スタート時の順位とポイントである。
1位 吉田  +74.0
2位 平山  +17.9
3位 内田  +14.3
4位 江原  +12.2
5位 山下  +6.3
6位 山谷  ▲12.1
7位 合田  ▲19.0
8位 中村  ▲94.6

4位までに入らないと4回戦終了時に足切りになる。
トップの吉田がダントツ、その他は2位から7位まで約40ポイント差と、1回の着順で簡単にひっくり返ってしまう。
そして4回戦、A卓の並びは内田・吉田・合田・山下。内田が着々とポイントを重ねていく。失点するのは、合田と山下ばかり。特に山下の持ち点は1万点を切ってしまった。
オーラス、合田が無理を承知の仕掛けをし、カンでドラを増やして、トイトイドラ5のイーシャンテンに。しかし、この局を制したのは山下。合田からホンイツイッツー役牌で12,000。
そのあともアガリつづけ一時は内田をまくってトップ目に立つが、最後は内田がアガリ返し、マクり返す。内田にしては、きっと薄氷を踏む思いだっただろう。

A卓が先に終わり、5回戦への進出は、吉田と内田が当確、山下がB卓の結果次第になった。

さて、B卓。
平山・江原・山谷・中村の並び。ここでは、平山が飛び出した。東場が終わった時点で7万点オーバーのビッグイニングだ。しかし、その失点の大半は江原と中村のもの。山谷は嵐に耐えて失点を数千点に抑えている。
A卓もそうだが、どうやら若いアスリート達の麻雀が「出過ぎている」ようだ。アガリに対する貪欲さはあっていい。しかし、とても結果が伴わないような仕掛けやリーチは、余計に場を乱してしまうだけなのだ。
南3局、山谷の親番を流してラス親を迎えたのは中村。連チャンしなくては、5回戦はない。しかし、5回戦に向かうにはこの親番で、およそ10万点を叩きだす必要がある。普通ならもっと前に「投了」の局面だろう。親で役満なら約2回、マンガンなら8回が最低条件だ。それでも、諦めずにアガリにむかう。
そのころ、山谷にも投了が近づいていた。



この手牌で場に2枚目のを悔しそうに見逃す。四暗刻でしかアガるつもりはないのだろう。 
その間中村が、無理やりアガリに向かう。山谷には、指をくわえて見ている他ない。

次局も中村がリーチ。すると、山谷の「投了」を覚悟した手牌が、「投了」を拒否するように育っていく。先に終了しているA卓の結果次第では届くという、決断のリーチだ。



山谷の意地の一発ツモ、ウラドラで6,000・12,000。逆転4位に滑り込みかと思われた。その時点で4位の山下は青い顔をしている。

ほどなく集計が出る。すると…写真判定、山谷はハナ差足りなかった。

かくて、決勝5回戦は吉田・平山・内田・山下の4者となった。

5回戦
並びは内田・吉田・山下・平山。この半荘で、下位の内田と山下は、優勝を射程圏内に入れていきたい。吉田とほぼ並びの平山は、マッチ勝負をにらんでいる。

東1局、内田と吉田にチャンス手が入るが、それを平山が300・500で流す。静かな滑り出しになった。
東2局、親は吉田。南家の山下がリーチを打ったのは11巡目。 

 ドラ

それまでヤミテンに構えていた親の吉田、手替わってピンフイーペーコーになったところで追いかけリーチ。



2人テンパイで流局かと見ていると、内田がなんと残りツモ1回でリーチ。



ドラ3枚使いのピンフ、高めイッツーである。バイマンツモまでもくろむ。
しかし、ここではアガリは発生せず、流局した。

東2局1本場。供託のリーチ棒が3,000点落ちている。親の吉田が積極的に仕掛けて、

   ドラ

待ちは決して良くないが、高めのなら18,000まである。これをアガれたら吉田は大きく優勝に近づく、かと思われたが、鳴かせた上家の内田が当然のようにリーチ。



手牌を短くした、吉田と真っ向勝負と出た。危険は承知。吉田からの放銃なら、混戦になる。しかし、この局アガッたのは、平山。



ドラトイツのピンフを吉田から打ち取る。リーチ棒4本付き1本場は、マンガンを上回るアガリになった。なかなか、一筋縄ではいかない。やはり大事な局面を押さえてくる。
東3局、ドラは。5巡目に吉田がドラをツモ切った。4回戦では、あきれるほど慎重に打ってきた吉田が、ここにきて大きく勝負に出ている。やはり、1年越しの思いは強いようだ。
すると、吉田の早いドラ打ちを見た平山が、をポン。吉田の手を勝負手と読み、かわしにきた。さらには、テンパイを入れた内田のリーチがやってくる。

 ドラ

しかしこれに吉田は全力で向っていく。全くのノーガードだ。すると、危険牌をつかんだ平山は手牌を回しはじめる。この辺がうまい。見ていて唸らされるところだ。そして、13巡目に吉田がメンホンイーペーコーをテンパイ。



リーチの内田がをツモ切り、8,000。前局に勝負手を潰された焦り、というよりも勝ちたい、という気持ちがひしひしと感じられる。
東4局、またして吉田が一色手に向かう。2フーロして、

   ドラ

ツモは3,000・6,000。局の序盤はゆったりと、色によせてゆき、ペンを仕掛けてからは、スピード感のあるアガリだった。
続く南1局は、山下が2,000・4,000をアガる。
予想はしていたが、壮絶な打撃戦だ。

南2局、平山がトイツ手に決め打つ。

 ドラ

この手牌にツモで打。次巡ツモで打とした。
そんな時、なんとしてもこの半荘の上位に喰いこんで行きたい内田は、をポンして前に出る。致し方ないとは言え、北家の2フーロは親のツモ番を増やす危険な行為だ。案の上、親の吉田はドラのまで打ちだして前に出てくる。
そして、その動きによって平山がテンパイ。



ツモなら、平山の優勝が決まるだろう。

しかし、この手牌はここまで。平山がツモ切ったが内田に2,600の振り込み。悔しいだろうが、平山は淡々と点棒を払う。自分がアガれなかったとは言え、結果的には助かった形になるのが吉田。もちろん、このときの平山の手牌がわかるはずもないのだが、雰囲気は察していたのに違いない。

ラス前は内田が2,000・4,000をアガり、迎えたオーラス。
ラス親の平山がひたむきにアガリにかけるが流局が続く。3局の流局を挟んで、ノーテン罰符の収入で平山が2着になるが、それで満足するほど淡泊ではない。目的はやはり、吉田を引きずり落としてのトップだろう。アガリをひたすらに取りに行こうとする。
しかし3本場、吉田がをポンして6巡目のポンテン。そのまま吉田がアガリ切り、5回戦のトップを決めた。

5回戦までの成績はこうなった。

吉田 +88.6
平山 +68.0
内田 +29.2
山下 +12.3

順位点があるので、平山はそれほど厳しい条件ではない。内田・山下は、条件が厳しいが、吉田と平山を沈めればチャンスは訪れるだろう。

そして、スプリントファイナルの本当のファイナルラウンドが始まった。

最終6回戦
並びは、内田・山下・吉田・平山。
東1局、親の内田の6巡目。

 ドラ

ここにツモ。普通の打牌ならなのだろうが、好牌先打でをツモ切る。すると、染め手模様の下家の山下がカンでチー。またしても一色場か。北家の平山にピンズのメンホンテンパイが入る。



ツモが利かない親の内田が親番を守るべく、終盤に動いて形テンを入れる。山下もマンズをチーしてテンパイ気配。親番を維持するため内田がハイテイ牌をツモ切ると、その牌に吉田から、「ロン」の声。

 ロン ドラ

5,200。内田にとっては痛いフリコミと親流れであった。

そして、いい形で向かえた吉田の親番。東3局1本場、9巡目親の吉田のリーチは3メンチャンだ。

 ドラ

を一発で引き、4,000オール。強い、ただそう思った。

吉田は、常に勝負所で手が入っているイメージがある。それは、どこまでも諦めない精神と、このスプリントファイナルにかける気持ちが、好牌を呼び込んでいるのではないかと思う。いや、そう思わざるを得ない。
振り返ってみれば、スプリントカップでは過去2回、苦しい状況から大きく叩いて決勝に残っている。そしてこのファイナル6回戦でも、吉田は決して楽な戦いをしてきたわけではない。だが、苦しい中で2着や3着をしっかり取りに行けているのが、とても印象的であった。

続く東3局2本場、平山の3巡目。

 ドラ

早いイーシャンテン、しかも、タンヤオが確定してドラアンコ。観戦していて、ほぼ、アガリは平山のものだと思っていた。しかし、この手がなかなかテンパイしない。そしてツモ切ったがヤミテンの吉田に刺さる。



直撃の形になったのが、痛い。この半荘だけで、2位の平山と吉田の差は30,000点あまりの差になった。これを見た平山はどう思ったか。これが決定打となったのは言うまでもない。
その後は、吉田が危なげなく親を流し、他家同士の打ち合いで局が進むのを見ている。南場の親番が落ちると山下・内田ともに、ほぼ投了の状態になってしまった。オーラスの親がある平山は粘ろうとするが、あっさり吉田のヤミテンピンフで決着。
2008スプリントファイナル。優勝は吉田信之。

優勝 吉田 信之
+124.3
2位 平山 友厚
+ 61.5
3位 内田 良太郎
+ 35.3
4位 山下 健治
▲ 23.0
※5位以降は4回戦迄
5位 山谷 克也
+ 8.8
6位 江原 翔
▲ 33.2
7位 合田 雄亮
▲ 57.8
8位 中村 浩三
▲116.9
戦いすんで
吉田の優勝で決着がついた。その麻雀を見ていると、このファイナルで最もキチンとオリていた印象と、局面によって最も激しく攻めていた印象が浮かぶ。相反することのようだが、その局面ごとに、最善を目指したのだろう。説得力のある、素晴らしい麻雀を見せていただいた。準優勝の平山は、「負けて悔いなし」と吉田の強さを称えていた。
敗れたアスリートたちは「悔しい」「出直します」「来年、また」それぞれにコメントしてくれた。私としては、この平山と、RMUアスリートたちとの「コメントの差」が「麻雀の差」ではないか、と思っている。

観戦を終えての帰宅途中、この翌日にクラウンの決勝を控える多井代表とこんな会話をした。
私「明日は誰をマークするんですか?」
多井「基本的にフラットな状態で麻雀に向かうよ。誰もマークはしない」
私「そういうものですか。勝つための戦略とか練りそうに思っていたけど」
多井「勝ちたいことは、勝ちたいけど。優勝した人が良い麻雀を打ってくれれば、それでいい。自分が良い麻雀を打てれば、優勝がついてくる」
私はその言葉を聞き、独り思いを馳せながら帰路に着いた。



決勝戦を戦った8人の方々、お疲れさまでした。
そして、優勝した吉田さん、おめでとうございます。良い麻雀と優勝はついてくる。実感させていただきました。

(文中敬称略 文責:真下修)



Copyright(c) Real Mahjong Unit. All Right Reserved.